コロナ禍をきっかけに、観光業界では「メタバース観光」という新しい観光スタイルが誕生し、現在も注目を集めています。
これは実際に足を運ぶことなく各地の観光スポットを体験できる、まったく新しい形の観光です。
しかし、多くのメタバース未経験の方は、メタバースをどのように活用するのか、どんな体験ができるのか、どんなリスクがあるのか、数々の疑問を持つことでしょう。
そこで本記事では、メタバース観光の概念、そのメリットやデメリット、成功している具体的な事例を紹介します。
この記事を読めば、メタバースがいかに観光業界に革新をもたらすのか、時間や場所の制約を超えるメタバース観光の魅力や可能性について深く理解できるでしょう。
|メタバース観光とは
まず「メタバースってそもそも何?」についてざっくりと解説します。
メタバースは、簡単に言うとCGで作られたインターネット上の仮想空間のことです。
ユーザーは自分の分身となる「アバター」を通じてこの仮想空間に入り、他のユーザーとチャットやゲーム、仕事など多様な活動に参加できます。
メタバースの大きな特徴は、リアルな三次元映像と多人数同時接続により、まるで現実世界と錯覚するような没入体験にあります。
現実世界の制約から解放され、新しい社会的、文化的体験を提供するメタバースは、インターネットの進化形として今注目されています。
以下の記事でメタバースについて詳しく解説しています。
メタバースを活用した観光とは
メタバースを活用した観光とは、仮想現実の技術を使って、実際に訪れることなく全国各地の観光地を旅行できる体験です。
ユーザーは自宅にいながらアバターを通して歴史的名所や自然の景観に触れ、実際にその地を訪れたような感覚を味わえます。
移動が制限されたコロナ禍において一気に注目度を増しました。
現在でもリアル旅行とのコラボレーションなど、新たな観光振興施策として活用され、世界でも盛んに開発が進められています。
|メタバース観光のメリット
ここからは、メタバース観光のメリットや魅力について以下4つの観点から詳しく説明します。
・時間や場所、情勢、身体的事情などを問わず誰でも参加できる
・鑑賞するだけでなくリアルな体験ができる
・実際の旅行よりも低価格で体験できる
・非現実的な世界を観光することもできる
時間や場所、情勢、身体的事情などを問わず誰でも参加できる
メタバース観光は、オンライン環境さえあればどこからでも参加できるのが最大のメリットです。
現実世界の社会情勢や自分の身体的事情も関係ありません。
リアル旅行のように時差を感じることもなく、好きな時に行きたい観光地を訪れることができます。
鑑賞するだけでなくリアルな体験ができる
メタバース観光では、単なる鑑賞を超えたリアルな体験が可能です。
動画でのプロモーションと違い、参加者がアバターとして仮想世界を自由に探索し、他の参加者や現地の人々と交流できます。
このインタラクティブな体験は、現地の魅力を肌で感じることができ、実際に訪れたくなる効果も期待できます。
実際の旅行よりも低価格で体験できる
経済的な負担が少ないのも大きな魅力です。
リアルで旅行すると、交通費や宿泊費をはじめ、大きな出費が伴います。
メタバースでの旅行ならリアル旅行と比べると格安で楽しめます。
時には無料ツアーが開催されることもあり、費用をかけずに各地の名所を観光できます。
非現実的な世界を観光できる
メタバース観光は、リアルな観光地だけでなく、幻想的な仮想世界を旅できるのも魅力です。
メタバースには、デジタルで創造されたファンタジーの世界やアニメの世界を舞台にしたものもあります。
現実世界では体験できないような圧倒的非日常感を味わうことができ、メタバース空間にしか存在していない世界を知ることができます。
|メタバース観光のデメリット
ここまでメタバース観光の魅力を見てきましたが、失敗を避けるためにはデメリットを考慮しておく必要があります。
考えられるデメリットは以下の3つです。
・導入コストがかかる
・運用コストがかkる
・IT知識が必要
導入コストがかかる
メタバース観光を導入する際のデメリットの一つは、初期費用がかかる点です。
メタバース環境を構築するためには、VRやARなどの技術を利用するためのハードウェアとソフトウェアの購入及び開発が必要になります。
また、仮想空間内での観光コンテンツを作成するためには、デザインやプログラミングなど高度な専門スキルが求められるため、外部の専門家に依頼する費用も必要になるでしょう。
これらの初期費用は、特に小規模な観光業者や地方自治体にとっては大きな負担になる可能性があります。
メタバース導入の際には、これらのコストについて十分な計画と予算の準備が必要になります。
運用コストがかかる
メタバース観光のもう一つのデメリットは、継続的な運用コストがかかることです。
メタバース環境の維持とアップデートには、定期的なメンテナンスや日々の運用管理が必要です。
例えば、仮想空間内でのイベント企画運営、ハードウェア・ソフトウェアの更新、参加者とのコミュニケーション、ユーザーサポートなど多岐に渡ります。
初期費用だけでなく、運用コストの見積もりも忘れずに行いましょう。
これら初期費用、運用コストは、リアルの観光振興施策でも同じことが言えます。
それぞれの費用対効果を比較し、シナジー効果も加味しながら検討することが重要です。
IT知識が必要
メタバース観光の導入には、IT知識が不可欠となります。
先に述べた通り、開発や運用に専門的なスキルが必要なのはもちろんですが、加えてメタバースのセキュリティリスクへの対処も考慮すべき点です。
IT知識を持ったセキュリティ人材が不在だと、データ漏洩やサイバー攻撃などのリスクが増大し、常にリスクと隣り合わせとなります。
さらに、メタバースを利用する側にも一定のIT知識、ITに対する心理的ハードルが低いことが求められます。
観光業の顧客層にはITに疎く、アレルギー反応を示す方もいるでしょう。
そのため、メタバースの利用者がITに精通している人に限定される可能性があり、幅広い層へどのように訴求するかが課題となります。
