「日本企業の生成AIの活用は遅れているのか

生成AIをどのようにビジネスに活用すればいいのか?

生成AI(ジェネレーティブAI)が何かと話題になる昨今、このような疑問を抱える方は多いでしょう。

そこで本記事では、そもそも生成AIとは何か、日本企業の生成AIの利用率の海外との比較を解説した上で、各業界ごとの注目の活用事例を18種類厳選してご紹介します。

生成AIは今後のビジネストレンドを牽引する要注目の技術です。

本記事を参考に、生成AIの最新トレンドについて理解して、効果的な活用法を見出していきましょう!

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目次

|そもそも生成AI(ジェネレーティブAI)とは?

生成AI(ジェネレーティブAI)は、AI(人工知能)の一種で、新しいデータやコンテンツを生成する能力を持つAIのことです。

2022年11月末にChatGPTがリリースされて以降、世界中で「生成AIブーム」が加熱し続けています。

しかし、生成AIとひとくちに言っても、具体的にはどのような技術を指すのでしょうか?

ここでは、生成AIについてなるべくわかりやすく解説します。

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コンテンツを生成できるAIである

生成AI(ジェネレーティブAI)を理解する上で最も重要なのが「コンテンツを生成できる」ということです。

従来の一般的なAI(人工知能)は、データ分析やパターン認識など、特定のタスクを効率的にこなすために設計されていました。

しかし、生成AIは新しいデータやコンテンツを自動的に作り出す能力を持っています。

例えば、あなたが「猫の絵を描いて」と頼むと、生成AIはその場で新しい猫の絵を作り出します。

また、「夏の旅行についての話を書いて」と頼むと、新しい旅行記を作成することも可能です。

このように、従来のAIはあくまでも「予測」や「分析」しかできませんでしたが、生成AIはその先の本来は人間がやるべきことである「コンテンツの生成」が可能なのです。

イメージが湧かないかもしれませんが、これの何がすごいのかというと、AIに関する専門的な知識がなくとも、誰でも簡単にAIを使えるようになった点です。

そのため、生成AIは現在世界で最も注目されている技術になりました。

LLM(大規模言語モデル)やNLP(自然言語処理)を利用している

生成AI(ジェネレーティブAI)の中核をなす技術が、LLM(大規模言語モデル)とNLP(自然言語処理)です。

LLM(大規模言語モデル)とは、非常に多くのテキストデータを使って訓練されたAIモデルのことを指します。

わかりやすくいうならば、人間にとっての教科書のようなものです。

人間が教科書や本を読んで知識を得るように、LLMは膨大なデータから言語のパターンやルールを学びます。

NLP(自然言語処理)は、AIが人間の言葉を理解し、使えるようにするための技術を指します。

わかりやすくいえば、人間にとっての脳のようなものです。

人間の脳が情報を処理し、理解し、意思決定を行うように、NLPはテキストデータを理解し、処理し、新しい文章を生成します。

LLM(大規模言語モデル)とNLP(自然言語処理)の技術の進展があったからこそ、ChatGPTのような高度な生成AIが誕生したのです。

機械学習やディープラーニングを利用して学習している

では、生成AIはどのようにして私たち人間と同じように学習しているのでしょうか?

結論からいうと、生成AIは機械学習やディープラーニング(深層学習)といった手法を用いてデータを学習しています。

機械学習とは、AIが大量のデータを使ってパターンやルールを見つけ出し、その知識を元に新しいデータに対して予測や判断を行う技術です。

例えば、たくさんの猫の画像を見せて「これは猫です」と教えると、AIは猫の特徴を学び、新しい画像を見ても「これは猫だ」と判断できるようになります。

人間で言えば、何度も問題集を解いてパターンを覚えるようなものです。

しかし、機械学習だけでは人間のように高度なアウトプットはできません。

そこで、ディープラーニング(深層学習)という手法を用いて、いわばAIに「考える力」を与えます。

詳しく説明すると非常に専門的になってしまうので割愛しますが、仕組みとしては人間の脳にある「ニューラルネットワーク」の構造を真似たものです。

つまり、機械学習でAIに大量のデータを学ばせた後に、ディープラーニングを使ってトレーニングすることで、生成AIは人間のような高度なアウトプットができるようになるのです。

