「VR技術が鉄道業界にも採用されているって本当?」
「どんな活用事例があるの?」
と疑問に思っている方に向けて、本記事を執筆致しました。
最近では、鉄道業界でもVR技術の利用が目立ってきており、多くの企業がこの技術を活用しています。
本記事では、VRが鉄道にどのように利用されているのか、フィンランド鉄道VRから日本の鉄道VRの事例まで、幅広くご紹介します。
この記事を読むことで、鉄道とVRの融合による新しい体験やサービスの可能性を理解でき、鉄道業界の最新トレンドを把握することが可能です。
スキマ時間で読み切れるので、ちょっとした空き時間にぜひご一読ください。
<この記事を読むとわかること>
- VR技術が鉄道業界でどのように利用されているか
- フィンランドの鉄道「VR」のサービスと特徴
- 日本の鉄道会社におけるVR技術の活用事例
- VR技術が鉄道業界にもたらす可能性と未来
目次
|なぜVRが鉄道にも利用されているのか?
Facebook(現メタ社)のOculus Riftが発表された2016年は「VR元年」とも呼ばれたのは、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
現在、VR元年からそろそろ8年が経とうとしています。
日本でも多くの企業がVRをビジネスに取り入れる中、鉄道業界でもVRの採用が顕著になってきました。
ここでは、なぜVRが鉄道にも利用されているのかについて、まずはご紹介します。
そもそもVRとは?
バーチャルリアリティ、通称VRは、現実世界をコンピュータでシミュレートした3Dの環境を指します。
VRテクノロジーは、ユーザーが別の世界に「存在」する感覚を生み出し、多くの人々を魅了しています。
VRの一例として、ゲーム業界での利用がわかりやすいでしょう。
プレイヤーは、VRゴーグルを通してゲームの世界に没入し、まるで自分がその世界にいるかのような感覚を味わえます。
この没入感は、従来の2Dゲームでは得られない新しい体験を提供し、ゲームのリアリティを一層高めています。
<主なVRゲームの代表例>
ゲーム名 | 概要 |
バイオハザード4 (Resident Evil 4) | 人気のホラーゲームシリーズ「バイオハザード」の一作。VRでのプレイが可能。 |
TOKYO CHRONOS 東京クロノス | ビジュアルノベル形式のVRゲーム。ストーリーとキャラクターに焦点を当てた作品。 |
ALTDEUS: Beyond Chronos | メカアクションとドラマが融合したVRアドベンチャーゲーム。 |
ALTAIR BREAKER | Meta Quest 2で遊べる日本発のVRゲーム。 |
ディスクロニア: CA | 「Meta Quest 2」で遊べる、注目の日本発VRゲーム。 |
また、VRはエンターテイメントだけでなく、教育やトレーニングの分野でも利用されています。
例えば、医学生が手術のシミュレーションを行う際や、パイロットが飛行訓練を受ける際に、VRが活用されています。
これにより、リスクなく、効率的に学習や訓練を行うことが可能です。
VRの可能性は無限大で、これからも様々な分野での応用が期待されています。
<VRの鉄道以外の活用事例を知りたい方はこちらもチェック!!>
VRによる鉄道体験のリアリティと没入感が期待
VR技術が鉄道業界にも導入される理由は、そのリアリティと没入感にあります。
鉄道の旅は、景色や音、振動などの五感を刺激する体験です。
VR技術を活用することで、これらの体験を再現し、まるで実際に列車に乗っているかのような感覚を得ることができます。
例えば、遠く離れた観光地や歴史的な鉄道の走行シーンをVRで体験することで、実際にその場所を訪れる前の下調べや、もう一度その場所を訪れたいという気持ちを再燃させることができます。
また、VRを使った鉄道体験は、天候や時間、場所に縛られることなく、いつでもどこでも楽しむことができるのが魅力です。
さらに、VR技術は進化を続けており、今後はより高解像度の映像や、触覚を再現する技術などが導入されることで、鉄道体験のリアリティはさらに向上することが期待されます。
このように、VRによる鉄道体験は、リアルな鉄道旅行の魅力をデジタルで再現し、新しい鉄道の楽しみ方を実現しています。
鉄道の安全教育と研修などにも利用
鉄道業界では安全教育と研修の一環としてVR技術が利用されています。
VRは、実際の状況を模倣し、リアルタイムで反応することができるため、従業員は実際の危険を伴わずに、様々なシチュエーションでの対応を学ぶことが可能です。
例として、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)では、社員研修センター内の「安全体感棟」でソフトバンクのVRソリューションを教材として導入しています。
このVRソリューションでは、触車や転落などの労働災害の過程やきっかけをヒューマンファクターの観点から実写で再現し、駅係員や乗務員、車両、施設、電気のスタッフが自身の目線で体感できるようになっています。
