メタバースはビジネスシーンやゲーム、イベントなど幅広い分野で活用されています。

近年では就職活動へも活用され幅広い用途で利用されています。

今回は数ある使用用途の中でもメタバース上で行う就活の形について解説していきます。

本記事を読めば、メタバースで行う就活がどういうものなのか、また、メタバースの就活でできることや課題を知ることができます。

就活中の方や、メタバースでの採用活動を取り入れようとしている人事担当の方はぜひ最後までご覧ください。

|コロナ禍でリモート面接をする企業が急増

新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わり、会社のオフィスに出社するのではなく、自宅で勤務するリモートワークが大幅に増えました。

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月8日から、感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行しました。

株式会社パーソル総合研究所によれば、2020年3月のリモートワーク実施率は13.2%でしたが、緊急事態宣発令後の2020年4月には27.9%まで上昇しました。

その後、2021年には27.5%、2022年に再び28.5%にまで上昇し、2023年では22.2%に減少しました。

ピーク時と比較するとリモートワーク実施率は下がったように感じますが、コロナ禍以前の実施率、10%と比べると増加していることが分かります。

また、企業がリモートワークを導入したことによって、採用活動もリモートで実施されることが増えてきました。

採用サービス大手の、dodaエージェントサービスにおける「Web面接可」の割合調査によると、2020年8月時点では「Web面接可」の割合は38.4%であり、2020年11月、2021年3月でも「Web面接可」の割合は増加しており、2021年7月には63.8%でした。

多くの企業がリモートでの面接を取り入れるようになってきており、主流になりつつあることが分かると思います。

|リモート面接のメリット・デメリット

ここからはリモート面接のメリット、デメリットを紹介していきます。

メリット

まずメリットとして挙げられるのが、リモート面接であれば自宅から会社のオフィスまでの距離に関係なく面接が受けられるという点です。

例えば地方在住の方であっても、東京や都心の会社の面接を受ける際に、移動の必要がないため、交通費がかからず、移動に時間が取られないため一日に複数の面接を受けることも可能です。

また、リモート面接は外出する必要がないため、対面での面接と違い感染症などの感染リスクを抑えることができます。

また、企業側はパソコンやスマートフォン・タブレット端末等があれば、どこでも面接ができるため、面接会場にかかる費用や準備にかかる人件費を削減することができます。

デメリット

ここまでの説明で、リモート面接にはメリットしかないように思えてしまいますが、幾つかデメリットも存在します。

まずデメリットとして挙げられるのが、実際にオフィスまで出向く訳ではないので、その会社の雰囲気などが掴みづらいという点です。

また、リモートなので、通信環境が悪くなってしまった場合などに面接続行が困難になってしまい、面接先に悪い印象を与えてしまう可能性があることもデメリットとして挙げられます。

企業側のデメリットとして、リモートで面接を実施するため、面接者の表情や雰囲気が対面で行うよりも難しいため評価を行うのが難しいと感じる面接官も多いです。

|メタバースと就活の親和性

これらのリモート面接でのデメリットを解消しつつ、リモート面接のメリットも引き継いだものがメタバースでの就活になります。

メタバースでの就活は、自宅から遠く離れた会社のオフィスへ簡単にアクセスできるというメリットがあります。

より現実世界に近い形で、相手のアクションや反応を伺いながらの面接も可能になり、会社の雰囲気なども掴みやすいということから、リモート面接のデメリットを解消することができます。

また、メタバースでの人材採用は参加者だけではなく企業にとっても、各所から優秀な人材を獲得できるメリットがあります。

このようにメタバースと就職活動や採用活動は求職者、採用担当にとってもメリットが大きいため、近い将来メタバースでの就職活動が当たり前という時代が来るかもしれません。

|メタバースの活用事例

就活と聞くと、面接のイメージが強いですが、メタバースはパソコンだけではなく、スマートフォンでも気軽に参加ができるため、面接以外にも様々なことを行うことが可能です。

会社説明会

「会社説明会」は、企業を知ってもらうきっかけとして、就活生だけではなく企業側にとっても重要なイベントです。

遠方に住んでいる場合、応募したい企業まで足を運ぶ必要があり、時間、金銭面で大きな負担となることがあります。 

その点、メタバースの会社説明会は、仮想空間で実施されるため、場所や時間を問わず、お手持ちのパソコンやスマートフォンで気軽に参加ができます。

また、その他にも他社と合同で行う、合同説明会もメタバース空間内へ各社のブースを用意することができるため、参加者はアバターで自由に見学しながら、複数の企業の説明を聞くことが可能です。

会社見学

メタバース空間内へオフィスを再現し、参加者はアバターで入室するため遠方からでも会社見学をすることができ、担当者と会話をすることもできます。 

現地へ足を運ぶ会社見学の場合、決まった日時でオフィスへ訪問する必要があるため、日程調整に難航するケースもありました。

メタバースでの会社見学では、場所や時間に捕らわれることなく、参加者は自身のタイミングに併せて見学することが可能です。

インターンシップ

インターンシップでは、対応する社員の選定、日程調整など事前準備が負担になるケースがあります。

メタバース内で実施をすれば、先ほど解説をした会社説明会のように、メタバースの空間内に実際の職場を再現し、アバターで参加をすると実際に入社をして働いているような感覚を味わうことができます。