「ChatGPT」と「Gemini」が主流になっている

生成AIは従来のビジネス環境を一新する可能性を秘めています。

そのため、現在世界各国の企業や研究機関がこぞって生成AIの開発競争をしている現状です。

しかし、現状で頭ひとつ抜きん出ているのがOpenAIの開発した「ChatGPT」といえます。

次いでGoogleの開発した「Gemini」が市場を独占しています。

OpenAIは2024年5月に最新モデルの「ChatGPT-4o」を発表し、2024年6月の最新の調査によると市場シェアは約6割に達しているとのことです。

Geminiも2024年2月に最新モデルの「Gemini 1.5」を発表していますが、シェアでいえばChatGPTに大きく遅れをとっている状況です。

(参考:Top Generative AI Chatbots by Market Share – June 2024)

現状を鑑みれば、生成AI市場におけるChatGPTの圧倒的な支持基盤は、今後も長きにわたって続くことが予測されます。

|生成AIで日本企業は遅れている?市場規模や利用状況を海外と比較!

「日本はITにおいて世界で周回遅れ」

つい最近までは、このような論調で日本のIT業界を論じるメディアも少なくありませんでした。

しかし、生成AI(ジェネレーティブAI)が登場して以降、日本にも勝機が見え始めてきています。

ここでは、生成AI市場における日本企業の立ち位置について、いくつかのデータをもとに世界と比較していきましょう。

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生成AI市場の約50%はアメリカが占める

出典:FORTUNE BUSINESS INSIGHT

まず知っておくべきなのは、生成AI市場の約50%はアメリカが占めているということです。

先述しましたが、現状主流になっている生成AIを開発しているのは、ほとんどがアメリカの企業です。

<生成AIセクターに強みを持つアメリカ企業一覧>

OpenAIChatGPTを開発し、生成AI市場で最も広く使用されるAIチャットボットを提供。コンテンツ生成やカスタマーサービスで利用。
Google LLCGoogle Gemini(旧称Google Bard)を提供。生成AI技術は検索エンジン、広告、コンテンツ生成ツールに応用。
Microsoft CorporationMicrosoft Copilot(旧称Bing Chat)を展開。企業向けアプリケーションやAzure AIサービスで生成AIを提供。
IBM Corporationデータ管理や分析ツールを提供。特に医療や金融分野での生成AI応用に強み。
Adobe Inc.画像生成やデザイン自動化ツールを提供。クリエイティブ業界で広く利用。
Amazon Web Services (AWS)生成AIツールとサービスを提供。Amazon BedrockやAmazon SageMakerが含まれる。
Nvidia Corporation生成AIのハードウェアソリューション(GPUなど)を提供。多くの生成AIアプリケーションで利用。

上記のように、いずれも名だたる大手ITテックが生成AI市場を牽引しています。

アメリカの経済状況や政策を鑑みると、生成AI市場において今後もアメリカの存在感は増していくと予測されます。

成長率(CAGR)ではアジアが最も高い

出典:GRAND VIEW RESEARCH

現状の生成AI市場のシェアはアメリカが独占している状況ですが、成長性においてはアジア太平洋地域が最も高いとされています。

アメリカは確かに市場を牽引してはいますが、生成AIに関する規制の動きも強まっており、2030年までの年平均成長率(CAGR)も約36%です。

これでも驚異的な数値ではありますが、アジア太平洋地域の2030年までの年平均成長率(CAGR)は約38%と、アメリカ市場を上回る勢いです。

中でも、中国政府はAI技術を国家戦略として位置づけ、多額の資金を投入しています。

Baidu、Alibaba、Tencentなどの中国系大手ITテックも生成AI基盤の開発に着手しており、2023年時点での市場規模は約31.5億米ドル(約4945億円)と予測されています。

