「介護DX」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
介護のDXとは、情報技術(IT)を活用して介護業界をより効率的で高品質なものに進化させるという概念です。
今、急増する高齢化社会に伴う介護ニーズの増大と、介護職員の慢性的な人手不足によりこの介護DXが急速に注目を集めています。
本記事では、介護DXの基本から、その具体的な事例、さらには厚生労働省も注目するスタートアップ企業について詳しく解説します。
一読すれば、介護DXがどのように介護業界の課題解決に寄与し、利用者の生活を向上させるのかを理解できるでしょう。
スキマ時間に読み切れる内容になっていますので、ぜひご覧ください。
<この記事を読むとわかること>
- 「介護DX」の概念とその重要性
- 介護DXの実際的な事例とその効果
- 厚生労働省が注目する介護DXスタートアップ企業の紹介
- 介護業界の今後の展望と介護DXの可能性
目次
|介護DXとは?
介護DXとは、AIやIOT、ICTなどのデジタル技術を介護現場に導入し、介護業務のフローを革新する取り組みを指します。
高度化する社会情勢、特に人口減少と高齢化の進行が日本に突きつける厳しい課題。その解決策として、介護DXは必須となっています。
2025年を見据えた大規模な変化に対応するために、ロボットやAI、ICTの普及が求められています。
介護事業者が生き残るためには、これらの変化に柔軟に適応していく能力が必要となるでしょう。
そのためには、まさに「介護DX」の活用が重要となるのです。
また、介護DXは利用者と介護職員の双方を笑顔にする、という視点も持っています。
介護保険法の総則には、「尊厳を保持した生活」が謳われています。
それは、要介護者が自立した日常生活を営むことができるように、必要なサービスを提供するという意味です。
介護DXの推進により、これらの法的な要請も実現可能になると期待されています。
厳しい時代だからこそ、介護DXにより利用者と職員が笑顔になる。
そういった成果が望まれているのです。
|厚生労働省も推進している介護業界の課題とは?
現在、介護業界には様々な課題が存在します。
それらの解決へ向けた取り組みが、厚生労働省をはじめとする関係機関からも進められています。
そして、その解決には介護DXの活用が重要とされています。
では、具体的にどのような課題が存在し、それらがどのように解決を求めているのか。
次の節で詳しく見ていきましょう。
課題①:人口高齢化に伴う介護ニーズの増大
65歳以上の高齢者人口が総人口の約30%を占める日本。
少子高齢化が進む我が国における、介護ニーズの増大は避けられません。
この増大とは、具体的には、高齢者が必要とする介護サービスの量と範囲が増加することを指します。
高齢者が多い地域では、それに伴い介護サービスを提供する事業所や介護職員の需要も増えます。
また、高齢者一人ひとりの健康状態や生活能力によって、必要とされる介護サービスの種類や程度も変わります。
病気や身体機能の衰えにより日常生活に支障をきたす高齢者が増えれば、介護サービスへの需要もそれに伴い増大します。
この課題が深刻な理由として、まず財政負担の増大が挙げられます。
多くの介護サービスは公的な介護保険により運営されており、介護ニーズの増大はその負担を増やすことにつながります。
さらに、労働力人口の減少とともに社会保障費が増加する一方で、税収は減少し、これらのバランスが崩れることで経済全体にも影響を及ぼします。
課題②:介護職員の慢性的な人手不足
介護業界は、深刻な人手不足に直面しています。
厚生労働省の報告によると、今後5年間で必要な介護職員数と供給見込みのギャップが約37.7万人にも達するとされています。
一方で、介護ニーズの増大に伴い、今後も介護職員数の増加が求められています。
この人手不足がもたらす問題点は大きく二つ。
一つ目は、介護職員の過重労働と労働環境の悪化です。
人手不足により、既存の職員に多くの業務が降りかかり、過重労働につながるケースが多く見られます。
これが職員の健康問題や離職率の上昇に繋がり、さらなる人手不足を招く悪循環に陥ります。
二つ目は、サービス品質の低下です。
必要なサービスを適切なタイミングで提供するためには、適切な人員配置が不可欠です。
人手不足によりその配置が困難になると、結果としてサービス品質が低下する可能性が指摘されています。
課題③:介護現場におけるサービス品質の維持
人手不足が引き起こす介護現場の課題の一つが、サービス品質の維持です。
