こんにちは、メタバース相談室です。

近年、インターネット上で話題となっている「ディープフェイク」という技術。

AIを用いて、人物の顔や音声を合成した動画や音声のことを指します。

この記事では、この技術がどのように作成され、どのように広まっているのかを詳しく探ります。

驚くほどリアルな偽物を作るため、悪用される可能性も拭いきれない手法でもあります。

情報の真贋を正しく見極め、取捨選択することが重要になってきます。

本記事を読んで正しい知識を身に付け、どのように対処すべきかを考えていきましょう。

それでは早速見ていきます。

|ディープフェイクとは

Deepfakeは、人工知能(AI)とディープラーニング技術を用いて、極めてリアルな偽造映像や音声を生成する技術です。

この技術は、元の映像や音声を取り込み、その特徴を学習し、その後に新しいコンテンツを生成するため、驚くほどの精度でターゲットの人物や音声を模倣できます。

用途は多岐にわたり、エンターテインメントから悪意ある偽情報拡散まで幅広い領域で利用されています。

映画やゲーム制作においては特殊効果の向上に利用されつつ、政治的な操作やプライバシーの侵害に悪用される事件も増えています。

現在、法制度やテクノロジーの発展に合わせた対策が模索されており、監視や規制整備が進行中です。

|ディープフェイクの活用シーン

この技術は、主にどのような場面で活用されているのでしょうか?

