「VR工場見学は聞いたことがあるけど、よくわからないからやっていない。」
「VR」と言うだけで、反射的に苦手意識が出て、ビジネスチャンスを逃しているというケースが一定数あります。
そこでこの記事では、VR初心者でもVR工場見学の導入をイメージできるように、VR工場見学に関する初歩的な内容から企業導入事例まで、まとめて解説します。
この記事を読むことで、「企業がVR工場見学を導入するメリットから最新の導入事情」まで、全て分かります。
VRをビジネスで活用したい方は、最後まで読んでください。
目次
|VR工場見学とは
VR工場見学とは、VR(仮想現実)空間で行う工場見学のことです。
VRゴーグルなどの専用デバイスを使って、まるで現実の工場見学をしているような感覚で体験することができます。
最大の特徴は、「現実世界の工場見学の代替」ではなく、「VRでしか表現できないユニークで特別な体験」であるということです。
例えば、現地の工場見学では立ち入ることのできない場所へ潜入できたり、ドローンで撮影したVR映像など、特別な体験ができます。
さらに、一度制作したコンテンツは繰り返し利用が可能なため、企業PRや採用活動に取り入れている企業も増加。
利用者は、VR視聴環境さえ整えば、自分の都合の良い時間に工場見学ができ、その手軽さも人気ポイントです。
|VR工場見学を導入するメリット
まるで現実の工場見学をしているような感覚で、VR空間で工場見学を体験できるVR工場見学。
「現実世界の工場見学の代替」ではなく、むしろ「VRでしか表現できないユニークで特別な体験」という発想の転嫁で、最近は多くの企業が新たなビジネスチャンスとして参入しています。
企業がVR工場見学を導入するメリットについて、3つに絞って解説します。
臨場感のある体験が可能
VR工場見学は、360度自由に視点を動かすことができるため、まるで現地で見学しているような臨場感のあるリアル体験ができます。
またVR空間ならではの自由度の高い表現も可能です。
例えば
・ECサイトへのリンク掲載や動画の埋め込み
・目的やターゲットに合わせたBGMやナレーションの挿入
・ドローンで上空から撮影して、工場の全景を映す映像公開
・現地の工場では立ち入り禁止の場所も希少性
・3DCGを活用して機械の内部まで見られる特別感
このようにVR空間を通じて、非日常と日常のいいとこ取りができる、ハイブリッドな体験が可能です。
時間や場所の制約がない
VR工場見学は、オンライン上のため24時間365日アクセス可能です。
そのため、時間や場所の制限がなく、VR視聴環境が整っていれば、日本全国どこからでも工場見学ができます。
例えば、現実の工場見学では遠方からの訪問が難しい場合があります。
しかしVR工場見学であれば、好きな場所・好きなタイミングで体験できます。
また、「非対面営業が主流になったから、自社の良さをアピールできない」と嘆いている企業の営業や広報の方は、ご安心ください。
VR工場見学であれば、まるで対面で説明しているように、説得力を持って工場内の様子を伝えることができます。
人件費をカットできる
現実の工場見学では、受付・案内のための人員配置とその人件費や、工場の機械稼働に際するコストが掛かります。
一方、VR工場見学は、VR空間のため人員配置やリアルな機械稼働は不要で、工場の臨場感はリアルなままに、一度コンテンツを制作すれば何度でも繰り返し利用できます。
そのため、企業としては余計な人件費をカットでき、その分必要な事業や部門へ人員も含めた集中投資をすることができ、一石二鳥の効果が期待できます。
|VR工場見学の導入事例
VR工場見学導入に伴う企業のメリットは多数あり、導入企業は増加傾向にあります。
そこで、実際の導入事例を複数紹介します。
VR工場見学に興味がありつつ未導入の企業は、参考にしてください。
アサヒビール株式会社
実写とCGを合わせながら、ビールの製造工程から商品出荷、最後はビールが注がれるまでの工程を、ビール目線で楽しく体験ができます。
