時代は変わり、建物も進化しています。

近年、我々のまわりの建物が賢く、効率的になっていることに気づいたことでしょう。

それがスマートビルの台頭です。

スマートビルは、建物を次世代の技術で包み込む革命的なアプローチです。

この記事では、スマートビルの本質を探り、その導入がもたらす多彩なメリットを詳しく解説します。

具体的な導入事例もご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。

|スマートビルとは 

スマートビルとは、インターネットやセンサーなどの情報通信技術(ICT)やAIを活用して、ビルの設備やサービスを最適化したビルのことを指します。

具体的には、以下の3つの要素によって構成されます。

まず、ビルインフラのICT化では、ビルの空調、照明、セキュリティなどの設備を、センサーやAIなどのICT技術を活用して、自動制御や最適化を行います。

そして、ビル内外のデータ連携では、天候や気温、人流、エネルギー消費量など、ビル内外のさまざまなデータを収集・分析し、ビルの設備やサービスを連携させます。

最後に、ビル利用者の利便性向上では、ビルの利用者(入居者や来訪者など)の行動やニーズを分析し、ビルの設備やサービスを最適化します。

スマートビルは、現在日本だけでなく世界中で急速に普及している新しい時代のビルです。

|スマートビルが注目されているワケ

スマートビルがなぜ今、注目されているのか、ここでは主な理由を3つあげ、それぞれ順番に解説していきます。

ソーシャルディスタンス確保

スマートビルは建物内の人の流れや密度を効果的に制御できるため、ソーシャルディスタンス確保が可能となります。

これは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会的な課題に対応する際に非常に有益です。

具体的には、スマートビルはセンサーとデータ収集を駆使して、建物内の人の動きをリアルタイムで監視し、適切なタイミングでアラートを発することが可能です。

これにより、人が密集するエリアへのアクセス制限や、人が十分な距離を保てるように誘導するなどの対策が行えます。

さらに、スマートビルは空調や照明などの設備も最適化でき、人々が快適に過ごすための環境を提供できます。

建物内の二酸化炭素濃度や温度をモニタリングし、適切な調整を行うことで、健康で快適な環境を維持できます。

CO2排出量削減

スマートビルはエネルギーの効率的な管理と最適化を可能にし、環境への負荷を軽減し、CO2排出量の削減に貢献します。

具体的には、スマートビルはセンサーとデータ収集を駆使して、建物内外の気象情報、人の動き、エネルギー消費量などをリアルタイムで監視し、適切な調整を行います。

例えば、空調設備は必要な場所と時間にのみ動作し、無駄なエネルギー消費を抑制します。

また、照明は自動で明るさを調整し、不必要な照明の使用を減らします。

さらに、再生可能エネルギーの統合や、エネルギー効率の向上などもスマートビルの特長です。

このエネルギー効率の向上により、CO2排出量が削減され、地球環境への負荷が軽減されます。

セキュリティ強化

スマートビルは、先進のテクノロジーとデータ収集を活用し、建物内のセキュリティを向上させるための多くの機能を提供します。

まず、スマートビルはセンサーと監視カメラを利用して、建物内外の異常な動きや侵入をリアルタイムで検出します。

これにより、不正アクセスや盗難の早期発見が可能となり、セキュリティの向上に寄与します。

また、アクセス制御システムは、スマートビルの利用者や訪問者に対して個別にアクセス許可を制御し、特定のエリアへの入場を制限します。

さらに、データ暗号化やサイバーセキュリティ対策もスマートビルの一環であり、データの保護とプライバシーの確保を強化してくれます。

|スマートビルのメリット

建物がスマートになることで、私たちの生活もより快適で効率的になります。

スマートビルのメリットを3つ例にあげて、詳しくご紹介します。

快適な環境を作れる

スマートビルは「快適な環境を作れる」という大きなメリットを提供しています。

これは、建物内の居住者や利用者にとって重要な要素であり、以下の方法で実珸化しています。

まず、スマートビルは空調と照明を効率的に調整する能力を持っています。

センサーとデータ分析を活用して、建物内の温度、湿度、照度などをリアルタイムでモニタリングし、最適な設定に自動調整します。

これにより、常に快適な室内環境を維持できます。

また、スマートビルは居住者や利用者の好みやニーズに合わせて設定をカスタマイズできるため、個人の快適さに焦点を当てることも可能です。

例えば、温度や照明の設定を個別に調整することで、快適な環境を提供できます。

電力消費を最適化できる

また、大きなメリットの一つに「電力消費を最適化できる」という点が挙げられます。

スマートビルはセンサーとデータ収集技術を活用し、建物内外の状況をリアルタイムで監視します。

これにより、エネルギーの使い方を最適化できます。

例えば、空調設備は建物内の室温と人の存在に基づいて調整され、無駄な冷暖房を避けます。

照明もセンサーにより必要な場所でのみ点灯し、無人エリアでは自動的に消灯します。

さらに、スマートビルは再生可能エネルギーの効果的な統合も可能です。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源を活用し、建物の電力需要を部分的または完全に賄うことができます。

