本記事では、メタバース上で行う就活に興味関心のある求職者やメタバースでの採用活動が気になっている人事担当の方に向けて、

・コロナ禍でのリモート面接

・就活サービスを提供しているメタバース

・採用活動にメタバースを利用している企業

・メタバースでの就職活動の課題

などのメタバースでの就活に関する疑問を解説します。

本記事を読めば、メタバースで行う就活がどういうものなのか、また、メタバースの就活でできることや課題を理解できますので、就活中の方や、メタバースでの採用活動を取り入れようとしている人事担当に方はぜひ最後までご覧ください。

|コロナ禍でリモート面接をする企業が急増

コロナ禍の影響で働き方が大きく変わり、会社のオフィスに出社するのではなく、自宅で勤務するリモートワークが増えてきました。

現在の全国でのリモートワーク実施率は32%でコロナ禍以前のリモートワーク実施率の10%と比べると、かなり増加していることが分かります。

また、企業がリモートワークを導入したことによって、採用活動もリモートで行われることが増えてきました。

dodaエージェントサービスにおける「Web面接可」の割合調査によると、2020年8月時点では「Web面接可」の割合は38.4%であり、2020年11月、2021年3月でも「Web面接可」の割合は増加しており、多くの企業がオンラインでの面接を取り入れるようになってきていることが分かります。

このようにリモートでの面接が今後の面接のスタンダードとなっていきそうですが、ここでリモート面接のメリットやデメリットに関してご紹介したいと思います。

リモート面接のメリット

まずメリットとして挙げられるのが、リモート面接であれば自宅から会社のオフィスまでの距離に関係なく面接が受けられるという点です。

例えば地方在住の方であっても、東京や都心の会社の面接を受ける際に、移動の必要がないため、交通費がかからず、移動に時間が取られないため一日に複数の面接を受けることもできるようになります。

また、リモート面接は外出する必要がないため、対面での面接と違い、新型コロナウイルスなどの感染リスクを抑えることができます。

リモート面接のデメリット

ここまでの説明で、リモート面接にはメリットしかないように思えてしまいますが、幾つかデメリットも存在します。

まずデメリットとして挙げられるのが、実際にオフィスまで出向く訳ではないので、その会社の雰囲気などが掴みづらいという点です。

また、リモートなので、通信環境が悪くなってしまった場合などに面接続行が困難になってしまい、面接先に悪い印象を与えてしまう可能性があることもデメリットとして挙げられます。

|メタバースと就活の親和性

これらのリモート面接でのデメリットを解消しつつ、リモート面接のメリットも引き継いだものがメタバースでの就活になります。

メタバースの就職活動では、自宅から遠く離れた会社のオフィスなどどこにでもアクセスできるというメリットも引き継ぎながら、より現実世界に近い形で、相手のアクションや反応を伺いながらの面接も可能になり、さらには会社の雰囲気なども掴みやすいということから、リモート面接のデメリットを解消することができます。

また、メタバースでの人材採用は参加者だけではなく企業にとっても、実際の距離に関係なく優秀な人材を獲得できるというメリットがあります。

このようにメタバースと就職活動や採用活動は求職者、採用担当にとってもメリットが大きいため、近い将来、メタバースでの就職活動は当たり前という時代が来るかもしれません。

|就活サービスを提供しているメタバース

ここからは実際に就活サービスを提供している、

・METANAVI

・就活メタバース

・CAREER THEATER

・Hired in the Metaverse:The New Frontier of Recruiting

以上4つのメタバースについて紹介します。

METANAVI

出典:https://metanavi.io/

株式会社tenshabiが2022年4月29日に、メタバース関連企業やこれからメタバースの事業を立ち上げようとする企業と、メタバースでのキャリアに関心がある学生や社会人がメタバース空間で出会う就活イベントである「METANAVI」を開催しました。

このイベントはメタバースプラットフォームであるVRchat上で開催されましたが、Youtube配信やZoom接続もしており、VRデバイスや高性能なPCを持っていなくても気軽に参加できるイベントとなっていました。