代表的な使用方法を3つを下記で説明します。

・動画

・モデル・ニュースキャスター

・映画吹き替え

動画

本技術は、映画、テレビ、広告、エンターテインメントコンテンツなど、幅広い領域で活用されています。

例えば、映画やテレビ番組で俳優の顔をCGで合成し、よりリアルな映像を実現したり、歴史上の人物を再現したりといった使い方があります。

また、教育用コンテンツでは、著名人の講義やインタビューを動画で提供することで、より効果的な学習を促すことができます。

特殊効果とリアリズムの向上にも適用し、映画などでは、怪物や異世界のキャラクターをリアルに映像化し、観客を没入させることが可能です。

また、過去の映像を活用し、 亡くなった俳優やキャラクターを使用して、新作映画や広告を制作できるため、クラシックな映画のシリーズやアイコンの復活に役立てられます。

モデル・ニュースキャスター

本技術により、CGモデルやAIを人間に見せかけることができます。

これは、モデルやニュースキャスターの分野で新たな可能性を切り拓いています。

例えば、バーチャルモデルを作成できます。

ファッション業界において、自分の思い通りのモデルを生み出し、彼らをファッションショーに登場させることが可能です。

これは、デザインやスタイリングのプロセスをデジタル化し、柔軟性を高めることに成功しています。

また、リアルな顔と声を持つバーチャルなニュースキャスターの登場も可能です。

これは、24時間体制でニュースを伝えるのに役立ち、配信に関するキャスターの疲労を軽減します。

映画吹き替え

本技術は、映画における多言語吹き替えにおいて、大きな進歩を遂げています。

一つの映画を世界中の観客に提供する際、この技術を使って俳優の口の動きと発音を異なる言語に合わせて変更できます。

これは、海外での展開を視野に入れて、吹替版の制作を効率化するためにも活用され、国際市場での映画の成功にも寄与します。

さらにコスト面でも大きなメリットがあります。

従来の吹き替え作業は翻訳、脚本の調整、声優のキャスティング、収録、編集など多くの手順を必要としました。

しかし、本技術を使用すると、既存の映像に合成するだけで、各国の観客向けに複数の言語の吹き替えを効率的に生成できます。

これは映画制作者にとってコストと時間の節約をもたらします。

|ディープフェイクの作成アプリ

本技術については、巷のニュースなどでもよく耳にしたことがあるという方が多いと思いますので、如何なるものかは簡単に想像できたでしょう。

では実際に、どのような方法で作成できるのでしょうか。

下記で、本技術を活用するための便利なアプリをご紹介します。

Deepfakeswebβ

出典:https://support.deepfakesweb.com/hc/en-us

オンラインアプリケーションで、カナダのDeepFakeWebが開発し、提供しています。

このアプリは、使いやすいクラウドベースのソフトウェアであり、顔を入れ替えたり、動画を入れ替えたりしてディープフェイク動画を生成するプロセスを簡素化しています。

ユーザーは、動画と代替の顔をアップロードするだけで、高精度の動画を作成することができます。

そのため、世界中で知られており、映像制作やエンターテインメント業界で専門的な利用に向いています。

使用料金は、1時間あたり2ドル発生しますが、そのコストに見合ったクオリティで提供されます。

さらに、PCのスペックに依存しないため、自分のコンピュータの性能に制約されることなく、制作できます。

Xpression

出典:https://xpressioncamera.com/

スマートフォン向けのアプリで、iPhoneとAndroidの両方で利用できます。

必要なのは入れ替えたい人の顔写真や動画だけで、簡単な手順での作成が実現します。

ただし、一部のスマートフォンはスペックやバージョンの制約により対応できないことがあるため、その場合には別のアプリを検討することをお勧めします。

本アプリはバーチャル乗っ取りフェイスのためのアプリケーションで、動画中の人物の顔をリアルタイムで変更し、動かすことが可能です。

どんな種類の素材でも、一つの画像を用意し、その顔に好きなセリフをしゃべらせて新しい動画を制作できます。

クリエイターにとって、創造的なプロジェクトや楽しいコンテンツを手軽に作成する手段として便利です。

FakeApp

出典:https://play.google.com/store/apps/datasafety?id=com.nmnclk.fake_app&hl=ja&gl=US

PC向けの無料アプリケーションで、本技術を活用しての制作を手軽に試すことができるツールです。

このアプリは日本語には対応していませんが、英語で提供される解説動画を参考にすることで、手順を理解するのに問題ありません。

ただし、メモリ8GB以上のPCスペックが必要とされるため、PCの性能に留意する必要があります。

特に本技術を試してみたい初心者や、趣味で動画制作をするユーザーにとっては、手軽でおすすめのアプリです。

アプリ内での操作は比較的シンプルで、誰でも簡単に制作できるため、制作への入門として利用されています。

オンラインコミュニティや解説動画を利用しながら利用できるため、アイデア共有に役立ちます。

|ディープフェイクの実例

本技術の実例を以下でご紹介します。

これから本技術を活用していくための見本として、参考にしてみてくださいね。

『ライオン・キング』ファン動画

実写版『ライオン・キング』では、先進的な3DCG技術を駆使し、リアルな映像を実現し、注目を浴びました。

一部の観客からは「不気味の谷」とも評されましたが、本技術を駆使したアーティスト、Nikolay Mochkin氏によって面白いコラボレーションが生まれました。

彼は、実写版『ライオン・キング』の映像に自身の顔を巧妙に合成し、新たなムービーを制作し、わずか2日で120万回以上再生され、大きな注目を集めました。

これは、本技術の可能性を示す一例として、多くの人々の興味を引きました。

さらに、Disney+の『マンダロリアン』シーズン2でも利用され、エンターテインメント全般に革命をもたらす可能性があると言えるでしょう。

『ターミネーター2』再現動画

名作映画「ターミネーター2」でT-800役を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーの顔を、本技術によってシルヴェスター・スタローンの顔と巧妙に入れ替えた動画が公開され、世界中で大きな注目を浴びました。

この動画は、その驚くべき精度によって、視聴者にほとんど違和感を感じさせず、実際の映画シーンのようなリアルな再現度を示しました。

高い精度とリアリズムに光を当て、未来のエンターテインメント業界にディープフェイクが大きな影響を与えることを予示しています。

映画制作、特殊効果、俳優キャスティング、または歴史的な映画の再制作など、多くの分野で本技術が革新的なツールとして利用される可能性が高まっています。

Toonify Yourself!