中国の他にも、日本、シンガポールなどもAIを国家戦略として位置付けており、生成AI市場においてアジア太平洋地域は重要なセクターとなりつつあります。

日本は中国と並ぶ生成AI先進国になりつつある

出典:Japan Generative AI Market size Report

アジア太平洋地域の成長率は今後非常に期待できる数値を示していますが、その中でも日本の存在感は無視できないものとなっています。

日本の2023年時点での生成AI市場の市場規模は約917.2百万米ドル(約1440億円)と発表されており、中国の3割程度です。

しかし、中国の人口は現時点で約14億人で、日本の人口は約1億2500万人です。

この事実を加味して計算すると、中国の一人当たりの生成AI市場規模が約357円なのに対し、日本は約1,152円と約3倍以上の数値となります。

こうしてみると、日本が生成AIに対してどれほど注力しているかが理解できるでしょう。

日本は世界で最も少子高齢化が進行している国の一つであり、その解決策を生成AIに見出そうとしています。

日本政府も2023年5月に「AI戦略会議」なる専門組織を立ち上げており、官民連携でAIの導入を進めています。

日本は日本語モデルを開発できるかが鍵になる

今後、日本企業で生成AIの活用を進めていくためには、国産の言語モデルを開発できるかが鍵になっています。

しかし、これが大きな壁として立ちはだかっているのも事実です。

日本語はご存知の通り、非常に難解な言語として有名です。

漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字はもちろんのこと、話者によっても言葉の意味が変わります。

その他にも尊敬語、謙譲語、丁寧語など、英語と比較するととてつもなく複雑な言語です。

なんとなく想像がつくかもしれませんが、これらの要素をAIに学習させるのは非常に困難と言わざるを得ません。

ChatGPTなどのほとんどの生成AIは英語の言語モデルを採用しています。そのため、日本語を入力して利用すると、どうしても正確さにかけてしまいます。

したがって、経済安全保障の観点からみても、今後日本で生成AIの導入を進めていくためには、日本語モデルを開発できるかが重要な鍵となるでしょう。

|【製造業】最新の生成AI活用事例3選

少子高齢化に歯止めがかからない現在の日本にとって、生成AI(ジェネレーティブAI)はまさに希望の光といえるかもしれません。

そのため、多くの日本企業が既に生成AIを活用しています。

ここからは、生成AIを活用している日本企業18社の事例を各業界ごとに見ていきましょう。

最初にご紹介するのは以下の製造業企業です。

  • パナソニックコネクト
  • 旭鉄鋼
  • オムロン

以下で詳しい活用事例をご紹介します。

1.パナソニックコネクト|ChatGPTベースのAIアシスタントを導入

出典:Panasonic Group プレスリリース

パナソニックコネクトは、生成AIを活用して業務効率の向上と社員のAIスキル向上を図っています。

2023年2月に導入された社内向けAIアシスタント「ConnectAI」は、社員がいつでもAIに質問できる環境を提供し、3カ月で26万回、1日約5,800回利用されています。

