航空業界では、VR技術の活用が広がっています。
VR技術は急速に発展しており、現場で使えるような質の高いコンテンツが作られるようになってきたためです。
この記事では、航空業界でのVRの活用状況を詳しく説明します。
航空業界ではどのようにVRが利用されているのか、さらに具体的な活用事例についても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
|航空業界ですすむVR技術の活用
近年、航空業界でVRの活用がすすんでいます。
たとえば、欧州の航空業界ではVarjo製の超高解像度ヘッドセットが導入され、飛行訓練が行われています。また、日本でもANAやJALなどが相次いでVRの導入を行っています。
VR技術は航空業界における訓練や教育の効率化に大きく貢献しており、その活用範囲は今後さらに広がっていくと予想されます。
|なぜVR技術が使われるのか?
航空業界でVRが使われる理由には以下が挙げられます。
- リアルな訓練環境
- コスト削減
- 効率的な学習
- 顧客体験の向上
リアルな訓練環境:VR技術を利用すれば、パイロットや整備士はいつでも現実に近い環境で訓練を受けることができます。そのため、実際の飛行中に遭遇するかもしれない、さまざまな状況を安全に体験し、対応策を学べます。
コスト削減:VRを使用すると、高価な設備や機器を使用せずに訓練を行うことが可能になります。
そのため、訓練コストの大幅に削減が可能です。
効率的な学習:VRを利用すれば、バーチャル空間内に現実に似た状況を作り出せます。現実に近い環境で業務を疑似体験すれば、訓練の内容が身に付きやすくなります。
顧客体験の向上:たとえば、航空機の操縦体験ができるVRなど、航空会社はVRコンテンツの提供を通して顧客にアピールできます。
|VRが使われるシーン
航空業界でVR技術が使われるシーンには、例えば以下のようなものがあります。
- 飛行機の操縦体験
- 機体整備の研修
- 地上業務の訓練
- 客室乗務員の育成
それぞれのシーンについて詳しくみていきましょう。
飛行機の操縦体験
VRは飛行機パイロットの訓練に使われます。
VRは、現実の業務環境をリアルに再現できます。
そのため、パイロットは地形、天候条件、エンジンの故障など、様々なシナリオを体験することが可能。
飛行中に起こり得る危険な状況を体験できるので、安全な場所にいながら危険な状況への対処方法を学べます。
具体的な使用例としては、航空会社や軍事組織がVRを活用してパイロットの訓練を行っています。
また、一部の航空学校では、生徒が飛行スキルを向上させるための補助ツールとしてVRを使用しています。
このようにVRを使ったパイロットの訓練は、現実の飛行訓練を補完するための非常に効果的なツールとなっています。
機体整備の研修
機体整備の訓練にもVRが使用されています。
VRであれば、現実の整備環境をリアルに再現することができるので、訓練生が安全に、かつ効率的にスキルを磨くことができるためです。
たとえば、エンジンの故障や部品の交換など、様々な状況を体験することが可能で、整備作業中に起こり得る危険な状況をシミュレートできます。
これにより、整備士は危険な状況への対処方法を安全に学べます。
地上業務の訓練
VRは空港で行われている地上業務においても活用されています。
航空機の整備作業は非常に重要であり、正確な知識と技術が求められます。
VRを使用することで、実際の航空機を使用せずに、知識と技術を身に着けるためのリアルな整備作業の訓練が可能になります。
具体例としては、機体の牽引作業の訓練に導入されています。
牽引作業は、航空機を誘導路に運んだり、離れた格納庫まで運んだりする業務です。
牽引業務を行うには熟練した技術が必要なため、VRによる訓練によって作業員の技術の習熟が図られています。
客室乗務員の育成
VRは客室乗務員のトレーニングにも応用されています。
機内設備の取り扱いや緊急時の対応について、VRを活用することで効率的な学習を行い、より安全なフライトの実現につなげる努力が行われています。
|「VRの導入事例
ここからは、JALとANAのVRの導入事例について代表的なものを紹介します。
どの取り組みもVRの特性を十分に活かしており、業務の効率化やブランディングの強化に貢献しています。
JAL:航空機の牽引訓練
JALでは、航空機の牽引訓練にVRを導入しています。
牽引業務を行えるようになるには、専用車に航空機をつなげて押し引きする特殊な技術が必要で、習得するためにさまざまな訓練が必要になります。
本来、訓練には実際の運航可能な航空機を使用します。しかし、航空機は基本的に空港と空港の間を行き来しているので、訓練に使用できる時間は限られてしまいます。
そのため、技術を習得し、牽引作業を行えるようになるためには、3〜4か月という長い期間が必要でした。
そこで、航空機の利用状況に左右されることなく訓練を行えるよう、VRを用いた訓練が開発されました。
VRの導入によって実際の航空機を用いた訓練が必要なくなるわけではありませんが、それでも訓練時間の大幅な時間短縮が期待されています。
JAL:航空機操縦体験アプリの販売
JALには、旅客機・エアバスA350の操縦体験が可能なスマーフォンアプリを開発し、カレンダーとセットで販売した事例があります。
JALが毎年発売しているカレンダーに付加価値をつける目的で開発されたアプリで、現役パイロットの運航訓練の様子がVRで再現されていました。
コックピットの様子を360°の映像で体験できるコンテンツになっていて、リアルな体験を追及するため、機長や副操縦士がVR内に登場、管制官とのやりとりも収録されています。
まるで自分がパイロットになったかのような体験の提供を通じて、自社のブランディングに活かしたり、パイロット志望の若者を増やしたりといった効果も期待した取り組みが展開されました。
ANA:客室乗務員の教育・訓練
ANAは、高級業界でもいち早く客室乗務員の訓練にVRを導入した実績を持っており、VRを用いることで、訓練の質を高め、より安全なフライトを実現しています。
具体的な訓練の内容には、「機内設備のロック」や「緊急事態発生時の対応」などがあります。
【機内設備のロック】
調理器具などがしまわれている機内設備のロックが不十分だと、離着陸時に、中身が飛び出すなどして危険です。
そのため、忙しいスケジュールの中、限られた時間内で確実にロック作業を完遂する必要があります。
そこで、VRを使用して反復練習を容易にし、作業内容を体に染み込ませることで、正確で安全な業務を可能にしています。
【緊急事態発生時の対応】
緊急事態には、たとえば、機内での火災が想定されます。
実際に役に立つ訓練を行うには、状況を再現するのが効果的です。しかし、機内に火災を発生させることはできません。
そこで、VRを用いて火災の疑似体験を可能にし、炎の上がり方や煙の動きなど、状況のより深い理解を促すことで、正しい対処法の習得につなげています。
|まとめ:航空業界にもVR技術が使われている
この記事では、主に以下の内容についてお伝えしてきました。
- 高級業界でVRの活用がすすんでいる
- パイロットや客室乗務員、整備士のトレーニングにVRが使われている
- VRを利用することで、訓練のコスト削減や高い学習効果などのメリットがある
- JALやANAなどの航空企業でさまざまな活用事例が生まれている
VRの進歩は日進月歩、年々新しい技術が生まれています。今後もVR技術で、できることがどんどんと増えていくでしょう。
それに伴い航空業界でも、VRを活用する場面がこれまで以上に広がっていくと予想されます。VRの力で航空業界がどのように進化していくのか楽しみです。