近年、人工知能(AI)の進化が著しく、その中でも大規模言語モデル(LLM)の登場が注目を浴びています。
LLMは、人間のように文章を生成し、言語の理解を行う能力を持つAIシステムです。
その驚異的な応用範囲と高度な自然言語処理能力により、様々な分野での革命が期待されています。
本記事では、LLMの基本的な概要から仕組みや種類、そして克服すべき課題についても探っていきますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
目次
|LLM(大規模言語モデル)とは
LLM(大規模言語モデル)は、自然言語処理のための人工知能技術であり、テキストデータから言語のパターンや意味を学習して、文章の生成や理解を行う能力を備えています。
深層ニューラルネットワークをベースにしており、数十億以上のパラメータを持つ巨大なモデルが使われることがあります。
LLMの学習には、大量のテキストデータを用いて行われます。
モデルは、単語やフレーズの分散表現を学習し、それらの意味的な関連性を捉えることで文章の理解を強化します。
具体的には、単語同士の共起関係や文脈情報を考慮しながら、単語のベクトル表現を生成します。
また、学習された表現を用いて様々な言語タスクを遂行します。
文章生成では、与えられた文脈に基づいて次の単語を予測し、文章を逐次生成します。質問応答タスクでは、質問文から適切な回答を抽出したり生成したりします。
言語モデルとは
言語モデルとは、人間の言語を単語の出現確率を用いてモデル化したものです。
これを使って、次にどんな言葉が続くかを予測したり、文章全体の確率を計算したりすることができます。
例えば、「今日は晴れです」という文の確率は、「今日は晴れ」に「です」が続く確率と、「今日は」に「晴れ」が続く確率と、「今日」が文頭に出現する確率の積で表されます。
言語モデルにはいくつかの種類があり、例えば、直前のn個の単語から次の単語を予測する「n-gram言語モデル」や、単語の連続的な表現(埋め込み)を使用して、単語の次にどの単語が続くのかを予測する「ニューラル言語モデル」などがあります。
|LLM(大規模言語モデル)の仕組み
LLMは大量のテキストデータで学習した言語モデルで、特に「計算量」「データ量」「モデルパラメータ数」を巨大化させることで、より正確で自然なテキスト生成が可能になります。
LLMは、事前学習と事後学習の2段階で学習します。
事前学習では、インターネットから収集した大規模なテキストデータセットを用いて、一般的な言語知識を獲得し、事後学習では、特定のタスクに対応するために、事前学習済みモデルをさらに学習します。
LLMは、主に深層ニューラルネットワーク(DNN)という技術が使われており、入力されたテキストデータを数値化して特徴を抽出し、目的のテキストを生成します。
|LLM(大規模言語モデル)の種類
LLMが発展するにつれ、現在も様々なモデルが生み出されています。
どのような種類があるのか、ここでは5つご紹介していきましょう。
Transformer
「Transformer」は、自然言語処理のための深層学習モデルです。
Attentionという仕組みを使って、入力データと出力データの関係性を学習します。
EncoderとDecoderという二つの部分からなり、Encoderは入力データを特徴量に変換し、Decoderは特徴量をもとに出力データを生成します。Attentionだけでデータの関係性を学習するので、高速かつ正確な自然言語処理ができ、大規模言語モデルの基礎となるモデルです。
GPT
「GPT」は、大規模なテキストデータを学習して自然な文章を生成することができる大規模言語モデルの代表的な言語モデルです。
「Transformer」を基にしたモデルで、Generative Pre-trained Transformerの略称です。
入力された単語や文に対して、次に来る単語や文の確率を計算することで、文章を生成することができます。
GPTは、GPT-1からGPT-4までのバージョンがあり、パラメータの数や学習データの量が増えるごとに性能が向上しています。
PaLM
「PaLM」は、Googleが開発した大規模言語モデルです。
Pathways Language Modelの略で、テキストデータを学習して文章を生成するだけでなく、画像や音声などのマルチモーダルなデータも扱えるようになりました。
PaLMは、入力されたデータに対して、最適な出力を選択するために、複数のパスウェイを生成し、それぞれのパスウェイにスコアを付けることで、文章を生成します。
LaMDA
