日常を慌ただしく過ごす現代人にとって、カウンセリングの重要性はますます高まっています。
しかしながら、日本国内においてカウンセリングを日常的に受けているという方は多くありません。
カウンセラーという専門知識を持っている医師が相手だとしても、他人に対して自己開示するといったハードルの高さを感じてしまうのです。
家族や友人といった気心知れた相手との会話で、精神的な安定が得られるのであれば問題ありませんが、中にはそう簡単には解決できない悩みも存在します。
そういった状況に陥った時こそ、カウンセリングを受ける必要があります。
「でも、初めての人と対面での会話は緊張する」
受診以前にこういった悩みを持ってしまうかたもいらっしゃるでしょう。
本記事では、受診のハードルを大きく下げる「メタバース」を活用したカウンセリングについて紹介します。
現実世界とは異なるメタバース空間において、お互いがアバターとなって話すカウンセリングは現実世界では味わえない会話体験になります。
「誰かに悩みを聞いてほしい」といった考えをお持ちの方はもちろん、「興味があるけど一歩踏み出せない」といった方もぜひ最後までご覧ください。
目次
|メタバースを利用したカウンセリングサービス
近年、労働環境や人間関係に起因するストレスや悩みによって生じる「メンタルダウン」という言葉に注目が集まっています。
厚生労働省が行った調査によると、仕事を通じて精神的な負担を感じている人の割合はなんと80%以上にものぼります。
そうした労働者のメンタル面を守るために、産業医によるカウンセリングを実施している企業は多いですが、慣れないサービスの利用に一定のハードルを感じる人が多くなっているのです。
そこで、メタバースという仮想空間を通じた受診サービスが現在では登場しています。
メタバース空間では南国やクルージングといった、非日常な環境を背景として、専門知識を持つカウンセラーとアバター姿を通じて会話が可能。
物理的に移動する必要も無いため、自宅といったリラックスできる空間などから、いつでもどこでも受信できるメリットも持っているのです。
現在では各社から様々なサービスがリリースされています。
こちらでは、代表的な以下のサービスをそれぞれ紹介します。
- MentaRest
- メタバースこころの相談所
- メタバースクリニック
- メタバース カウンセリング支援サービス
- LUCY
MentaRest
「MentaRest(メンタレスト)」は、2021年10月に株式会社MentaRestによってリリースされたサービスです。
これまでのサービスの多くは、すでに起きた不安や悩みを解消する内容が多くなっていますが、MentaRestでは「未然予防」の観点からアプローチが可能。
精神的な不調をきたす前に対処することで、常に健全な状態で日々を過ごせるのです。
在籍するカウンセラーは臨床心理士といった資格保有者に限定されており、科学的根拠に基づいた専門的な対応が強みとなっています。
月次での運用レポートといった共有も行っており、企業が従業員の心身の健康を守ることを想定して幅広い業界で利用されています。
MentaRestについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
メタバースこころの相談所
2023年7月に株式会社VR Healthcareが提供を開始した「メタバースこころの相談所」は、匿名性を担保した上での受診環境が強みです。
同社はもともとVR空間上における医療相談サービスを実施しており、2022年7月からはVRChat上において「VR医療相談集会」などの運営を行っていました。
その中で、VRヘッドセットといった専用機器の必要性が、メタバースを始めとしたVRサービス普及の足かせになっていると判断。
そのため、「メタバースこころの相談所」では、スマホやPCといった一般的な端末を通じた利用が可能となっています。
アバターを通じた仮想空間での受診という強みは残しつつ、アクセスしやすい環境を提示することでより幅広い年代を対象にメタバースカウンセリングを提供しているのです。
メタバースクリニック
「メタバースクリニック」は、精神的な不調を抱える方だけではなく、そういった症状を持つ家族を持つ方へも向けた無料コミュニティです。
精神科医や公認心理士といった専門家による情報提供や、当事者同士での悩み相談、自助グループといった活動をメタバース上で行っています。
1人ではもちろん、家族揃っての参加が可能になっているため、誰でも気軽に参加できる点が魅力の1つといえるでしょう。
参加者は匿名アバターを通じて質疑応答ができますので、現実世界では相談しにくい内容も比較的気軽に発言できます。
対象となる症状については気分障害やパニック障害、不安障害、アルコール依存など多岐に渡るため、「誰かに相談したいけど、どうすれば分からない」といった状況で力になるはずです。
メタバース カウンセリング支援サービス
「メタバース カウンセリング支援サービス」は、仮想空間プラットフォームである「DOOR」において提供されているサービスです。
病院関係者を対象に提供されており、メタバース導入に関する費用から流れといった不明点の解決を目的にしています。
予算に応じてメタバース空間のレイアウトやアバターデザインをカスタマイズできますので、医療業界におけるデジタル化を促進させることが期待されています。