介護は、高齢者が安心して生活するために必要不可欠なサービスであり、その質が低下すると高齢者の生活に大きな影響を及ぼします。
具体的には、サービスの提供時間が短縮されたり、必要なケアが行き届かない事態を招く可能性があります。
サービス品質を維持、向上するためには、介護職員の労働環境の改善と、新たな労働力の確保が必要となります。
しかし、現状では、介護職の過酷な労働環境や低賃金が課題となり、新たな人材の確保が難しくなっています。
そこで注目されているのが、ICTやAI技術の活用です。
業務効率化や労働環境改善につながるICT化は、品質維持のための有力な手段となり得ます。
また、教育や研修制度の充実も、人材確保とサービス品質維持に重要な役割を果たします。
|どうDX化している?注目の介護DX事例7選
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、現代社会の様々な業界で活用され、その効果を発揮しています。
介護業界では、厳しい現場環境下での業務改善や効率化を目指し、さまざまなデジタルツールや技術が活用されています。
そこで、注目の介護DX事例を7つ、選出いたしました。
これらの事例は、日々の業務改善や質の高いサービス提供に役立てられており、介護業界の未来を切り開く一助となっています。
このセクションでは、これら7つの事例について、その概要とどのように介護現場で活用されているのかについて解説します。
また、事例集では以下の点について解説する。
・各事例の概要、取り組み内容
・その事例が解決を試みている具体的な問題点
・事例による効果、メリット
事例①:介護業界専門勤怠管理システム「CWS for Care」
<「CWS for Care」の特徴>
- 介護業界特有の複雑な就業情報管理に対応。
- エクセル形式のシフト表の作成が可能。
- 勤務時間やシフト人数の自動集計機能。
<導入企業の課題>
- 煩雑なシフト作成や勤怠管理による時間ロス。
- 効率化により、利用者への対応時間を増やすこと。
<導入後の効果>
- シフト作成時間が約3分の2に削減、最短で1/3に。
- 自動集計による誤差の削減と人的ミスの防止。
- 月初の一気な集計作業が分散、作業負荷と心理的な負担軽減。
「CWS for Care」は介護業界に特化した勤怠管理システムであり、職員情報を正確に登録することで、必要なデータを自動的に出力する機能を備えています。
これにより、毎月エクセルで個別に作成していたシフト表などのデータを自動で出力でき、シフト作成時間を大幅に短縮することが可能になりました。
福岡県大牟田市の「小規模多機能施設わたぜ」と「小規模多機能施設くぶき」を運営する株式会社 銀水会では、「CWS for Care」の導入により、7〜8時間かけて行っていたシフト作成作業が2/3程度に短縮。
さらに、パソコンやスマホの操作に慣れた職員では、1/3程度まで作業時間を削減することができたとのことです。
また、自動集計機能により、人的ミスを減らすとともに、業務負担の軽減を実現しました。
特に、シフトと勤務時間にズレが生じた場合の確認作業が、システム上でエラーメッセージが表示されることにより、リアルタイムに行えるようになりました。
その結果、月初に一気に行っていた集計作業が分散され、作業負荷と心理的な負担が大幅に減っています。
事例②:介護記録ソフト「Care-Wing」
<「Care-Wing」の特徴>
- ICタグを活用し、介護現場での時間管理を確実且つ正確に行える
- 介護記録を電子化し、管理を容易に行える
- 他のソフトとデータ連携が可能で、業務の効率化が実現
<導入企業の課題>
- 業務の集中と効率化の問題
- ヘルパーとサ責のICT利用への抵抗感
- 適切な導入方法の検討
<導入後の効果>
- 業務時間の大幅な削減と効率化
- ペーパーレス化によるコスト削減
- リモートワークの導入による業務運用の柔軟性向上
有限会社青空の青空ケアセンターは、テレワーク体制の構築、ペーパーレス化、業務効率化といった課題を抱えており、月末月初の業務や紙による記録書類の繁雑な管理から脱却したいと考えていました。
そんな中、「Care-Wing」の導入に踏み切りました。
なぜ「Care-Wing」を選んだかというと、介護現場での時間管理をICタグで実現できること、そして記録を電子化して管理が容易になるという点が大きかったのです。
さらに、他のソフトとのデータ連携が可能なため、請求やシフト管理、給与計算といった業務を一元化することもできました。
