近年、製造業や建設業界を中心に「オムニバース」が注目を集めています。
しかし、具体的に何ができるのか、従来のメタバースと何が違うのかを正確に把握できている方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、NVIDIAが提供するプラットフォーム「Omniverse」の定義から、デジタルツインとの違い、具体的な活用事例、そしてビジネスの未来をどう変えるのかまでを網羅的に解説しますので、是非最後までご覧ください!
|オムニバースとは
オムニバースとは、米NVIDIA(エヌビディア)社が提供する、3D設計やシミュレーションのためのリアルタイム・コラボレーション・プラットフォームです。
このプラットフォームでは、現実に近い高精度なシミュレーションとビジュアライゼーションにより、デジタル上で効果的な実験・検証が可能となります。
メタバースの領域では、高性能なグラフィックスやAIの能力が必要とされており、Omniverseでは、NVIDIA社の高度なGPU技術やAI、ディープラーニングの技術が活かされています。
Omniverseを使用すると、複数のメンバーが仮想空間上の共通データに対して同時に編集やレビューを行ったり、シミュレーションやAIによる最適化を実施することができます。
これにより、従来現実で行っていた検証や、現実では実施できなかったものもデジタル上で再現することができ、多くの業務プロセスを加速させます。
このように、Omniverseは現代の製造業やデザイン業界におけるデジタルトランスフォーメーションを推進するための強力なプラットフォームとして注目されています。
オムニバースの定義とメタバース・デジタルツインとの違い
オムニバースの最大の特徴は、異なる3D制作ツールをリアルタイムで同期させ、仮想空間上で高度なシミュレーションを実行できる点にあります。
従来の3D制作では、ソフトウェア間のデータの互換性が課題となり、データの変換や受け渡しに多大な時間を要していました。
しかし、オムニバースはピクサー社が開発した「USD(Universal Scene Description)」というファイル形式を基盤に採用しています。
これにより、世界中の設計者やアーティストが、それぞれ異なるソフトウェアを使いながら、一つの仮想空間(デジタル世界)で同時に作業することが可能です。
ここで混同されやすい「メタバース」や「デジタルツイン」との違いを整理します。
メタバースとの違い
メタバースは主に「多人数が参加するコミュニケーションや経済活動の場」を指しますが、オムニバースはそのメタバースを構築するための「産業・技術基盤(プラットフォーム)」という位置づけです。
デジタルツインとの違い
デジタルツインは現実のデータを仮想空間に再現する「手法」を指します。
オムニバースは、そのデジタルツインを極めて高い精度(物理法則に忠実なシミュレーション)で構築・運用するための「環境」を提供します。
つまり、オムニバースは単なる視覚的な3D空間ではなく、物理法則に基づいた「エンジニアリングのための産業用メタバース基盤」であると定義できます。
|NVIDIA Omniverseの特徴
Omniverseの魅力は、単なる3D作成ツールとしての機能に留まりません。
その独自の特徴が、業界の新しいワークフローを築き、クリエイティブに革命をもたらす可能性を秘めています。
それでは、その詳細な特徴を一つずつ見ていきましょう。
リアルタイムコラボレーションで業界を変える
Omniverseは、多様なソフトウェアやツールとの間で、リアルタイムの共同作業を可能にするプラットフォームです。
デザイナーやクリエイターたちが、異なるツールを使用しても、同じプロジェクト上でスムーズに連携できます。
例えば、従来の映画やゲームの制作現場では、背景のモデリングチームやキャラクターアニメーションチームなどといったチームごとに作業を進めるのが一般的です。
この場合、一つのシーンを合成する際にデータの変換や準備・調整に多くの時間がかかってしまいます。
しかし、Omniverseを使用することで、両チームがリアルタイムで同じシーンにアクセスし、変更やフィードバックを即座に共有することが可能です。
これにより、ワークフローが大幅に効率化され、協業により新しいアイデアのきっかけとなることも期待できます。
高度なレンダリングでリアルな世界を構築
Omniverseは、その高度なレンダリング技術により、非常にリアルなメタバースの世界を構築します。