このイベントはメタバースを熟知したメンバーで運営されています。

企画集客は様々なメタバースイベントを企画運営する「犬の会長」氏、

バーチャル会場はNISSANのバーチャルギャラリー製作を担当した「VR蕎麦屋タチナベ」氏、

司会はXR転職合同転職会を主催する「はいえろ」氏、

副配信をVtuberの「癒色えも」氏が担当しており、

就職に関するイベントであるものの、イベント参加者が楽しみながら就職活動ができるよう工夫が凝らされたイベントとなっています。

メタバース市場は急速に成長しており、数年後には市場規模が100兆円にものぼる巨大経済圏になると言われています。

コンテンツ産業を得意としている日本において、メタバースはその技術力や創造力を活かすことができる分野であると言えます。

この市場を拡大させていくには、企業と優秀な人材が出会うことが必要不可欠であり、「METANAVI」はそれに大きく貢献するイベントとなっています。

就活メタバース

出典:https://careerpark-agent.jp/metaverse

次にご紹介するのは、バーチャルプラットフォームを活用した就職相談サービスである「就活メタバース」です。

このプラットフォームは、ポート株式会社が運営する「キャリアパーク就職エージェント」という就職活動支援サービスから提供されている就職相談メタバースプラットフォームです。

就職活動のプロフェッショナルであるキャリアコンサルタントの就職活動での悩み事を相談できます。

この「就活メタバース」では、通常のWeb面談において精神的、空間的な制約が多いせいで、面接や面談中に窮屈な思いをしている就活生に向けて、まるで対面しているかのようなカジュアルな空間でありのままの自分を表現できるようなメタバース空間が設計されています。

新型コロナウイルスの感染拡大とともに就職活動のオンライン化が進んでおり、メタバース上で人とモノや情報がマッチングする時代が近づいてきています。

その中で、この「就活メタバース」は、いち早く次世代の就職活動のスタンダードである、メタバース上での就職活動を体験できるサービスと言えるでしょう。

残念ながら「就活メタバース」は2023年卒業予定の学生に対してのみのサービスとなっており、今後より多くの人が使えるサービスになるよう鋭意開発中となっています。

CAREER THEATER

出典:https://en-courage.com/events/O1RwgjTcDdhfbyObG635?venue=76563

こちらのイベントは、日本最大級のキャリア教育支援NPO法人エンカレッジによる、2021年に開催され、のべ12,000人を動員した大規模キャリア講演イベント「CAREER THEATER」を、メタバースプラットフォーム 「cluster」を運営するクラスター株式会社協力のもと、メタバース上で開催しました。

「CAREER THEATER」は2019年までオフラインで開催していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、以降2年間はオンラインでの開催となっていました。

しかし、オンラインでの開催では、オフライン開催で得られる臨場感が参加者に伝わりにくいという課題点がありました。

そこで2022年から、10~20代の若者の実態を研究するプランニング&クリエーティブユニット「電通若者研究部(電通ワカモン)」と、メタバースプラットフォーム 「cluster」を運営するクラスター株式会社協力のもと、メタバース上に劇場型の空間を作成し、各業界で活躍するトップランナー達をお招きした講演会や、企業の内定者イベント、学生との就活相談会などがその場にいるような臨場感を感じながら参加できる就活イベントとなっています。

Hired in the Metaverse:The New Frontier of Recruiting

出典:https://hirectapp.com/blog/into-the-metaverse

こちらのイベントは人材紹介会社のHirectが、Y Combinatorに支援されたスタートアップ30社のリクルーターと求職者200人が参加したメタバース就職イベントです。

このイベントの前半ではメタバース空間上に作成された講演会場でライブプレゼンテーションが行われ、ゲストがアバターで登壇し、パネルディスカッションや質疑応答の時間が設けられました。

講演の他にも、企業によるブース出展もあり、ブースの展示に近づくと自動で動画が再生されたり、ブース内に設置されたクリック可能なリンクから採用担当者に問い合わせのEメールを送ったり、企業のホームページにアクセスすることもできます。

さらには、ブースに滞在している採用担当者とその場ですぐ話しかけて会話することも簡単にできるイベントとなっています。

|採用面接にメタバースを活用している企業

ここまでは就職サービスにメタバースを活用している事例について紹介してきました。

ここからは採用面接にメタバースを活用している、

・株式会社ビヨンド

・On’yomi(オンヨミ)

・Aww

上記3つ企業について、これらの企業がどのようにメタバースを採用活動に活用しているのか紹介します。

株式会社ビヨンド

出典:https://recruit.beyondjapan.com/1163

クラウド/サーバー事業を提供する株式会社ビヨンドは、2023年度新卒の採用で「バーチャル面接」を2週間限定ですが実施していました。

面接官・学生ともにアバターを使用し、名前・年齢・学歴・性別を公開せず一次面接を行うという非常にユニークな形で面接を行うことで、就活生もリラックスしながら面接に臨むことができ、