この実績は当初予想の5倍以上であり、特にプログラミングや翻訳に関する業務で特に効果が高かったとのことです。

さらに、ConnectAIは自社特化型AIへの進化を目指しており、2023年9月から公式情報を基にしたAIの試験運用を開始。

2023年10月以降にはカスタマーサポートセンターでの活用も予定されています。

AIの活用に際しては、企業固有の質問への対応や回答の正確性などの課題を克服するため、企業データの活用や音声入出力機能の追加も検討されているとのことです。

このように、パナソニックコネクトは業務の生産性向上とAIスキルの向上を実現し、日本企業全体の生産性向上に寄与することを目指しています。

2.旭鉄鋼|生成AIにデータを分析させてPDCAサイクルを改善

旭鉄工株式会社は、製造業における効率化とコスト削減を目指し、AIとIoT技術を組み合わせたシステムを導入しています。

従来、属人的な管理と非効率な作業プロセスが課題となっていましたが、iXacsシステムの導入により作業の見える化を実現し、無駄を削減することに成功。

この結果、2015年度比で年間約4億円の労務費削減、さらに2013年度比で電力消費量を26%削減することに成功しました。

iXacsシステムは、現場のデータをリアルタイムで収集・分析し、改善策を提示することで、活動サイクルの高速化と効率化を促進します。

この取り組みは、環境負荷の軽減にも寄与しており、製造業の持続可能な発展に貢献しています。

旭鉄工の事例は、AIとIoTの活用が製造業の課題解決に大きく寄与することを示しており、他の企業にとっても参考となるビジネスモデルといえるでしょう。

3.オムロン|自然言語で制御可能なロボットを開発

出典:オムロン 技術論文

オムロンは、生成AIを活用して多岐にわたるロボット開発を行っており、その革新的な取り組みが注目を集めています。

特に卓球ロボット「FORPHEUS」はその代表例で、人間のプレイヤーから学び適応することで、卓球のスキルを向上させることができます。

また、オムロンは産業用ロボットの分野でも生成AIを活用しています。

オムロンの産業用ロボットは、柔軟な生産ラインのためのロボットアーム、コントローラー、ビジョンシステムを備えており、AI技術を活用することで、製造プロセスの自動化と精度を飛躍的に向上させています。

|【建築】最新の生成AI活用事例3選

続いて、建築業界における最新の生成AI活用事例を見ていきましょう。

  • 鹿島建設
  • 大成建設
  • 株式会社mign

以下で詳しい事例をご紹介します。

4.鹿島建設|マイクロソフトと提携して自社専用AIモデルを構築

出典:鹿島建設 プレスリリース

鹿島建設は、2023年6月から自社専用の対話型AI「Kajima ChatAI」を約2万人の従業員を対象に運用を開始しました。

Kajima ChatAIは、日本マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceを活用し、ChatGPTと同等のAIモデルを使用して安全な社内環境を提供しています。

現在、1日平均1,000回以上の質問が行われ、業務効率化に大いに貢献しているとのことです。

具体的な活用事例としては、建築管理本部建築工務部生産推進サポートグループがシステム自動化のためのシナリオ開発に利用しています。

例えば、「VBS言語で複数のPDFファイルを結合したい」という指示を出すと、数十秒でコードが生成されます。

ITの知識がないメンバーでも、AIの助けを借りて迅速に作業が進められるため、従来は丸一日かかっていた作業が大幅に短縮されました。

また、翻訳、議事録作成、メール代筆など多岐にわたる業務で利用されており、全社的に生産性向上が図られています。

5.大成建設|社内に眠る膨大なデータを生成AIで簡単に検索可能に

出典:大成建設 プレスリリース

大成建設株式会社は、2023年12月に生成AIを用いた専門技術検索システムを開発しました。

本システムも、高いセキュリティ要件を満たすMicrosoft AzureのAzure OpenAI Serviceを利用して構築されています。

セキュリティ対策が施された安全な環境下で、社内の膨大な技術データや資料から必要な情報を迅速に抽出し、専門技術に関する質問に対して信頼性の高い回答を瞬時に生成します。

