銀行・金融業界ではAIの活用が急速に進展している業界の一つです。

AIを活用することで、顧客対応、リスク評価、予測分析、セキュリティ面での自動化プロセスにより、業務効率が向上しています。

銀行業界の未来においてその役割は拡大し、業界の革新をさらに進化させると期待されています。

本記事では、これらの活用事例を踏まえて、AIが銀行・金融業界にもたらすメリットについて解説しますので、興味のある方はぜひご一読くださいね。

|AIとは

Artificial Intelligence(=人工知能)は、コンピューターが人間のように学習し、自律的に意思決定する技術です。

ジョン・マッカーシー教授によって1956年に提案され、以来、急速に発展しています。

AIは大量データの分析と自動化を可能にし、日常生活からビジネスまで幅広い用途で利用されています。

自然言語処理や画像認識もその一部で、人間の知的行動を模倣するためのツールとして役立っています。

今後の未来においても重要性が高まり、社会の多くの側面に影響を与えるでしょう。

詳しくは過去の記事も参考にしてくださいね。

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|銀行・金融業界がAIを導入するメリット

導入することによって得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

以下で、大きく5つに分けて説明していきます。

業務効率化

AI技術は人間に比べて迅速で正確な作業が可能で、24時間365日休むことなく業務を遂行できます。

例えば、音声認識を利用してコールセンター業務をサポートし、チャットボットを通じて自動応答を提供します。

また、AI OCR技術は帳票や書類の読み取りを効率的に自動化し、RPAを用いて事務作業を自動化します。

これらの手法により、銀行業務は迅速かつ効率的に行われ、従業員の負担が軽減され、人件費や運用コストが削減されます。

ただし、業務の自動化に伴う雇用懸念も考慮しなければなりません。

しかし、適切に計画されたAI導入は業務の生産性向上と経済的な効果をもたらし、銀行・金融業界の競争力向上に寄与します。

サイバーセキュリティー対策

デジタル技術の進化に伴い、企業へのサイバー攻撃が増加しており、金融機関もその標的となっています。

そこで、AIを活用したセキュリティー対策には以下の利点があります。

まず、不正検出システムにおいて自動的に監視を行い、人間の監視が難しい領域でも効果的な監視が可能で、見落としやヒューマンエラーを最小限に抑えます。

また、学習能力を持ち、継続的に検出精度を向上できるため、新たなサイバー攻撃にも迅速に適応します。

金融機関ではセキュリティーが特に重要であり、AIは運用コスト削減と迅速な対策を提供し、信頼性向上に貢献します。

サイバーセキュリティーの複雑性が増す中で、この業界においては不可欠な存在となっています。

信用評価の精度向上

融資業務には複雑な審査手続きが必要で、これにかかる時間を短縮できるため、効率性が向上します。

AIは信用度を評価し、融資の可否をスコアリングすることが可能で、これにより人間の判断を補完することができます。

決算書だけでなく、銀行が保有する入出金履歴など多くの情報を考慮し、より速やかな融資条件の提示を行います。

最終的な判断は人間に委ねられますが、AIによる情報整理によって判断の精度が向上し、審査にかかる時間と手間を大幅に削減できます。

これにより、信用評価のプロセスはより効率的かつ正確に実施され、金融機関は信頼性の高い融資判断を行うことができます。

審査スピードアップ

融資審査においては、以前は複雑な手続きと多くの書類提出が必要で、これには時間と手間がかかりました。

しかし、AI技術の導入により、審査プロセスが劇的に変化しています。

例えば、決算書だけでなく銀行が保有する顧客の入出金履歴や取引情報など、幅広いデータをリアルタイムで評価できます。

これにより、融資審査のための信用スコアリングを素早く行い、迅速な融資条件の提案が可能となりました。

審査プロセスは非常に高速化され、申請から審査結果の通知までの時間が大幅に短縮されました。

顧客へのサービス提供の迅速化や競争力の強化につながり、金融業界全体において利益をもたらす重要なメリットと言えます。

金融市場の動向予測

過去のデータから学習し、未来のトレンドやニーズを洞察する予測分析に優れていることで、以下のメリットを享受できます。

まず、顧客のニーズやサービスの需要を事前に把握できます。

これにより、効果的なプロモーション戦略を展開し、個別のサービス提供を最適化できます。

特にこの業界では、ビッグデータや外部データを活用して需要を予測し、新たなイノベーションを生み出す機会が広がっています。

例えば、顧客データを分析して保険商品の提案に活用されたり、似たような株価動向を持つ企業をクラスタリングし、最適なサービスを提供する取り組みも行われています。

これにより、金融市場の変動や投資戦略の最適化が可能になり、顧客により適切なサービスを提供することができます。

|AIで代替できる業務