入社前と後で発生するギャップやミスマッチを減少できるのも魅力です。

|メタバースを活用した企業イベントの事例

ここからは実際にメタバースを活用した企業のイベントの事例を紹介していきます。

【中京テレビ】会社説明会

中京テレビでは、メタバース内で学生向けに会社説明会を実施しました。

200名の定員の予定でしたが、定員をはるかに超える約400名の応募があり抽選での開催となりました。

アバターを使用することで匿名性を担保したうえで、参加者が気軽に相談できる場を提供しました。 

イベント終了後の参加者へ実施したアンケートでは、満足度95%と満足度が高い結果となりました。

【株式会社Aww】採用選考面談の実施

株式会社Awwでは、ブロックチェーン・仮想通貨を活用した世界的に人気の代表的なメタバースプラットフォームである「Decentraland」のメタバース内で世界で初めて採用の選考面談を行いました。

採用担当者、参加者は自分のアバターを作成し、指定の地点まで移動、面談では会社の案内や業務内容などを聞くことができ、カジュアルなコミュニケーションを実現しました。

【ポート株式会社】就活メタバース

ポート株式会社では業界で初めて、メタバースを活用した就職相談サービスをリリースしました。

Web面談のような窮屈な空間ではなく、まるで対面で話しているかのような緊張感が少なく、リアルに近しい感覚を得られるメタバース内で、キャリアコンサルタントへ就職活動での悩み事を相談することができます。

今後は、メタバース空間での面接プラットフォームの開発等についても積極的に検討を進めていくそうです。

【NPO法人エンカレッジ】CAREER THEATER

日本最大級のキャリア教育NPO法人エンカレッジ支援による、約12,000人を動員した大規模キャリア講演イベント「CAREER THEATER」を、メタバースプラットフォーム 「cluster」を運営するクラスター株式会社協力のもと、メタバース上で開催しました。

「CAREER THEATER」は2019年までオフラインで開催していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、以降2年間はオンラインでの開催となっていました。

10~20代の若者の実態を研究するプランニング&クリエーティブユニット「電通若者研究部(電通ワカモン)」と、クラスター株式会社協力のもと、メタバース上に劇場型の空間を作成し、各業界で活躍するトップランナーの講演会や、企業の内定者イベント、学生との就活相談会など実際にその場にいるようなリアルな就活イベントとなりました。

【On’yomi】メタバース面談

PR・コミュニケーションエージェンシーの「On’yomi(オンヨミ)」は、Meta社が提供している「Horizon Workrooms」を活用し、アバター同士で会社説明や採用面接を実施する「メタバース面接」を行いました。

参加者は対面、オンライン、メタバース等自身で選択することができ、リラックスして面接に挑める環境を整えています。

アバターを用いて面接を実施することで、よりリアルな感覚で会話を進めることができ、オンライン面談より本人らしさを引き出しやすいそうです。

【株式会社tenshabi】METANAVI

株式会社tenshabiでは、メタバースプラットフォームである「VRchat」上でメタバース就職フェス「METANAVI」を開催しました。

イベント当日は高スペックなPCやデバイスを持っていなくても、YouTubeやZoomなどを活用してライブ中継を閲覧でき、総勢1000人を超える参加者が集まりました。

就職に関するイベントではありますが、参加者が楽しみつつ就職活動ができる工夫がされており、企業と優秀な人材が出会う互いにとってメリットのあるイベントとなりました。

|メタバースでの就職活動の課題

ここまで活用方法等を解説をしてきましたが、メタバースでの就職活動や採用面接は非常に実用的であり、将来性があるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。

しかし、メタバースは成長段階ということもあり、様々な課題点が存在します。

次はメタバースでの就職活動における課題についてご紹介していきます。

課題点①

課題点としてまず挙げられるのが、VRデバイスがまだ普及していないという点です。

メタバース面接では、トラッキングデバイスやVRゴーグルなどを用意する必要があり、VRデバイスが普及していない現在では、求職者がデバイスを用意するには負担が高いといえます。

VRデバイスがなくてもブラウザから参加できるメタバース面接も存在しますが、VRデバイスを用いた面接と比べると臨場感やコミュニケーションの取りやすさでは劣ってしまいます。

課題点②

次の課題点として挙げられるのが、メタバースプラットフォームアプリのインストールなどに手間がかかってしまうという点です。

メタバース面接には基本スマートフォンやパソコンからでも参加はできますが、その場合もインストールからログインまで求職者自身がやらなければならず、非常に手間がかかるといった点もメタバース就活の課題点といえます。

|まとめ

本記事では、メタバース内で行う新しい就職活動を人事担当者、求職者へ向けて解説しました。

働き方だけではなく、採用に関することにもメタバースの利用をしており、今後更なる新しい使い方があるかもしれません。

この記事が皆さんの就職活動や採用活動に少しでもお役に立てれば幸いです!