例えば、建築・土木の音響技術に特化した検索システムでは、必要な情報を短時間で回答することで、大幅な業務効率化と生産性向上を実現しました。

さらに、本システムは情報漏洩リスクを回避しつつ、技術の共有や次世代への継承を促進します。

大成建設は今後も、様々な専門分野においてこのシステムの適用領域を拡げ、更なる業務効率化と生産性向上に取り組む予定です。

6.株式会社mign|画像生成AIでリノベーション後のイメージを把握可能に

出典:株式会社mign stylus 製品紹介ページ

株式会社mign(マイン)は、生成AI技術を活用したSaaS「stylus(スタイラス)」を2024年5月にリリースしました。

「stylus」は、ユーザーが数十枚以上の画像をアップロードすることで、それらの画像のデザイン特徴をAIが解析し、新たな画像を生成します。

例えば、著名な建築家の著作権フリーの画像31枚を使用し、デザインスタイルを反映した画像を生成することが可能です。

使い方も非常に簡単で、生成したいデザインのタイトルを入力し、20枚以上の学習させたい画像をアップロードします。

その後、生成したい画像のキーワードを入力すると、事前にアップロードされた画像の特徴を反映した新しい画像が生成されるので、あとはそれをダウンロードするだけです。

従来、新規デザイン作成や修正に多くの時間がかかっていた作業を、「stylus」を用いることで大幅に削減できます。

|【IT】最新の生成AI活用事例3選

続いて、IT業界における最新の生成AI活用事例を3つ見ていきましょう。

  • サイバーエージェント
  • ソフトバンク
  • NEC

以下で詳しくご紹介します。

7.サイバーエージェント|独自の日本語LLMを開発

出典:サイバーエージェント 公式オウンドメディア

サイバーエージェントは、ChatGPT登場以前から生成AIに注力していた数少ない日本企業の一つです。

まず、国内最大規模のトークン数を誇る日本語大規模言語モデル(LLM)を独自開発しており、2023年5月に公開。

その後半年でテキストデータの処理量を16倍に向上させた実績を持ちます。

広告制作では、AIを活用した「極予測AI」と「極予測TD」により、それぞれ広告効果実績が2.6倍、2.3倍向上。商品画像の自動生成も可能にし、クリエイティブ表現の質を高めています。

GitHub Copilotの国内No.1アクティブユーザー数を誇り、約170万行のコードが採用され、エンジニアのコーディング業務を約40%削減。

さらに、生成AIリスキリングを6,200人に実施し、全社的なAI人材育成も進めています。

こうした取り組みにより、生成AIを事業化し、多角的な角度から増収を実現しています。

8.ソフトバンク|国内最大級の生成AIの計算基盤を開発

出典:SoftBank プレスリリース

ソフトバンクは、生成AI開発向けの計算基盤の稼働を開始し、子会社であるSB Intuitionsとともに日本語に特化した国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格的に進めています。

2024年内に3,500億パラメーターの国産LLMの構築を目指しており、この計算基盤はNVIDIA TensorコアGPUを2,000基以上搭載したAIスーパーコンピューター、NVIDIA DGX SuperPOD™などで構成されています。

ソフトバンクは、この大規模な計算基盤を活用し、日本の商習慣や文化に適した生成AIサービスを提供することで、デジタル社会の発展を目指していくとのことです。

ChatGPT(GPT-4)のパラメータ数は非公開ながら約5000億以上とされていますが、日本語モデルでこれほどまでのパラメータ数を持つLLMを開発するのは、さすがはソフトバンクといったところでしょう。

開発が完了すれば、日本の生成AI市場も更なる活発化が見込まれるかもしれません。

9.NEC|生成AIでマーケティング戦略を立案するソリューションを提供

出典:NEC News Room

NECは、生成AIを活用したマーケティング施策立案技術「BestMove」を開発し、2024年内にサービス提供を開始予定です。

BestMoveは、顧客の趣味嗜好性を可視化し、最適な施策を立案し、その反応率をシミュレーションすることができます。

具体的には、特定地域や店舗の想定顧客に対して、クレジットカード決済情報などの購買データを用いて趣味嗜好性を特定し、顧客の反応率を予測します。

例えば、施策案Xに対する顧客の反応率が10%であるのに対し、施策案Yでは90%、施策案Zでは66%とシミュレーションされるため、効果の高い施策を選定することが可能です。