また、案内役のガイドの方を導入している点も、臨場感を高める効果に繋がっています。
ガイドの案内を聞きながら、ビール作りをあらゆる角度や高さから見学できたり、テロップによるわかりやすい解説であったり、様々な工夫が施されています。
見終わる頃にはスーパードライの泡とともに、製品への愛着が増すでしょう。
ビール目線での見学は、まさにVR工場見学ならではのユニークな視点だと言えます。
カゴメ株式会社
「カゴメ株式会社」のVR工場見学です。
大ヒット商品である、にんじんジュースの製造過程が紹介されています。
自然豊かな風景のもと、生産者がにんじんを収穫するシーンから始まり、迫力満点の収穫体験もできる点が、満足度が高まります。
カゴメのVR工場見学の特筆すべきポイントは、VRの特徴を活かした、360度全方位型の演出です。
テロップを使用した、製造工程に関する補足説明やクイズが適宜出題されます。
その際に、360度見渡しても誘導できるような仕掛けが施されている点が、秀逸ポイントです。
その他、クイズのような視聴者を飽きさせない、細やかな配慮がある点も好感が持てます。
このため、企業のイメージアップも期待できます。
キリンビール株式会社
「キリンビール株式会社」では、オンライン工場見学と併せて、VRでホップ畑を360度体験できるコンテンツを提供しています。
オンライン工場見学は、ビールの原材料の1つであるホップに焦点を当て、生産者の思いや、ホップを通じたキリンビールの取り組み、実際の工場見学の様子などを紹介しています。
また、オンライン工場見学で紹介される、ホップ畑を別途クローズアップ。
具体的には、収穫適期を迎える8月にホップ畑を歩く様子を、VRを活用して追体験できるコンテンツがあります。
高さ約5m伸びる広大なホップ畑を自由に見渡せ、まるでホップ畑にいるような体験が可能です。
現実の工場見学に行かれた方は、プラスアルファの体験ができますし、
気になっているけれど、まだ工場見学に行けていない方は、お試し体験として行くきっかけとなる、橋渡しの効果が期待できます。
株式会社八天堂
「株式会社八天堂」は、大人気のくりーむパンの製造販売で有名な企業です。
八天堂では、広島みはら臨空工場内でのコンテンツの1つとして、「八天堂VR工場見学」を開催しています。
工場内は、製造現場を除いて見学することが可能です。
一方で、製造現場には立ち入ることができないため、VRで追体験をして楽しんでいただく形式となっています。
具体的には、VRゴーグルを付けて「くりーむパン」の製造工程を、360度見渡しながら疑似見学ができる仕様です。
このように、製造現場に立ち入れないという弱点を補完し、それ以上の体験をVRでお楽しみいただくという発想の転嫁、VR活用事例として参考になります。
株式会社明治
乳製品やお菓子など、誰もが知っている「株式会社明治」。
明治では、独自のコンセプト・ターゲットへ向けた、VR工場見学を開催しています。
具体的には、小学校の教室で開催するVR工場見学です。
明治の「おいしさ・楽しさ・健康・安心」へのこだわりを、「なるほど!」と体験してもらうコンセプトで、小学生を対象として開催しています。
VRのため、工場と教室をオンラインでつなぐことで、教室が工場に早変わりする楽しみもあります。
内容は、牛乳・乳製品の工場の様子を様々な角度から視聴することで、リアルに体験して学んでいきます。
VR視聴後、オンラインで工場のスタッフの方からの商品の説明もあるようです。
企業の思いが詰まった明治のVR工場見学、ユニークで特色がでております。
江崎グリコ株式会社
お菓子と言えば、というくらい誰もが知っている「江崎グリコ株式会社」。
江崎グリコでは、実在する神戸工場内を、VR技術を使用して再現しています。
今まで、神戸工場で見学ができたのは「ポッキー」と「プリッツ」の2製品でした。