主には、窓口業務、法人業務のバックオフィス、格付け業務、膨大な確認作業など、さまざまな分野で導入されています。

これにより、窓口業務が自動化され、スタッフの数が削減されています。

法人業務の事務的な部分が効率的に運用されていると言えるでしょう。

また、企業の信用評価や融資条件の決定にも活用され、主観的な判断を排除し、高精度な評価を提供します。

さらに、銀行の事務作業を効率化し、複雑な確認業務を高速かつ正確に処理します。

顧客対応においても活用され、質疑応答、ドキュメント処理、翻訳などで効果を発揮しています。

この導入により、銀行業界全体の効率改善が実現し、人的リソースの節約も促進されています。

|銀行・金融業界のAI導入事例

実際の活用実例は、問い合わせ業務代行、チャットボット、資金需要の予測など、多岐に渡ります。

以下で具体的な事例を紹介しますので、導入を検討する際の有益な情報源として、ぜひ参考にしてみてくださいね。

三井住友銀行

三井住友銀行は、増加するサイバー攻撃に対抗するために導入しています。

AIは自然言語処理技術を駆使して、大量のサイバーセキュリティ情報を分析し、有用な情報を抽出します。

これにより、新たなサイバー攻撃の防御と検知に役立つ情報を獲得できます。

監視システムが不審な通信や挙動を検知し、世界中の文献や専門家のブログなどから学習を行い、セキュリティ情報を蓄積します。

これらの情報を活用して、対処方法の判断に役立つ支援情報を抽出し、迅速なセキュリティ対策を支援します。

三井住友銀行はこの技術を駆使して、サイバーセキュリティを強化し、サイバー攻撃に対抗しています。

三菱UFJ銀行

三菱UFJ信託銀行は、高コストとなる人件費削減のために、紙帳票の電子化にこの技術を導入しています。

AI搭載の書類読み取り機は、印鑑票などの紙書類を効率的にスキャンし、自動でホチキス留めを外し、一枚ずつ分割できます。

この取り組みにより、2,000人以上の従業員が1年かかる作業を30人ほどで5年で完了できる見込みとなりました。

さらに、電子化済みの書類は保管のための倉庫利用料が削減されるため、経費も削減されます。

他にも、住宅ローンの審査を迅速に行う「住宅ローンQuick審査」を導入し、住宅ローンの事前審査を15分で完了できるようになりました。

その後の手続きは顧客がスマートフォンやPCを使用して簡単に行え、利便性が向上しました。

みずほ銀行

みずほ銀行は、この技術を駆使した「みずほスマートビジネスローン」を提供しています。

このサービスは、中小企業向けにオンラインで融資申込から契約までを円滑に行える特長を持っています。

従来のような長時間かかる手続きや煩雑な審査が不要で、口座の取引履歴などのデータを分析し、迅速かつ効率的に融資の可否を判断します。

これにより、資金調達プロセスが大幅にスピードアップし、中小企業の資金ニーズに迅速に対応します。

さらに、チャットボットを導入し、顧客とのコミュニケーションを自動化しました。

従来のオペレーターの業務負担が大きかったため、チャットボットを活用して24時間対応が可能になり、オペレーターの業務効率が向上しました。

ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行は、富士通のAI技術を活用して社内向け問い合わせ業務を効率化しました。

これまでの課題に、パートナーセンターでの問い合わせ対応の履歴が共有されず、ナレッジの有効活用が難しい状況がありました。

そこで、チャットボットの導入により、社内で蓄積された問い合わせ対応履歴がFAQ形式で共有可能になり、店舗社員や郵便局局員が直接検索できるようになりました。

これにより、パートナーセンターへの問い合わせ件数を削減し、オペレーターの負担軽減が実現しました。

新たに業務スキルの平準化や顧客対応の迅速化が課題となっていますが、業務スキルの均一化と、より顧客満足度を向上させる方策を検討しています。

東京スター銀行

東京スター銀行は、AIを駆使して新しいデジタル体験を提供する「VRラウンジ」を開設し、実店舗に足を運ばずに銀行業務を行える環境を構築しました。

この斬新なデジタル体験は、デジタルツインと呼ばれる新たな技術を活用しています。

これは、現実世界をリアルタイムでシミュレーションする技術で、ATMや窓口、セミナーなど、実店舗と同様のサービスが提供されます。

利用者はVRゴーグルなど特別な装置を必要とせず、スマートフォン1台を使って口座開設や相談などの銀行業務を簡単に行えます。

AI Marketでは、専門のAIコンサルタントが、お客様に適したAI開発会社を紹介するサービスも提供されています。

横浜銀行

横浜銀行は、マネーロンダリングや特殊詐欺などの取引モニタリング業務の向上を図るために、NECの「AI不正・リスク検知サービス for Banking」を積極的に活用しています。

金融犯罪がますます複雑化し、巧妙化している中で、膨大な情報から不正行為を効率的かつ精密に検知する必要があります。

このサービスを導入することで、銀行員が調査対象とする口座数を事前に絞り込むことができ、従来の手法に比べて負担が軽減され、より詳細で効果的な調査に専念できるようになりました。

