近年、モーションキャプチャー技術はゲームや映画などのエンターテインメント業界だけでなく、医療やスポーツなどの分野でも広く活用されています。
その中でも、ソニーが提供する『mocopi』は、手軽に高品質なモーションキャプチャーを実現できるとして注目を集めています。
本記事では、mocopiの優れた特徴や使い方について解説します。
モーションキャプチャーに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
|モーションキャプチャーとは
モーションキャプチャーは、3D動きを捉えてデジタル化する技術で、CGコンテンツ制作や医療、自動車評価など多岐にわたる用途があります。
主な方式は以下の通り。
- 光学式:高い位置精度を持ち、球型マーカーと専用カメラを使用して3D座標を計測。しかし、障害物やカメラの視界の制約がある点がデメリット。
- 慣性センサ式:センサを身体に装着し、加速度や角速度を測定して骨格モデルに適用。カメラ不要で場所に制約がないが、位置精度がやや低く、時間経過による誤差がある可能性あり。
- 画像式:複数カメラで対象物の動きを追跡し、マーカーレスでも計測可能。リアルタイム性は低いが、体に負担がかからず、広い場所で使用可能。
- 機械式:センサを関節に取り付けて姿勢を読み取るが、制限あり。
- 磁気式:磁界を使用して体の動きをキャプチャするが、金属が近くにあると制約が生じる可能性あり。
以下の記事もご参照くださいね。
モーションキャプチャーは意外と安価で買える
高価そうに見える本製品ですが、意外にも手頃な価格で入手できる製品がいくつかあります。
以下、主要なモーションキャプチャー製品の価格一覧です。
製品名 | 価格 |
HaritoraX 1.1 | 本体 33,900円(税込み) |
VIVEトラッカー(3.0) | 19,000円(税込み)※1つのトラッカーの価格 |
Uni-motion | 49,500円(税込み) |
ミチコンPlus | 無料(Pro版:370円/月) |
TDPT -Three D Pose Tracker- | 無料(iOS版には有料のプレミアムメニューあり) |
MocapForAll | 9,999円(税込み)※無料体験版あり |
それぞれの製品については、以下記事を参考にしてください。
|mocopiとは
mocopiはソニーが発表した小型モーションキャプチャーです。
ソニーストアで4万9500円で提供しています。
これまで、VRのモーションキャプチャーは専用スタジオや高性能なパソコンが必要で、敷居が高い印象でした。
しかし、本製品は500円玉ほどの小型センサーを頭、両手首、腰、両足首の6箇所に装着し、スマートフォンアプリを設定するだけで、手軽にVRの世界に入り込むことができます。
専用スーツは不要で、バンドとクリップを使用してセットアップが簡単です。
また、完全ワイヤレスなので、手間がかかりません。
手軽さと高いパフォーマンスを兼ね備え、VR体験をさらに身近にしています。
ソニーはメタバース関連に注力している
ソニーがメタバース領域に注力する理由は以下の4つが挙げられます。
① メタバース市場の魅力: メタバース市場は急成長し、国内市場規模は2021年度に約744億円で、2026年度には約1兆円にまで成長予測されている。
② 強力な事業基盤: ソニーはゲーム、音楽、映画スタジオなどエンターテインメント領域で強力な事業基盤を有しており、メタバース展開の土台として適している。
③ 要素技術の所有: ゲームや音楽事業を通じて、ハードウェアからソフトウェアまで多くの要素技術を開発してきており、メタバースで活用可能。
④ ソニーのパーパスとのマッチ: ソニーの存在意義である「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことが、メタバース空間と非常に相性が良い。
|mocopiの特徴
mocopiは、「メタバース市場に大きな変革をもたらす」と言われており、期待と注目を集めています。
以下で、本製品の具体的な特徴を4つに分けて説明しています。
スマホアプリで利用できる
本製品は、スマホアプリを通じて本格的なモーションキャプチャーが可能です。
iOSとAndroidに対応しており、スマホさえあれば、すぐに始められます。
アプリの操作もシンプルで、データの取得、録画、保存、伝送などの一連の操作がスマホアプリ内で完結。
アバターデータの取得やモーションの収録、録画データの保存、主要なファイル形式での書き出し、さらにはアバターと背景画像の合成なども、便利かつ簡単に行えます。
場所を問わず使える
通常、モーションキャプチャーは大規模な施設や専用のスタジオが必要で、カメラやマーカーの配置に場所を制限されます。
しかし、本製品iは軽量かつ小型のセンサーを身体に装着するだけで、室内でも室外でも利用可能です。
バッテリー持続時間は最大約10時間で、防水性能(IPX5/IPX8)と防塵性能(IP6X)も備えています。
ただし、水中では常温水を想定しているため、海などでの使用には注意が必要です。
他ツールやプラットフォームと連携できる
本製品は、他のツールやプラットフォームとの連携が可能であることも特徴的です。
開発ツールのパッケージである「SDK」を使用することで、mocopiで収集したモーションデータをリアルタイムでPCに送信し、3D開発ソフトウェアで編集したり、外部アプリで即座に配信したりできます。
