Web3.0の時代が到来し、その中心に位置するのがDAO(自律分散型組織)です。

これは、インターネット上で共同体を形成し、その運営を自動化する新たな組織形態を指します。

本記事では、DAOの基本的な概念から、Web3.0との深い関連性について詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

|DAO(自律分散型組織)とは?

DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、分散型自律組織の略称であり、その名の通り、中央集権的な管理者や企業が存在せず、参加者の集合体が意思決定を行う組織を指します。

スマートコントラクトによってブロックチェーン上に構築されたDAOでは、通常、参加者は独自のトークンを購入してグループに参加します。

そして、プールされた資金の使用方法や管理に関する決定に投票することができます。

このような仕組みによって、個々の参加者が自己決定権を持ちながら、透明性や信頼性の高い取引が可能となります。

また、分散化された性質によって、単一の中央機関に依存することなく、効率的な意思決定が行われます。

Web3.0とは?そもそも何なのか?

Web3.0は、新しいインターネットのパラダイムを指し、近年注目を集めています。

これは、従来のWebの課題に対処し、革新的な解決策を提供する可能性があるとされています。

この新しい概念では、従来のプラットフォーム(たとえばFacebookやAmazonなど)で見られるような、データの中央集権的な蓄積ではなく、分散型のデータ管理が重要な特徴となります。

つまり、データは1つの場所に集中するのではなく、ネットワークに参加する多数のコンピューターに分散される仕組みです。

Web3.0では、ブロックチェーン技術を活用してデータを分散化し、中央集権的な構造から分散型の構造への移行が可能となります。

さらに、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを利用することで、サーバーを介さずにユーザー同士が直接データを共有し管理することができます。

この仕組みにより、高いセキュリティが確保される一方で、従来の中央集権的なインフラストラクチャーに頼る必要がなくなります。

DAO(自律分散型組織)で何ができるのか?

前述の通り、DAOの最も特筆すべき特徴は、従来の中央集権的なリーダーシップが存在せず、参加者全員が同等の地位で組織を運営することです。

この組織は、従来の株式会社などの階層的な管理構造を持たず、意思決定はブロックチェーン上のスマートコントラクトによって自動的に行われます。

言い換えれば、組織は自律的に機能し、進化していきます。

また、DAOの魅力の一つは、世界中のどこからでも自由にその活動に参加できることです。

多くのDAOはパーミッションレスな性質を持っており(つまり、参加に特別な許可が必要ない)、国籍や性別に関係なく、誰でもプロジェクトに参加することができます。

|DAO(自律分散型組織)とWeb3.0の関係

Web3.0は、Web2.0の課題に対処するために提案された次世代のインターネット構造であり、「分散型ネットワーク」として知られています。

この分散型ネットワークの基盤となっているのがブロックチェーン技術であり、ブロックチェーン技術を駆使して生み出されたのが「仮想通貨」「NFT(非代替トークン)」「メタバース」「DAO(分散型自律組織)」などの革新的なテクノロジーです。

言い換えれば、Web3.0はインターネットの構造そのものであり、ブロックチェーンはその構造を支える技術であり、「仮想通貨」「NFT」「メタバース」「DAO」などは、Web3.0を構成する要素の一部と言えます。

Web3.0とDAOなどの用語はしばしば同じ文脈で議論されるため、これらの違いを正しく理解することが重要です。

|DAO(自律分散型組織)の事例

ここからは、DAOの事例について紹介します。

DAOの「A」は「Autonomous(自律的)」という意味ではありますが、実際、現存するDAOは未だ自律的ではない(設立者や意思決定者が存在している)ケースが多いといわれています。

アメリカの暗号資産取引所Coinbaseの元最高技術責任者であるBalaji Srinivasan氏もその点について述べ、権限分散の仕方という視点から、DAOを以下の3つに分類しています。

