農業界におけるAI技術の導入が急速に進んでいます。
昔ながらのイメージから一転し、革命的な変化を引き起こす技術として、この業界に新たな希望をもたらしています。
この記事では、農業界に生じさせる変革について詳しく掘り下げ、今後の展望についても考察します。
AI技術がどのように変わりつつあるのか、その魅力をご紹介します。
農業に興味のある方もそうでない方も、新しいスタイルの農業を認識してみてくださいね。
目次
|AIとは
AI(人工知能)は、コンピューターシステムが人間の知識や思考能力を模倣する技術を指します。
機械学習、深層学習、強化学習といった技術を用いて、データを収集して学習し、人間と同じようにタスクを実行します。
この技術は、さまざまな分野で活用されています。
例えば、画像認識や自然言語処理といった技術は、自動運転や音声アシスタントなどの開発に用いられています。
また、機械学習による予測は、金融や医療などの分野で意思決定の支援に活用されています。
自動化やデータ解析によって効率を向上させ、生産性を高める一方、倫理的な課題やプライバシーの懸念も浮上しています。
詳しくは、過去記事も参照してくださいね。
|農業が抱える課題
日本の農業は現在、複数の深刻な課題に直面しています。
まず、従事者の高齢化が顕著で、平均年齢が非常に高いことが懸念されています。
特に基幹的な従事者の数が急速に減少し、若い従事者の不足が深刻な問題となっています。
新規就農者の数も減少し、その定着率も低いことが指摘されています。
後継者不足は技術やノウハウの喪失につながり、農産物の品質に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また、農薬の効果的な使用に関しても課題が存在し、環境への影響が懸念されています。
さらに、自然災害や気象変化による被害が大きく、収穫量の安定性に影響を及ぼしています。
これらの課題に対処し、持続可能性を高めるために、AI技術を活用する取り組みが進められています。
|農業にAIを導入するメリット
この技術を導入し、利用することで得られる利点は以下の通りです。
大きく4つに分けてご説明しましょう。
作業の効率化
具体的な例としては、ドローンを用いた農薬散布やロボットによる収穫作業が挙げられます。
まず、薬剤散布において、必要な薬剤の量やタイミングを精密に解析し、ちょうど良い具合に能率的に散布を行います。
これは、薬剤の無駄を削減し、かつ作物の品質を保つことに繋がります。
また、薬剤の取り扱いには危険が伴いますが、能率的な散布作業は作業者のセキュリティ性を増強させます。
収穫作業においても、ロボットによる自動化によって、早朝や夜間の収穫に頼らず、安定した労働力を確保できます。
さらに、作物の成長状況をリアルタイムでモニタリングし、適切な水やりや収穫時期を予測することで効率性が向上します。
品種改良のスピードアップ
従来の品種改良は時間と労力を大量に必要とし、10年以上かかることも珍しくありませんでした。
しかし、ゲノム情報を用いたAIの導入により、このプロセスが大幅に効率化されています。
この情報は生物の遺伝情報を含むDNAの配列を指し、解析することで、特定のタンパク質が植物の成長にどのように影響するかを理解します。
これを基に、新たな特性を持つ植物を開発します。
例えばイネのような作物では、この情報を用いた品種改良が実施されています。
膨大で複雑な情報を整理し、ゲノム情報を利用して作物の収穫量やクオリティを高精度で見通すことができる「ゲノム選抜AI」が実現され、新しい品種の開発が迅速化しました。
出荷量の調整
この技術を用いることで、大量の情報を分析し、過去の出荷実績、天候、相場などを考慮して需要予測を行います。
これにより、最適な発送量を提案することが可能になったうえ、収穫量を正確に予見し、それに基づいて納品を行うことで、取引先からの信頼を獲得できます。
農作においては安定した出荷量が求められますが、単なる勘や経験に頼るだけでは正確な予測は難しいものです。
需要と供給を最適に調整し、生産者と取引先との信頼性の高い取引が実現できるでしょう。
このような出荷量の調整において、効率性と持続可能性を向上させ、市場での競争力を高める一助となります。
需要と供給のバランスを適正化することで、より大規模かつ効率的な取引が実現されるでしょう。
ビジネスチャンスの創出
日本の農作物流においては、各農場主が独自に農産物を集荷場や卸売市場に運び、農家の企業が各自大都市への輸送を独自に調整する必要があり、効率性に課題がありました。
そこで登場した住友商事よるCLOWというサービスは、農家が農産物の出荷や輸送を行いたいという需要と、輸送スペースを有効活用したい物流会社の供給をマッチングするものです。
出荷者と物流会社の情報はクラウド上で一元管理され、AIが最適な輸送ルートを選定します。