「LaMDA」は、Googleが開発した会話型の大規模言語モデルです。
Language Model for Dialogue Applicationsの略で、GPTやPaLMと比べて、より会話に特化した大規模言語モデルであり、自然な対話を生成することができます。
LaMDAは、入力されたテキストに対して、文脈や話題に応じた返答を生成します。
LaMDAを利用したサービスとして、「Google Bard」という詩や物語を生成するサービスがあります。
LLaMA
「LLaMA」は、Meta AIが開発した大規模言語モデルです。
Large Language Model Meta AIの略で、さまざまなサイズのモデルが学習されています。
LLaMAは、1.4兆個のトークンに対して訓練されており、20種類の言語に対応しています。
また、自然言語処理や自然言語生成などのタスクに応用できる汎用的な大規模言語モデルで、Meta AIの基盤モデルとして提供されています。
|LLM(大規模言語モデル)を活用したサービス
ここでは実際にLLMを活用した有名なサービスを3つ解説していきます。
ChatGPT
「ChatGPT」は、OpenAIが開発した人工知能チャットボットです。
Chat Generative Pre-trained Transformerの略で、大規模言語モデルのGPT-3.5やGPT-4を利用しています。
ChatGPTは、ユーザーが入力した質問に、まるで人間のように自然な対話形式で答えるチャットサービスとなっています。
その高い回答精度が話題となり、利用者がどんどん増加しています。
プログラミングや教育などの分野で応用する可能性も広がっており、幅広い分野への活用が期待されています。
また、日本語にも対応しており、手軽に利用することができるのも特徴です。
Bard
Googleが開発した会話型人工知能「Bard」は、ユーザーが入力した質問に対して自然な文章で回答するサービスです。
Bardという名前は、Google検索とLaMDAの組み合わせから来ています。
LaMDAは、Googleが2021年に発表した言語生成AIで、多様な話題に対応できるように設計されています。
Bardは、LaMDAをベースにした対話型AIで、日本語を含む40以上の言語で提供されています。
現在は試験運用版が一般公開されており、誰でも利用できます。
Bardの特徴としては、検索エンジンと違って、回答内容を踏まえてさらに質問できることです。
これにより、話の深掘りが可能となります。
Bing AI
「Bing AI」は、Microsoftが開発した検索エンジン型のAIチャットボットです。
OpenAIのGPT-4を用いた自然言語処理技術を用いています。
これにより、ユーザーの質問を理解し、関連性の高い情報を提供することができます。
Bingのブラウザ上で「チャット」を選択することで利用できます。
Bing AIは、検索、ブラウジング、チャットをひとつにまとめた統合的体験を実現し、ウェブ上のどこからでも呼び出せるAIコパイロットとして機能しています。
特徴としては、回答内容を踏まえてさらに質問できることや、最新の情報を踏まえた回答ができることなどがあります。
教育やビジネスなどの分野の応用などに期待されています。
|LLM(大規模言語モデル)で実現すること
LLM(大規模言語モデル)の普及によって実現すると考えられることは様々な業界、分野に及びます。
こちらでは、その具体的な事例として以下の内容をそれぞれ紹介していきます。
- 24時間体制でのサポートが可能に
- 文章の要約
- マーケティングサポート
- 教育学習でのサポート
- プログラミングのサポート
24時間体制でのサポートが可能に
LLMは人間とは違い、24時間365日休み無く働くことが可能です。
そのため、通常であれば土日祝や夜間といった顧客からの問い合わせに応えることが難しい時間帯であっても、的確で迅速な返答が実現するのです。
24時間対応のカスタマーサポートは人件費などの面で維持が難しいですが、LLMを活用することで安価な運用が可能となります。
チャット欄に入力されたユーザーからの質問に対して、LLMが自動で返答するため、通常のサポート業務においても大幅な人員削減が実現するでしょう。
また、人間でなければ解決できない複雑な問題、新しい問題に対してのみ、電話での対応を案内することも可能。
こうすることで、少人数のカスタマーサポート体制で最大限の効果が期待できるのです。
社内のマニュアル業務などに応用させることもできますので、社内教育に必要となる時間も短縮できるはず。