今回は普段は見ることができない「ビスコ」の製造工程を、敢えてVR見学のみ視聴・体験できるというプレミア感のあるコンセプトです。
VR見学内では、完全なVR空間を作り、その空間を中心にビスコの製造工程を体験することができます。
精度の高いVR空間の作り込みを目の当たりにして、本気度が伝わり思わず唸ります。
説明には動画を活用していますが、説明時の字幕表記がひらがな表記がメインとなり、お子様の視聴を予想しての配慮や工夫がうかがえます。
さらに、クイズやハート探しがあったりと、ゲーム性も持たせてお子様を飽きさせないポイントも高評価です。
一歩先行くVR工場見学を視聴・体感したいのであれば、江崎グリコをオススメします。
国立印刷局
日本の紙幣の印刷など、私達の暮らしに欠かせない、極めて公共性の高い製品を製造をしている「国立印刷局」。
この国民印刷局でも、オンライン上でのVR工場見学を開催しております。
内容は、「お札がどのような機械で製造されているのか」を追体験できるという構成です。
適宜説明が必要な箇所には、動画で補足説明をする形式」を採用。
民間企業ではないため、細かな演出やアナウンスは無く、視界も180度に留まっています。
しかし、扱うコンテンツがお札という身近で毎日使用されるものであるため、多くの方が興味を持って体験されるのではないかと予想されます。
公共機関も、VRを導入した工場見学を実施している事実が、今後のVR市場の発展に拍車を掛けそうです。
トヨタ自動車株式会社
世界の「トヨタ自動車株式会社」。
トヨタ自動車も、「トヨタバーチャル工場見学」として、サイトを立ち上げております。
今のところ、VR要素は取り入れていない様子ですが、著名なトヨタがオンライン上で工場見学というコンテンツを開始したため、紹介します。
内容は、「さまざまな部品を取り付けクルマとして完成させる組立工程」をオンラインで視聴できる構成です。
詳細な説明が必要な場面では、動画も取り入れています。
「トヨタバーチャル工場見学」のサイト上で、スクロールやクリック操作をすることで、進んでいきます。
トヨタバーチャル工場見学だからこそ実現できた、生産工程を臨場感ある映像により、働く人の表情や手元まで見ることができるという点で、ファンの間で評価が高まっているようです。
ANAホールディングス株式会社
飛行機で著名な「ANAホールディングス株式会社」。
ANAホールディングスのVR工場見学は、「ANA機体工場見学」という題名で、ANAの機体工場を整備士とガイドの方の案内のもと、360度の体験ができます。
実際の機体を目の前で視聴できる映像は、飛行機好きであれば大満足できる迫力。
工場見学中は、機体のどの部分について説明しているかがよくわかる図も差し込まれ、細やかな配慮を感じられます。
派手さはないですが、飛行機好きに特化した構成となっており、既存顧客やファンの満足度を高めるコンテンツになっております。
積水化学工業株式会社
「積水化学工業株式会社」では、住宅事業部門である「セキスイハイム」による、VR工場見学が開催されております。
内容は、工場での家づくりの過程を紹介する構成です。
お子様も意識されているようで、イラストを用いて、それぞれの工程毎に選択して見学していくスタイルとなっております。
静止画による工場内の様子と、動画による詳細な作業の様子を差し込んだVR工場見学。
派手な演出などはありませんが、シンプルに理解しやすい工夫に加え、ワークシートも用意されていたりと、学校での学習にも応用できそうな作りとなっています。
株式会社コダマ
「株式会社コダマ」は、1919年(大正8年)に島根県松江市で創業した、老舗の鋳造メーカーです。
現在では、鋳造・プラントエンジニアリング・溶射(表面処理)の各分野で、企画、設計から製造、施工、メンテナンスまでを手掛けております。
その歴史あるコダマが、VRを導入し工場見学を開催中です。
具体的には、コダマの工場内を360度の視点で体験していただくというコンセプトで、主に4箇所の工場を見学できます。
