本記事では、販売業をしているEC担当者で、メタバースECに興味関心がある方向けに
・バーチャルショップ・メタバースECとは
・バーチャルショップ・メタバースECのメリット
・バーチャルショップ・メタバースECのデメリット
・制作方法
・バーチャルショップ・メタバースECの活用事例8選
などの「EC」に対する疑問を解説します。
本記事を読めば、メタバースECやバーチャルショップがどういったものか?どのようなことが実現できるか?がよくわかる状態になりますので、メタバースECで出品するこのメリット・デメリットが知りたい、また開設方法が知りたい方は是非最後までご覧ください。
目次
|バーチャルショップ・メタバースECとは

そもそもバーチャルショップ・メタバースEFCとはなんでしょうか。
ここからはメタバース・バーチャルショップ・メタバースという言葉に注目して解説していきます。
そもそもメタバースとは
メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間のことを指します。
大きな特徴として、多人数が同じ仮想空間内に入り、その中ではアバターと呼ばれるもう一人の自分を操作しながら、空間内を自由に行動することが可能です。
メタバースの世界では、従来のゲームとは異なり、アバター行動の制約が無く、基本的には現実世界同様、自由に動くことができます。
アバターの行動に制約が無いことから、ゲームやファンイベントなどの娯楽はもちろん、展示会やオフィスなどのビジネス利用などが考えられ、様々な可能性が広がっています。
また、VR(仮想現実)やAR(各超現実)などの技術を活用することで、メタバース上にあたかも自分がいるような感覚を共有することも可能です。
メタバースについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
メタバースのはじめかたは簡単!登録の手順やおすすめのアプリを紹介
バーチャルショップとは
バーチャルショップはオンラインショップを3DCGで構築し、接客することで誰でもオンライン上で来店可能な状態にすることを指します。
「実店舗とECの中間」にあたる存在で、オンライン上にあるからこその魅力があり、アイテムの動画がみれるなど自由度が高いものとなります。
スタッフはアバターを介してユーザーとコミュニケーションを取ることもでき、あたかも実際の店舗・ショールームに来店したかのような体験を、ユーザーに提供することができます。
3D空間の行動に慣れたZ世代や若い子供たちにとって、このような購買体験は既存のECよりもはるかに優れており、CVが期待できます。
メタバースECとは
メタバースECとは3DCGで構築したオンラインショップを既存のメタバースサービスに出店することを指します。
既存のメタバースサービスの代表的な例としては
・Roblox
・Fortnite
・VRChat
・Rec Room
・Decentraland
などが挙げられます。
上記のメタバースに出店する理由は、サービス上に多くのユーザーが日常的に滞在しており、当該メタバース上に出店することで、ユーザーが店舗に来店してくることを期待できるからです。
また、ユーザー間の交流(マルチプレイ機能)・通話機能が既存のメタバースサービスにデフォルトで搭載されている場合は、コストをかけることなく、すぐにバーチャルストアをオープンすることができるのもブランドにとって魅力的な点です。
|バーチャルショップ・メタバースECのメリット

ここからは、バーチャルストア・メタバースECのメリットについて、詳しく解説します。
・固定費・初期構築費用などコストが抑えられる
バーチャル店舗の構築・出店に必要な費用はあくまでソフトウェア開発費が中心になります。
敷金・礼金や外装費・内装費、家賃・光熱費などが発生するリアル店舗の出店と比較すると、大幅にコストカットすることが可能です。
また、店舗拡大に際しても、3D空間のデータはコピー&ペーストも容易なので、2店舗目以降は初期費用も抑えて構築することができます。
ローコストでありながら、世界中の消費者に自社の商品をアピール・販売できるのが、バーチャル店舗の大きなメリットとなります。
・バーチャル空間ならではの演出ができる
既存のオンラインストアは2Dで構成されますが、バーチャルショップは3Dで店舗空間を設計・実装するため、実店舗と同等か、それ以上にブランドの世界観を表現できます。
3D技術・エフェクトを活用することできるため、表現の「幅」は実店舗以上となります。
また、アニメや映画の世界を実際の店舗で再現するのには多くの時間やコストもかかりますが、メタバースのバーチャル店舗であればリアルで行うよりコストを抑えてイベントなどの演出ができ実施が難しいような施策やイベントを開催することも可能です。
・高いCVRが期待できる
CVRとは、サイト・ページを訪れたユーザーがどれだけサイトが成果としている目的行動をしてくれたかを測る指標のことで、
一般的なECサイトにおけるCVRの目標値は、サイトに訪れたユーザー数に対して1~3%とされていますが、食品等を販売したメタバースECではCVR30%という驚異的な結果を残しました。
その要因として挙げられるのは、本取り組みは店員との会話が可能なメタバースで行われたことで、ユーザーは店員のおすすめ商品などを聞きながら、実店舗に近いかたちで物産品を購入できた点です。
結果として多くの商品が購入され、メタバースのポテンシャルと可能性を十分に確認できました。
・新規顧客の獲得ができる
既にユーザー獲得に成功しているメタバース空間上に出店できれば、自然流入によるユーザーの来店が期待でき、店舗の売上を向上させることができます。
2021年には大手アパレルブランド・ビームスがメタバース上に「ビームス 原宿点」のメタバース版を期間限定でオープンしたところ、実際に商品の売れ行きも想定以上だったとレポートしています。
また、ゲームの延長線上でショッピングが楽しめるため、現在のECやオフライン店舗で獲得できていなかったユーザー層の認知を獲得したり、ファンユーザーを獲得することが可能となります。
|バーチャルショップ・メタバースECのデメリット