LLMの活用によって、顧客満足度の向上から、生産性や売上の向上といったことが期待できるのです。
文章の要約
LLMは文章の生成を特に得意とするAIです。
大量の文章を瞬時に書き上げることに注目が集まりがちですが、実は「要約」という面でも大きな効果を発揮します。
知りたい情報が記載されている記事をインターネット上で見つけた時、時間がない場合は全ての箇所を読み込んでいる暇はありません。
そうした場合においても、LLMへ記事の全てを読み込ませるだけで、全体を要約した文章を瞬時に生成してくれるのです。
現代は膨大な情報が氾濫しており、要点を確実に理解することが難しい状況になりつつあります。
しかし、そうした情報を整理、理解、把握していることが求められるのです。
LLMを活用すれば、日々流れるニュースや経済情報の要点だけをピックアップした状態で理解できます。
また、会議やプレゼンの報告書作成、論文の要点をまとめるなど、様々な利用方法が想定できるでしょう。
長文の中から要点を見つけ出す作業は意外に難しく、読書経験を重ねることでしか手に入りにくいものです。
そうしたスキルがLLMのサポートによって手に入るため、大幅に時間短縮が実現するでしょう。
マーケティングサポート
現在はほとんどの人がスマホやパソコンなど、インターネットへアクセスできる端末を一つ、もしくはそれ以上所有していることが当たり前の時代です。
そうした状況において、市場調査やユーザー行動の分析、ニーズの把握といったマーケティングは年々複雑化しているといっていいでしょう。
これまでAIはゼロから何かを生み出す作業は難しいと考えられてきました。
しかし、LLMは膨大なデータを読み込み、内容を分析する作業を得意としています。
そのため、LLMに市場動向やユーザー属性、ターゲットといった必要な情報を読み込ませ、データを分析させることで必要となるマーケティング施策が導き出せるのです。
LLMの役割は施策の提案だけに留まりません。
導き出したアイデアからユーザーへ訴求するための広告文、商品名、商品イメージ、さらにはブランドや商品ロゴといった分野にも対応するのです。
まさにゼロからイチを生み出すといっても過言ではありません。
注意しなければいけないポイントとしては、「LLMへ十分なデータを提供する」ことです。
学習データが少ない場合、本来のターゲットとはズレた施策が導き出される可能性が高くなります。
精度を向上させるためには、膨大なデータが必要になることは把握しておきましょう。
教育学習でのサポート
これまで、学校などの教育機関では教師1人が複数人の生徒を相手に授業を進め、それぞれの進捗状況を把握することが一般的でした。
しかし、この形式は教師の負担が大きく、長時間労働に繋がることはもちろん、生徒一人ひとりに対する学習フォローが限られるといったデメリットを含んでいます。
教育分野においても、各生徒の「学習進捗」や「理解度」をLLMへ読み込ませることで、生徒に合わせたオリジナルの学習コンテンツを瞬時に生成できます。
補足説明から応用問題の提供にも柔軟に対応できるため、教師のサポートは最小限にしながら効率の良い学習環境が実現するのです。
採点についてもLLMが自動で進められるため、教師は生徒を理解し、精神的な面での成長を支えるといった人間ならではの役割が求められるかもしれません。
プログラミングのサポート
LLMは多種多様な言語を扱うことが得意なAIです。
日本語はもちろん、英語をはじめとした世界各国の言語にも対応しています。
対応する言語は人間が日常的に使用しているものだけではなく、プログラミング言語にも対応しているのです。
そのため、プログラミングの知識が乏しい人であっても、LLMのサポートを元にサイトやアプリの構築が実現するのです。
Excel関数といった作業にも対応しているため、LLMへ実現したい動作を日本語で質問するだけで、適切な数式が提示されます。
ユーザーはそれをコピペするだけでいいため、これまで学習に必要としてた時間を大幅に削減できるのです。
また、エラーが出た場合においても、LLMへコードを読み込ませるだけで必要な修正箇所、エラー箇所を検出します。
このように、プログラミング言語に精通した方はもちろん、そうでない方に対するサポートも可能となるのです。
|LLM(大規模言語モデル)の課題
急激に進化、成長しているLLM分野ですが、まだまだ課題も残っています。
ここでは主な課題を5つ、それぞれ順番に解説していきます。
種類によって精度に差がある
LLMは、言語表現の確率を予測する技術ですが、その種類により、精度に差があります。
例えばBERTは双方向の文脈を考慮できるので、質問応答や文章要約に適しています。
