自動車業界は、AI技術の導入によって、大きく変貌しようとしています。

有名なところでは、自動運転の実現に向けて、AI技術の開発が加速しています。

しかし、自動運転はAI技術の活用のほんの一例に過ぎません。

自動運転の実現はもちろん、製造や販売、メンテナンスなど、さまざまな分野でAIが活用されています。

本記事では、自動車業界におけるAI活用の最新トレンドを、具体的な事例を交えて紹介していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

|AIとは

AI(Artificial Intelligence)とは、人間の知能を模倣した人工的な知能のことです。

人間の知能には、学習能力や推論能力、問題解決能力などさまざまな能力がありますが、AIはこれらの能力をコンピューター上で実現しようとする技術です。

AIは、すでに多様な分野で活用されています。

例えば、画像認識や自然言語処理などの分野では、AIを用いることで、人間では難しい作業を自動化することが可能になっています。

また、医療や金融などの分野では、AIを用いることで、より精度の高い診断や予測を行うことが可能になっています。

さらに、ロボットや自動運転車などの開発にも、AIが活用されています。

AI技術は今後も進化し続け、様々な分野で活用されていくことが予想されています。

さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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|自動車業界にAIを取り入れるメリット

自動車業界にAIを導入するメリットとしては、主にコストカット、品質の向上、安全性の向上の3つがあげられます。順番にそれぞれ解説します。

コストカット

まずはコストカットのメリットとして、たとえば以下のような事例があげられます。

1. 製造プロセスの効率化

AIを活用することで、製造プロセスの効率化が図られます。例えば、AIを用いた生産ラインの自動化や、生産工程の最適化により、人件費や設備投資などのコスト削減が実現します。

2. 品質管理の高度化

AIを活用することで、品質管理の高度化が図られます。例えば、AIを用いた画像解析や、故障予知システムの導入により、不良品の発生率を低減し、品質保証にかかるコストを削減することができます。

3. マーケティングの精度向上

AIを活用することで、マーケティングの精度向上が図られます。例えば、AIを用いた顧客データの分析や、需要予測システムの導入により、ターゲット層への最適なマーケティング施策を実施し、広告宣伝費などのコスト削減が実現します。

製品の品質向上

AIの活用は、自動車業界の製品品質の向上にも大きく貢献する可能性があります。

具体的には、以下の2つの分野で製品品質の向上が期待できます。

1. 製造プロセスの高度化

AIを活用することで、製造プロセスの高度化が図られます。例えば、画像解析や、故障予知システムの導入により、不良品の発生率を低減し、製品の品質を向上させることができます。

2. 設計・開発の高度化

AIを活用することで、設計・開発の高度化が図られます。AIを用いたシミュレーションや、材料特性の予測により、製品の設計・開発を効率化し、製品の品質を向上させることができます。

今後も、AIの技術革新が進むにつれて、自動車業界におけるAIの活用はさらに拡大していくと考えられます。

安全性の向上

また、安全性の向上に関しても、以下のようなメリットが期待できます。

1. 運転支援システムの開発

AIを活用した運転支援システムの開発により、ドライバーの運転を支援し、事故の防止につながります。例えば、AIを用いた衝突警報システムや、車線逸脱警報システムの導入により、ドライバーの注意力を喚起し、事故の発生を未然に防ぐことができます。

2. 自動運転技術の開発

AIの活用により、ドライバーの介入を必要としない自動運転が可能になります。自動運転により、ドライバーの運転ミスによる事故の防止が期待できます。

3. 車両の安全性評価の高度化

AIの活用により、車両の安全性をより精度高く評価することが可能になります。これにより、安全性に問題のある車両を早期に発見し、対策を講じることで、事故の発生を未然に防ぐことができます。

|自動車業界のAI活用事例

ここからは自動車業界においての、具体的なAIの活用事例を細かく分け、それぞれ詳しく解説していきます。ぜひ導入の参考にしてください。

自動運転

AI技術は自動運転の分野で既に取り入れられ、活用されています。

具体的にはAIは車両のカメラやセンサーを通じて周囲の物体を認識し、通行人や障害物を避けながら安全に運転できるようにします。

自動運転用のAIシステムは、車輌自体にではなく、クラウド上に設置され、車両とクラウド間でデータ通信を行い、自動車を制御します。

自動運転は、自動化の程度によって「レベル0」から「レベル5」までの段階があり、現在では「レベル3」が一部で導入されています。

将来的には「レベル5」の完全自動運転が実現すれば、高齢者や障がい者など、運転が難しい人々にとっても自動車利用が安全になり、事故減少や交通渋滞の緩和など多くの利点が期待されます。

工場の品質検査

品質検査は、自動車部品の製造に不可欠で、かつては目視検査が主流でしたが、AI技術の導入により、自動車部品の品質検査が自動化されつつあります。

たとえば、和良工業はAIを用いて品質検査を行い、従来の4秒かかる検査を1秒未満に短縮しました。

また、ドイツの高級車メーカーはAIを利用してプレス工程の品質検査を行い、微細な亀裂を素早く自動認識できるようになりました。

さらに、日本のエレクトロニクスメーカーと自動車メーカーは、AIシステムを活用してエンジン部品の削磨加工品質を高精度に判定し、その運用管理をサポートするパッケージを本格稼働させています。