メタバース観光を成功させるためには、運営側のIT人材の確保、利用者側のIT教育やわかりやすい動線設計が重要なポイントとなるでしょう。
|メタバースを観光振興やサービスに活用した事例
それでは実際のメタバース観光の事例を見ていきましょう。
京都市:京都館PLUS X
出典:https://www.kyotokan.jp/vr-kyotokan/
京都市は「京都館PLUS X」というメタバース空間を開設し、京都の伝統文化や魅力をバーチャル世界で紹介しています。
ここでは、伝統工芸や文化、イベントなど、京都の魅力がVR技術で生き生きと展示され、誰でもアクセスできます。
京都市は、市が直面した京都館の閉館問題やコロナ禍の影響を背景に、新たな情報発信方法としてメタバースの活用を選択しました。
このバーチャル空間は、国内外の人々が交流し、京都の文化や工芸品を体験・購入できる新たなコミュニティの場となっており、京都の魅力を広く発信する有効なツールとなっています。
「京都館PLUS X」については以下の記事で詳しく解説しています。
あしびかんぱにー:バーチャルOKINAWA
出典:https://virtualokinawa.jp/
株式会社あしびかんぱにーが開発した「バーチャルOKINAWA」は、2021年4月に登場した、沖縄の美しい自然や文化を体験できるメタバースです。
このメタバースでは、国際通り商店街や、ビーチ、首里城など、沖縄の代表的な観光地を再現しています。
街並みや景色をただ鑑賞するだけでなく、魚のエサやり体験や、アーニー・パイル国際劇場でのコンサート、三線ライブ体験など、多彩なアクティビティも用意されています。
2024年で3周年を迎えますが、バーチャルフェスやバーチャル飲み会など、現在でも様々なイベントが企画され盛り上がりをみせています。
「バーチャルOKINAWA」は、多くの人々を引き付け、沖縄の魅力をバーチャル空間で幅広く伝えています。
ANA:ANA GranWhale
出典:https://www.ana-granwhale.com/
「ANA GranWhale」は、ANAが提供するバーチャル旅行プラットフォームです。
バーチャル空間内で、360度のパノラマ映像を通じたリアルな旅行体験が可能で、特に京都の一部地域では「都市デジタルツイン」のプロジェクトデータが活用されています。
これにより、実際の都市の風景や特徴を忠実に再現したバーチャル空間を体験できます。
Skyモールでは、実際の旅先のショッピング体験が可能。
ANAマイルを利用して、アプリ内のアバター衣装などのデジタルアイテムの購入も楽しめます。
このサービスは、バーチャル体験を通じて、実際の旅行への関心を高める新しい観光プロモーションの形を提案しています。
「ANA GranWhale」については以下の記事で詳しく解説しています。
琴平バス:メタバースバスツアー
琴平バスは、「KOTOBUS」として以前からオンラインバスツアーを積極的に行っていました。
観光地の景色を動画で見ながら、現地のお話を聞いたり、他の参加者たちとコミュニケーションの取れるサービスです。
最近では、メタバース旅行をスタートし、ご当地VTuberとコラボするなど
メタバース時代のバス旅行として「メタバス」を提供しています。
ライブ中継動画と、ご当地の食べ物が自宅に届き食事を楽しめるツアーがメインとなっています。
大阪府:バーチャル大阪
出典:https://www.virtualosaka.jp/
バーチャル大阪は、大阪府と大阪市が共同で開発した革新的なメタバースプラットフォームです。
このプラットフォームを通じて、ユーザーは大阪の有名なランドマークや名所を探索し、写真撮影やアスレチックなどのアクティビティに参加できます。
大阪城や道頓堀、海遊館など、大阪の魅力をデジタル世界で再現。
現在は民間コンソーシアム「未来大阪プロジェクト」が運営を行い、技術革新と文化の融合が進んでいます。
2025年開催の大阪万博を控え、バーチャル大阪の開発もますます加速させており、新しい形で大阪の魅力を世界に発信しています。
「バーチャル大阪」については以下の記事で詳しく解説しています。
|メタバース観光の将来性
メタバース観光の将来性は、テクノロジーの進化と社会的ニーズの変化を反映し、大きな可能性を秘めています。
総務省の「令和5年版 情報通信白書」によると、2022年度の日本のメタバース市場は1,825億円となる見込みで、2026年には1兆円を超えると予測されています。
この急成長は、メタバースの新たなデジタル体験の需要が急増していることを示しています。
さらに、日本政策投資銀行が発表した論文「XR・メタバースは観光振興にいかに活用できるか」によると、メタバースは観光業に新たな価値を創造するとされ、今後も地方自治体や観光業者は、積極的にメタバースを観光振興に取り入れていくと予想されています。
VR技術の進化とともに、メタバース観光の価値もますます高まっていくことでしょう。
一方で、メタバースだけではリアルな観光体験を完全に代替することはできません。
リアルな観光体験の価値は依然として重要であり、リアルとバーチャルをいかに連携させ、シナジーを作るかが重要なカギとなります。
そうすることで、観光業はより豊かな体験価値を訪問者に提供し、地域産業の活性化につながる効果が期待できるでしょう。
以下の記事でメタバースの未来予測について詳しく述べています。
|まとめ
いかがでしたか?
本記事は、メタバース観光の魅力と可能性、そしてそのメリットとデメリットについて詳しく解説しました。
メタバース観光は、さまざまな制約を超えて、誰もが容易に離れた観光地の文化や歴史を体験できる新時代の観光といえます。
今回ご紹介した事例からも、メタバースをどのように活用できるかのヒントを見つけることができたのではないでしょうか。
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