これにより、従来の映像や座学による労働災害防止教育に比べ、より一層の安全意識向上が可能になったとのことです。
このように、VRを利用した安全教育や研修は、従業員が実際の業務で遭遇する可能性のある危険な状況を安全に体験し、適切な対応を学ぶことができるため、鉄道業界での利用が進んでいます。
VRで鉄道プロモーションが可能に
鉄道業界では、VR技術の進展に伴い、新しいプロモーションの形が生まれています。
JR東日本は、jekiとHIKKYと協力し、バーチャル空間での鉄道プロモーションを展開しています。
これにより、鉄道の魅力を多様な形で伝え、新しい顧客層の獲得を目指しています。
「バーチャルマーケット6」というイベントでは、「バーチャル秋葉原駅」が出展され、リアルの秋葉原駅の雰囲気をバーチャルで再現。
来場者はバーチャル空間での鉄道体験を通じて、リアルとデジタルが融合した新しい体験価値を享受しました。
JR東日本は同時に、「Beyond Stations構想」を推進し、駅の強みとデジタル領域の組み合わせによる新しいサービスを創出。
これにより、鉄道業界は顧客体験の最大化と新たな可能性を追求し、社会的課題解決にも一石を投じています。
これらのバーチャル空間でのプロモーション活動は、鉄道の新しい価値創出と業界全体の発展に寄与し、未来の鉄道プロモーションの新たな可能性を示しているといえるでしょう。
|サンタクロースに会えると話題!フィンランドの鉄道VRについて
鉄道のVRというと、よく話題に上がるのがフィンランドの鉄道の「VR」です。
VR(Virtual Reality)とはあまり関係がないのですが、名前が同じということもあり、相乗効果でプロモーションされている形になっています。
ここでは、間違えやすいフィンランド国鉄のVRについても紹介しておきます。
フィンランド国鉄の名前が「VR」である
「VR」と聞くと、多くの方がバーチャルリアリティ(Virtual Reality)を思い浮かべるかもしれません。
しかし、フィンランドの国鉄の名前も「VR」です。
フィンランド国鉄の「VR」は、フィンランドの鉄道サービスを提供する国有企業で、国内の主要都市を結ぶ鉄道ネットワークを運営しています。
フィンランド語での国鉄の略称であり、フィンランド国内では、鉄道サービスのシンボルとして広く認知されています。
VR(Virtual Reality)自体はフィンランド国鉄には採用されていませんが、VR(Virtual Reality)が注目されていくにつれてフィンランド国鉄も相乗効果で注目されていくようになりました。
フィンランド国鉄にとっては、思ってもみなかった効果でしょう。
VRの魅力①:多様な列車で各都市間を結ぶ便利さ
フィンランド国鉄VRは、国内の主要都市や観光地を結ぶ鉄道ネットワークを持っています。
その最大の魅力は、多様な列車の種類とその広範囲なサービスエリアです。
ペンドリーノやインターシティなどの特急列車は、ヘルシンキからトゥルクやタンペレ、さらにはサンタクロースの故郷として知られるロヴァニエミまで、時速200km以上で快適に移動することができます。
また、コミュータートレインやリージョナルトレインを利用すれば、ヘルシンキ近郊の小さな町や観光地へのアクセスも容易です。
これにより、旅行者は効率的にフィンランドの魅力的なスポットを巡ることができるのです。
特に、列車からの景色は四季折々のフィンランドの自然を楽しむ絶好のチャンスとなります。
VRの魅力②:家族連れに優しいファミリーコンパートメントとプレイスペース
フィンランド国鉄VRは、家族連れの旅行者にも配慮したサービスを提供しています。
その一例が、ファミリーコンパートメントとキッズプレイスペースです。
ファミリーコンパートメントは、プライバシーが保たれ、家族だけでゆったりと過ごすことができるスペース。
ここでは、小さな子供たちも自由に動き回ることができ、親もリラックスして旅を楽しむことができます。
また、列車内には、子供たちが遊べるプレイスペースも設けられており、長時間の移動でも子供たちが飽きることなく楽しむことができます。
これらの施設とサービスにより、フィンランド国鉄VRは、家族全員が快適に旅をするための工夫を凝らしています。
VRの魅力③:リーズナブルで利用しやすいチケットシステム
フィンランド国鉄VRのもう一つの魅力は、そのリーズナブルで利用しやすいチケットシステムです。
利用者は、オンラインで簡単にチケットを購入でき、価格も手頃です。
特に、早期購入やオフピークタイムの利用で、さらにお得に移動することが可能。
これにより、多くの旅行者や地元の人々にとって、手軽に利用できる交通手段となっています。
また、フィンランド国鉄VRでは、様々な割引やキャンペーンも頻繁に行われており、これを利用することで、さらに安く列車を利用できます。
これらの利便性とリーズナブルさが、フィンランド国鉄VRを、フィンランド国内の移動手段として人気にしているのでしょう。
|VRで旅気分が味わえる!VRを利用した鉄道の事例
