近年話題になっているAI。その進歩は目覚ましく、さまざまな分野で応用が進んでいます。
ゲーム開発の分野も例外ではなく、AIによって制作されたゲームが発表されメディアで話題になっています。
そこでこの記事では、ゲーム開発におけるAIの役割や種類、AIを使って作り出された最新のゲームについて解説していきます。
この記事を読み終えると、ゲーム開発とAIの関係性について知ることができます。
目次
|AIがゲーム開発に使われている
近年、ゲームを作る際にAIを使うケースが増えつつあります。
AIを使えば、これまで人が手作業で行っていた行程を自動化できて、人件費の削減や制作期間の短縮につながるメリットがあるためです。
また単純な反復作業やめんどうな単純業務をAIにまかせられれば、開発スタッフはよりクリエイティブで重要な業務に集中できるようになると期待されています。
現状、AIが行える業務は限られています。
しかし、最初から最後まで多くの行程をAIだけで作ったゲームも登場しており、今後ますますゲーム開発の現場でAIが活躍する機会は増えていくと予想されています。
|ゲーム開発の現場でAIができること
ゲーム開発でAIが担うのは主に以下の役割です。
- ビジュアル作り
- ゲームのテストおよびデバッグ
- キャラクターの言葉・動き
- 各種パラメーターの調整
それぞれの役割についてみていきましょう。
ビジュアル作り
AIは、ゲームの背景やキャラクターのイラストなどのビジュアルを作成できます。
求めるイメージを言葉で入力するだけで、驚くほどクオリティの高い絵をAIが作ってくれます。
最終的には人の手による仕上げが必要になることも多いですが、アイデア出しや下書きに使うには十分な性能があります。
ゲームのテストおよびデバッグ
AIを使うことでゲームのテストやデバッグを効率化できます。
たとえば、
- キャラクターが設定された地形から抜け出してしまわないか
- 設置されたアイテムがきちんと回収できる場所にあるか
- スタートからエンディングまできちんとゲームが機能するか
などの確認をAIが自動で行ってくれます。
これによりチェック作業にとられる時間と手間が軽減されます。
キャラクターの言葉・動き
AIは、キャラクターの発する言葉や動作を生成できます。
たとえば、ゲームに登場するNPCの会話など、ゲームに必要なセリフを瞬時に多様なパターン作り出せます。
さらに、敵モンスターなど、キャラクターの動きもAIが担ってくれます。
各種パラメーターの調整
AIはゲームの難易度やバランスを自動的に調整できます。
たとえば、AIはプレイヤーの行動や反応を分析して、敵の数や強さ、アイテムの配置などを変更することができます。
これにより、プレイヤーのスキルや好みに合わせた最適なゲーム体験を提供することが可能になります。
|ゲームの開発で使われる代表的なAI
ゲーム開発で使われる代表的なAIには以下があります。
- 生成AI
- キャラクターAI
- ナビゲーションAI
- メタAI
それぞれのAIについて機能を説明していきます。
生成AI
キャラクターの見た目や背景、音楽などのコンテンツを自動的に生成できるAIです。
たとえば生成AIは、イメージを言葉にして入力するだけで、イメージに沿った絵を何パターンも瞬時に作り出します。
また写真や動画からリアルな3Dモデルやテクスチャを生成したり、自動で音声やオリジナルのサウンドトラックを生成したりできます。
これにより、開発者はAIによってつくられた生成物を手直しするだけでよくなるため、時間やコストを節約できます。
キャラクターAI
キャラクターAIは、ゲーム内のキャラクターに自律的な行動をさせられるAIです。
いわば、キャラクターの思考を担当するAIで、たとえばNPCや敵モンスターの動き方などを決められます。
ナビゲーションAI
ナビゲーションAIは、ゲーム内の位置情報を取得してキャラクターが移動する際の経路を探すAIです。
たとえば、RPGゲームをプレイする際、目的地への進行方向に矢印が出たり、ボタン一つでキャラクターが自動で移動したりするのは、ナビゲーションAIが働いているからです。
ナビゲーションAIは、キャラクターAIやメタAI、プレイヤーに対して情報を提供し、移動や目標達成をサポートする機能を備えているAIといえます。
メタAI
メタAIは、ゲーム内のプレイヤーの状況を踏まえ、最適な状態にゲームを変化させる役割を果たします。つまりゲームバランスを調整できるAIです。
ゲームの難易度や、敵の出現頻度、アイテムの出現場所などを調整して、個々のプレイヤーに合ったゲーム体験を提供してくれます。
|AIを使ったゲーム制作の事例3選
ここからはAIを用いてつくられた最新ゲームを3つ紹介していきます。
アース:リバイバル
「アース:リバイバル」は、オープンワールドの荒廃した世界で、仲間たちと共に生き残りをかけて戦うサバイバルシューティングゲームです。
「アース:リバイバル」の開発ではNPCの音声やモーションをAIが担当しています。
会話の原稿をAIが分析して自然な会話の音声をつくり、さらに会話や音声の内容に合った表情や身振り手振りを作成しています。
開発スタッフは、このようなNPCの開発業務をAIに任せ、主要キャラクターの開発に注力することでゲームのクオリティを高めています。
Red Ram
「Red Ram」(仮称)は、2023年7月に開催されたインディーゲームイベント「BitSummit Let’s Go!!」に出展されたマーダーミステリーゲームです。
ストーリーやキャラクター、背景画像などのコンテンツが全てAIによって生成されています。
ゲーム内で発生する事件も自動生成されるように設計されており、登場する人物の人物像や事件にまつわる証拠品などが変化します。
このようにRed Ramは生成AIをフル活用して作られた新しいタイプのゲームです。
Spell Siege
「Spell Siege」はAIを駆使して作られた本格カードゲームです。
Open AI社の文章生成AI「ChatGPT」と画像生成AI「DALL-E-2」を用いて制作されており、カードイラストやカードの効果(テキスト)は全てAIによって作られています。
そして注目したいのが「Spell Siege」の開発期間です。なんとたったの6時間!
「Spell Siege」はコンピューターゲームではなく、実物のカードで遊ぶアナログのカードゲームです。そのため制作にプログラミングは必要ありませんが、それでも驚異的な開発時間の短さです。
|ゲーム開発におけるAIの今後
ゲーム開発では今後、AIで代替できる業務領域がさらに増えていきます。
より多くの単純作業をAIにまかせ、クリエイティブな業務に時間を費やせるようになるでしょう。
生成AIの進歩によって、キャラクターのイラストやセリフをより高い精度で生成できるようになります。
またキャラクターAIの進化によって、より柔軟にゲーム内のキャラクターが行動できるようになり、今よりもさらにリアリティのあるゲーム性が実現するかもしれません。
本格的で大規模なゲーム開発を行う場合、開発過程がAIによって劇的に変化するのはもう少し先のことだと予想されているものの、今後さらにAIがゲーム開発に活用されていくのは確実です。
|まとめ:AIでゲーム開発が変わる
この記事では主に以下の内容についてお伝えしてきました。
- ゲームの開発にAIが利用されている
- キャラクターの作成やパラメーターの調整などAIにはさまざまな用途がある
- 最近ではほぼAIだけで作成したゲームも登場している
- ゲーム開発においてAIの活用の幅はさらに広がっていく
今後、AIがさらに進歩してゲーム開発に活かされるようになれば、今よりも簡単に高品質のゲームが作れるようになるかもしれません。
今後のAIとゲーム業界に期待しましょう。