 ・自律的なDAO

 ・官僚主義的なDAO

 ・最高責任者が存在するDAO

▼Balaji Srinivasan氏のツイート

出典:https://is.gd/Rhdhbx

The DAO-世界初のDAO

出典:https://www.decentral.ee/2018/08/15/decentralized-autonomous-future/

世界で初めて実用されたDAOについて紹介いたします。

昨今耳にする「DAO」が初めて誕生したのは、2016年4月にイーサリアムのブロックチェーン上に構築された「The DAO」です。

ドイツのIoTベンチャー企業であるStock.it社により設立されました。

The DAOは、VCファンドのような機能を期待して設立され、世界中の投資家がトークンを購入し、約1億5000万ドルの資金を集めることに成功しました。

しかし、The DAOは失敗に終わります。

その要因は主に「技術的要因」と「法的要因」の二つです。

まず「技術的要因」としては、スマートコントラクトの脆弱性を見抜かれ資金の3分の1ほどが盗まれてしまうという事件が起きました。

そして「法的要因」は、資金提供の見返りに得るトークンが「証券」に該当する可能性があるとし、DAOの運営にまつわる課題が多く浮上しました。

MakerDAO-DeFi(分散型金融)運動を行うDAO

出典:https://thedefiant.io/makerdao-is-piling-on-fees-as-dai-demand-booms/

MakerDAOは、2015年に設立されたDAOで、イーサリアムブロックチェーンでの借入、貯蓄、および安定した暗号通貨を実現するための技術を開発しています。

MakerDAOは、ひとつの「DeFi(分散型金融)」運動と捉えるとわかりやすいかもしれません。

つまり、中央の金融機関が不在で、仲介を必要としない暗号通貨の貸し借りを可能にしたサービスです。

従来は、暗号資産を借りることはとても大変というイメージがありました。

というのも、暗号資産の多くが不安定で、その価値が乱降下することもあったため、借入額と返済額が短期間のうちに変わってしまう可能性が大いにあったのです。

そこで、返済額を見通せるようにしようという考えのもと、MakerDAOが生まれたとされています。

PleasrDAO-NFT共同購入のためのDAO

出典:https://cryptosaurus.tech/pleasrdao-partners-with-amber-group-defi-leaders-early-nft-collectors-and-digital-artists/

PleasrDAOは、NFTの共同購入を目的として設立されたDAOです。

高価値のNFTに共同で投資し、スマートコントラクトを通じてそれらの所有権を共有しています。

元々は、デジタルアーティストpplpleasrがUniswapV3の設立を記念して作成したNFTを購入するためにTwitterを通じて設立されました。

このオークションでの収益は、アジア系アメリカ人と太平洋諸島に住むマイノリティのコミュニティを支援するために使われたそうです。

現在もその活動は続いており、Edward SnowdenのNFTや、ヒップホップ史上において最大級のインパクトを残したクルーWu-Tangの、世界に1枚しか存在しないアルバム「Once Upon a Time in Shaolin」などを共同購入しています。

| DAO(自律分散型組織)の今後の課題

ここまで紹介した通り DAO には透明性や公平性を保てるなどのさまざまなメリットがあります。

しかし、同時に DAO ならではの課題も抱えています。

ここからは、DAO の欠点やリスクについて紹介していきます。

ハッキングリスク

1つ目の懸念は、セキュリティリスクです。

分散型自律組織(DAO)では、ブロックチェーン上で取引が行われるため、ハッキングの可能性が依然として存在します。

実際、「The DAO」という例では、約360万ETH(当時の価格で約52億円相当)が盗まれる事件が発生しました。

この事件では、参加者の合意により、ブロックチェーンを盗難前の状態に戻すことで資産を取り戻しました。

しかし、DAOの法的な枠組みが未整備の部分も多いため、被害が発生した場合でも補償が十分に保証されるとは限りません。

したがって、これらのリスクを理解した上で参加することが重要です。

業界のスピードに法的土台が整っていない

2つ目の課題は、意思決定に時間がかかりやすいという点です。

先に述べたように、DAOの最大の特徴は中央に管理者を持たず、民主的に運営されることです。

これは利点であると同時に、意思決定の遅延というデメリットも生じる可能性があります。

通常、意思決定にはガバナンストークンによる投票が必要です。そのため、サービスがハッキングに遭った場合や、欠陥が見つかった場合などの予期せぬ事態に対処する際に、迅速な対応が困難になるリスクがあります。

従来の中央集権的な企業組織とは異なり、問題に素早く対処できないという点は、DAOの欠点の一つと言えます。

| Web3.0/DAOの将来性とまとめ

最後に、DAOは仮想通貨の世界に新たな節を刻んでいます。

人間が作り上げてきた組織にどの程度の影響を与えるかは未知数ですが、DAOのガバナンスモデルは特に仮想通貨コミュニティで成功を収めています。

まだ課題は残されていますが、これから先、Web3.0の実現に不可欠な要素となり、ますます発展していくでしょう。

現時点では、仮想通貨関連のDAOが主流ですが、将来的には他の領域でも活躍する可能性があります。

その日が来れば、何万ものDAOが存在する世界が現実のものとなるでしょう。