その結果、効率化した業務は介護職員の日常の仕事負担を大幅に軽減。紙での記録や突合作業から解放されたことは、介護職員にとって大きな負担減となっています。
ヘルパーはより余裕のある実働時間を持つことができ、事業所への記録用紙の提出も不要となりました。
さらに、コスト削減やリモートワークの導入が可能になったことで、業務運用の柔軟性が向上したとのことです。
事例③:動画型マネジメントシステム「ClipLine」
<ClipLineの特長>
- 双方向コミュニケーション:全スタッフ間で、動画を通じた相互コミュニケーションを実現。
- 暗黙知の形式化:デジタルSECIモデルを用い、暗黙知を形式知に転換。
- 映像制作と経営支援:専門チームによる映像制作とプロフェッショナルによる経営支援を提供。
<導入企業の課題>
- 増加する中途入職者による「我流介護」の是正
- 法定研修の現場負担の軽減
- 動画コンテンツの質の向上
<導入後の効果>
- 導入を通じて現場の負担が軽減
- 動画コンテンツの高評価により共同制作も実施
- 確かな技術と理解の仕組みづくりが推進された
ClipLineは、多拠点・多店舗ビジネスの実行を阻む壁を解消するために開発されたシステムです。
動画を通じた本部と現場の双方向コミュニケーションを可能にし、全スタッフ、アルバイトを含めた現場の皆さんが情報を効果的に共有できます。
ClipLineの導入によって、社会福祉法人ウエル清光会では、「我流介護」の是正や法定研修の現場負担軽減を実現しました。
また、ClipLineが制作する動画コンテンツの質は高く評価され、共同でコンテンツ作りも実施することになりました。
ClipLineの導入は、技術と理解の仕組みづくりを推進し、確かな介護サービスの提供を可能にしています。
事例④:介護業務支援サービス「LIFELENS」
<介護業務支援サービス「LIFELENS」の特長>
- 高感度センサーやパナソニックのセンシング技術を用いて、入居者の状態や生活リズムをリアルタイムで把握
- 業務効率化とケアの質の向上を両立することで、施設の価値向上とスタッフの負担軽減を実現
<導入企業の課題>
- 夜間巡視とコール対応業務の負担軽減、スタッフの心身ストレスの低減、高品質なサービス提供の必要性
- テクノロジーを用いて効率的な運営を実現し、サービスの質を向上させる要望
<導入後の効果>
- 91%の夜間巡視時間を削減し、必要な時に適切な訪室を可能にし、入居者へのサービス提供時間を増やす
- 高品質なサービス提供により入居者、家族、スタッフの満足度向上
HITOWAケアサービスは、ICTを活用した介護業務の改革を目指し、その一環としてLIFELENSを導入しました。
導入背景には、テクノロジーを活用して現場の負担を軽減し、良質なサービスを提供したいという思いがあったとのこと。
具体的な取り組みとしては、シートセンサーや映像データの収集・分析等を用いて、入居者の睡眠状態や離床を察知し、必要なときだけ訪問するという業務効率化を実現しました。
これにより、スタッフと入居者双方のストレス軽減に成功しています。
導入により、今後は転倒事故の未然防止やADLの変化の把握等、ICT/AIを活用した「先回りの介護」の実現を目指していけるようになっています。
事例⑤:介護の業務過程をDX化「HitomeQ」
<HitomeQの特徴>
- 介護施設の様子をリアルタイムで把握することが可能
- 独自のAI技術により、利用者の状態変化を即座に検知
- 通知や映像を活用し、スタッフ間のコミュニケーションや情報共有に寄与
<導入企業の課題>
- リアルタイムで介護施設の状況を把握できるシステムがない
- スタッフが利用者の異常状態を見落とすリスクがある
- 新規入所者の傾向や動き方を把握するのが困難
<導入後の効果>
- 異常状態を即座に察知し、迅速な対応が可能に
- 日々のケア業務の品質向上につながる
- 新規入所者のアセスメントが効率的に行えるように
千葉県にある住宅型有料老人ホーム カイト浦安では、HitomeQを活用して介護業務をDX化しています。
効果のわかりやすい例として、利用者が転倒し痙攣を起こすという緊急事態が発生した際、HitomeQによる通知と映像で現場のスタッフが異常をすぐに把握し、1分以内に現場に駆けつけることができるようになったとのこと。
また、同システムは利用者が日常的に行う行動パターンや反応を観察することで、異常時の対応だけでなく、日々のケアプランの最適化にも寄与しています。
