「メタバースで地方創生できる?」「他の自治体はメタバースでどんな取り組みをしているのだろう」と気になっていませんか。

兵庫県の養父市や九州地方整備局などは企業と連携してメタバースを活用した地方創生に取り組んでいます。

本記事では、5つの地方都市のメタバースの取り組み事例やメタバース活用によって実現したことなどについて解説します。

記事を読んだ後は、メタバースによる地方創生についてより理解が深まっているでしょう。

|メタバースを活用してどんな地方創生ができる?

メタバースを活用すると以下のような地方創生につなげることができます。

  • 地方の街を再現して観光や文化体験をしてもらう
  • メタバース上で上がった利益を地方に還元する

具体例を交えながら説明します。

・地方の街を再現して観光や文化体験をしてもらう

メタバースを活用すると、地方の街を再現して観光や文化をバーチャル体験してもらうことができます。コロナ禍で旅行に来てもらうことが難しい状況でも、メタバースなら気軽に訪れてもらうことが可能です。

施策としては、まずメタバース上で地元の建物や風景などを構築します。バーチャル都市が完成したら、祭りやイベント、伝統工芸などその街でしか体験できないものを再現します。

訪問者は自分のアバターで自由に街を歩き回りイベントに参加できるため、ただ街を眺めるだけではありません。よりリアルに街が体感できるため、写真や動画、文章だけでは気づかなかった街の魅力も理解しやすくなります。

メタバースを活用すると、国内外の人に街の魅力や文化体験を楽しんでもらうことができます。

・メタバース上で上がった利益を地方に還元する

メタバースのバーチャル地方都市とイベントで得た収益は地方に還元することができます。交通の便が良くないなどの理由で資金が不足しがちな地方でも利益を得やすくなります。

現実の民俗博物館などに入館する際は、入館料がかかることも多いものです。メタバース上の民俗博物館でも入館料を設ければ、収益につなげることが可能です。ほかにも、有料のライブや展示会などを開催する方法もあります。

メタバース上での入館料や参加料の支払いは、仮想通貨などと相性がいいようです。銀行振込は、手間がかかるうえ海外からの来場者の利便性が悪いのでおすすめできません。

誰もが気軽に訪れて利用できるシステムを構築することで、来場者が増えて地方に還元できる利益も増えます。

|メタバースを活用した地方創生の事例

メタバースはすでに地方都市で活用されています。企業などと連携して地方創生に活かしているこちらの5都市の事例を紹介します。

  1. 吉本興業と兵庫県養父市
  2. パソナと淡路島
  3. 九州地方整備局
  4. ノーボーダーズと鳥取県
  5. SBINFTと白浜町

それぞれ詳しく解説します。

吉本興業:兵庫県養父市の観光名所を再現

2022年6月末に、吉本興業は兵庫県養父市の観光名所を再現したメタバースを開始します。

義父市のメタバースに吉本興業のタレントのアバターが登場し、同市の自然や魅力を国内外にアピールします。

メタバース上に構築された観光スポットは「日本の滝100選」にも選ばれた天滝やウインタースポーツで知られるハチ高原などです。

明延鉱山の中に入れる仮想体験ツアーも計画されています。

また、吉本興業のタレントのアバターはイベントに出演予定のため、メタバース上で新しい娯楽コンテンツを展開する予定です。

NFTとよばれるデータの売買ができる技術を使って、タレントの衣装やギャグなどの動きを販売することも検討しています。

吉本興業は、メタバースを活用して地方都市の地域おこしを行い、新コンテンツ開発や衣装販売なども手掛ける予定です。

パソナ:メタバースで淡路島と世界を結ぶ

人材サービス大手のパソナは、東京から淡路島へ本社機能の移転を進めています。それに伴い、力を入れているのは淡路島の地方創生です。

パソナは、メタバースで淡路島と世界をつなぎ、淡路島の魅力を国内外へ発信する取り組みを行っています。特産品を販売したり観光客を呼び込んだりするような試みも検討中です。

さらに、パソナは「淡路アバターセンター」を開設し、メタバース上で働くことを支援しています。アバターによって障害の有無や年齢、国籍などに関わらず、多様な人材が1つのプロジェクトに取り組めるようサポートする予定です。

パソナは淡路島の魅力を世界中に発信し、アバターがバーチャル淡路島で生活することで、現実世界での移住にもつなげていこうと考えています。

九州地方整備局:メタバースで川づくりを体験

九州地方整備局は土木研究所と連携して、全国初でメタバースを活用した川づくりを行いました。この取り組みにより、低コストでよりリアルな川の3Dモデルの作成を実現しています。

川づくりの地元説明会は、これまでパースや模型を使って行うことが一般的でした。現地の測量や踏査データがデジタルでも、アナログ作業で行わなくてはいけないため非効率的なことが課題でした。

ゲームエンジンを活用したメタバース上の川を作ることで、より高品質な川の3Dモデルができ、作業も効率化したといえます。

また、VR技術によって、地域住民の方に完成後のインフラをバーチャル体験してもらえるようにもなりました。

九州地方整備局は、川づくりの完成イメージにメタバースを活用することで、効率化とコストダウン、地域住民の方へのインフラ疑似体験の機会を創出しました。

ノーボーダーズ:地方創生がテーマのNFTゲームカードシリーズ鳥取県編を発表

メタバースを開発するノーボーダーズは、手塚治虫のアトムで知られる株式会社手塚プロダクションとNFTメタバースゲームを融合させて地方創生をはかるプロジェクトを開始します。

NFTメタバースゲームのカードシリーズ第一弾は鳥取県です。

トレーディングカードには、鳥取市や大山町、三朝町など鳥取県を代表する景観地を背景にアトムが天高く飛んでいるイラストや街並みを眺めている姿が描かれています。

鳥取県の景観地、文化、食の魅力をメタバースと融合して国内外に広く伝える狙いです。

なお、本プロジェクトで得た収益の一部は各地域産業に寄付し還元されます。ノーボーダーズはコロナ禍で疲弊した地域経済と国内観光地の回復を目的として、NFTメタバースゲームによって鳥取県の魅力と文化をアピールします。

SBINFT:バーチャル白浜を開催

SBINFT株式会社は、白浜で行われた世界的壁画アートイベント「POW!WOW!JAPAN」に連動してバーチャル空間のCryptovoxelsで「バーチャル白浜」というイベントを実施しました。

白浜の魅力とイベントをバーチャル空間で広く伝え、NFTと融合することでバーチャル空間での経済効果も実現しています。

6回目を迎えた「POW!WOW!JAPAN」は、日本のアートカルチャーを代表するアーティストが集まり、7日間にわたり街の壁を塗り替えるというイベントです。

「バーチャル白浜」では本イベントの紹介やバーチャル白浜の魅力、アーティスト作品制作の話などを発信しました。

さらにバーチャル白浜では、運営するNFTマーケットプレイス「nanakusa」の公認アーティストのAURORAやひかげのコラボ作品も出品・販売し、経済効果も狙いました。

SBINFT株式会社はアートとイベントにNFTを組み合わせて、地域経済の活性化を支援しています。

|メタバースにおける地方創生のまとめ

地方都市は、メタバースを活用して地方創生に取り組んでいます。

養父市は吉本興業と連携して滝や高原などの観光名所を再現し、淡路島はパソナと協力して淡路島の魅力を世界に発信し、移住者誘致にも努めています。

メタバースの活用は地域の魅力をアピールするだけではありません。仮想通貨やNFTと組み合わせることで経済効果を生み出し、地域に利益を還元することもできます。

各都市が取り組んでいるメタバースをぜひ体験してみてください。