レンダリングとは、簡単に言うとデジタルデータをコンピュータの演算処理により、映像として可視化することです。
GPUメーカーであるNVIDIAは、このレンダリングに関して高度な技術を持っています。
Omniverseは、その技術を活かし、リアルタイムでの更新を可能にし、ユーザーが行う変更や調整を即座に映像に反映することができます。
さらに、Omniverseはパストレーシング技術も採用しています。
これは、光の動きをシミュレートして自然な影や反射を再現する技術で、美麗な映像を作り出します。
これらの技術の組み合わせにより、デザイナーやクリエイターは、現実に近い美しいビジュアルと物理的にリアルな仮想空間を効率的に制作することができます。
多様なDCCツールと連携、作業効率アップ
Omniverseの大きな特徴は、多様なDCC(Digital Content Creation)ツールとの連携が可能であることです。
DCCツールとは、3Dコンテンツの制作に関わるソフトウェアのことを指します。
例えば、3Dモデリングツールの「Maya」や「3ds Max」、ゲームエンジンの「Unreal Engine」など、業界で広く利用されているツールとシームレスな連携が可能です。
この連携のおかげで、異なるソフトウェアで制作されたデータやアセットを、Omniverse上に取り込み、共有や編集を容易に行うことができます。
従来は複数のツール間でのデータ変換や調整に時間を要していた作業も、大幅に効率化されます。
さらに、Omniverseのリアルタイムレンダリングやシミュレーション機能と組み合わせることで、デザインの確認や検証を迅速に行うことが可能。
これにより、クリエイティブの品質を向上させつつ、生産性も大きく向上することが期待されます。
|オムニバースで、できること
オムニバースを活用することで、物理法則に基づいた高精度なシミュレーションと、場所を選ばないリアルタイムな共同作業が可能になります。
異なるソフトウェア間のリアルタイム同期
従来、Aというソフトで作ったデータをBというソフトで編集するには、書き出しや変換作業が必要でした。オムニバースでは、各種3Dツール(Maya、Revit、Rhinoなど)をコネクタで繋ぐことにより、一方の変更が即座に共有空間へ反映されます。これにより、ワークフローから「データ待ちの時間」が消失します。
物理法則に忠実なシミュレーション
オムニバースには、NVIDIAの高度な物理エンジンが搭載されています。重力、摩擦、液体の挙動、光の反射(レイトレーシング)などが現実世界と同様に計算されるため、工場でのロボットの動きや、建築物の日照条件などを、実機を作る前に極めて正確にテストできます。
大規模な仮想環境の構築と多人数接続
クラウドやサーバーの演算能力を活用することで、都市丸ごと一つのデジタルツインとして構築し、世界中の担当者が同時にその空間にアクセスして会議や検証を行うことができます。
このように、オムニバースは「物理的な制約」と「ソフトウェアの壁」を同時に取り払い、設計から検証までのサイクルを劇的に高速化させることができます。
|オムニバースの活用例
すでに多くの企業や団体がOmniverseの機能を実際の業務に取り入れています。
特に、世界のトップ企業は、このプラットフォームのメリットを最大限に活用し、業務の効率化や新しい価値創出に成功しています。
具体的な活用事例を以下でいくつかご紹介いたします。
BMW:デジタルツインを活用した新工場の仮想計画
BMWは、未来の工場生産をバーチャル空間で実現しています。
2025年にオープン予定のデブレツェン工場計画において、次世代EVエンジン「Neue Klasse」の生産に向けたバーチャルプランニングをOmniverseを活用して進めています。
この工場は、BMWグループで初めて完全にバーチャルで計画・検証される生産施設です。
Omniverseでのリアルタイムのデジタルツインシミュレーションを行い、工場のレイアウトやロボティクス、物流システムを仮想的に最適化しています。
このアプローチにより、生産ライン全体での製造システムの検証と最適化が可能となり、拠点やタイムゾーンを超えた連携もスムーズに行えます。
さらに、BMWはOmniverseの活用を拡大する方針を示しており、今後は世界中のBMWの工場にもこの技術が導入される予定です。
Amazon:物流倉庫ロボティクス化
Amazonは、Omniverseを活用し、物流倉庫の効率化と最適化を目指しています。
最近の事例として、Amazonが初めて開発した完全自動倉庫ロボット「プロテウス」があり、その開発にOmniverseを利用し、大きな成果をあげています。
