消防訓練と聞くと、火災や地震などの災害に備えて、実際に避難や消火を行うイメージがありますが、最近ではバーチャル空間で行う消防訓練も注目されています。
バーチャル空間で行う消防訓練とはどのようなもので、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
また、実際にどんな場面で活用されているのでしょうか?
この記事では、バーチャル空間で行う消防訓練についてご紹介します。
目次
|バーチャル消防訓練とは
バーチャル消防訓練とは、VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)などの技術を使って、消防訓練を仮想空間で行う方法です。
実際の施設や災害シーンをVRやARで再現し、避難や消火などの動作を体験できるので、訓練の効果や問題点を客観的に把握できます。
また、訓練の様子や結果をデータとして記録・分析なども可能です。
バーチャル消防訓練は、時間や場所、人員などの制約が少なく、リアルなシミュレーションができるというメリットがある上に、VRやARの技術を使うことで、訓練の楽しさや興味も高まります。
実際に、多くの企業や団体がバーチャル消防訓練を導入しており、災害に備えるための有効な手段として注目されています。
|バーチャル消防訓練のメリット
バーチャル消防訓練のメリットとしては主に「実際に近い形で訓練が可能」「能動的に参加することで記憶に残りやすい」「場所や時間の制約がない」の3つが挙げられます。
それぞれ解説していきます。
実際に近い形で訓練が可能
VRやARの技術を使うことで、実際の施設や災害シーンを再現できます。
これにより、実際の災害に遭遇したときの感覚や判断力を養うことができます。
また、VRやARの技術を使うことで、訓練の難易度やバリエーションを自由に変えることができます。
例えば、夜間や悪天候などの場合も訓練も可能となります。
これにより、さまざまなシナリオに対応できる能力を高めることができます。
実際に近い形で訓練が可能であるからこそ、災害への備えを強化することができます。
能動的に参加することで記憶に残りやすい
また、VRやARの技術を使うことで、消防訓練をゲーム感覚で楽しむことができるため、能動的に参加することで記憶に残りやすいというメリットもあります。
また、VRやARの技術を使うことで、消防訓練の内容や結果をフィードバックや評価として受け取ることができます。
例えば、VRやARの画面に、避難時間や消火方法などの情報が表示されることで、消防訓練に対する理解や反省が深まります。
能動的に参加することで、学習効果を向上させることができます。
場所や時間の制約がない
場所や時間の制約がないのも大きなメリットの一つです。
VRやARのデバイスを持っていれば、どこでも消防訓練を行うことができるので、実際の施設や場所に依存しないで、訓練の機会を増やすことができます。
また、VRやARの技術を使い、消防訓練をデータとして記録・分析することができます。
これにより、訓練の履歴や進捗を確認・管理することができます。
バーチャル消防訓練を活用すれば、場所や時間の制約をなくすことができ、訓練の実施や管理を効率化することができます。
|バーチャル消防訓練のデメリット
以上のように大きなメリットがある一方で、デメリットとしては主に「初期費用がかかる」「VR酔いを起こす可能性がある」の2つが挙げられます。
それぞれ解説していきます。
初期費用がかかる
バーチャル消防訓練を行うには、初期費用が必要です。
VRやARを活用するためには、専用のデバイスやソフトウェアが必要であり、ヘッドセットやコントローラーなどの機器、訓練用のコンテンツやシステムの開発・導入に費用がかかります。
さらに、定期的なメンテナンスや更新も必要で、機器やソフトウェアの故障や不具合の修理、訓練内容やシステムの改善にもコストがかかります。
このため、初期費用が高いために訓練の導入や運用には工夫が必要です。
VR酔いを起こす可能性がある
VR酔いは、VRの動きと身体の感覚が一致しないことから生じ、めまいや吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。
このため、訓練参加者の健康や体験に悪影響を及ぼす可能性があり、特にVRに慣れていない人や、体調がすぐれない人に影響が出やすいです。
その結果、訓練の効果や参加者の意欲が低下する可能性があります。
