拡張現実を意味する、「Augmented Reality」の略称であるARは近年様々な分野で活用されています。

スマホやタブレットのカメラを通して映る現実世界に対し、仮想のオブジェクトを投影する技術がARです。

AR技術を活用したゲーム、「ポケモンGO」によって多くの人はその臨場感を味わったのではないでしょうか。

本当に目の前に存在するかのようなリアリティは、これまでになかったゲーム体験を多くのユーザーに与えました。

他にも、ポスターをカメラで読み込むことで+αの情報が表示されるといった利用方法もされており、今後もその活躍の場が広がることが想定されています。

そんなARの開発には高い専門知識を要すると思われるかもしれませんが、現在では様々な開発ツールが提供されています。

本記事では、ARアプリ開発に必要な技術が集約されたサービスである「Vuforia」について解説します。

一読いただければ、ARアプリ開発の一歩を踏み出せるかもしれません。

ぜひ最後までご覧ください。

|Vuforiaとは一体何?

出典:https://www.ptc.com/ja/products/vuforia

「Vuforia(ビューフォリア)」とは、AR開発に必要となるプログラムを集約させたプラットフォームです。

イメージとしては、設計に必要となる部品を集めた「倉庫」のような役割を果たします。

ARと類似した技術の一つとして、VRがあげられるでしょう。

VRは「Virtual Reality」の略称であり、日本語では仮想現実と呼ばれています。

VRを利用するユーザーは、まるで現実世界とは異なる別世界に入ってしまった感覚を味わいますが、ARでは現実世界をそのまま「拡張」するような使い方が可能となるのです。

ゲームの「ポケモンGO」がAR技術として有名ですが、他にも自撮りカメラに映る顔に対して装飾品を付けるといった機能もARが活用されています。

こういった技術を作成できるプラットフォームこそが、「Vuforia」なのです。

2015年にはPTC社によって買収されたことでそのサービス対応の幅が広がり、よりオープンにしようできるようになりました。

つまり、本プラットフォームを利用すれば誰でも手軽にARアプリの開発が可能となるのです。

2種類のクラウドサービスによって構成される

本プラットフォームはPTC社によって提供されています。

PTC社はアメリカボストンを拠点とする、産業向けAR企業です。

アプリ開発者向けのAR開発エンジンだけではなく、実用的なAR支援ツールや作業ツールといった、幅広いサービスを提供しています。

2つのクラウドサービスが存在しており、それぞれ以下の通りです。

  • 「Vuforia Instruct」:3D-CADデータを活用した点検や作業向け
  • 「Vuforia Expert Capture」:幅広い作業に汎用的に対応する

いずれのクラウドサービスにおいても、想定するARコンテンツの開発は容易になっていることが特徴であり、誰でも手軽にとりかかれる点が高く評価されています。

様々なソフトウェアが存在する

「Vuforia」は、ARアプリ開発に必要となるプログラムが集約されていることは前述した通りです。

そのため、プラットフォーム内には様々なソフトウェアが存在しています。

例えば、「Vuforia Expert Capture」では作業習熟者の技術を音声と映像で記録するだけではなく、その内容を編集し保存、再生可能とします。

撮影者がARデバイスを装着し、実際に作業を行うことでユーザーはそれらの作業を追体験できるのです。

また、システム開発者向けの「Vuforia Engine」では、より高度なARアプリの開発が可能です。

柔軟にARアプリを開発できるため、企業の業務に応じたアプリの作成が容易になるでしょう。

|Vuforiaの特徴について

特徴について、主に以下の内容に沿って解説します。

  • ARを活用した訴求が簡単に実現
  • 正確なトラッキング精度

ARを活用した訴求が簡単に実現

AR技術はゲームといった特定の分野だけではなく、商品訴求などの広告宣伝にも活用されはじめています。

例えば、テキストカタログのページをスマホやタブレットで読み込んでもらうことで、商品イメージを立体的に確認できるといった利用方法があります。

また、まだ完成していない住宅のイメージを現地でカメラを通して確認できるのです。

他にも、通販での商品検討の際、商品サイズをARで表示させて確認することで、購入後の配置イメージを確実に把握できるでしょう。

こういったARを実現する機能が、「Ground Plane」です。

「Ground Plane」を利用すれば、平面検知で仮想のオブジェクトを認識し、アプリ上でそれらを確認可能となるのです。

顧客に対し具体的なイメージを訴求することで、宣伝効果の向上が期待できるでしょう。

正確なトラッキング精度

スマホやタブレットのカメラに映るARコンテンツを表示させる方法としては、主に以下の手法が存在しています。

  • マーカー型:事前に登録した写真やイラストを認識し、ARコンテンツを表示する
  • マーカーレス型:その場にあるものの形や位置を認識し、ARコンテンツを表示する

つまり、ポスターやテキストカタログといった元々決められた情報に対しARを表示する手法を「マーカー型」、目の前の物体に対応してARを表示する手法が「マーカーレス型」となります。

本プラットフォームではそれぞれ2種類の手法に対応しており、マーカーや目の前の物体を認識する「トラッキング」と呼ばれる精度が高いことで知られています。

そのため、様々な場面で確実にARコンテンツを表示できるのです。

独自のコードと開発のしやすさ

QRコードとARマーカーを組み合わせた「VuMark」と呼ばれる独自のコードが利用できます。

「VuMark」はビジュアルコードと呼ばれており、ARコンテンツの表示対象である現実世界の物体に貼り付けることで、指定のARを表示させられるのです。

「VuMark」の特徴は、そのデザイン性の高さです。

通常のQRコードのように画一化されたデザインだけではなく、Illustratorを利用することで対象物体の外観を損なわないビジュアルコードが作成できます。

つまり、ひと目見ただけではそこにARマーカーが存在していると悟られず、ユーザーにARコンテンツを読み取らせることが可能になるのです。

さらに、複数デバイスに対応しているため、その開発環境を選びません。

「Unity」やGoogleが提供する「ARCore」といった外部サービスにおいても活用されており、汎用性高く開発できる環境が整っているのです。

|Vuforiaの利用方法

「Vuforia」サイトへアクセスし、上部に表示される「Register」からアカウントを取得しましょう。

そして、自身が使用しているデバイスに応じたツールをダウンロードします。

各ツールを利用するために必要なライセンスは、管理サイトで発行します。

ARアプリの開発をまずは試してみたいと考える場合、無料利用できる本プラットフォームは非常におすすめです。

しかし、開発したARアプリを公開する場合は、別途ライセンスの購入が必要になりますので注意しましょう。

プランは開発するARアプリや企業の規模に応じて選択できますので、それぞれの予算に照らし合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

|まとめ

AR開発に必要となるプログラムを集約させたプラットフォームである「Vuforia」について、その概要から利用方法までを一挙解説してきました。

ARアプリは「ポケモンGO」といったゲームだけではなく、現在は様々な場面において利用されています。

これまではテキストや写真、動画でしか伝えられなかった情報が、スマホカメラを経由することで3次元情報として訴求できるようになるのです。

これは通販といった顧客との距離が遠い場面などにおいても、非常に効果が高いことが考えられるでしょう。

そのため、今後ARアプリ開発ができる人材は重宝されることが想定されます。

本記事を読み、少しでもAR開発に興味を持ったという方は、ぜひ一度無料プランからARアプリの開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。