本記事では、メタバースとSNSの関係について解説します。
GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)やスタートアップ企業がこぞって参入をしているメタバースによって、今後SNSがどのように変化するのか、次世代のSNSが私たち自身にどのような影響を与えるのかについて説明しますので、最後までご覧ください。
目次
|メタバースの種類

メタバースとは、meta(超越した)とuniverse(世界)を組み合わせた造語であり、インターネット上に創られた仮想空間を意味します。
これまでの記事で、多くの企業がメタバース参入を掲げていることを紹介してきました。
また、最近では企業だけでなく、国としてメタバースを成長戦略として打ち出す国も出てきています。
その中の一つとして、韓国では、2022年1月の非常経済中央対策本部会議において、メタバースがもたらす経済・社会変化がどのように経済の新たな活力につながるのか、また理想とするメタバース社会を実現するために必要なことは何かという論点をとりまとめた「メタバース新産業先導戦略報告書」を発表しており、そのなかで、メタバースを利用用途別に3種類に分類しています。
「社会関係形成メタバース」
「デジタル資産取引メタバース」
「リモート協業支援メタバース」
今回解説するSNSメタバースは、「社会関係形成メタバース」に分類されます。
・社会関係形成メタバース
まず1つ目は「社会関係形成メタバース」です。
遊び、集会などを通じて余暇活動及び社会関係形成を行うこと目的としているメタバースになります。
某「社会関係形成メタバース」は、180か国で1日あたり4,300万人を超えるアクティブユーザーを有しており、社会関係形成メタバースの代名詞と言われています。
そのメタバースでは、それ自体を1つの社会・コミュニティとして認識できるような様々な工夫がなされています。
・デジタル資産取引メタバース
2つ目は「デジタル資産取引メタバース」です。
仮想空間や仮想不動産、仮想商品などを取引することを目的としており、暗号資産を発行する企業が運営しているケースが多いメタバースになります。
メタバース仮想通貨をメタバース内での通貨として取引することができます。
取引が可能な空間、不動産、商品にはNFTが使われ、ユーザー同士でそれらの売買が行われることも多いです。
・リモート協業支援メタバース
3つ目は「リモート協業支援メタバース」です。
オンライン会議ツールをさらに進化させ、リアルオフィスのように従業員とのコミュニケーションができるメタバースになります。
IT企業が主に展開している事例が多くみられ、そこでは、3DCG技術を使うことにより、人物、オフィスの椅子、机、資料に至るまでを立体的に感じることが出来るため、リアルなオフィスと同様の雰囲気を創り出すことができます。
|従来のSNSとの違い

それでは社会関係形成メタバースに分類され、今回のテーマとしても挙がっている「SNSメタバース」が従来のSNSと比べてどのように変化しているのか2つの大きな違いをもとにみていきましょう。
ユーザーが主体となっている
1つ目の違いは「ユーザーが主体となっているメディアである」という点です。
従来のSNSにみられるようなテキストベース・コミュニケーションではテキストのみ、あるいは近年では静止画像や動画、GIFなどが用いられることもあります。
それに対してSNSメタバースでは仮想空間上に身体が存在するアバターがその主体となります。
同時に、アバターは他のユーザーに従来のSNSよりも、ユーザー主体のカスタマイズ性を多くもたらします。
従来のSNSでは自身をユーザー名やアイコン画像などによって、カスタマイズして公開することが一般的でした。
しかしSNSメタバースでは、ユーザーはアバターを用いることで、自身に関わる身体的特徴の全てをカスタマイズして表現することが可能になります。
ユーザーは性別や肌の色、体格や髪形など、従来のSNSよりも多くの自身に関する情報をアバターで表現し、他のユーザーに公開することができます。
アバターベースのコミュニケーション
2つ目の違いは「アバターベース・コミュニケーションである」という点です。
アバターによって対面コミュニケーションを行うことで、従来のSNSでは得られなかった情報をユーザーは得られます。
メタバース内でのコミュニケーションは、基本的にテキストチャットが基本となりますが、そこには画面上に存在する身体であるアバターがもたらす全体情報が加わります。
具体的には、相手のアバターの動き、相手のアバターの外見、共有するコミュニケーション空間の雰囲気、という3つの情報になります。
そのため初対面の相手とコミュニケーションを行う場合でも、テキストベースでは文字情報だけが相手を判断する情報だったのに対して、より深く、総合的に相手が持つ属性に関して知ることができます。
それに加えて、身体表現や空間属性(アバター同士の距離や目線、ジェスチャー、場の雰囲気など)の発する情報も他のユーザーに発信することになります。
|SNSメタバースの事例
ここまで従来のSNSと新たに生まれたSNSメタバースの違いについて深掘りしてきましたが、実際に現在リリースされているSNSメタバースはどのような特徴があるか、その主だったサービスを紹介していきます。
・ZEPETO