ここからはバーチャルショップ・メタバースECのデメリットについて解説します。
既存の販売方法とは異なり、新しいサービスであるメタバースならではの問題なども上がってきます。その中でも大きいデメリットの二つを紹介します。
・通信データ容量が大きい
多くの場合バーチャルショップは3Dで構築されることから、通信されるデータの容量は大きくなります。
特にスマホの場合、描画処理や通信速度の遅延や容量の問題により、コンテンツのダウンロードに時間を要してしまったり、メタバース回遊時に動きが滑らかにならない、カクカクしてしまうといったことが発生し、結果的に顧客体験を損なってしまう可能性があります。
ただし、これらの問題は5Gによる通信の高速化や、GPU処理をクラウド上で行うクラウドレンダリングの進化により、長期的には解決に向かうと予測されます。
・既存のECの方が探しやすい
メタバースECは未だ登場したばかりのテクノロジーということもあり、商品検索機能など「特定の商品を見つけるのは既存ECの方が優れています。
ユーザーも既存のECの使い方に慣れているといった背景から、ユーザーが「欲しい商品が決まっている場合」は既存のネットショップの方が適している場合があります。
あくまでバーチャルショップやメタバースECはショッピング体験であり、実店舗同様にブランドの世界観を訴求し、ロイヤリティを高めるユーザーと商品の「偶然の出会い」をもたらすといった役割を担うものであり、既存のECとはユーザーに提供する価値が異なることを念頭に置いておきましょう。
|バーチャルショップ・メタバースECの制作方法・費用

ここからは、企業担当者の方が気になるであろう、バーチャルショップ・メタバースECを実際に運用する上での制作方法と、費用についての二点を詳しく紹介していきます。
制作方法
バーチャルショップやメタバースECは以下のような流れで制作していきます。
①3D空間の設計
②3Dデータ制作
③ソフトウェア開発
この3つに大きく分けて制作プロセスを解説していきます。
①3D空間の設計
「3D空間の設計」は、実店舗・ショールームを出店する場合と大きく変わりません。
実店舗と同じようにブランドの目指す顧客体験を、空間のレイアウト・デザインに落とし込んでいく作業になります。
②3Dデータ制作
2つ目のステップである「空間・商品の3Dデータ制作」ですが、3Dモデリングと3Dスキャンの二種類のやり方があります。
3DモデリングはMaya、Blenderなどを使い一から空間を制作する方法で、運用しやすさやユーザー体験、接客のしやすさにおいて優れています。
3Dスキャンは360度カメラを使い空間をスキャン・3D化して公開する方法で、初期費用コストにおいて優れています。
一概にどちらがより良いかは言えず、目的によって使い分けることが多いです。
③ソフトウェア開発
最後のステップ「ソフトウェア開発・ショップ開発」は、制作した3Dデータ群をWeb上やメタバース空間上に紐付け、ユーザーが来店・回遊できる状態に仕上げていく作業になります。
メタバースECであれば、データのアップロード用件(データ形式、データの容量など)がプラットフォームごとに異なるため、制作した3Dの空間データなどをプラットフォームに合わせていくことが必要になります。
|費用