これにより、電力の再生可能な供給が増加し、環境への負荷が軽減されます。

安全性が向上する

3つ目の重要なメリットは、「安全性が向上する」という点です。

スマートビルはセンサーと監視装置を利用して、異常な動きや侵入をリアルタイムで検出し、セキュリティを向上させます。

不正アクセスや盗難の早期発見が可能となり、建物内の安全性が増します。

アクセス制御システムは、個別にアクセス許可を制御し、特定エリアへの入場を制限します。

また、スマートビルは火災や災害の早期検出と対応も可能とし、安全性を向上させます。

非常時には適切な避難経路の案内を行い、避難をサポートします。

さらに、サイバーセキュリティ対策やデータの暗号化もスマートビルの一環であり、データの保護とプライバシーの確保を強化します。

|スマートビルの課題

さまざまなメリットがある一方で、スマートビルには課題も存在します。

ここでは2つの課題を例にあげて、それぞれ解説します。

セキュリティーのリスク

まずはセキュリティのリスクに関して、以下のような点が懸念されています。

サイバーセキュリティの脆弱性

スマートビルは多くのセンサーやデバイスがネットワークに接続され、データの収集や制御がオンラインで行われます。このため、サイバーセキュリティの脆弱性が露呈し、ハッカーや悪意のある攻撃者による侵入やデータの漏洩が懸念されます。

デバイスとシステムの保護

スマートビルの運用において、多くのデバイスやシステムが遠隔操作可能ですが、これらを適切に保護しなければ、不正なアクセスや攻撃に対する脆弱性が生じる可能性が高まります。

プライバシーへの影響

スマートビルはデータを収集し、分析するため、居住者や利用者のプライバシーに関する懸念が浮上します。

災害・トラブル時の損害

災害やトラブル時に損害をもたらす課題としては、以下のような点が挙げられます。

システム障害と停電の影響

スマートビルは高度なテクノロジーに依存しており、システム障害や停電が発生すると、遠隔監視や制御が困難となります。これにより、適切な運用が妨げられ、損害が発生する可能性があります。

データの損失とリカバリー

スマートビルは多くのデータを収集し、分析に活用します。災害時にはこのデータが損失する可能性があり、重要な情報が失われるリスクが生じます。また、データのバックアップと迅速なリカバリーが課題となります。

保険とリスク管理

スマートビルの導入に伴い、新たなリスクが発生します。建物所有者や運用者は、適切な保険政策とリスク管理戦略を策定する必要があります。災害に備えた対策が不可欠です。

|スマートビル導入事例

スマートビルの導入は、近年ますます増加しており、多くの成功事例が存在します。

具体的に2つの課題を例にあげて、それぞれ解説します。

東京ポートシティ竹芝

出典:https://tokyo-portcity-takeshiba.jp/about-us/smart-building/

「東京ポートシティ竹芝」は、ソフトバンク株式会社と東急不動産株式会社による、最新のIoT技術を活用したスマートビルです。

カメラやIoTセンサーが屋内外に設置されており、温度、湿度、人流データ、混雑情報などを収集します。

これらのデータは「スマートシティプラットフォーム」で収集・解析され、快適な環境整備と効率的なビル管理に活用され、人々の生活をスマートにすることを目指しています。

このように、東京ポートシティ竹芝は、IoT技術を駆使してスマートなビルを実現し、データとテクノロジーの力でより良い生活環境を提供しています。

東京建物日本橋ビル

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000052843.html

東京建物日本橋ビルでは、中国ビル管理会社RIVERINE社の子会社であるFOURTHWALL社が開発した「DBM(Dynamic Building Matrix)」というクラウドベースのビル統合管理プラットフォームを導入し、スマートビル化に取り組んでいます。

このDBMは業務管理システムや設備管理システムなどで構成されており、東京建物日本橋ビルでは初めて実際に使用されました。

また、LPWA規格のZETAを活用して、設備管理や点検業務の効率化を図り、従業員の満足度を向上させています。

これにより、業界全体の人材不足という課題に対処し、建物の運用を効果的に改善しています。

鹿島建設オフィスビル

出典:https://www.kajima.co.jp/news/digest/sep_2021/feature/04/index.html

鹿島建設オフィスビルは、鹿島グループがデジタルを駆使し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する顧客の課題やニーズを解決するスマートビル(オフィスやファクトリーなど)の企画や設計、運営などにおいて競争力を有しています。

同社は「建物OS」と呼ばれるプラットフォームを活用し、様々なソリューションを最適に組み合わせるデジタルゼネコンの地位を築いています。

また、鹿島建設オフィスビルでは、建物内に設置されたセンサーやカメラを活用し、ワーカーの行動情報をクラウドに収集します。

この情報をもとに、階段の利用など健康に関連する行動を促すメッセージがスマートフォンに通知され、健康な習慣の促進に役立てています。

The Edge

出典:https://design-inc.co.jp/newsstand/1854

アムステルダムに位置する「The Edge」は、15階建てのオフィスビルで、欧州で最高水準の環境性能を持つビルとして数々の賞を受けています。

この建物には約28,000個のセンサーが組み込まれており、働く人々の効率的な働き方と快適な生活をサポートしています。

たとえば、従業員が車で駐車場に到着すると、システムは空きスペースを自動的に案内し、アプリを通じて暖房や照明の調整も可能です。

このビルでは、全社員が固定のデスクを持たず、アクティビティベースのワークスペースを活用しています。

この新しい働き方は、世界中で注目を集めており、オフィス環境の最新の進化を示しています。

|まとめ

スマートビルは、最新テクノロジーを駆使した建物で、省エネやセキュリティ向上、居住者の生活向上など多くのメリットがあります。

実際多くのオフィスビルが導入を検討しており、スマートビルの導入はますます進んでいます。

これは建物の管理と運用の向上を意味し、持続可能な都市環境に貢献しています。

今後ますます多くのスマートビルが登場し、私たちの生活や労働環境を向上させる役割を果たすことでしょう。