ENEOSの次世代サービスステーションの検討にもこの技術が活用され、地域住民の潜在ニーズを把握し、新しいサービス候補の洗い出しに寄与しているとのことです。

BestMoveにより、企業はより費用対効果の高いマーケティング施策を実行できるようになります。

|【小売】最新の生成AI活用事例3選

続いて、小売業界における最新の生成AI活用事例を3つ見ていきましょう。

  • セブン&アイ・ホールディングス
  • メルカリ
  • LIFULL

以下で詳しくご紹介します。

10.セブン&アイ・ホールディングス|「生成AIファースト」で人手不足を解消

出典:セブン&アイ・ホールディングス 公式Twitter

セブン&アイ・ホールディングスは、「生成AIファースト」を掲げ、生成AIを積極的に活用中です。

具体的には、7iD会員へのメール配信業務において、生成AIを用いてマーケティング施策を効率化しています。

例えば、企画業務の10タスク中3タスク、制作業務の23タスク中13タスクで生成AIを利用し、施策のアイデア整理や景表法の確認、誤字・脱字チェックなどを自動化しています。

この結果、販促メールの制作期間が1か月から1週間に短縮され、年間で約1万時間の削減が見込まれているようです。

他にも、デイリーの品揃えに関するデータをAIで分析し、例えば「豆腐売場の売上が昨年比で減少している」という課題を抽出し、その原因を深掘りすることで、具体的な対策を立てやすくなりました。

これにより、効率的な商品配置と売上の向上を実現しています。

11.メルカリ|売れていない商品をAIが自動的に改善

出典:メルカリ プレスリリース

メルカリは、2023年10月17日より、生成AIと大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアシスタント機能「メルカリAIアシスト」を提供開始しました。

第一弾として導入されたのが、出品商品の改善提案機能です。

一定期間売れ残っている商品に対し、AIがメルカリの過去データを分析し、商品情報の改善提案を行います。

具体的には、商品サイズや購入時価格などの追記すべき情報の提案や、おすすめの商品名の自動生成が可能になるものです。

これにより、出品者は商品の魅力を引き出しやすくなり、売れ残り商品の削減に繋がります。

メルカリは、このAIアシスタント機能を通じて、ユーザー体験の向上と取引の円滑化を図っています。

12.LIFULL|半年間で約2万時間の業務効率化に成功

出典:LIFULL 公式HP

株式会社LIFULL(ライフル)は、2023年8月から社内での生成AI活用を推進し、その結果、半年間で20,732時間の業務時間を創出することに成功しました。

LIFULLの従業員649名を対象とした調査では、71.8%にあたる466名が生成AIを活用し業務効率化を実現したと回答しています。

生成AIの主な活用シーンとしては「文章・資料の作成/編集/添削」で、約6割の従業員がこの用途で利用しているとのことです。

また、「調査/検索/情報収集/情報の整理/データ分析」や「アイデア出し/壁打ち/比較検討」も高い活用率を示しています。

他にも、ChatGPTを利用した社内用生成AIツールを構築し、専門組織と有志プロジェクトが連携して活用を推進しています。

|【教育】最新の生成AI活用事例3選

続いて、教育業界における最新の生成AI活用事例を3つ見ていきましょう。

  • ベネッセ
  • 学研
  • Z会

以下で詳しくご紹介します。

13.ベネッセ|進研ゼミにAIアシスタントを導入

出典:ベネッセ 公式HP

ベネッセコーポレーションは、2024年3月20日から通信教育講座「進研ゼミ小学講座・中学講座」において、小学4年生から中学3年生を対象に生成AIを活用した学習支援サービス「チャレンジ AI 学習コーチ」を提供開始しました。