最近では、VRを利用した鉄道の活用事例のニュースを耳にする日も多くなってきました。
どの業界にもいえることかもしれませんが、VRをビジネスにうまく組み込めない企業は今後厳しい状況となっていくのかもしれません。
日本の鉄道技術は世界一ともいわれているので、ぜひともVR技術を積極的に採用して欲しいものですよね。
ここでは、日本の鉄道業界でVRをうまく活用している企業の事例を5つ厳選してご紹介
致します。
事例①:高輪ゲートウェイ駅:日本で最初に開業した「高輪築堤」の当時の気分が味わえる
JR東日本は、高輪ゲートウェイ駅前の再開発用地で出土した明治時代の鉄道遺構「高輪築堤跡」について、保存対策を行った上で2027年度から現地公開する計画を発表しました。
高輪築堤は、1872年に日本初の鉄道が開業した際の遺構で、品川駅改良工事で一部が見つかりました。この遺構は、橋梁の橋台などが約1.3キロにわたって良好な状態で残っています。
JR東日本は、この遺構を保存し、2027年の現地公開に向けて基本対策を進めており、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用し、鉄道が走っていた当時の景観も再現する計画です。
訪れる人々は、VRを通じて、日本で最初に開業した鉄道の当時の気分と景観を味わうことができます。
この取り組みは、歴史的な鉄道遺構の価値を現代に伝え、多くの人々に鉄道の歴史と文化を体験してもらうためのものです。
VR技術の進展により、過去の風景や体験がよりリアルに感じられ、訪れた人々に深い印象を与えるでしょう。
事例②:三陸鉄道|VRアプリで三陸の旅を満喫した気分に
三陸鉄道と大手電気通信会社KDDIが協力して開発したVRアプリにより、岩手県内の沿岸部を仮想的に旅行体験できるようになりました。
このアプリは「XR Door」と呼ばれ、2023年3月27日に公開されています。
ダウンロードすると、スマートフォンの画面上で三陸鉄道での旅を疑似体験することができ、スマホの動きに合わせて車内を360度見渡すことが可能です。
また、車窓からは宮古市の浄土ヶ浜など、景勝地の風景を眺めることができます。
ユーザーは、実際に現地を訪れることなく、三陸の美しい風景と鉄道の旅を楽しむことができるのです。
KDDIは、このアプリを通じて東日本大震災で被害を受けた県沿岸部の観光振興を図る目的で開発に取り組んでおり、三陸の美しい風景と鉄道旅行の魅力を多くの人々に届けることに貢献していくでしょう。
KDDIが開発した「XR DOOR」とは?
KDDIが開発した「XR DOOR」は、特別な機器なしに、スマートフォンだけで様々な場所や環境をバーチャルリアリティで体験できる革新的なアプリケーションです。
「XR DOOR」の利用は非常に簡単で、アプリを通じてスマートフォンをかざすだけで、AR技術により地面を認識し、画面上にARドアが出現します。このドアを通り抜けることで、ユーザーは360度のパノラマ景色を楽しめます。
「XR DOOR」では、世界の様々な場所を覗く「WORLD」、厳選された宿泊施設や地域の魅力を体験できる「XR Door × Relux」、そして恐竜との対戦シューティングゲーム「XR Door×恐竜シューティング」など、多様なコンテンツを提供中です。
新型コロナウイルス感染症の影響で外出や旅行が制限される中、「XR DOOR」は様々な旅行の擬似体験を可能にし、ユーザーに新しいエンターテイメントの形として期待されています。
事例③:京成電鉄|廃駅となった駅がVRで復活「デジタルハクドウ駅」
京成電鉄と国立大学法人東京藝術大学が協力し、一度廃駅となった「旧博物館動物園駅」をデジタルアーカイブし、「デジタルハクドウ駅」として公開しました。
このプロジェクトは、通常は立ち入ることのできないエリアも含め、旧博物館動物園駅を3Dモデル化し、VR空間で体験できるようにしたものです。
技術基盤としては、「Cluster」と「VRChat」がメインプラットフォームとして採用されています。
また、「デジタルハクドウ駅」は、東京藝術大学が進める「デジタル上野の杜」と「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」の連携プロジェクトの一環として実施されました。
旧博物館動物園駅は、2004年に廃駅となりましたが、このプロジェクトによって、オンライン上で旧博物館動物園駅を体験することができます。
一般公開されていないエリアにも入れるため、懐かしのペンギンの壁画やアナウサギも見ることが可能です。
東京藝術大学と京成電鉄は、文化・観光の振興等の分野で緊密な協力関係を築き、地域社会の発展、ひいては日本の芸術文化の振興を図ることを目的としています。
京成電鉄では、今後も東京藝術大学をはじめとする沿線の教育機関等と連携を強化し、京成エリアの魅力向上および日本の芸術文化の振興を図り、地域社会の発展・活性化に寄与していくとのことです。
「Cluster」「VRChat」とは?