バーチャル消防訓練を行う際には、VR酔いのリスクに注意し、参加者の健康状態や快適な体験を確保する対策が求められます。
|バーチャル消防訓練の活用事例
実際にバーチャル消防訓練を実施した例はどのようなものがあるのか、ここでは7つの例を挙げてみましょう。
ひとつひとつ順番に解説していきます。
東京消防庁
東京消防庁が実施したバーチャル消防訓練事例として、「VR防災教育」が挙げられます。
これは、VR技術を活用して、火災や地震などの災害時の対処や避難方法を学ぶ教育プログラムで、VRヘッドセットを使用して災害状況をリアルに体験し、消防設備の操作や適切な行動を学ぶことができます。
東京消防庁はこのプログラムを学校や企業などに提供し、災害への備えや防災意識の向上を促進しています。
日本防災技術センター
日本防災技術センターのバーチャル消防訓練事例としては「AR防災訓練」があります。
このプログラムは、AR技術を活用して、現実の環境に火災や地震などの災害を重ねて表示し、訓練の臨場感を高めるものです。
ARヘッドセットを装着することで、自分がいる場所での災害状況をリアルに体験でき、音声や振動を通じて対応や避難の実践を学びます。
この訓練を企業や団体向けに提供し、災害への備えや防災意識の向上を促進しています。
大和ライフネクスト
大和ライフネクストが実施したVR消防訓練は、VR技術を利用してオフィスビル内での火災発生時の状況を体験できるプログラムで、ヘッドセットを使って火災のシナリオをリアルに見ることができます。
これにより、災害時の危険性や恐怖感を実感し、消火器や非常ベルなどの操作や避難行動の実践が可能となります。
大和ライフネクストは、このVR消防訓練を社内従業員に提供し、災害への備えや防災意識を高めています。
パソナ・パナソニック ビジネスサービス
パソナ・パナソニック ビジネスサービスが実施したVR緊急時対応訓練は、VR技術を用いて、オフィスビルでの火災や地震などの緊急事態が発生した場合の状況を身をもって体験できるプログラムです。
ヘッドセットを使ってオフィスビル内の状況をリアルに見ることができ、緊急時の危険性や恐怖感を実感できます。
この訓練は、従業員向けに提供され、緊急時の対応と避難方法に備えるために役立っています。
AR防災
AR防災が実施した一例としては「AR消防訓練」があります。
この訓練は、AR技術を活用して、スマートフォンやタブレットを使って、火災や地震などの災害を仮想的に再現するプログラムです。
これにより、災害時のリアルな危険感を体験でき、災害への備えを高めることができます。
また、実践的な要素を通じて、災害時の適切な対応や避難方法を学ぶことも可能です。
この訓練は一般市民や学生向けに提供され、幅広い層が災害に対する意識を高める手段として活用できます。
ジオクリエイツ
ジオクリエイツが行ったバーチャル消防訓練は、自分の働くオフィスビル内で火災が発生した際の状況をVR技術を用いて体験するプログラムです。
VRヘッドセットを装着することで、オフィスビル内での火災発生シナリオをリアルに体感でき、災害時のリスクや恐怖を実感できます。
また、VRコントローラーを使用して、消火器の操作や非常ベルの鳴らし方、ドアや窓の開閉、破壊などの適切な行動を模擬できるため、実践的な訓練を通じて、災害時の対処方法や避難計画を学ぶことができます。
アイデアクラウド
アイデアクラウドは、「VR消火体験」と「VR避難訓練」の2つのプログラムを実施しました。
「VR消火体験」では、専用のVRヘッドセットと消火器を使い、オフィス内で火災のシミュレーションを行うことで、火災の消火方法を学べます。
「VR避難訓練」では、オフィス内での火災発生状況をリアルにシミュレートし、火災時の危険性や避難行動を実践的に学びます。
アイデアクラウドは、これらのプログラムを様々な組織に提供し、災害への備えと防災意識を高める支援を行っています。
|まとめ
バーチャル空間で行う消防訓練は、VRやARなどの技術を使って、自分がいる場所に火災が発生した場合の状況を体験することができる訓練です。
リアルに災害時の臨場感を感じることや、実際の消火器や消防設備の操作や避難方法を学ぶことができるという体験はとても大切です。
まだ課題もありますが、一般市民や学生、企業や学校などの様々な組織が、バーチャル空間で行う消防訓練を実施しています。
導入を考えておられる方にとって、この記事が参考になれば幸いです。