このサイトは、SNS上で写真を投稿するユーザーの間で大きな注目を集めている無料のウェブサイトです。

写真に写る人物の顔を手軽に「ディズニー顔」に変換できることで知られており、顔をディズニー映画のように変換するため、目や鼻などのパーツがリアルに加工されます。

ユーザーは簡単にサイトに写真をアップロードし、「Toonify!」ボタンをクリックするとすぐに、写真がディズニー風のアートに変身します。

全ての顔写真に対応するわけではありませんが、このウェブサイトはAIを駆使しており、データの蓄積や技術の向上によって、今後はより多様な加工が可能になるでしょう。

Zeekit

画像認識処理に特化したアプリケーションで、バーチャル試着室として注目を浴びています。

自身の全身画像をアップロードし、洋服を変更したりアクセサリーを付けたり様々な合成をすることができます。

この試着機能は、体系や髪色などを考慮に入れてリアルな試着をオンライン上で実現し、試着画像をSNS上でシェアすることで、ユーザー間の意見を得ることも可能です。

このアプリを活用することにより、実際に店舗に足を運ぶ必要なく、オンラインショッピングで手軽に試着体験を行うことができます。

これは購買意欲の向上や商品の返品率の低減など、オンラインリテール業界に多くの利点をもたらしています。

|ディープフェイクの危険性

本技術により、利便性の高い、新しいエンターテイメントの道が切り開かれる一方で、利用に関してのリスクには十分注意する必要性があります。

以下で、どのようなリスクを有するかについて、説明していきます。

なりすまし動画

これは、有名人や権力者の顔を巧妙にすり替えて作成された動画が広まり、混乱を招く可能性があることを指します。

具体的な事例を挙げると、オーストラリアの映像作家が、ドナルド・トランプの顔を中国の習近平にすり替えることで注目を集めました。

するとすぐに、この技術を悪用し、誰でも使えるソフトウェアを公開したものが現れました。

それによって、多様なフェイク動画が世界中に拡散され、混乱が生じる結果となっています。

他にも、ウクライナのゼレンスキー大統領に関するディープフェイク動画がFacebookで発見され、削除された事例があります。

私もSNSで回ってきたこれらの動画を見ましたが、完成度が高く、この動画に扇動され良からぬ活動に繋がる危険性を感じました。

この技術は、本来の目的であるクリエイティブな利用に加え、悪意ある使い方にも利用される可能性があるため、注意が必要です。

国内の防止策

本技術の危険性に対処するため、日本では研究と対策が進行しています。

東京大学、山崎准教授のチームはディープフェイクを検出できるAIと疑似フェイク画像生成の新技術を開発し、不整合を最小限に抑えた検出方法を提案しています。

CREST FakeMediaも同様に、その検出と無毒化に焦点を当てて研究しています。

さらに、岡山大学の栗林准教授は、偽動画の識別に取り組んでおり、信号処理技術と機械学習を組み合わせて、識別するシステムを開発しています。

技術の進化に伴い、本技術に関する犯罪はますます巧妙になり、標的は著名人だけでなく企業にも及ぶ可能性があるため、情報セキュリティ対策の更新と強化が必要です。

|まとめ

今回はディープフェイクで作られた動画についてとその危険性について解説してきました。

この技術は娯楽やクリエイティブな用途もありますが、悪用のリスクも大きいです。

政治的、社会的影響力のある人物や企業によるなりすまし、詐欺、プライバシー侵害、ポルノの合成などが懸念されます。

しかし、その危険性に対抗するため、日本国内でも技術の進歩と検出方法の開発が進行中です。

私たちに情報と技術の偽装の危険性を考える機会を提供し、デジタル社会における警戒が必要であることを示しているのかもしれません。