出典:https://play.google.com/store/apps/details?id=me.zepeto.main&hl=ja&gl=US
まず初めに紹介するのは「ZEPETO(ゼペット)」です。
ZEPETOは、自分そっくりのアバターが作れるアプリです。
現在、アバター作成アプリもさまざまなサービスが存在しますが、ZEPETOには以下の特長があります。
- アルバムの写真と合成できる
- ZEPETO同士で集まって写真や動画を撮影できる
- 撮影した写真を加工できる
- インスタグラムにアップできる
- メッセンジャーアプリ用に絵文字を作成できる
ZEPETOでは他のアバターをフォローしたり、フォローされたり、アバター同士でメッセージを交換したりといった交流もできます。
また、ZEPETOは韓国発の写真加工アプリ「SNOW」が運営しているアプリなので、作成したアバターをさらに加工して、SNSにアップすることも出来ます。
韓国や中国といった海外ユーザーが多く、メッセージ機能でつながることができることも特徴です。
アプリのレーティングはiOSが12歳以上、Google Playでは3歳以上と全世代対象ではありますが、子どもに使用させるときは保護者と一緒に使っていただく方が安全です。
・ROBLOX

出典:https://www.roblox.com/?locale=ja_jp
次に紹介するのは「ROBLOX(ロブロックス)」です。
ROBLOX内では、ユーザーはメタバース上で様々な経験を積むことが出来ます。
ROBLOX内で最もアクセス数が多い「Brookhaven」というエリアは、自分のアバターを通じて同じ趣味を持つ世界中の人とコミュニケーションを取ったり、一緒に行動したりできる「SNSメタバース」になっています。
また、現実世界と同様に、病院、警察、スーパーマーケット、飛行場などの公共・商業施設が存在します。
ROBLOXで体験できるエリアは、「Brookhaven」のみならず、アクション体験ができる「Tower of Hell」、ロールプレイング体験ができる「Adopt Me!」など多岐にわたっています。
また、ロブロックスに接続している国はアメリカ、ブラジル、イギリスなどとなっており、世界中の人が参加しています。
利用者数も2020年で1日あたり3,260万人だったアクティブユーザー数は、2021年には180か国、5,000万人近くに成長している再注目のSNSメタバースです。
・MINECRAFT

出典:https://www.minecraft.net/ja-jp
3つ目に紹介するのは「MINECRAFT(マインクラフト)」です。
2013年ごろに流行し、今ではその教育的効果に注目が集まっています。
一般的なプログラミング教室だけでなく、一部の学校でも教材として使われているものになります。
MINECRAFTはよくデジタル版のブロック遊びと言われます。
ワールド内のすべてが立方体のブロックでできており、ブロックを採取したり、建築を行ったりすることができます。
MINECRAFTには4つの魅力「冒険」「採掘」「牧畜」「建設」があります。
資材を採掘するために冒険へ出たり、建物を建設するために必要な資材を採掘したり、牧畜するために柵を建築したり、各魅力が相互的に影響を及ぼすことによって学びを深めることが可能になっています。
MINECRAFTを体験するには「Java版」と「統合版」の2種類があるので、扱えるゲーム機やPCが異なります。対応機種は、以下の通りです。
Java版:PC(Windows、Mac、Linux)
統合版:PC(Windowsのみ)、ゲーム機(Switch、PS4、Xbox One)、スマホ(iOS、Android)
・FORTNITE

出典:https://www.epicgames.com/fortnite/ja/home
最後に紹介するのは「FORTNITE(フォートナイト)」です。
FORTNITEはEpic Gamesが2017年にリリースしたマルチオンラインゲームで、Windows、PlayStation 4/5、Xbox One、Xbox Series X/S、Nintendo Switchといったパソコンや家庭用ゲーム機に加え、Android端末など、幅広いプラットフォームで展開されています。
また、異なるプラットフォーム間での協力、対戦プレイに対応しているのも特徴です。
FORTNITEは、バトルロイヤルというゲームシステムを採用しており、100人のプレイヤーが、丸腰でひとつの巨大な島に降下し、武器やアイテムを収集しながらバトルを行い、最後まで生き残ったプレイヤーが勝利するというルールです。
マルチプレイも可能なため、ボイスチャットを繋ぎながらプレイできるという特徴もあります。
また、パーティーロイヤルというモードでミュージシャンのライブや映画の上映が行われることもあります。
2020年4月に開催されたトラヴィス・スコットのバーチャルライブでは、巨大なトラヴィス・スコットが登場し、曲ごとにフィールドが水中や宇宙空間に変わるという特別なステージが用意され、全世界1230万人以上のユーザーが参加しました。
|SNSメタバースの新たな可能性