更に、施設見学の際にシステムの存在を説明することで、安心感を提供し、入居者の集客にも寄与しており、スタッフの採用面でも、作業効率やケアの質の向上により、働きやすい環境を提供できると評価されています。
事例⑥:睡眠見守りシステム「みまもり~ふ」
<「みまもり~ふ」の特徴>
- マット型の見守りセンサで、心拍や呼吸まで解析可能
- 利用者の睡眠状態や生体情報をリアルタイムで確認可能
- 睡眠の質(睡眠クオリティ)を評価し、介護プラン作成に活用
<導入企業の課題>
- 利用者の睡眠状態や生体情報を適切に管理、対応する手段がない
- 利用者の居住エリアとスタッフステーションとの距離があるため、確認に時間がかかる
- 自力で移動が難しい利用者や、ナースコールボタンを押すことが困難な利用者の状態を確認する手段がない
<導入後の効果>
- 職員の巡回・介助タイミングの判断が容易になる
- 遠隔から状態確認が可能になり、効率化と高品質な介護サービスが提供可能
- 早期介助が可能となり、夜間の巡視もスムーズに行える
テクノホライゾン株式会社が開発した「みまもり~ふ」は、見守りシステムの新たな可能性を示しています。
利用者の離床検知はもちろん、心拍や呼吸の確認、さらには睡眠の質まで解析できるこのマット型センサは、導入施設である医療法人白光の「シルバーヘルス一関」で実際に利用されており、介護の現場で大きな効果を上げています。
リアルタイムで睡眠状態や生体情報を確認できる「みまもり~ふ」は、職員が巡回・介助のタイミングを適切に判断するための強力なツールとなっています。
また、自力で移動が困難な利用者や、ナースコールボタンを押すことが難しい利用者の状態も遠隔から確認でき、介護サービスの質向上と効率化を可能にしています。
さらに、「みまもり~ふ」の利用により、早期に起き上がりの情報をキャッチし、早期介助が可能となります。
これにより、夜間の職員巡視もスムーズに行えるようになり、職員の負担軽減と共に、利用者の安心と安全を高める効果を発揮しています。
事例⑦:立位補助・移乗介助機器「Sara® Flex(サラ・フレックス)」
<Sara® Flexの特徴>
- シリコン製のレッグサポートによる高い安定性
- 機器の調整が不要で使用時の手間がかからない
- 利用者の昇降とレッグの開閉動作が電動
<導入企業の課題>
- 職員の腰痛予防という課題への対策
- 自力で立つのが難しい高齢者への支援
- 安全で自然な移乗・姿勢変更の必要性
<導入後の効果>
- 職員の腰痛の軽減
- 安全で自然な移乗・姿勢変更の実現
- 高齢者の自立支援
立位補助・移乗介助機器「Sara® Flex(サラ・フレックス)」は、座位から立位、または立位から座位へと、自然な動作で姿勢を変えることが可能な製品です。
具体的な導入例としては、「社会福祉法人永寿荘」が挙げられます。この法人では、介護職員の腰痛予防と高齢者の自立支援を目指し、「Sara® Flex」を活用しています。
職員研修を通じて、”持ち上げない介護”という考え方を定着させる一方で、介助器具の導入にも積極的に取り組んでいます。
その結果、介護職員の腰痛軽減と、安全で自然な移乗・姿勢変更が可能となり、介護の質が向上しました。
|介護DX事業に挑戦する注目のスタートアップ企業3選
昨今、人口高齢化と社会問題が複雑に絡み合い、介護業界の求められる役割が増大しています。
そこで挑戦するのが、介護DX(デジタルトランスフォーメーション)事業です。
ICTの力を活用し、介護の質の向上や人手不足の解消に取り組む革新的な企業たち。
その中でも特に注目を集めている3つのスタートアップ企業を取り上げます。
これらの企業がどのような技術やサービスを用いて、介護業界に新風を吹き込んでいるのか、その概要とともに詳細を紐解いて参りましょう。
1.介護を科学的に追及|Rehab for JAPAN株式会社
<Rehab for JAPAN株式会社の特徴>
- 科学的根拠に基づいたSaaS型介護ソフトウェア「Rehab Cloud」を開発
- 膨大な介護データを活用したエビデンス創出とその提言活動
- 新型コロナウイルス感染症の影響下におけるオンラインリハビリ実証実験
Rehab for JAPAN株式会社は、科学とテクノロジーを駆使して介護業界の課題に挑む革新的なスタートアップです。
同社が開発する「Rehab Cloud」は、介護事業所がタブレットを利用して利用者情報を容易に記録・共有できるように設計されており、ケアの質の向上と事業所の売上拡大を同時に実現することを目指しています。