本サービスでは、ChatGPTを用いて子供たちが学習や宿題で分からないことをAIに質問し、疑問を解消するサポートを行います。

AIは解答を直接教えるのではなく、子供たちがAIキャラクターとの対話を通じて考え方や視点を広げ、自ら解答にたどり着けるよう工夫されています。

また、「上手なノートの取り方」や「集中力が続かない」といった学習法の相談にも応じることも可能です。

2023年には夏休み期間限定で「自由研究お助けAI」も提供され、自由研究のテーマ選びに悩む子供たちをサポートしました。

この経験を活かし、ChatGPTのテキスト回答と既存の動画を組み合わせることで、サービスの質を高めています。

14.学研|生徒一人一人の学習体験を向上

出典:学研ホールディングス 商品・サービスニュース

学研ホールディングスのグループ会社、学研メソッドは、生成AIであるChatGPTを活用し、個別最適化された学習アドバイスを提供する新サービスを開始しました。

本サービスは、学研オリジナル学習システム(GDLS: Gakken Digital Learning System)の一環として提供され、ベータ版はオンライン学習サービス『Gakken ON AIR』でトライアル実施中です。

GDLSの最大の特徴は、生徒の学習履歴や理解度の変化に基づいて生成AIであるChatGPTが個別に適切な学習アドバイスを提供する点です。

具体的には、Knewtonの分析技術と講師の知見を組み合わせ、各生徒に最適な学習メッセージを発信します。

これにより、生徒一人ひとりの学習効果を最大化し、学習意欲を向上させることができます。

今後、このベータ版は他の事業にも展開予定であり、学研メソッドは最先端技術を駆使して生徒の成長を支援し続けていくとのことです。

15.Z会|生成AIで英会話の練習を効率化

出典:Z会 公式HP プレスリリース

Z会は、2024年2月5日に中学生向けに英会話練習機能「AI Speaking」を導入し、生成AIを活用した新たな教育サービスを提供しています。

「AI Speaking」は、いきなり会話を始めるのではなく、導入会話と目標設定を通じてスムーズに学習を開始できるように設計されているのが特徴の一つです。

これにより、緊張感や抵抗感を軽減しながら、効果的に学習を進めることができます。

生成AIによるレッスンでは、出力される英語の難易度が中学生レベルに調整されており、スピーキングに苦手意識を持つ学習者や英語学習を始めたばかりの学習者でも無理なく取り組めるのも画期的な点といえるでしょう。

また、新しいレッスンが順次追加される予定であり、学習者は「英語で話せた」という成功体験を積み重ねることができるようになっています。

|生成AIを活用している注目のスタートアップ企業3選

ここまでは、主に大手企業の生成AI活用事例を紹介しました。

ここからは、現在注目の生成AIスタートアップ企業を3つピックアップしてご紹介します。

  • サカナAI
  • neoAI
  • Spiral AI

以下で詳しく見ていきましょう。

16.サカナAI|設立1年で企業評価額1,800億円を達成

出典:Sakana AI 公式Twitter

サカナAIは、創業1年で評価額1800億円(約11.25億ドル)に達し、国内最速でユニコーン企業となった生成AIスタートアップです。

元GoogleのAI研究者であるLlion Jones氏、「Transformerモデル」論文の共同執筆者のDavid Ha氏、元メルカリ執行役員の伊藤錬氏が2023年8月に設立し、既存のAIモデルを融合させた高性能AIモデルを生成する技術で注目されています。

サカナAIの生成AI技術は、テキスト、画像、コード、マルチメディアコンテンツの生成を目指しており、特に生物模倣(biomimicry)の概念を取り入れた柔軟で適応性の高いAIモデルを開発しているのが特徴です。

例えば、魚の群れが協力して動くように、複数の小さなAIモデルが協力して複雑な結果を出力するシステムを構築しています。

東京を拠点とする理由としては、国際的な都市であり、AI技術の研究や開発に適した環境が整っていること、さらに高度な教育を受けた人材が多く、北米での研究者獲得競争を避けるのが理由だそうです。