一方、GPTは一方向の文脈しか考慮できないので、文章生成や対話に適しています。
また、LLMの精度は、学習データの質や量にも依存します。
LLMの種類と精度の課題として、タスクやデータに合わせたモデル選択や学習方法の改善が必要です。
言語によって精度に差がある
LLMは、大量のデータとディープラーニングで構築された自然言語処理モデルで、テキスト生成や質問応答などのタスクに使えます。
しかし、LLMの精度は、言語によって差があります。
英語や中国語などの主要な言語は、データが豊富ですが、日本語やアフリカの言語などのマイナーな言語は、データが少ないか品質が低いです。
このため、LLMの精度も低くなります。マイナーな言語のデータ収集や品質向上などが今後の課題の一つです。
ハルシネーションを起こす危険がある
LLMは、テキスト生成時に誤った情報や現実と矛盾する情報を出力することがあります。
これをハルシネーション(幻覚)と呼びます。ハルシネーションの原因は、LLMが現実世界の事実を十分に理解していないことや、学習データに偏りやノイズがあることです。
ハルシネーションは、LLMの正確性や信頼性を損なうだけでなく、倫理的や社会的な問題も引き起こす恐れがあります。
技術の向上やデータの品質管理が重要になります。
機密情報や個人情報流出の危険がある
LLMは、テキスト生成時に学習したデータに含まれる機密情報や個人情報を暴露することがあります。
これは、LLMがデータの内容や意味を十分に理解していないことや、データの保護や管理が不十分であることが原因です。
機密情報や個人情報の流出は、LLMの利用者や提供者に法的責任を負わせるだけでなく、企業の信用や顧客の信頼を損なう恐れがあります。
LLMの課題は、データの技術的対策や法的規制が必要であるということです。
計算コストが高額
LLMは、自然言語処理のタスクを自動化する技術ですが、計算コストが高額です。
トレーニングには高性能なコンピューターや大量の電力が必要であり、環境や経済に大きな負担を与えます。
例えば、GPT-3という有名なLLMは、約1000億個のパラメーターを持ち、トレーニングに約130億円のコストがかかったと推測されています。
LLMのトレーニングは環境や経済に非常に大きな負担を与えてしまうのです。
|LLM(大規模言語モデル)の将来性
様々な課題もありますが、ここではLLMの今後、将来性について考えてみましょう。
LLM自体の需要は今後も増加する
LLMの需要は、今後も増加すると予想されます。
その理由として以下の3つが挙げられます。
①LLMは「多言語」に対応できる可能性が高い:英語や中国語などの多言語データを使ったLLMも開発されており、国際的なコミュニケーションやビジネスにおいて、LLMの活用が期待されます。
②高い性能を持っている:例えば、GPT-3は、約1000億個のパラメーターを持ち、人間の知識量や文書読解力を超えると言われています。これにより、LLMは、人間に代わって高度な知的作業を行うことができます人間に代わって高度な知的作業を行うことができます。
③低いコストで利用できる可能性が高い:例えば、NECのLLMは、パラメータ数を130億に抑えたことで、消費電力を抑制し、クラウドやオンプレミス環境での運用が可能になりました。これにより、LLMは、幅広いユーザーにとって手軽に利用できる技術になります。
現状の課題をどれだけ解消できるかがキーになる
LLMの将来性は、現状の課題をどれだけ解消できるかがキーになると言えます。
その理由は、例えば以下の通りです。
①LLMは、言語ごとの精度の差がある:大規模なデータセットが豊富な言語では高性能ですが、日本語などではまだ不十分です。多言語対応やデータセットの拡充が必要です。
②倫理的・社会的なリスクをもたらす可能性がある:人間の会話を模倣することができますが、偏見や差別、虚偽や不適切な発言を生成することもあります。LLMの透明性や監視性、責任性の確保が必要です。
③コンピューティングリソースの消費が膨大:GPT-3は、約1000億個のパラメーターを持ち、学習に数百万ドルのコストがかかりました。LLMの効率化や最適化が必要です。
|まとめ
以上、本記事では、LLM(大規模言語モデル)とは何か、どのような仕組みで動いているかから実際の種類と活用事例、そして課題について解説しました。
LLMは、自然言語処理のタスクを自動化する画期的な技術ですが、同時に倫理的・社会的なリスクやコンピューティングリソースの消費という問題も抱えています。
しかしそれでも、LLMは進化し続ける技術であり、まだまだ発展し続けることが予想されます。
今後もLLMの未来から目を離せません。