近年、話題の大規模言語モデルのChatGPTは、訓練済みの言語モデルなので、テキスト生成、翻訳、質問応答など、多くのタスクに応用できます。

しかし、ChatGPTを特定の用途に最適化するには、より細かい調整が必要です。

本記事ではその調整に役立つ「ファインチューニング」とは何か、その概要や仕組みまで詳しく解説します。

chatGPTを活用しておられる方や興味がある方には参考になる内容だと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

|ファインチューニングとは

ファインチューニングは、新しいデータを使用して事前に学習訓練されたモデルをカスタマイズする技術です。

この事前に訓練が済んでいるモデルは、一般的には大規模なデータセットで訓練されたもので、人気のChatGPTもその例です。

この微調整の技術を活用する事によって、より具体的な用途に適したものに調整できます。

例えば、ChatGPTを特定の分野のテキスト生成に特化させるためには、その分野のテキストデータを使用して、調整を行う必要があります。

方法としては、まずは事前に訓練済みのモデルをダウンロードし、新規のデータセットを準備して、パラメーターを調整していくという流れになります。

|ファインチューニングの仕組み

具体的な方法は、以下の2つに分けられます。

全層ファインチューニング

すでに学習が終わっているモデルのすべての層を、新規データセットを使って細かくカスタマイズします。

これにより、モデルは新規データセットの特徴を最大限活用できます。

この方法は性能向上に非常に効果的ですが、一方学習に時間がかかるというデメリットがあります。

部分層ファインチューニング

新規のデータの情報を活用しながらも、事前に訓練済みモデルの一部の層だけを微調整します。

これにより、学習にかかる時間を短縮することができます。

こちらは、全層ほどモデルの性能を向上させられないというデメリットがありますが、学習にかかる時間が短いため、データ量が少ない場合に適しています。

|ChatGPTで使用されている理由

ChatGPTは、汎用的な言語モデルとしてトレーニングされているため、特定の仕事に特化したスキルは持っていません。

そのため、モデルのパラメーターの細かい調整によって、新たに特化した能力を身につけさせたり、モデルの全体的な性能を向上させたり、汎用性を向上させるなどをして、より性能を高くしていく必要があるのです。

ChatGPTは細かな調整を行うことで、さまざまな分野、機能でより高い性能を発揮する言語モデルとなります。

今後も、これらの技術が進歩することで、ChatGPTの性能はさらに向上していくと考えられます。

|ファインチューニングの手順

ここからは具体的な手順を3つのステップに分けて、それぞれ詳しく解説していきます。

事前準備をする

1. 事前学習済みモデルをダウンロードする

まずは、事前学習済みのモデルが必要となります。こちらはさまざまなオープンソースのフレームワークやWebサイトからダウンロードすることができます。

2. 新しいデータセットを準備する

ダウンロードしたモデルを具体的なタスクに最適化させるために、新規のデータセットが必要です。こちらは、タスクの目的に合わせて作成する必要があります。

3. 学習の設定を行う

設定を行う際には、以下の点について設定する必要があります。

  • 学習率
  • 損失関数
  • 学習の繰り返し回数

学習を行う

学習では、前もって学習済みのモデルに新しいデータを供給し、微調整を行います。

トレーニングには、バッチ学習やオンライン学習などの異なるアルゴリズムを応用することが可能です。

学習を行う際には、「学習率の決め方」や「繰り返し回数の決め方」「効果の測り方」などの点に気をつける必要があります。

例えば、学習率は、事前学習のパラメータと新規データのパラメータで別々の値を設定することができます。

一般的には、事前学習モデルのパラメータは、小さな学習率で少しずつ調整していくのがおすすめです 。

また、学習の効果とは、学習がうまくいっているかどうかを判断するために行うことで、学習の効果には、損失関数と精度という二つの指標がよく使われます。

調整をかける

学習させた後は、テストデータを用いてモデルの性能を評価します。

評価の結果をもとに、さらに細かい調整を行います。

性能を向上させる為には、学習率や損失関数、繰り返し回数などの設定を調整する事が重要です。

具体的には、以下の方法があります。

・学習率の調整

学習率が高すぎると、最適なパラメーターを見つけられない可能性があります。学習率が低すぎると、学習に時間がかかりすぎる可能性があります。

・損失関数の調整

損失関数がタスクに合っていない場合、モデルの性能は向上しません。損失関数を調整することで、性能を向上させることができます。

・学習の繰り返し回数の調整

学習の繰り返し回数を増やすことで、より正確な予測を行うことができるようになります。ただし、学習の繰り返し回数を増やすと、モデルは過学習する可能性があります。

|よく似た技術「転移学習」との違い

よく比較される「転移学習」の技術も、事前に訓練されたモデルを異なるタスクに適用する手法です。両者の違いを解説します。

転移学習とは

転移学習は、事前に訓練されたモデルを異なるタスクに適用する手法です。

事前のモデルは、大量のデータで学習されており、さまざまな領域で基本的な能力を備えています。

転移学習では、このモデルのパラメーター等をそのまま使用することで、新しく学習に必要なデータ量や学習時間を削減することができます。

|転移学習のメリット

メリットは、以下の2つです。

・モデルの性能を少ないデータで向上させられる

・学習時間を短縮できる

上記のメリットにもあるように、少ないデータで性能を向上させることが可能なため、非常に強力な手法です。

適切な利用により、機械学習のさまざまなタスクで高い性能を実現できます。

|ファインチューニングと転移学習の違い

この2つの違いは、「事前モデルのパラメータをどの程度変更するか」という点にあります。

ファインチューニングでは、事前のモデルの一部またはすべて更新します。

新規のタスク学習では、損失関数の最適化と重みの更新を組み合わせて行います。

最初のモデルが学習した特徴をベースに、新しいタスクに適した特徴を学習できるため、転移学習よりも少ないデータで、性能を上げることができます。

転移学習より少ないデータで、新規のタスク性能を向上させることが可能なので、データが少ないタスクや、特定の領域に特化したモデルを作成したい場合に適しています。

わかりやすく表で比較すると、以下のようになります。

 転移学習ファインチューニング
学習更新の範囲一部またはなし一部またはすべて
特徴事前学習済みのモデルが学習した特徴をそのまま利用事前学習済みのモデルが学習した特徴をベースに、新しいタスクに適した特徴を学習
必要なデータ量多い少ない

|まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

この技術を活用すれば、少ないデータで性能をアップさせることができ、異なるタスクでモデルを再利用しやすくなるため、機械学習のさまざまなタスクで活用されています。

今後も、ファインチューニングの技術が進化していくことで、さらにモデルの開発が効率化していく事など、より多くの可能性を実現できるようになると期待されています。