また、同社は14万件を超える高齢者データを保有。
そのデータを基に高齢者が健康になる要因を解析し、科学的なアプローチで次世代のサービス開発を進めています。
政府や政党への提言活動にもこのデータを活用し、社会全体の高齢者健康支援に寄与しています。
そして、新型コロナウイルス感染症の影響下での取り組みとして、オンラインリハビリの実証実験を行っています。
介護予防と健康維持につながるこのプロジェクトは、現在も社会実装への道筋を模索しています。
Rehab for JAPAN株式会社は、科学とテクノロジーによる介護の質向上を追求。
そのビジョンは、日本が直面する超高齢社会の課題に対する新たな解答と言えるかもしれません。
2.Forbes Japan誌も注目|株式会社スマートチェックアウト
<株式会社スマートチェックアウトの特徴>
- 歯科医院院向けの決済システムで圧倒的なシェアを保有
- スマホアプリで予約から会計までを可能にするサービスを開発
- DX化を推進し、業務効率化と患者満足度の向上に貢献
株式会社スマートチェックアウトは、歯科医院院向けの決済システムで圧倒的なシェアを誇ります。
そのサービスは、スマホアプリで予約から会計までを可能にし、歯科医療業界におけるDXの先駆者と言えるでしょう。
Forbes Japan誌の注目の的となるほどの革新的な取り組みを行い、業界をリードしています。
また、将来的には自費や予防医療にも焦点を当て、PHR(パーソナルヘルスレコード)実現へ向けての開発も進行中です。
これらの取り組みにより、医療業界のDX化を推進し、煩雑な事務作業から医療スタッフを解放する一方、患者にとってもより便利で快適なサービスを提供できることを目指しています。
このようなスマートチェックアウトの取り組みは、歯科医療業界だけでなく、高齢化社会を迎える日本全体の医療・介護業界にとっても大きなインパクトをもたらすことが期待されています。
3.最も負担の「排泄業務」をDX化|株式会社aba
<株式会社abaの特徴>
- 介護現場の負担を軽減する先端技術開発に注力
- 「Helppad」なる排泄モニタリングシステムを提供
- 技術でヒューマンケアの質向上と労働環境改善を目指す
株式会社abaは、介護現場で最も負担が大きいとされる排泄ケアの問題解決に挑戦しているスタートアップ企業です。
現場で直面する具体的な問題点から解決策を模索し、最終的には介護業界全体の課題解決に貢献することを目指しています。
介護職員が実感する問題の一つが、排泄ケアに要する時間と労力です。
例えば50人の利用者を抱える施設であれば、一日に約15時間も排泄ケアに費やす計算となります。
このため、多くの介護職員が排泄ケアの負担軽減を強く望んでいます。
そこで株式会社abaが開発したのが、排泄モニタリングシステム「Helppad」です。
この製品は、ベッドに専用シートを敷くことで排泄パターンを自動的に把握することが可能となります。
介護職員が排泄の有無を確認するために、オムツを開ける必要がなく、時間と手間を大幅に削減することができます。
このような取り組みにより、株式会社abaは、介護職員の負担軽減という直面する課題を解決するだけでなく、施設全体の効率化や、利用者の生活の質向上にも寄与しています。
さらに、介護職員の退職率を下げ、人手不足問題の改善にもつながることが期待されています。
現在は施設向けの提供が主ですが、今後は在宅介護で苦労されている個人向けの提供も計画されています。
以上のように、株式会社abaの介護DXの取り組みは、現場の課題解決を具体的に進めるとともに、介護業界全体の質的な向上を目指す、極めて有望な事業です。
|まとめ:介護業界は厚労省も補助金などを出し注目の業界へ
本記事では、「介護DX」という新たな概念と、それが介護業界の課題解決にどのように寄与するのかについて詳しく解説しました。
人口高齢化に伴う介護ニーズの増大や介護職員の人手不足は、テクノロジーの活用で解決を見込めます。
また、スタートアップ企業による革新的な取り組みも、この分野の発展に大いに貢献しているのです。
しかしながら、こうした技術革新が持続するためには、企業だけでなく一人ひとりが新たな技術を理解し、それを積極的に取り入れる意識が重要です。
介護業界だけでなく、社会全体が介護DXを進めることで、より良い高齢社会を構築することが可能になります。
この記事が、皆様の介護DXに対する理解を深める一助となり、そして今後の介護サービスの利用や、介護業界への関与、さらには社会全体の高齢化対策に役立てられることを願っています。