ここからは従来のSNSからSNSメタバースに変わっていくことによって我々がどのようなことができるのか、どのようにコミュニケーションが変わっていくのか、SNSメタバースの新たな可能性について解説します。
複数の人格を持つ
現在SNSで複数のアカウントを持っている人は少なくないと思います。
趣味を発信するアカウントや、家族や友人に見られたくない内容を発信するアカウントなどを手軽に作ることができます。
それと同じようにSNSメタバースでも手軽に複数のアバターを作成することで、使用目的に合わせてアバターを使い分けることが可能になります。
あらゆる仮想空間が同時に存在し、各仮想空間で別のアバターで参加することで、そのアバターに入っているユーザー自身も人格を切り替えるようになります。
ですので、SNSメタバースを利用する多くのユーザーが複数の人格を有することになる可能性があります。
なりたい自分になる
5年ほど前までは、「仕事」というと、1つの会社に勤めて1つのオフィスに集い、首にはネクタイを締めて1日8時間も時間も拘束されるのが常識でした。
しかし、現在子供がなりたい職業として人気を集めているYouTuberはそういう働き方を革新的に変容しました。
YouTuberは、仕事に対して「時間」と「空間」の制約を取っ払った成功例になります。
同じような概念の変容はメタバースも加速されます。
SNSメタバースによって時間・空間だけでなく「身体」の制約からも人々は解放されます。
「好きなことをやって生きていく」からさらに一歩進み、「なりたい自分で生きていく」という流れに変わります。
メタバース内に入ってしまえば、もはやそれを操作している生身の人間の外見は一切関係ありません。
たとえビジュアルに自信がなかったとしても、メタバースではイケメンにも美人にもなれます。
このような見た目にとらわれない自身が確立されるようになります。
外見と人格の関係性が変わる
皆さんは「自分の顔がもっとイケメンだったらどうなっていただろう?」とふと考えることはないでしょうか?
もしイケメンだった場合、もっと人生に余裕が生まれるのではないか、もっと自分に自信が持てるのではないかと考えるでしょう。
イケメンになったら、もっと他人にやさしくなれたかもしれませんし、一方で、イケメンだからと言って他人に横柄な態度をとってしまうかもしれません。
この流れでピンときた人もいるとは思いますが、自身の外見は性格や態度に大きく影響を及ぼしているのです。
メタバースによって個人のアイデンティティが変容していくにつれて、アバターの外見的な特徴に引っ張られた新しい人格が形成されていく現象が起きてくると想像できます。
巷で話題になっているバ美肉おじさんなどは、美少女アバターとしてバーチャル空間に入って活動していることで、かわいいものが好きになるということが挙げられます。
誰もがクリエイターになれる
現在、メタバース空間を創造する「クリエイター」に誰もがなれるようになっています。
「SNSメタバース」では、自身のアバターを通じて様々な体験ができるが、その素晴らしい世界を創り出しているのはクリエイターです。
「SNSメタバース」では、誰もが空間作成ができる「コンテンツ制作ツール」が提供されています。
クリエイターは、自ら創りたいと思う「SNSメタバース」を構築し、世界中に展開できるようになります。
その空間が利用者の共感を得られれば、そのメタバースのアクセス数は増加し、発展してくようになります。
逆に人々の共感が得られなければ過疎化し、衰退してしまいます。
つまり、「SNSメタバース」での栄枯盛衰はリアルと同様で、「その場所が大衆に共感されるか」に係ってくるということになります。
現実世界で街づくりを行政や企業が行うのと同じように、メタバースではクリエイターがその創造力と「コンテンツ制作ツール」を駆使することにより、利用者に共感される場所づくりを行うようになります。
|まとめ
今回は、メタバースによって今後SNSがどのように変化していくのかについて解説しました。
従来のSNSとは大きく異なっている点がコミュニケーションの方法にあることや、SNSメタバースによって私たちの人格にいい意味でも悪い意味でも大きく影響を与えることがわかっていただけたかと思います。
メタバースによってあらゆる制約が取り払われる未来において、自分がどうありたいかという自己価値が重要視されるようになります。
また、外見、障害の有無などにとらわれず、あらゆる人々が身体の制約を取り払って社会とつながれる『優しい世界』が訪れるようになると思います。