VRの活用はゲーム分野だけではなく、医療や建築・製造現場などさまざまな産業に活用されています。
その中でも近年、VR技術を導入して注目を集めているのが学校などの教育現場です。
教育現場でも人材、時間、教材などさまざまなリソースが不足しており、DX化が必須とされている分野といえます。
そこで今回は教育現場で活用されているVRシステム「共感VR」をご紹介致します。
目次
|共感VRとは
「共感VR」はNPO法人クロスフィールズが開発したコンテンツです。
NPO法人クロスフィールズという団体はビジョンとして「社会課題」を解決し続ける世界を作ることを掲げています。
それを達成する為のミッションとして、社会課題を自分事として考えられる人材を増やし、問題解決にともに取り組む事を目指すために、必要なツールとして「共感VR」が開発されました。
共感VRでは実際に問題になっている現場を撮影しVR化することで、離れた場所でも現場の詳細を理解することが可能です。
さらに没入感による体験を活用することで、体験者にとっても身近な課題と理解できる仕組みになっています。
また、現場をVRで体験するだけでなく、そのあと感じたことや考えた事をアウトプットするまでが一つのパッケージとなっています。
このように、継続的に社会課題に対して興味関心が向くようなコンテンツが「共感VR」なのです。
|共感VRのミッション
ここでは実際に共感VRが目指しているミッションについて解説します。
どのような点で期待されているのかについてもご紹介します。
社会課題に対しての解像度を上げる
このミッションは共感VRだからこそ出来る事でしょう。
360°視点で撮影された映像や画像は、生徒が自分の視点で自由に見て観察することができます。
画面越とはしなりますが、「貧困」や「エネルギー問題」、「環境破壊」などリアルな現実を自分の目で見ることができます。
また、共感VRで見られるものは提供された画像や映像ですが、テレビ番組のように編集され放送の構成によって切り取られた物ではありません。
自分で見たいものを自分の視点で見れることによって、目の前の問題に対し理解が深まります。
さらに、映像資料だけでなく、補足して実際に現場の声をきいたり体験者の話を聞くこともできますので、より問題の本質に目が向きやすくなるコンテンツです。
このように、現場に直接いくことが出来なくてもテクノロジーを使い、普段自身が生活している世界では感じられない経験を積むことで、社会課題に興味関心を持つ心をはぐくむことが可能になります。
体験者の主体性を促す
共感VRは限られた情報ではなく自分で見たいものを自身の視点で見て解釈することができますので、友達同士で同じコンテンツを見てもそれぞれが違う意見、違う考え方を持つことを自然と促すことが可能です。
例えばある子は現場に映し出された住民が来ている服装を見て「貧困」を感じますが、別の子は枯れ果てた大地をみて、環境問題を感じるかもしれません。
それぞれが主体性をもってコンテンツを見ることで、さまざまな角度から社会課題を観察することも出来るのです。
また、社会課題のようなネガティブな内容を前向きにとらえられない子も現場にいるかもしれません。そのような場合でも、友達と思ったことを話し合うことで前向きにとらえやすくなることもあるようです。
平等な教育を受けられるようにする
「共感VR」のようなデジタルコンテンツは、場所や時間を選ばずに活用しやすい教材です。
教育現場のマンパワー不足に対して効果的に活用ができます。
例えば、社会科目の授業に定期的に組み込むとして、通常であれば担当の教師が一から資料を準備しなければいけない場合がありますが、共感VRは教材としてアウトプットする流れまで完成されているので流用しやすいでしょう。
また、授業を担当する教師が専門外であっても整備されたコンテンツは共有しやすいため、人手不足による教育のムラも防ぐ事が期待されます。
そして後述する内容ですが、無償で教材のコンテンツを開放しているので金銭的に教育手段が狭くなってしまう事も出来る限り対処しているからこそ、誰もが平等に学べる仕組みなのです。
|無償コンテンツ「STEAMライブラリー」
STEAMライブラリーとは、経済産業省をはじめ民間企業や研究機関、アーティストなど、学びに対して全方位から知識を集め、学生だけではなく企業や研究者なども活用できるオンライン図書館です。
その最先端の図書館に共感VRのコンテンツが追加されています。
現在導入が進んでいるAIや第4次産業革命に対応すべく、コンテンツは常に更新されます。
これにより知識のアップデートの場や資料として誰でも活用ができます。
また、それ以外にも科学、技術、工学、人文社会、芸術、デザイン、数学などさまざまなコンテンツがあり、社会課題を解決するためのヒントが手に入るライブラリーといえます。
取り扱うコンテンツに関してはある程度のルールは設けられていますが「こうしなければいけない」というきまりはないので、自主的に考え、みずから答えを導き出す自由度があります。
上記のことから共感VRとの相性もよく、STEAMライブラリーを活用すればいつもとは違う感性で学習を進める事ができるかもしれません。
|共感VRの導入効果
共感VRが展開された当初、県や地域の違う公立中学校・高校を対象に計5校でトライアルを開催しました。
その成果として「生徒が授業を通して社会問題のテーマに気づいた」「授業への姿勢が前向きになった」「テーマに対して生徒間での議論や意見交換が活発になった」など、生徒が自ら考える力、自主性が向上したなどの効果が見られたようです。
要因として、STEAMライブラリーにある教材によってインプットが効率よく出来るだけでなく、生徒一人ひとりが本当に関心のあることを調べるのでアウトプットの質も高く、自主的な発表内容になっていることが考えられます。
また、ワークシートや指導方法など自由に活用できるツールもあるため、探求学習が円滑に行えたという声もあったようです。
トライアルの詳細はSTEAMライブラリーに公開されているようですので、一度チェックしてみてくださいね。
|教育現場でのVR活用事例
共感VR以外でも教育現場ではさまざまなVRコンテンツが利用できます。
まず一つがVRを利用して社会科見学を行うことです。
実際にアメリカのBronx Latin SchoolではVRシステムを利用して、世界各国の名所巡りなどもおこなったとのこと。
写真や教科書でみるより、自分の視点で観察できることに大いに盛り上がった様子です。
実際に使われたシステムはGoogleが教育者向けに開発したGoogle Expeditionsというシステムで、無料で解放されておりだれでも活用することが可能になっています。
次に効果的な活用は実験です。
武蔵野大学付附属千代田高等学院での活用事例で、津波の発生メカニズムをVR教材を使用して学習を行いました。
津波の原因になる地震はどのように起こるかなど、地殻変動などプレートの動きや積層をVRで分かりやすく表現し直観的に理解できるレベルでの学習につながった様子です。
このほかにもさまざまな導入事例やメリットを紹介した記事もございますので、
是非チェックしてみてください。
|まとめ
今回は共感VRをご紹介しました。
VRを活用することで生徒のクリエイティブを活性化させ、自主的に問題や学ぶべきテーマにたどり着き、考えて行動することまで学べるシステムが共感VRです。
コンテンツは全て無料で解放されているので、スマホと簡易VRゴーグルさえあれば誰でも体感できます。
気になったという方はこの機会にぜひお試しください。