では費用について、いくらくらいが相場なのでしょうか。
ここからは、メタバースECとバーチャルショップに分け、初期費用とランニングコストについて説明していきます。
また、企画次第で変更することもありますので、参考値と思っていただいたうえでご覧ください。
バーチャルショップ
初期費用は3Dモデリングが百万円~(品質・制作量に依存)、3Dスキャンが数十万円~、開発実装費が百万円~となります。
月額利用料は数万円~となります。
メタバースEC
初期費用は同じく3Dモデリングが百万円~(品質・制作量に依存)、3Dスキャンが数十万円~、開発実装費が百万円~となります。
月額利用料はプラットフォームや事業者次第ではありますが、VRChat等無料で利用できるメタバースも存在します。
|バーチャルショップ・メタバースECの活用事例9選
最後に、実際にバーチャルショップ・メタバースECが利用された事例をご紹介します。
・バーチャルマーケット

出典:https://winter2021.vket.com/
メタバースを活用したECの事例として有名なのが、「バーチャルマーケット」です。
バーチャルマーケットとは、「VRChat」というサービス内に作られたバーチャル空間で開催される最大規模のマーケットです。
ユーザーはVRChat内に作られた専用のスペースにアクセスすることで、出展しているさまざまな企業や個人サークルの作品を楽しむことができます。
出展する企業や個人サークルの数は回を重ねるごとに増加し、2021年12月に行われた「バーチャルマーケット2021」では、80社以上の企業が出展し、一般出展者の数は約600にまでのぼりました。
SoftbankやBEAMS、セブンイレブンといった有名企業も多く出店しており、バーチャル上のアイテムだけでなく、現実の商品も購入することが可能となっています。
企業ブースでは、アバターの販売を行っているほか、バーチャル空間ならではのゲームを体験するイベントを開催しているブースなどもあります。
バーチャルで行われているイベントの中で、最も注目されていると言っても過言ではないイベントです。
・三越伊勢丹

出典:https://www.rev-worlds.com/place/4
三越伊勢丹は、スマホ用のバーチャル都市コミュニケーションアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」をリリースしました。
これは、メタバース上の『バーチャル伊勢丹』でショッピングやイベント、コミュニケーションが楽しめる新しい伊勢丹アプリとなります。
メタバースのバーチャル伊勢丹では、本物そっくりのバーチャルデパ地下で実際の商品が購入できたり、「ReStyle」や「ISETAN seed」、「ビューティアポセカリー」などの有名ショップでのショッピングも楽しめ、本物のスタイリストがバーチャルで接客を行います。
コロナ禍で外出は控えているが、買い物はしたい。
カタログを眺めるかのようなECサイトではなく、百貨店で実際にショッピングをしているという喜びも味わいたい、という人にもってこいのサービスとなっています。
スマホで手軽に体験できるという敷居の低さもあり、バーチャルショップデビューにも最適ですし、現実の伊勢丹に出かける前の下見という使い方もおすすめです。
・FOREVER 21
ファストファッション大手の「FOREVER 21」は、現在世界中で大流行しているゲームプラットフォーム・メタバースの「ROBLOX(ロブロックス)」上に、「Forever 21 Shop City」をオープンさせました。
Forever 21 Shop Cityは自らがショップのオーナーとなり、自分だけの店舗を経営するというゲームです。
実際にアイテムを売買することも可能で、プレイヤーは自分の好みの什器や家具、装飾や音楽などを購入し、自分の理想のショップを作り上げ、運営していきます。
Forever 21 Shop City は、ゲームプレイのあらゆる面を自由に構築・管理することができ、カスタマイズ・オプションで店舗を構築しながら個性を表現することを推奨しています。
ショップを作る人は、場所を選び、在庫の補充、さまざまな仕事、顧客のサポート、レジ操作、従業員の雇用、店先のウィンドウの装飾など、現実の機能を使って店を運営することができるので、プレイヤーのショッピング体験が高いものとなっています。
・NIKE