「Cluster」と「VRChat」は、バーチャルリアリティ(VR)空間でのコミュニケーションを可能にするプラットフォームです。
両方とも同じVRプラットフォームであるため、以下に比較表を作成しました。
Cluster | VRChat | |
目的 | オンラインイベントやミーティングの実施 | ソーシャルVRプラットフォームでの交流 |
利用シーン | コンサート、展示会、学会などのバーチャルイベント | ゲーム、会話、探索など多岐にわたるアクティビティ |
ユーザーができること | リアルタイムでのコミュニケーションや情報交換 | アバターを通じた会話やアクティビティの共有 |
カスタマイズ性 | 企業や団体が独自のバーチャル空間を作成可能 | ユーザーが独自のバーチャルワールドやアバターを作成・共有可能 |
主な利用者 | 企業、団体、イベント主催者 | 一般ユーザー、ゲーム愛好者 |
特徴 | プロフェッショナルなオンラインイベントの開催に適している | ソーシャルな交流とエンターテイメントを重視している |
詳細リンク | 詳細はこちらから | 詳細はこちらから |
両プラットフォームは、新しい形のコミュニケーションと体験を提供し、特に現在の社会状況下で、人々が安全に社交活動を楽しむ手段として注目されています。
事例④:小田急電鉄|ロマンスカーの進化を肌で感じる「時を旅する体験型VR」
小田急電鉄は、2023年7月5日、6日、7日、9日に、小田急線海老名駅隣接のロマンスカーミュージアムで、期間限定イベント「時を旅する体験型VR」を開催しました。
イベントでは、1960年代から現在にかけてのロマンスカーの進化や、街並み等の車窓などを、専用VRヘッドセットを通じた360°のアニメーションで振り返りながら楽しむことができます。
特に、すでに引退し小田急線を走ることのないNSE(3100形)やRSE(20000形)の乗車体験、昔の新宿駅や下北沢駅の様子などの風景は、子供には新鮮で、大人には懐かしいものとなり、好評を博したとのことです。
また、「時を旅する体験型VR」は、神奈川県主催のスタートアップ共創プログラム「ビジネスアクセラレーターかながわ」にて、小田急電鉄と株式会社CinemaLeapと共同実施している珍しい事例でもあります。
事例⑤:JR東日本八王子支社|車掌になった気分になれる「ディープでプロフェッショナルな訓練体験」
JR東日本八王子支社が鉄道開業150年を記念して開催した「初公開の施設に潜入! ディープでプロフェッショナルな訓練体験」イベントでは、参加者が運転士や車掌のシミュレータを体験し、鉄道のプロフェッショナルな業務に深く触れることができます。
イベントでは、VRゴーグルを通して夜間の線路上を歩く仮想体験や、運転士の視点から見た線路内での作業状況を確認でき、鉄道の安全確認の重要性について学ぶ機会とし、人手不足を解消するのが狙いの一つです。
また、八王子運輸区での体験では、「運転士シミュレータ体験」を通して八高線のワンマン運転のシミュレータを利用できます。
車掌が訓練で使用する「車掌シミュレータ」を利用して、中央線のリアルな映像を見ながら車内放送やドアの操作、発車ベルの操作を体験することができるので、電車好きの子供にはうってつけのイベントといえるでしょう。
|まとめ:VRを活用した鉄道ビジネスは今後も用途が広がっていく
本記事では、VR技術が鉄道業界にどのように取り入れられているのか、フィンランドから日本の鉄道まで、多岐にわたる事例を通じて詳細に解説しました。
VRは、鉄道のサービスや体験の質を向上させ、利用者に新しい価値を提供するポテンシャルを持っています。
今後、VR技術は更に進化し、鉄道業界でも更なる利用の拡大が進んでいくはずです。
これにより、よりリアルで、より魅力的な鉄道の旅が実現可能となり、多くの人々にとって新しい価値を生み出すでしょう。
しかし、そのためには、技術の発展だけでなく、それを活用するためのアイデアや取り組みが重要となります。
この記事を通じて、読者の皆様には、VRと鉄道の融合による無限の可能性や、その実現に向けた取り組みについてご理解頂ければ幸いです。