・プラント工場
・鋳造工場
・ブラスト工場
・溶射工場
いずれも、進行方向に矢印が表示され、グーグルスプレッドシートのように、移動できます。
また、詳細な説明は別途動画視聴により、理解を深める仕様です。
さらに、工場内の寸法表記など、細かい配慮もされており、見学者に優しいユーザーファーストの気概が感じられます。
企業のブランディングを上げるコンテンツとなっており、多く企業のモデルケースになります。
トーアス株式会社
「トーアス株式会社」は、豆類などの栄養のある商品の缶詰やレトルトパウチ受託製造や、流動食の受託製造を事業として展開されている企業です。
トーアスでは、缶詰・レトルトパウチ・流動食の3部門、それぞれの製造工程を、360度視点で見学できます。
具体的には、メイン画面がのイラストになっており、缶詰・レトルトパウチ・流動食の製造工程がそれぞれ描かれています。
各工程の様子は、動画で詳しく見られる仕様となり、手軽に視聴できる形式です。
派手な演出はありませんが、シンプルに工場の様子を視聴できるため、顧客や従業員に対して、信頼度を上げるコンテンツ効果に期待ができます。
株式会社トクヤマ
「株式会社トクヤマ」は大手総合化学工業メーカーです。
トクヤマのVR工場見学は、「大きな工場を空から見る」をコンセプトしております。
社員の方々による、案内と説明のもと、セメント工場見学は進んでいきます。
このVR工場見学の目玉は、コンセプトである空からの工場の様子を見学できる点です。
自然豊かな映像は、VRにより迫力があり、臨場感が増します。
見るものを楽しませるコンテンツとして、オススメです。
企業として視聴者へのおもてなしの心、社員の方々の手作り感が心温まり、ユニークなVR工場見学となっております。
沢井製薬株式会社
ジェネリッの医薬品で著名な「沢井製薬株式会社」。
沢井製薬のVR工場見学は、とても斬新でユニークな作りとなっています。
視聴者が主人公である勇者になりきり、「ジェネちゃん®」と共に工場内の6つの秘密を解き明かすという、RPG風の構成となっています。
VR動画で制作されているので、没入感も非常に良いです。
ゲームの世界に入り込む体験ができるので、お子様も楽しく学べそうです。
世間的にお堅いイメージである製薬メーカーですが、このVR工場見学により、良い意味でイメージ刷新に繋がる効果があります。
顧客にとって親しみやすい企業イメージに繋がれば、さらなるブランディング向上が期待できる、良い事例です。
牛乳石鹸共進社株式会社
創業110年を迎えた、「牛乳石鹸共進社株式会社」。
石鹸の製造工程を中心に、牛乳石鹸共進社のVR工場見学は進んでいきます。
ポイントは、現場の音や職人同士の会話が聞こえる演出です。
より臨場感を持って、本当に工場にいるかのような感覚になります。
また、時よりクイズや解説を差し込むことで、飽きさせない工夫も。
特にクイズでは、視聴者が考える時間を設けており、ユーザーファーストの気概が感じられます。
これらのことから、社員の方々が自身でできる範囲の中で何ができるかを、考え抜いた構成だと感じられ好感が持てます。
VR工場見学を通して、企業として細やかな配慮を感じられ、企業ブランディング向上が期待できる事例です。
|まとめ
この記事では、VR工場見学について、企業担当者様向けに紹介しました。
VR工場見学を導入するメリットや、実際に導入している企業事例まで、まとめて解説しました。
VR工場見学は、「現実世界の工場見学の代替」ではなく「VRでしか表現できないユニークで特別な体験」となっています。
そのため、多くの企業が参入し、企業が考えるターゲット層に対する、有用なコンテンツとなっています。
VRは今後ますます発展していくことが予想できます。
未導入の企業担当者様は、企業事例を参考に、早速社内ヒアリングをしてみましょう。
今であれば、まだチャンスです。
行動していきましょう。