近年話題のメタバースという仮想空間での体験やコミュニケーションが、今後の住まいづくりにも革命を起こすかもしれません。

大和ハウスがいち早くメタバースを活用した設計システムの導入を開始しました。

メタバース設計システムというのは、メタバースという仮想空間で自分の理想の住まいをデザインできる設計システムのことです。

この記事では、大和ハウスのメタバース設計システムの目的や特徴について詳しく解説していきます。

|大和ハウス工業株式会社の概要

大和ハウス工業株式会社は、住宅総合メーカーとして、戸建住宅やマンション、ビルなどの建設や販売、リフォームやリノベーションなどのサービスを提供しています。

また、この企業は大和ハウスグループの中核企業として、グループ全体の経営戦略や事業展開を統括しており、大和ハウスグループは住宅、不動産、建設、物流、環境、エネルギーなどの幅広い分野で事業を展開しています。

大和ハウス工業株式会社は、2020年に創業70周年を迎え、新たな経営ビジョン「D-70」を発表しました。

このビジョンは、「人々の暮らしと社会に貢献するグローバル企業グループ」を目指しており、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでいます。

大和ハウスがメタバース設計システムを導入

大和ハウス工業は、インターネット上の仮想空間である「メタバース」内で建築物の設計を行うための新しいシステムを導入しました。

このシステムでは、仮想現実(VR)デバイスを用いて、実寸大の3Dモデルをリアルタイムで生成し、床や壁などの建材を自由に変更することが可能です。

この革新的なアプローチを通じて、施主や設計者との打ち合わせにおいて有効に活用し、設計にかかる時間を効率的に短縮できると期待されています。

さらに、メタバースでの設計は、3Dデータに基づくBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)手法と連携しており、建物の情報や構造を非常に正確に反映できる特長があります。

大和ハウスは、この新たな設計プロセスを2024年秋までに本格展開することを目指しています。

過去に業界初の「メタバース住宅展示場」を展開

大和ハウス工業は、コロナ禍においてオンライン接客の需要が高まる中、業界初の「メタバース住宅展示場」という仮想空間上の新しい住宅展示場を一般公開しました。

この展示場では、お客様と専門の担当者がアバターとして仮想空間内で対面し、スマートフォン、タブレット、パソコンからアクセス可能です。

見学中には、質問や相談も気軽に行うことができます。

「メタバース住宅展示場」は、内装や間取りなどのカスタマイズが可能で、お客様自身が理想の住まいを仮想空間内で体験することができます。

さらに、実際の住宅展示場とも連動しており、気に入った住宅を仮想空間内で見つけた場合、実際に現地で詳しく見学することもできます。

これらの新しいオンライン体験を通じて、より便利な住宅選びの方法を提供することが可能になりました。

|『D’s BIM ROOM』開発の背景

出典:https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20230822093523.html

建設業界では、デジタル技術とデータの活用を通じて、働き方改革、人材不足などの課題を解決するDXが急速に進展しています。

中でも、BIMは特に注目されており、建物の3Dモデルを作成することで、設計図作成や顧客への説明、設計業務の効率化に貢献しています。

大和ハウス工業は、2017年からBIMの推進を開始し、2020年には商業施設や事業施設の設計業務においてBIM化を完了させましたが、BIMは一般の顧客には理解が難しいという課題がありました。

そこで大和ハウス工業は株式会社トラスと協力し、「WHITEROOM」というVR技術とBIMを組み合わせた「D’s BIM ROOM」を開発しました。

この新しいシステムでにより、建設予定地で実寸大の外観イメージや色味をリアルに近い形で体験が可能となりました。

|『D’s BIM ROOM』の特徴

『D’s BIM ROOM』の主な特徴として、「メタバース上に建物を設計できる」「顧客との打合せはメタバース上で完結」「内装や外装のデザインも決定可能」の3つが挙げられます。

それぞれ順番に解説していきます。

メタバース上に建物を設計できる

「D’s BIM ROOM」は、建物の3Dモデルを、XR技術を使ってメタバース空間に表示させることができます 。

メタバース空間では、建物の外観や内装、色味や素材などを自由に変更したり、周辺環境との調和を確認したりすることができます 。

これにより、建物の設計や提案がより効率的かつ効果的に行えるようになります。

また、従来の設計では、2Dの図面や模型でイメージすることが難しかった部分を、3Dのメタバース空間ではリアルに体験することができます。

また、顧客は自分の好みや要望に合わせて建物をカスタマイズしたり、他の人と一緒にメタバース空間を見たりすることができます。

顧客との打合せはメタバース上で完結

「D’s BIM ROOM」は、顧客との打ち合わせをメタバース上で完結させる革新的なシステムです。

顧客は、パソコン、タブレット、VRゴーグルなどのデバイスを使って、メタバース空間にアクセスし、建物の外観、内装、色彩、素材などをほぼ現実のように体験できます。

また、設計者や営業担当者ともメタバース内でシームレスにコミュニケーションを取ることもできます。

これにより、打ち合わせの時間や場所に制約がなくなり、よりスムーズで効率的な打ち合わせが可能になります。

さらに、顧客とのコミュニケーションも向上し、建築プロジェクトの進行に大きな利益をもたらすことに期待ができます。

内装や外装のデザインも決定可能

「D’s BIM ROOM」は、内装や外装のデザインを自由に決定することもできます。

このシステムは、建物のBIMデータと建材データベースを結びつけ、メタバース空間に実寸大の3Dモデルをリアルタイムで表示します。

顧客は、メタバース空間内で建物の色彩、素材、照明、家具などを自由に変更することができるだけでなく、設計者や営業担当者ともコミュニケーションが取れ、相談なども手軽に行えます。

これにより、内装や外装のデザインに関する納得感の高い決定がスムーズに行え、顧客の要望に合った最適な設計を実現することが可能です。

|『D’s BIM ROOM』の今後

「D’s BIM ROOM」の今後の展望としては、2023年9月から、大和ハウス工業が建設する商業施設や事業施設などでの実証実験を進め、その後段階的に導入していく計画です。

この新しい取り組みにより、メタバース空間を通じた内装デザインやコミュニケーションを活用し、建物の品質や顧客満足度を向上させることを目指しています。

同時に、建物のライフサイクルコストを削減し、環境負荷を低減させる貢献も期待されています。

|まとめ

以上、大和ハウスがメタバース設計システムを導入したことについて、その特徴や目的について解説しました。

メタバース設計システムでは、実寸大の3Dモデルを見たり、建材や家具を変更したり、施主や関係者との打ち合わせにも使えるという、とても効率が良く便利で素晴らしい技術です。

メタバース設計システムは、建築業界に革新的な変化をもたらす可能性が大いにありますので、今後の動向やさらなる発展に注目していきましょう。