近年、不動産業界における最新テクノロジーの活用が注目を集めています。
不動産取引では、物件の魅力を詳細に、かつ臨場感ある方法で伝えることが成功の鍵となりますが、そこでトレンドとなっているのが「AR」です。
VR内見は一般的に知られていますが、ARはそのさらなる進化形です。
本記事では、双方の魅力と違いについて、詳細にご説明します。
不動産との新たなコラボレーションについて、一緒に探求していきましょう!
目次
|ARとは
AR(Augmented Reality=拡張現実)は、デジタル技術を通じて現実世界に仮想の要素を追加する視覚技術です。
スマートフォンやタブレット、カメラを介して、実際の環境にデジタル情報を重ねることで、現実を拡張するのが特徴です。
例えば、スマートフォンのカメラを通して見ると、現実の風景に立体的なオブジェクトや情報を重ねて表示することができ、臨場感ある体験を楽しむことができます。
「ポケモンGO」で知られるARゲームをはじめ、教育、観光、広告などさまざまな分野で革新的なアプリケーションが開発され、私たちの日常生活に新たな次元をもたらしています。
詳細は、こちらの記事を参考にしてくださいね。
|不動産業界でARを活用するメリット
拡張現実技術は、エンターテイメントの世界だけではなく、あらゆる業界で活用を推し進める動きが盛んになっています。
では、不動産業界において導入する利点にはどのようなものがあるか、ご紹介していきましょう。
住んだ後の暮らしがイメージできる
この拡張現実の技術を使えば、物件を見るだけで、住んだ後の暮らしを具体的にイメージできるようになります。
通常、空き部屋や未完成の物件を見学すると、どのように家具やインテリアを配置すべきかを想像するのは難しいものです。
しかし、ARを用いれば、スマートフォンやタブレットを使って現実の部屋にデジタルな要素を追加できます。
例えば、空っぽの部屋にデバイスをかざすと、仮想のインテリアが表示され、カーテンのデザインや色、家具の配置をリアルタイムで変更できます。
これにより、物件に魅力を持たせることで、住んだ後の暮らしを立体的かつ鮮明にイメージすることが可能となります。
ヘッドセットなど特殊なデバイスが不要
従来のVR内見では、専用のヘッドセットやゴーグルが必要で、導入や運用にコストや手間がかかっていました。
一方、AR内見では、スマートフォンやタブレットなどの一般的なデバイスで利用できるため、導入や運用が非常に簡単です。
それらのカメラで現実の風景を映し、その上にバーチャルな不動産を重ねて表示するため、ヘッドセットなどを装着する必要がなく、現実世界と仮想世界の境界を意識せずに、自然な体験をすることができます。
特別なハードウェアを必要としないことで、業者側も導入が容易であり、物件の仮想内見やインテリアの試験的配置を提供できます。
不動産業界の新たな標準的な内見方法として、さらに普及していくことが期待されます。
顧客の購買意欲を向上させる
建物の建設予定地に完成予定の建物をリアルタイムで重ねて表示できることで、顧客は物件の完成形を直感的に把握できます。
また、内装や家具の仮想配置を実現することで、物件を居住イメージに近い状態で見ることも可能です。
これらは購買決定への道がより具体的になり、この実用的な利用方法によって、物件の印象を一層鮮明にし、購買意欲を高めるきっかけにもなります。
さらに、土地選定時には、仮想的に3DCGの建物を更地の土地に統合することで、隣接地や道路との距離感、庭の広さなどを直感的に確認できます。
視覚的な情報を通じて、建物と土地のマッチングを明確に理解し、安心感と納得感を持つことができるのです。
これは購買決定に対する信頼感を高め、購買意欲を増大させる有力な手段となっています。
時間やコストの削減
住宅購入には多くの打ち合わせや資料作成が伴いますが、物件の特性は文字や写真では伝わりにくいものです。
そこで、この技術を駆使することで、実際の場所に建物を重ねて表示し、直感的な説明が可能となります。
これにより、情報共有が迅速かつ効率的に行え、コミュニケーションコストを削減し、従業員の生産性向上に寄与します。
また、不動産販売業者はモデルルームの設置や内装の展示に多額の費用と時間を費やすことがありますが、家具や内装のデータを活用すれば、全ての部屋において仮想的な内装を実現できます。
実際の家具や内装を設置する場合と比べて著しいコスト削減と時間節約が実現することで、物件価格の低減につながる可能性があります。
|内見におけるARとVR活用の違い
VRでも同様に不動産業界にとってさまざまな活用方法が導入されています。
どちらも業界にとって有利となる最新テクノロジーですが、ここで双方の違いを明確に説明しておきましょう。
場所や時間の制約があるか
VR内見は、仮想空間を構築し、特定の場所に物理的に行かなくてもその場所を訪れたかのような体験を提供します。
一方、AR内見は現実世界にデジタル情報を重ねて表示するため、物理的な場所に依存します。
特定の場所で特定の物件を見るために、現実の環境が必要であり、時間にも制約が生じます。
前者は場所や時間の自由度が高く、後者は特定の現実空間に依存する特性があります。
どちらが適しているかは、具体的な用途や目的によります。
工事中や入居中の物件を確認できるか
AR内見は、現実世界にデジタル情報を追加するため、建設中や入居中の物件を実際の場所で確認する必要があります。