この絞り込み作業により、調査対象を30〜40%削減することが可能となり、取引モニタリング業務の高度化とリスク検知の向上に貢献しています。

常陽銀行

常陽銀行では、口座入出金データを分析し、資金需要を予測するプロジェクトを開始しました。

当行が直面していた課題に、データに基づく効果的な営業活動と業務の高度化があります。

そこで株式会社NTTデータと株式会社JSOLとの協力により、AIを用いた口座入出金データの資金需要予測プロジェクトが開始されました。

2022年1月から3月にかけて行われたプルーフ・オブ・コンセプトでは、過去の口座入出金データを活用し、データに基づく営業活動において一定の成功を収めました。

これを受けて、2022年4月からはAIによる資金需要予測結果を銀行全店に展開し、営業担当者が実際の業務で分析データを活用。

提案活動の質を向上させるための効果検証が行われています。

十六銀行

十六銀行は、ローン専用のチャットボットである「BEDORE Conversation」を導入し、利用者の利便性向上を実現しています。

この導入の背後には、約12,000件の問い合わせを分析し、ローンに関する具体的な質問が多いことが明らかになりました。

銀行はまず、住宅ローン、マイカーローン、教育ローンなどのローンに関連するFAQを充実させました。

そして、個人ローンに特化したWebページにローン専用のチャットボットを設置し、利用者がスムーズに情報を取得できるようにしました。

将来的には、「地域金融機関FAQプラットフォーム」への参加やローン審査の自動化など、新たなサービスの展開も検討されています。

七十七銀行

七十七銀行は、三井住友銀行とJSOLが共同開発した「業況変化検知システム」を活用し、NTTデータのクラウドプラットフォーム「OpenCanvas」上で「Fincast」として稼働させています。

このシステムは、取引先企業の口座情報の動きを分析することで、企業の業況変化を早期に検知することができます。

このモデルは、三井住友銀行が保有する過去の取引データを学習して構築され、未来の業況を予測することが可能です。

システムの導入により、人手による与信管理業務の作業量が削減され、銀行員の負担が軽減されるだけでなく、ノウハウの属人化を防ぎ、サービス品質の均一化も期待されています。

住信SBIネット銀行

住信SBIネット銀行は、不正送金対策のAIモニタリングシステムを自社開発し、不正取引の判断を高速かつ効率的に行う取り組みを展開しています。

これにおける主要な課題は、第三者による不正送金を防ぐために必要な24時間365日の振込モニタリングを効率化することでした。

その結果、自社でモニタリングシステムを独自に開発し、これを導入。

このAIは、新たな不正送金の疑いがある事例を自己学習し続け、より精密な不正送金の検知を実現しています。

今後、このシステムを自社内だけでなく、他の金融機関などに提供して、広範な不正取引の判別に貢献する計画です。

不正送金に対する効果的な対策を展開することに成功したと言えるでしょう。

GMOあおぞらネット銀行

GMOあおぞらネット銀行は、顧客情報のセキュリティを保ちつつ、インターネットバンキングのパフォーマンス監視を高めるためにこの技術を導入しました。

主要な課題は、IT運用業務の処理効率向上を求めつつ、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼさないことでした。

この課題に対処するため、SaaS版Instanaを導入。

アプリケーションやインフラストラクチャーのパフォーマンス監視やプロセスの自動化が稼働場所に依存せずに実現され、ユーザーへの悪影響を回避しつつ、インターネットバンキングのパフォーマンスが確保されました。

今後もInstanaをさらに活用し、安定的なサービス提供とサービスの拡充に取り組む予定です。

Bank of America

Bank of Americaは、AI搭載のバーチャルアシスタント「Erica」をモバイルアプリに統合し、顧客に革新的な銀行サービスを提供しています。

このバーチャルアシスタントを通じて、顧客はスマートフォンやタブレットを使って以下のことができます。

  • 取引履歴の検索
  • 主要情報へのアクセス
  • 対面予約の相談
  • 請求書確認と支払い予約
  • デビットカードの管理
  • 送金

Bank of Americaの「Erica」を通じたデジタルサービスの導入により、顧客は銀行業務をモバイルデバイスを使用して効率的に行え、支店への訪問やATM取引の必要性が減少しました。

これにより、銀行は効率性を向上させ、顧客に便益を提供しています。

|まとめ

銀行・金融業界におけるAI活用は、業務効率の向上、リスク管理の強化、顧客サービスの向上など多くのメリットをもたらしています。

この業界はより効率的で効果的な運用が可能になり、顧客との信頼関係を構築し、競争力を高めます。

今後は、AIの進化とデータ駆動型のアプローチが金融業界において一層重要性を増すでしょう。

その潜在能力を最大限に活かし、安全で革新的な金融サービスを提供していくことが業界の未来を切り拓く鍵となるでしょう。