ChatGPTが火をつけた生成AIブーム。

アメリカのビックテック企業のMicrosoftとGoogleが次の覇権を握るべく激しいAI開発競争を繰り広げる中、ついにクラウドサービスの王者AmazonもAI競争への参入を表明しました。

Amazonが手がけるAIサービスとは、一体どのようなものでしょうか?

AmazonのAIの特徴、使い方やコストなど多くの興味が湧くはずです。

また、後発のAmazonがどのようなアプローチでAI市場に参入するのか気になりますよね?

そこで本記事では、これらの疑問に答えるべく、Amazonが手がけるAIの全貌を徹底解説していきます。

これからAIをビジネスに活用しようと考えている方、すでに活用している方でも、AmazonのAIについて新たな知識を得て、あなたのビジネスのヒントになるはずです。

それでは、一緒にAmazonが描くAIの新領域を探求していきましょう!

|Amazonが手がけるAIとは?

出典:https://aws.amazon.com/jp/bedrock/

Amazonが手がけるAIとは、その名も「Amazon Bedrock(ベッドロック)」。

Bedrockとは英語で「基盤」や「土台」を意味し、これからのAI時代の基盤または土台を支える技術・サービスの集合体という意味を持ちます。

Amazon Bedrockは、Amazonの強大なクラウドサービス「AWS」の上に構築され、多種多様なAI機能を利用できる開発者向けのAIプラットフォームです。

このプラットフォームでは、Amazonが独自開発した生成AIだけでなく、他の企業や研究機関が開発したAIもAPIを通じて利用を可能にしています。

これにより、Amazon Bedrockは特徴の異なる複数のAIを組み合わせたシステム構築やアプリケーション開発を可能にし、ユーザーの多様なニーズに応えることができます。

これはAIの可能性をさらに広げるものであり、AmazonのAIは他のAIと一線を画す存在と言えるでしょう。

また、AmazonのAIはAmazonが持つ膨大なデータと組み合わせることで、より高度なAI機能を実現します。

次のセクションでは、その具体的な特徴やどんな機能があるかを詳しく見ていきましょう。

|AmazonのAIサービス「Bedrock」の特徴

Bedrockは、さまざまなAIを利用できるプラットフォームですが、そこにはもちろんAmazon自身が開発したAIも含まれます。

このセクションでは、BedrockのコアとなるAmazonが開発した生成AI「Amazon Titan」の詳細と、それらを利用するプラットフォーム「Bedrock」の全貌について説明します。

Amazonの生成AI「Amazon Titan」

「Amazon Titan」は、Amazonが開発した大規模言語モデル(LLM)で、人間と自然言語でやり取りできるChatGPTのような対話型AIです。

このAIは、Amazonが20年以上かけて研究開発してきた技術の集大成であり、大量のデータを学習し、多くのユーザーが利用できる強力なAIとなっています。

Titanは「Titan Text」と「Titan Embeddings」の2つの主要なモデルから構成されています。

「Titan Text」は、自然言語生成(NLG)タスクに特化したモデルで、文章の生成や文章の要約など、テキストに関する様々なタスクをこなします。

一方、「Titan Embeddings」は、テキストを数値表現に変換するタスクに特化しており、これにより効率的な検索機能を実現します。

また、Titanは、有害なコンテンツの検出・削除、ユーザーが入力した不適切なコンテンツを拒否するなどのフィルタリング機能が備わっています。

AI利用で問題視されている安全性のリスクへも配慮されています。

Bedrockが提供するAIサービス

AmazonのAIプラットフォーム「Bedrock」は、先述の通りAmazonのLLM「Titan」だけでなく、他社のAIも利用できるという特徴があります。

これにより、ユーザーは自身のニーズに合わせて最適なAIを選び、それらを組み合わせて利用できます。

具体的には、イスラエルのAI21 Labsが提供する「Jurassic-2」、米Anthropicの「Claude」、英Stability AIの画像生成AI「Stable Diffusion」など、多種多様なAIをBedrockを介して利用できます。

「Jurassic-2」は、AI21 Labsが開発したLLMで、文章生成や質問応答などのタスクを高い精度で実行できます。

一方、「Claude」はAnthropicが開発したAIで、ユーザーフレンドリーな会話型AIとして機能します。

これらはChatGPTの対抗馬として非常に注目されています。

また、「Stable Diffusion」はStability AIが開発した画像生成AIで、高品質な画像生成が可能です。

これらのAIはそれぞれ異なる特性を持ち、ユーザーはこれらを組み合わせることでより複雑で多様なタスクを効率的に実行できます。

Amazonの「Bedrock」は自社のAIだけでなく、一つのプラットフォーム上で多様なAIを活用できるという大きな魅力を持っています。

他のAIとの比較

AIをめぐる市場競争は、すでにMicrosoftとGoogleが熾烈な競争を繰り広げています。

MicrosoftはOpenAIと提携し、ChatGPTの技術を自社製品やサービスに展開。

Googleは長年にわたり独自に研究開発を進めてきた言語モデル「PaLM」を展開しています。

一方で、Amazonは自社のAIだけでなく、外部のAIとも連携して幅広くAIサービスを提供するスタンスです。

MicrosoftとGoogleが一つのAI技術の高性能化に注力するのに対し、Amazonは自社のAIに加え、他者の言語モデルも取り揃えることで多様なビジネスニーズに応えようとしています。

この多機能で汎用性が高いAIサービスは、開発者にとって非常に利便性が高く、Amazonのメイン顧客であるAWSユーザーに重宝されることでしょう。

|Amazon AIの使用方法:Bedrockの利用方法と必要な準備

さっそくBedrockを使ってみたくなったのではないでしょうか?