しかし、工事中の進捗状況を確認することは安全面の問題などから安易に公開されることは少なく、入居中の物件を確認することはほぼ不可能です。
一方、VR内見は完全な仮想空間を提供するため、建物が完成していない工事中の状態や実際の入居者の生活状況に関係なく遂行することが可能です。
具体的にイメージできるか
双方の内見の違いは、具体的なイメージを得られる点においても明確です。
ARでは、仮想の要素を現実世界に重ねて表示し、具体的な物件内観やインテリアをリアルな環境で体験できます。
カーテンのスタイルや家具の配置などをリアルタイムに調整し、顧客の好みに合わせた内観を実現します。
一方、VR内見は完全な仮想空間を提供し、実際の物件に立ち入ることはありません。
したがって、具体的な実物の変更や調整は難しく、カスタマイズが制約されるという特徴があります。
慣れていない人でも扱えるか
ARはスマートフォンやタブレットを使用するため一般
のユーザーにとってなじみやすく、専門的な設定や機器の扱いを必要としません。
この技術が搭載されたアプリは広く利用され、直感的な操作で物件内観を可能にします。
一方、VRは仮想空間に完全に入り込むため、専用のヘッドセットやコントローラーを使用し、立体的な環境での移動や操作が必要です。
その上、慣れない仮想空間で酔ってしまうユーザーもいるなど、使用に関しての知識も必要な技術です。
|不動産×ARの導入事例
実際にARを導入している企業の取り組みについて、具体的に説明していきましょう。
WARP HOME
「WARP HOME」は、工務店と住宅メーカー向けに提供される不動産プレゼンテーションツールです。
こちらでは、AR活用により、タブレット端末を現地にかざすことで、モデルハウスがほぼ実物大に表示され、リアルな内覧体験をタブレット越しに楽しむことができます。
同時に、高精細の3DCGを活用したVRを通じて、モデルハウスの内覧も可能にしています。
双方の最新テクノロジーを駆使した、不動産プレゼンテーションを行っています。
LIFULL HOME’S
このプラットフォームは、ユーザーが日常の街歩きから得た感情や魅力をデータとして蓄積し、風景に重ねることで、普段見過ごすかもしれない街の魅力を再発見できます。
気に入った場所の周辺で物件情報を検索できたり、特許技術である3D間取りシステムを活用し、ARを使用して部屋の大きさを直感的に比較することも可能です。
さらに、「ARお部屋計測機能」を通じて、iPhoneのカメラを使用して部屋のサイズを迅速に測定することもできます。
|AR内見
株式会社x gardenが提供する不動産内見の革新的なアプリです。
間取り情報を入力することでバーチャルモデルルームを簡単に作成し、家具の配置をシミュレーションできます。
有料会員になると、作成したモデルルームをクラウド上に保存し、将来の内見やリノベーションのシミュレーションに再利用することが可能です。
さらに、顧客の好みに合わせて「ヴィンテージ」や「モダン」といったスタイルを提供し、複数のデバイスから同時に同じARモデルルームを閲覧できます。
どこでもAR内覧
株式会社YONDEが提供する、画期的な不動産バーチャル内覧サービスです。
スマートフォンのAR機能を活用し、住宅物件をどこでもバーチャル内覧できます。
自宅にいながらでも利用できるため、スマートフォンを片手に物件周りを歩きながら、同時に3Dモデル内を自由に内覧し、間取りを確認できます。
よって不動産内覧は従来の物理的な訪問に制約されず、ユーザーはどこからでもバーチャル内覧体験を楽しむことができます。
リノベる
「ARリノベ」は、リノベる株式会社とKAKUCHO株式会社によって開発された、不動産業界における画期的なプラットフォームサービスです。
買取再販売事業者向けのサービスで、購入希望者が半完成状態のリノベーション物件を内覧し、ARを活用して残りの内装設定(キッチン、間仕切り壁など)を自由に調整し、完成予想図を確認しながら購入できます。
これにより、購入希望者は容易に完成を想像することができ、スムーズな契約が可能となります。
LOWYA AR
これは、家具メーカーLOWYAが提供する家具試し置きサービスで、商品ページから選んだ家具の画像をタップし、家具を部屋に仮想配置できます。
配置した家具は、実際にその場所に置かれているかのように見え、部屋の色合いや質感との調和をリアルタイムで確認できます。
アプリでの利用だけではなく、ウェブブラウザを介して直接ARを体験できるWeb ARも採用しており、コンバージョン率(CVR)の向上が期待されます。
IKEA Place
IKEAは家具業界でARを導入した先駆けの企業として知られています。
その代表的なアプリである「IKEA Place」は、スマートフォンを活用し、家具を実寸大で仮想配置できる画期的なツールです。
これにより、購入前に家具のサイズや配置を視覚的に確認できたり、テクスチャーや生地、光と影の表現にまでこだわり、実物に近いリアルな体験を提供します。
|まとめ
不動産業界におけるARの活用は、多くのメリットをもたらしています。
特殊なデバイスを必要とせず、場所や時間に制約がないため利便性が高く、住宅や商業物件から家具の配置まで、業界全体に革新をもたらしています。
今後、この柔軟性の高さと身近さにより、ますます多くの場面で導入が期待されます。
さらなる技術の発展と普及は、不動産業界の新たなビジネスモデルやサービス創出の大きな要素となることでしょう。