本サービスを通じて開始されるメタバースカウンセリングにおいても、当然相談者に対する匿名性は担保されています。
個人の診療所やフリーで受診を行っている方などの導入が可能となりますので、メタバースの利用がより一層普及するきっかけになるはずです。
LUCY
「LUCY」はZOOMを利用し、アバター姿を通じて受診できるサービスです。
メタバース空間上において、誰にも知られず好きな時間、場所でリラックスして相談を受けてもらえる環境が魅力。
「LUCY」のカウンセリングは自分を知り、自分の幸せを考えるという2点を重視して行われます。
相談者の気持ちに寄り添った受診内容は、日頃の悩みをスッキリと解消するきっかけになるはず。
ZOOMを利用しているため、スマホやPC経由で気軽に参加できます。
心理的なケアだけではなく、キャリアコンサルティングやファイナンシャル・プランニングといった幅広い相談に対応していますので、様々な課題を解決する助けになるでしょう。
|メリットの多いメタバースカウンセリング
アバター姿を通じて相談できるメタバースカウンセリングには、多数のメリットが存在しています。
こちらでは、その中でも特にお伝えしたい以下の内容を解説します。
- 心理的ハードルを下げる
- 場所や時間に縛られない
心理的ハードルを下げる
カウンセリングは他者に自分の悩み、つまりは内面をさらけ出すといった一面を持っています。
そのため、いくら精神科医や臨床心理士といった専門家が相手であっても、初めての受診は心理的ハードルが高くなってしまいます。
また、「変だと思われたらどうしよう」や「こんなことを話すとおかしいかも」といった気持ちが先行してしまい、受診したとしても心からの本音を言えないケースもあります。
しかし、アバター姿を通じて非現実的な空間で実施されるメタバースカウンセリングでは、こういった課題を軽減させ、受診に対する心理的なハードルを下げる効果を持つのです。
場所や時間に縛られない
メタバースを通じたカウンセリングは、自宅からでも出先からでも受診できます。
現実世界にて受診する場合、移動時間といった制限が多くなってしまいますが、そういった面倒な問題を全てとり払えるのです。
自宅のリラックスできる空間にて、心身ともに落ち着いた状態で相談を聞いてもらえれば、より一層悩みの解決に近づくはず。
通信環境さえ整っていれば受診できるという、時間や場所に縛られないメリットは非常に大きいといえるでしょう。
費用を抑えられる
メタバース空間を利用するカウンセリングは、物理的なスペースを必要としないため、運営側のコストも抑えられる特徴を持ちます。
結果的に、受診者が支払う費用も安価になる傾向にあるため、金銭的なハードルも低くなっているのです。
もちろん、受診時間や内容によって料金は変動しますが、一般的な対面カウンセリングと比較した場合料金は抑えられるはず。
気軽に安く相談できる環境は、メタバースならではのメリットです。
|メタバースカウンセリングのデメリット
非常にメリットの多いメタバースカウンセリングですが、以下のようにデメリットとも捉えられる部分も存在しています。
- ネット環境が必須となる
- 悩みが伝わりにくい可能性
ネット環境が必須となる
オンライン上で会話するメタバースカウンセリングですので、当然ネットへの通信環境が必要になります。
万が一、自宅にネット環境が整っていない場合は、プロバイダー契約といった事前作業から開始しなければいけません。
また、旅先といった自宅以外の環境で受診する場合においても、十分なネット環境が用意できなければ上手く繋がらない可能性も考えられるでしょう。
不十分なネット環境でカウンセリングを受けた場合、音声や映像の途切れなどからスムーズな会話が実現できないかもしれません。
ネット環境によって個人情報の漏洩、ウイルスへの感染リスクもゼロではないため、プライバシー保護やセキュリティが万全であるかの確認も必須です。
こういった作業に不慣れな場合、受診に対するハードルは上がってしまうでしょう。
悩みが伝わりにくい可能性
非日常的なメタバース空間において、アバター姿を通じて行わるカウンセリングでは、本来の悩みを十分に伝えきれない可能性も考えられます。
対面の場合は自身の仕草、目線、表情といった細かい部分からも、精神科医といった専門家は悩みの本質を見抜くことが可能です。
しかし、そういった情報が欠落してしまうメタバースカウンセリングの場合は、受診者自身の「言葉」がより重要になります。
加えて、ネット環境の不備などによって、上手く会話が進まないといったトラブルが発生すると、カウンセリング時間内に言いたいことが言えなかったということも起きるかもしれません。
|まとめ
近年、日本国内でも注目を集めているメタバースカウンセリングについて、その概要から実例、そしてメリットとデメリットを解説しました。
忙しなく活動する現代人にとって、体力面だけではなく精神的なケアも重要になっています。
精神の不調に起因する休職、退職といった話はすでに珍しいものではなくなりつつあります。
そのため、今後より一層カウンセリングという存在は必要性を増していくことが考えられます。
少しでもカウンセリングへの興味、受診への意欲があるという方は、ぜひ本記事の内容を参考にメタバースカウンセリングを受けてみることをおすすめします。