ここでは、「Bedrockの始め方は?」「どうすれば使えるの?」といった疑問にお答えしていきます。

Amazon Bedrockの利用方法

2023年7月15日現在、Bedrockはプレビュー版のみの公開となっており、残念ながら現時点では限られたユーザーしか利用できない状況です。

具体的な利用方法についてもまだ公には明らかにされていません。

しかし、Amazon BedrockはAWSのサービスであることは確実で、利用するには少なくともAWSアカウントが必要になるので、事前にAWSアカウントを作成しておくことをお勧めします。

また、AWSユーザーであれば、Bedrockのプレビュー版の申し込みが可能です。

可能性は低いかもしれませんが、AWSにアカウントを登録してプレビュー版を申請することもできます。

運が良ければ誰よりも早くBedrockを利用できるかもしれません。

また、AWSには他にも多種多様なAIツールがあり、無料で試すことができます。

これらを利用して事前にAWSの環境に慣れておくとよいでしょう。

きっと今後のアプリケーション開発に役立つはずです。

AWS アカウントの作成

AWSアカウントの作成は以下の手順で行います。

  1. AWS公式サイト(https://aws.amazon.com/)にアクセスします。
  2. ページ上部の右側にある「今すぐ無料サインアップ」をクリックします。
  3. 必要な情報(メールアドレス、パスワード、AWSアカウント名)を入力し、「続行」をクリックします。
  4. アカウントタイプ(プロフェッショナル、パーソナル)、お名前や住所、電話番号などの詳細情報を入力します。
  5. 支払い情報(クレジットカード情報)を入力します。
  6. セキュリティチェックを行い、全ての情報が正確に入力されていることを確認したら、「アカウントの作成」をクリックします。
  7. 指示に従って電話番号の確認を行い、アカウントの作成を完了します。

これで、各種AWSサービスの利用が可能になります。

AWSでは100以上の製品を無料で体験することができますので、まずは無料利用枠を活用して、AWSの操作、ツールの扱いに慣れてみてください。

|Amazon AIのビジネスへの応用

Amazon AIの技術は、すでにビジネスのさまざまな領域で活用しています。

デザインツールを提供する企業Canvaは、Amazon SageMakerとAmazon Rekognitionというツールを活用し、テキストから画像を生成するAIを開発しました。

この機能は、ユーザーがテキストを入力すると、それに基づいた画像を生成するものです。

これにより、ユーザーは数秒で独自の高品質な画像を作成できます。

Canvaは、AWSの機械学習サービスを活用することで、この機能をわずか3週間で実装しました。

一方、リコーは、Amazon SageMakerを活用して、自社のビジネスプロセスを最適化しています。

リコーは、企業内のテキストデータ活用するソリューションとして「仕事のAI」を開発しました。

これは、コールセンターなどで得られた顧客の声の意味をAIが分析して仕訳を行うもので、人による解析時間の削減を実現し、業務の効率化や顧客満足度向上に役立てています。

これらの事例は、すでにリリースされているAWSのサービスを活用して開発されたアプリケーションです。

ここに新たなAIモデルが利用できるBedrockが加われば、より高性能なアプリケーションやソリューションの提供が可能となるでしょう。

|AmazonのAI戦略

AmazonのAI戦略は、AI技術そのものに焦点を当てているMicrosoftやGoogleとは異なり、開発者である企業がAIを活用しやすい環境に焦点を当てています。

これは、革新的なただ一つのテクノロジーを持つことが重要なのではなく、それを現実の世界で大規模に展開する術が重要だという考えに基づいています。

急速に広まったAI技術の発展の一方で、利用者のプライバシー保護や情報セキュリティを問題視する声は大きいです。

特に金融サービスや医療機関など、機密性の高い顧客情報を扱う企業にとって重要な問題です。

Amazonはこの課題解決に目を向け、自社のクラウドサービスで培った強みを活かし、AI利活用しやすいセキュアで柔軟性に富んだ環境を提供したいと考えています。

また、Bedrockは現在利用可能な基礎モデルだけでなく、将来的に登場する新しいモデルも統合できる革新的なプラットフォームです。

これにより、最新かつ開発者のユースケースに対応したAIツールの提供を可能にします。

Bedrockを通じて、AIソリューションの進歩と発展がさらに加速されることでしょう。

|まとめ

いかがでしたか?

本記事では、Amazonが手がけるAIの全貌、特に「Bedrock」の特徴やそのビジネスへの応用、そしてAmazonのAI戦略について詳しく解説してきました。

AmazonがどのようにAIを自身のビジネス戦略に組み込んでいるのか、そしてBedrockがどのようにしてAIの新たな可能性を開拓しているのか、理解いただけたのではないでしょうか。

AmazonはAIとクラウドの強みを活かし、企業や開発者がAI技術を効率的に利用できるプラットフォームを提供しています。

これらの情報を見て、あなたのビジネスでもAmazonのAIを活用する新たな可能性を見つけられたのではないでしょうか?

絶えず進化を続けるAmazonのAI技術の動きから目が離せませんね。

今後も引き続き注目していきましょう。