現在、具体的な製品やサービスのリリースはまだですが、サカナAIの生成AI技術の応用範囲は広がり続けており、今後の展開が非常に期待されています。

17.neoAI|東京大学発の話題のスタートアップ

出典:neoAI 公式note

東京大学発のスタートアップneoAIは、生成AIの導入支援サービスを提供し、企業の業務効率化を図っています。

具体的には、企業向けにChatGPTや画像生成AIの導入を支援し、各企業のニーズに合わせたカスタマイズを行っています。

例えば、ある大手金融機関との実証実験では、neoAIの開発した生成AIプラットフォーム「neoSmartChat」を導入し、顧客サービスの応答速度を約30%向上させることに成功しました。

さらに、問い合わせ対応時間が平均15分から10分に短縮され、顧客満足度も20%向上したとのことです。

他にも、生成AIを活用した独自モデルの開発や既存システムへの統合支援も行っており、企業の生産性向上を支援しています。

neoAIのビジョンは、最先端のAI技術を活用して日本のビジネスに大きなインパクトをもたらすことであり、今後も多くの企業の生成AIの導入を支援していくことになるでしょう。

18.Spiral.AI|芸能人と会話できるチャットボットが話題

Spiral.AIは、2023年に設立された生成AIを活用した革新的なサービスを提供する企業です。

同社の代表的な事例として「Naomi. AI」があります。

本サービスは、実在のタレント「真島なおみさん」と音声やチャットで疑似的な会話を楽しめるもので、OpenAIのChatGPTを基に開発されています。

真島なおみさんの声色やトーン、言葉の選び方を精緻に再現することで、まるで本人と会話しているかのような体験が可能です。

さらに、音声やチャットだけでなく、画像や動画のやり取りが可能な機能の実装も進めているとのことです。

今後は他のタレントや二次元IPコンテンツを活用したサービス展開も予定されており、生成AI技術を使った革新的なユーザー体験の提供を目指しています。

|生成AIを活用する際のポイントと注意点

生成AI(ジェネレーティブAI)の活用は、企業にとって革新的な価値を生み出す手段となり得ます。

しかし、その効果を最大限に引き出すためには、戦略的かつ計画的なアプローチが不可欠です。

以下は、生成AIを効果的に活用するための具体的な戦略と、リスク管理や倫理的な観点からの考慮事項です。

  1. 明確な目標の設定

生成AIを導入する前に、何を達成したいのか明確な目標を設定する必要があります。

  1. データの質と量の確保

生成AIの性能は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。適切なデータ収集と前処理が、成功への鍵です。

  1. 適切なモデルの選定

目標に応じて、最も適した生成AIモデルを選定する必要があります。モデルの選定は、専門知識を要するため、専門家の意見を求めることが重要です。

  1. 倫理的な使用

生成AIの使用は、偽情報の生成やプライバシーの侵害など、様々な倫理的問題を引き起こす可能性があります。倫理ガイドラインを確立し、遵守を徹底しましょう。

  1. リスク管理

生成AIには、未予測の出力を生み出すリスクがあります。リスク管理プランを策定し、異常検知や監視体制の構築を行う必要があります。

  1. 継続的な改善と評価

生成AIの性能は、継続的な改善と評価によって向上します。定期的なモデルの更新や、性能評価のフィードバックループを構築することが重要です。

生成AIの活用は、これらの戦略と考慮事項を基に進めることで、企業のビジネス価値の向上や新たなビジネスモデルの創出につながります。

適切な知識と計画に基づいて、生成AIの可能性を最大限に引き出しましょう。

|日本式DXの鍵は生成AIになる

本記事では、生成AI(ジェネレーティブAI)の基本、日本の生成AI市場の現状と課題、日本の主要企業18社における具体的な活用事例を紹介しました。

生成AIは、人間の言語を学習し、新しいコンテンツを生成する革新的な技術であり、日本企業もその導入と活用に力を入れています。

日本は現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを本格化させていますが、その成功の鍵となるのは生成AIをどう活用するかでしょう。

日本はAIとの親和性も非常に高い国として世界各国から注目されており、今後の日本経済の発展のためにも、大企業・中小企業問わず、活用が進んでいくことに期待できそうです。

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