採用担当者も就活をしている学生の内面や素の姿、人間性に加え、エンジニアへの素質などを固定概念に捉われず、フラットな状態で的確に把握できる採用活動となっています。

また、使用するアバターの外見を学生が自由にカスタマイズできるようにすることで、ビヨンドのエンジニアに求められるコミュニケーション能力や、通常のオンライン面接では知ることのできない学生の個性や創造性を探れる採用活動になっています。

On’yomi(オンヨミ)

出典:https://dime.jp/genre/1371337/

PR・コミュニケーションエージェンシーの「On’yomi(オンヨミ)」は、従来の対面面接、オンライン面接に加えて、メタバースで実施する「メタバース面接」を行いました。

こちらのメタバース面接では、Meta社が提供する「Horizon Workrooms」を活用し、アバター同士で会社説明や採用面接を行うといった内容となっています。

オンヨミは現在、採用活動に注力していますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でオンラインでの面接も増えている中、オンライン面接だとアイスブレイクをして、学生の方にリラックスした状態で面接に臨んでもらおうとしても、対面と比べてどうしてもぎこちない雰囲気になってしまうという課題点がありました。

そこで、アバターを用いて面接を行うメタバース面接を実施することで、企業側と求職者側という雰囲気が薄まり、とても柔らかい雰囲気の中で会話を進めることができ、オンライン面談より本人らしさを引き出せることができるようになっているのをオンヨミの採用担当の方も感じているそうです。

Aww

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000049507.html

仮想空間内にアバターを登場させるバーチャルヒューマンをプロデュースしているAwwは、世界的に普及しているメタバース空間「Decentraland」内で世界初という、採用選考の面接を実施しました。

Decentralandとは、歴史が長いとされるメタバース構想のブロックチェーンプロジェクトであり、Decentraland内にユーザーによって様々な施設が創出され、その施設を利用者として楽しむことができる他、Decentraland内の土地であるLANDを購入し、そのLAND上に自分のコンテンツを作り上げることもできるメタバースプラットフォームです。

このメタバース面接では、採用候補者を「Decentraland」の面接実施区画に案内し、採用担当側、求職者側がアバターを作成して登場し、会社案内などを行ったのち面接が行われ、一般的な面接よりもカジュアルなコミュニケーションを実現しました。

実際に面接を受けた採用候補者の後日談では、「面接実施場所は畑のような場所で、故郷の田舎を思い出しながらリラックスして話ができた」と感想を述べているそうです。

|メタバースでの就職活動の課題

ここまで、就活サービスを提供しているメタバースや、採用面接にメタバースを活用している企業をご紹介してきて、メタバースでの就職活動や採用面接は非常に実用的であり、将来性があるのがお分かりいただけたかと思います。

しかし、メタバースはまだ生まれたての分野ということもあり、様々な課題点が存在します。次はそんなメタバースでの就職活動における課題についてご紹介していきたいと思います。

課題点としてまず挙げられるのが、VRデバイスがまだ普及していないという点です。

メタバース面接では、トラッキングデバイスやVRゴーグルなどを用意する必要があり、まだそこまでVRデバイスが普及していない現在では、求職者の方々にそれらデバイスを用意していただくのは負担が高いといえます。

VRデバイスがなくてもブラウザから参加できるメタバース面接も存在しますが、VRデバイスを用いた面接と比べると臨場感やコミュニケーションの取りやすさでは劣ってしまいます。

次の課題点として挙げられるのが、メタバースプラットフォームアプリのインストールなどに手間がかかってしまうという点です。

メタバース面接には基本スマートフォンやパソコンからでも参加はできますが、その場合もインストールからログインまで求職者自身がやらなければならず、非常に手間がかかるといった点もメタバース就活の課題点といえるでしょう。

|まとめ

本記事では、メタバース上で行う就活に興味関心のある求職者やメタバースでの採用活動が気になっている人事担当の方に向けて、コロナ禍でのリモート面接の現状とそのメリットとデメリット、また、就職活動支援サービスを提供しているメタバースや採用活動にメタバースを活用している企業について解説しました。

この記事が皆さんの就職活動や採用活動に少しでもお役に立てれば幸いです!