この仕組みにより、自家用トラックを利用せざるを得なかった農家には外注手段が提供され、各々で物流を準備していた農家の企業には共同配送によるコスト削減の機会が提供されるため、物流会社には新たなビジネスチャンスが広がりました。
|農業のAI活用事例
この業界の深刻な課題に対して、変革を起こしうるのがAI技術です。
それを実際に取り入れた事例を下記でご紹介します。
水やり技術の習得
トマトの栽培において、水やりは熟練した技術が必要な繊細な作業です。
そこで、AIとIoTの組み合わせによる新たなアプローチが登場しました。
この取り組みでは、トマトの葉のしおれ状態を学習し、給水のタイミングを判断します。
カメラで葉っぱの様子を写しておき、深層学習の技術を活用してしおれた状態を特定します。
同時に、温度、湿度、日射量などのセンサーデータも収集し、AIにトマトの水需要を学習させることに成功しました。
農薬散布量の調節
中国のアグリテック企業「極飛科技(XAG)」によるドローンは、特別な操縦技術が不要で、飛行制御と薬剤散布の状況把握が可能なシステムを搭載しています。
これにより、農地の形状や風向きを考慮しながら、全自動で効率的な薬剤散布が行えます。
また、ドローンによって撮られた映像を基に、農作物の生育状況が解析されます。
この結果、薬剤散布量を適切に調節するための貴重な情報が提供され、効果的な管理が実現されます。
自動収穫ロボット
デンソーは、自動野菜収穫ロボットを開発し、農作業の効率化とコスト削減を実現しました。
これには、収穫のためのハサミ設計など情報分析技術が活用され、実を落とさずに確実に収穫します。
また、夜間運転や雑草除去機能も追加されました。
また、「ihano」と呼ばれるロボットは、自動的に農作物を選び分け、医療用のロボットアームを使用して収穫を行います。
充電1回で最大10時間の連続駆動が可能で、遠隔操作もサポートされ、獲り込み作業の負担を大幅に軽減します。
キュウリの自動選果
これは、キュウリを高精度に等級別に選別する画期的な取り組みです。
元SEである農家がGoogleのAIライブラリ「Tensor Flow」を活用し、1万枚以上のキュウリ画像を深層学習させました。
その結果、ベテラン並みの選別能力を持つAI選別機を開発し、キュウリ自体のクオリティやキズの状態に応じて、高精度なランク別選別を実現しています。
わずか3,000円程度のコストで構築され、正答率が80%という高水準を達成していることも特徴的です。
トマトの画像物体検出
「Laboro Tomato」は、トマトの画像物体検出に利用されるデータセットであり、トマトの検出に限らず、成熟度の評価にも適用可能です。
これは、高度なAI物体検出技術である「インスタンスセグメンテーション」を考慮したもので、成長度に基づく収穫の予測、自動的な収穫、不要なトマトの削減、特定成熟期のトマトへの薬剤散布、成熟度に合わせた温度調整、収穫後の品質管理など、多岐にわたる応用が可能です。
病虫害画像診断
「AI病虫害画像判別WAGRI-API」は、農作物分野における病気や害虫の診断を支援するプラットフォームです。
このシステムは、ユーザーが送信した現場の病害画像を自動的に解析し、病気の有無や害虫の存在を診断します。
大規模な病害画像情報を学習し、経験の浅い新規就農者の育成や、環境変化に伴って発生する未知の病害虫に対する迅速な対策が可能となります。
この取り組みは、この分野での知識伝承と病虫害の予防に寄与しています。
稲作でのAI活用
無人田植え機GO安曇野は、GPSを活用し、水田の特性を登録すると苗の配置や数量を計算して田植えを自動化します。
また、スマートフォンなどのカメラで撮影された田んぼの画像を解析し、最適な肥料の施用タイミングを提案する「水稲AI生育診断ソリューション」といったものなども登場しています。
これらの取り組みにより、稲作における作業の合理化と生育状況の確実な管理が実現され、生産性向上に寄与しています。
生育環境の違う野菜の栽培補助
静岡県沼津市にある植物工場では、ホウレンソウの効率的な生産が実現されています。
工場内に設置された多数のセンサーが温度や湿度などの環境情報をリアルタイムで収集し、AIがこれらの情報を解析。
その結果から一番適した栽培方法を自動的に生成し、ホウレンソウの生育環境を常に最適な状態に保ちます。
このシステムにより、レタスなどに比べて生育が難しいホウレンソウでも量産が可能になり、農作業の合理化と高品質な収穫を実現しています。
|まとめ
本記事で紹介したように、農業は劇的な変革を遂げつつあります。
高齢化や人手不足、気象変動などの課題に立ち向かう一方で、能率的な収穫や品質向上、リソースの最適利用が可能となっています。
技術の進化により、今後ますます多くの課題への対応策が提供され、持続可能な未来の農業が築かれることでしょう。
最先端の技術の力を借り、農作業者、消費者、環境にとって共に豊かな未来を切り拓いています。