出典:https://www.roblox.com/nikeland
ROBLOX内にバーチャルショップを展開しているのはForever 21だけではありません。
NIKEは、アメリカの本社「Nike World Headquarters(WHQ)」を元にデザインした、「NIKELAND(ナイキランド)」をメタバース空間内にオープンさせました。
NIKELANDにはバスケットボールコートやテニスコート、陸上競技場などのスポーツ・フィールドのほか、鬼ごっこやドッジボールなどの多種多様なミニゲームも楽しめます。
加えて、ユーザーはモバイル機器に内蔵されている加速度センサーを使い、自分のフィジカルデータをゲーム内に反映させることも可能で、現実世界の自分のデータをバーチャルワールドの自身のアバターに接続することができます。
メタバース空間上で希少性の高いスニーカーを集めたり、NFTとして販売し、自身のアバターに付けられることは、ファンの深層心理を理解したNIKEならではの戦略と言えます。
・資生堂

出典:https://www.wwdjapan.com/articles/1105273
大手コスメブランドの資生堂も、銀座の新店舗のオープンと同時に「銀座店のバーチャルショップ版」もオープンしました。
こちらは実際の銀座店を3Dスキャンしたデータをベースに制作されており、資生堂のブランド感、世界観を意識したBGMも流れるため、実際に銀座店に入ったかのような体験ができます。
コスメ商品を確認したり、商品の使い方の動画を見たり、購入したい商品があればECに遷移し実際に購入することもできます。
・BEAMS

出典:https://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/528
BEAMSは「バーチャルマーケット5」に、BEAMS初となるバーチャルショップをオープンしました。
原宿の実店舗を模した2層のバーチャルショップでは、実際にスタッフが操作するアバターがお客様をお迎えし、ゴジラ、ニーア オートマタ、ももいろクローバーZとのコラボレーションアイテムやイベントオフィシャルTシャツ及び3Dアバターを販売しました。
迫力満点のロケット発射体験や、サプライズで登場するももいろクローバーZのメンバーによるバーチャル接客も好評でした。
商品を販売するだけではなく、映画の世界観を再現したり、様々なイベントを開催したり、さらには現実世界では難しいアイドルによる接客など、まさにメタバースならではの特徴を最大限に活かしたBEAMSの取り組みが行われました。
小売業界の最先端の事例として、要チェックです。
・大塚家具

出典:https://www.idc-otsuka.jp/showroom/virtual/
家具メーカーの多くはバーチャル技術を活用した取り組みを推進していますが、大手家具メーカー・大塚家具もWebサイト上でバーチャルのショールームを公開しています。
大塚家具は、Matterport(3D撮影機材)を利用し、既存のショールームをバーチャル化し、公開しました。
一般ユーザーは実店舗に行かなくても、商品をリアルに体感できるようになっています。
こちらのバーチャルショップはメタバースではなく、あくまでWeb上のサービスのため、バーチャル接客や他のユーザーとの交流を楽しむといったことはできません。
・ディオール

出典:https://octane.jp/articles/detail/6343
「ディオール(DIOR)」はオンラインでバーチャルブティックをオープンしました。
パリのシャンゼリゼ通りにある店舗を再現したもので、フレグランスやボディーアイテムを中心に取り扱います。
店内を歩き回ることができ、製品をクリックすると製品の詳細やキャンペーン動画が再生されます。購入の際はECサイトに飛ぶ仕組みとなります。
また、バーチャルブティックは年に6回店内のアニメーションや製品を変える予定となっています。
コンサルタントのチャールズ・ビアンキ(Charles Bianchi)は、新型コロナウイルスはこのようなECの発展を加速させるといいます。
ホログラムや進化したカスタマーサービスを活用し、「次世代のECは、実店舗のような体験をいかにデジタルでも届けられるかが鍵となる」と予測しています。
|まとめ
本記事では、バーチャルショップ・メタバースECの紹介をしていきました。本記事が、メタバースECを制作する際の助けとなればうれしいです。
メタバースの市場規模は今後さらに拡大していくと見られており、企業にとっては大きなビジネスチャンスとなりえます。
特にコロナ禍が続く現状において、外出を控えている消費者にアプローチできる点は大きなメリットです。
一方で、さまざまな企業がメタバース市場に参入しようとしているため、ただ流行しているからという理由でメタバース内に販路を拡大しても、簡単には顧客を獲得できません。
メタバースの特性を正しく理解したうえで、メタバースのユーザーの需要を予測したマーケティングが求められています。
これらのことを踏まえたうえで、自社製品の新たな販路拡大を考えている方はバーチャルショップ・メタバースECの活用を検討してみてはいかがでしょうか。