これらの実例から、AI技術による自動車部品の品質検査の自動化が進展していることがわかります。

生産・設計の効率化

日産自動車ではAIシミュレーション技術を駆使し、生産ラインの評価と運用を合理化しています。

2020年の実証実験では、AIを使用して生産シミュレーターの設定を行い、生産ラインの構築や計画変更を10倍以上のスピードで実行する成功を収めました。

また、生産効率の予測誤差が20%から3%に改善されました。

このAIシミュレーション技術には、NECと産業技術総合研究所(産総研)が共同開発した技術が使用されており、実データを補完するシミュレーションデータを自動生成することによって、最適な意思決定を少量のデータから行うことができます。

実証実験では、スループットの1か月分のデータを活用して生産ライン計画や予測の精度向上に成功しました。

ナンバープレート検出

AIの画像認識技術を利用すれば、車のナンバープレートを効果的に認識することができます。

この技術は、カメラで撮影されたナンバープレートをAIが読み取るもので、交通量調査や不正駐車の検出など、さまざまな用途に応用できます。

たとえば、駐車場にこのAIカメラを設置すれば、契約のない車が勝手に駐車場を利用した場合に素早く対処できます。

また、ナンバープレートと顧客情報を関連付けておけば、来店した顧客をナンバープレートから識別し、個別に対応することも可能です。

さらに、企業は自社の車両の入出庫履歴を効率的に管理するためにも利用できます。

ただし、ナンバープレートの認識は主に屋外で使用されることを前提としているため、天候による影響が課題です。

ルート判断

AIは、車両のナビゲーションにも活用されており、最適な走行ルートを提供しています。

通常のカーナビゲーションとは異なり、最新のAIは個々のドライバーの好みや傾向を学び、それを反映したナビゲーションを提供します。

たとえば、長距離ドライブの際、高速道路を選ぶか、のんびりとした下道を選ぶかは、運転者によって異なります。

AIは機械学習を通じて、運転者の好みを理解し、交通情報と組み合わせて最適なルートを提案します。

また、この技術は交通業界や物流業界でも活用されており、ドライバーの労力や燃料コストを最小限に抑えつつ、効率的な配送の実現を可能にしています。

ドライバーの運転診断

危険運転による事故の予防にも利用されています。

たとえば、矢崎総業株式会社が提供する「TRUE SAFE」というAI安全運転ソリューションでは、数百万の運送会社のデータと事故データを収集し、AIを使用してこれらのデータを分析することで、高精度な事故予測を行っています。

「TRUE SAFE」は、運送会社に対して、定量的かつ実証に基づいた運転リスクの評価とスコアを提供します。

これは従来の閾値に基づくサービスとは異なり、非常に高い精度で運転リスクを評価し、事故の予防に貢献しています。

また、「TRUE SAFE」は2,000以上の特徴を使用して危険な運転行動を分析しています。

この分析を元に、運行データを事故データに結び付け、より早い段階で危険な状況を予測できるようになっています。

タクシーの需要予測

タクシー業界では、乗務効率を向上させています。

たとえば、ソニーペイメントサービスといくつかの大手タクシー会社が提供するシステムでは、時間や場所、天候などを考慮して潜在的な乗客を特定し、ドライバーの効率を高めています。

また、需要の詳細な分析も可能で、「長距離利用が予想されるエリア」や「雨の日に需要が高まりやすい場所」など、さまざまな条件を考慮してデータを解析できます。

これにより、タクシーの運行を状況に合わせて最適化できます。

これまで、どこで乗客が待っているかを予測するのは、ドライバーの経験に頼ることが一般的でした。

しかし、AIを導入することで、より簡単に需要を予測できるようになり、新人ドライバーやタクシー会社にとっても大きなメリットとなります。

車の故障診断

自動車の故障を診断するスマートフォンアプリでもAIが活用されています。

チェコの自動車メーカーŠkoda Autoが開発した「Sound Analyser」というスマホアプリでは、車から発生したノイズを録音し、それをAIを使って事前に保存された音のパターンと比較して、車のメンテナンスが必要かどうかを判断します。

このアプリは、ニューラルネットワークアルゴリズムに基づいており、録音した音声ファイルを「スペクトログラム」と呼ばれる視覚的な形式に変換します。

その後、AIはアーカイブされた音源と比較して異常を検出し、そのパターンからメンテナンスや修理の必要性を判別します。

中古車の査定

株式会社エーエヌラボと株式会社八幡自動車商会は、中古車販売業者の中古車査定をスマートにするため、スマホAI画像査定の実証実験を始めました。

これにより、従来は経験と時間が必要だった車両査定が、AIを使って正確かつ迅速に行えるようになり、中古車買取市場での業績向上が期待されています。

実証実験では、車検専門店「コバック」の店舗入り口にカメラを設置し、入庫した車両に対してAI画像査定を自動で行います。

これにより、通過する車両の情報を迅速に中古車データベースと照合し、同じメーカーや車種の市場価格を即座に表示できます。

また、画像を利用して車の年式や状態に基づいた価格も考慮した検索結果を提供することができます。

|まとめ

以上、【自動車業界×AI】の活用事例について詳しく解説してきました。

自動運転技術の進歩に止まらず、品質検査、運転支援、タクシーサービス、中古車査定、配送ルート最適化など、多岐にわたる領域でAIが活用されています。

これらの変革は業界だけでなく、私たち消費者にも多くの利益をもたらしています。

この先も、未来の自動車技術がどのように私たちの生活を向上してくれるのか、注目していきましょう。