また、VRChat、Unity、MotionBuilder、バーチャルモーションキャプチャーなどのソフトウェアを公式にサポートしています。
アプリの開発も可能
本製品はアプリの開発も可能で、デベロッパーサイトではSDKやプラグインが提供されています。
このSDKを利用することで、独自のスマートフォンアプリやUnityアプリを開発できます。
また、デベロッパーサイトでは、mocopiオリジナルアバター「RYNOSちゃん」のアバターデータ(VRM)も提供されています。
独自のアプリやコンテンツを開発することで、新たなユーザー体験を可能にしていると言えるでしょう。
|mocopiの活用シーン
実際に本製品を使用することで、どのような楽しみ方ができるのでしょうか。
活用シーンとして代表的なものを3つ、以下でご紹介します。
Vtuberの撮影や配信
本製品は、カメラとスマホを組み合わせたモーションキャプチャーシステムです。
そのため、カメラの前にスマホを置き、スマートフォンをVtuberの顔に向けるだけで、動きをリアルタイムにキャプチャーできます。
これを活用することにより、Vtuberは、より自然で滑らかな動きや、表情の細かな変化もリアルに表現できます。
ダンスや歌などの動画やライブ配信などでVtuberの表現力を向上させる、強力なツールと言えます。
アニメーションの制作
従来のモーションキャプチャーには、高価な装置や専用スタジオが必要でしたが、本製品を使用することで、手軽かつリーズナブルに高品質のモーションキャプチャーが可能となります。
さらに、本製品は多くのファイル形式に対応し、他の制作ツールとの連携も容易です。(UnityやMotion Builder等)
この革新的なテクノロジーにより、アニメーション制作のクオリティが向上し、制作プロセスがスムーズに進行します。
メタバース空間へのアクセス
近年、メタバースが注目を浴びる要因の一つは、オンライン環境であっても、詳細な表情やリアルな身振り手振りなど、情報の豊かなコミュニケーションが可能であることです。
本製品をメタバースで活用することにより、これまでに比べて難易度の高かった下半身を含む全身のモーションキャプチャーが実現でき、メタバース内でのコミュニケーションが対面のような臨場感を持つものになると期待されています。
|mocopiの使い方
モーションキャプチャーセンサーの連携からスタートし、装着手順、モーションデータの生成と保存、そしてデータの転送まで、わかりやすく使い方をガイドいたします。
mocopiがお手元に準備できた方は、この記事を参考に使用を開始してみましょう!
専用アプリをインストール
まずは、「mocopi」アプリをインストールします。
お手持ちのスマホによっては、うまく作動しないこともありますので、公式サイトにて動作確認済みスマホモデル及びOSであるかどうかを確認しておきましょう。
アプリが起動できたら、トップ画面に「セットアップからはじめる」と表示が出ますので、それをクリックします。
センサーとペアリングする
まず、センサーとスマートフォンをBluetoothで連携させる作業が必要です。
各センサーの中央にあるボタンを長押しして電源をオンにし、バック面に記載されたシリアル番号をスマホに登録します。
全てのセンサーを登録し終えたら、接続の手順に進みます。
なお、この操作は初回のみ必要ですので、一度行えば以降は不要です。
センサーを装着する
まず、HEAD、WRIST(手首)、HIP、ANKLE(足首)用のバンドのアタッチメントに、それぞれ適切なセンサーを取り付けます。
各バンドにセンサーをしっかりと取り付けたら、それらを対応する部位に装着します。
センサーをバンドに取り付ける際には、センサーが回転しないように、しっかりと固定されていることを確認してください。
センサーを取り付けたら、準備完了です。
なお、取り外す際は、両サイドにある爪を押しながら、斜めにしてセンサーから取り外します。
キャリブレーション設定
「キャリブレ―ション」(※)と表示された画面で、ご自身の身長を入力します。
「次へ」を選択し、キャリブレ―ションを開始して下さい。
「音と振動の合図で一歩前に」足を出すなど、指示に従って身体を動かします。
(※)キャリブレーション(Calibration)は、測定機器やセンサーなどの計測装置を正確に調整して、正確な測定やデータ収集が行えるようにするプロセスを指します。
アバターや背景を選ぶ
画面上部の「アバター」および「背景」を選択することで、アバターや背景を切り替えることができます。
なお、アバターは、VRoid Hubから読み込むことも可能です。
また、背景では、「AR背景モード」を活用すると、現実空間にアバターを組み込んだ動画を制作できます。
ただし、この機能は高い処理負荷がかかるため、スマートフォンの性能や周囲の環境によっては、端末の温度が上昇する可能性があります。
その場合、安全のためにアプリケーションの一時的な利用停止が発生することがあります。
|まとめ
今回の記事では、ソニーのモーションキャプチャーシステム『mocopi』について、その主な特徴や使い方について解説してきました。
本製品は、手軽に人やモノの動きをデジタル化することに成功し、その質も大変高いものであることが特徴です。
また、他ツールやプラットフォームと連携できるため、さまざまな用途で活用できます。
この記事を読んだことで興味が湧いた方は、ぜひ本記事の内容を参考に、mocopiを試してみてはいかがでしょうか。