Omniverse上のデジタルツイン化された工場でプロテウスを稼働させ、学習、移動制御、群管理、ラインの流れ、ロボットアームのトレーニングなど、さまざまなシミュレーションが試されました。
これにより、プロテウスは、フロアに記されたマーカーの検出成功率を88.6%から98%に向上させることに成功しています。
このように、AmazonはOmniverseを活用して、物流倉庫のロボティクス化をさらに進化させ、効率的な運用を目指しています。
PepsiCo:流通センターの効率化
アメリカの飲料メーカーPepsiCo(ペプシコ)は、製品の流通をより効率化するために、Omniverseを活用して流通センターのシミュレーションを行っています。
このシミュレーションにより、センターのレイアウト変更のテストやワークフローの最適化が可能となります。
また、新しい製品やプロセスが追加される際にも、Omniverseを使ってリアルタイムでの調整や変更を行い最適化しています。
さらに、流通センター内の動きをリアルタイムで監視することで、予期しない問題やダウンタイムを未然に防ぐなど、日常的な運用サポートにも活用。
このように、PepsiCoはOmniverseの導入により、製品の流通を効率化しています。
英国原子力公社 :核融合エネルギー開発
英国原子力公社(UKAEA)は、核融合エネルギーの研究において、Omniverseを活用しています。
核融合エネルギーは、クリーンで持続可能なエネルギー源として大きな可能性を秘めていますが、その実現には高いハードルがあります。
夢のエネルギーとも言われる核融合エネルギーの実用化には、多くの実験や検証が必要で、実際に行うには莫大なエネルギーとコストがかかります。
しかし、Omniverseで核融合炉のデジタルツインを構築することでリアルタイムでのシミュレーションや検証が可能となりました。
さらに、異なるツールやアプリケーションを統合することで、多くの専門家とのコラボレーションもスムーズに行え、研究を強力に後押ししています。
このように、Omniverseは、核融合エネルギーの研究をさらに加速させ、夢のエネルギーの実現に大きく貢献しています。
Siemens Energy:発電所の予知保全
Siemens Energyは、NVIDIA Omniverseで発電所のデジタルツインを構築し、発電所運用における予知保全に活用しようとしています。
発電所内の水や蒸気の状態のリアルタイムデータを取得、物理ベースの機械学習モデルを用いて配管内の流れを正確にシミュレートし、高効率な運用を目指します。
さらに、Omniverseの高度な可視化機能を利用することで、配管の腐食や損傷の影響を即座に把握・予測することで、ムダのない設備保全を実現。
これにより、Siemens Energyによると、年間で約17億ドルのコスト削減が見込まれるとのことです。
発電所のデジタルツインの開発と運用が加速すれば、未来のエネルギーインフラの高効率化により、多くの人々がその恩恵を受けることになるでしょう。
|オムニバースの将来性
メタバースはインターネットの次の進化形態として注目されていますが、産業界におけるその具体的な活用法は長らく探求され続けてきました。
NVIDIA Omniverseは、この探求の一つの答えを示してくれています。
NVIDIAのCEO、Jensen Huang氏は、Omniverseがデジタルと物理の境界を超えた新しい次元の体験を提供すると強調しています。
さらに、最近のビックトレンドである生成AIとの統合により、Omniverseはさらなる進化を遂げようとしています。
これにより、より複雑なシミュレーションや未来予測モデルの利用を可能にし、これまで以上に強力で多機能なプラットフォームとしてあらゆる分野に拡大していくでしょう。
これらの動きから、Omniverseは産業界におけるメタバースの中心的な役割を果たしていくと予想されます。
|まとめ
本記事では、オムニバースの基本情報から、その魅力、実際の活用事例まで詳しくご紹介しました。
これまでの3D制作の常識を変える統合プラットフォームやオープンなクリエイティブ活動の実現など、Omniverseの新しい魅力を感じていただけたのではないでしょうか?
さらに、生成AIの統合により産業界のイノベーションを促進する起爆剤となるかもしれません。
ぜひこれを機にOmniverseを活用し、新しいクリエイティブ体験を試してみてください。




























