デジタル技術は私たちの日常生活に大きな変化をもたらしていますが、今や食品・飲食業界においても新たな変革が起きています。
それが、メタバースの台頭です。食事を通じて人々が繋がり、新たな体験を楽しむ場所として、メタバースは食品・飲食業界に革新をもたらしています。
この記事では、食品・飲食業界におけるメタバースの活用方法、そのメリット、そして業界内で既に成功している事例に焦点を当ててご紹介します。
目次
|メタバースとは
メタバースは、現実世界をデジタル空間で拡張する新たな概念です。
この概念は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、人工知能(AI)、ブロックチェーンなどのテクノロジーを駆使して、デジタルの世界での人間の存在や活動を可能にします。
メタバースは、3D空間内でアバターを通じて他のユーザーとコミュニケーションを取るプラットフォームとして提供され、ユーザーは仮想の世界で対話、創造、交流を楽しむことができます。
オンラインミーティングやソーシャルメディアから、教育、エンターテインメント、ビジネスに至るまで、さまざまな分野で応用されています。
メタバースは、現実世界とデジタル世界を融合させ、新たなコミュニケーションやビジネスの形態を創り出す可能性を秘めており、今後のテクノロジーの進化に世界中から注目が集まっています。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参考ください。
|【メタバース×食品・飲食業界】活用メリット
さまざまな分野に広がっているメタバースですが、食品、飲食業界でも急速に活用されています。
主な活用メリットを以下に4つご紹介します。
新規顧客を獲得できる
従来のリアルなプロモーションイベントでは、特定の場所や時間に参加することが求められ、地理的な制約によりターゲット層が限定されていました。
しかし、インターネット上の仮想空間にはいつでもどこからでもアクセス可能であり、世界中の顧客にアプローチできます。
また、若者世代との接触が難しい企業や商品にとっても、メタバースは有効なマーケティングツールとなります。
メタバースはデジタルネイティブである若い世代に愛用されており、人気コンテンツやゲーミフィケーション要素を組み込んだプロモーション施策が成功する可能性が高いためです。
若者世代の顧客獲得に焦点を当てたマーケティングに適しています。
SNSでのマーケティングに活用できる
メタバースを導入し、SNSでのマーケティングに活用することが可能です。
通常のWeb広告とは異なり、メタバースは独自の魅力があり、ゲーミフィケーションやアニメーションを取り入れる事で、共有されやすい特長があります。
さらに、メタバース内で商品の生産者から製造背後のストーリーや地域文化について学ぶこともできます。
これはECサイトでは難しかったことで、地方の特産品に注目が集まり、人気商品に対する消費者の理解を深める手助けとなってくれます。
メタバースを取り入れることで、食品・飲食業界はSNSを通じて効果的なマーケティングができるようになり、商品の魅力をより多くの人々に伝えることが可能となります。
非日常の体験を提供できる
メタバースでは、現実では不可能なことも実現できます。
たとえば、バーチャル空間内に広大な農場や牧場を構築し、ユーザーが自分の手で収穫や調理を行うといった体験を提供することができます。
また、メタバース上では歴史上の人物や架空のキャラクターと一緒に食事を楽しむといった体験も可能です。
さらに、バーチャルアバターを使ってユーザー同士が簡単にコミュニケーションを取れるため、ユーザーは他のユーザーと協力して料理を作るといった体験を楽しむことも可能となります。
このように、非日常の体験を提供することによって、ユーザーの興味や関心を惹きつけ、新たな顧客の獲得や既存顧客の満足度向上に繋げることができます。
場所や時間を問わず訪れることができる
最後のメリットは、場所や時間に縛られずに店舗を訪れるという点です。
ユーザーは自分の好きな場所から、バーチャル空間にアクセスすることが可能なため、現実世界では遠く離れた場所にあるレストランや、海外のレストランなどを訪れることができます。
また、ユーザーは自分の好きな時間に、バーチャル空間へのアクセスが可能なため、営業時間外や、混雑している時間帯でも、レストランを利用できます。
さらに、メタバース上では、レストラン側も営業時間を延長することも可能なため、営業時間外でも、ユーザーはレストランを利用することができます。
|【メタバース×食品・飲食業界】活用事例14選
ここからは食品、飲食業界におけるメタバースの活用事例をご紹介していきます。
それぞれ順番にご紹介しますので、ぜひメタバース導入の参考にしてください。
コカ・コーラ
コカ・コーラは、バーチャルショップで新商品のイベントやプロモーションを行い、消費者とのメタバース内のつながりを深めています。
彼らが開発した新しい飲料「コカ・コーラゼロシュガーバイト」は、メタバース内の人気ゲームフォートナイトで発売前から試飲できるようになり、消費者の期待を高めました。
さらに、過去の自動販売機をメタバース上で復元し、それらをNFTを用いてオークションで販売するなど、メタバースを利用して新しい消費者を獲得するための積極的な取り組みを行っています。
日清食品
日清食品は、世界最大のVRイベントである「バーチャルマーケット」に出展しました。
このイベントでは、カップヌードルの製造工程を知ることができる工場見学から物語がスタートし、その中でユーザーは広大な街を飛び回ったり、爆破のミッションに挑んだりすることができます。
このゲームをクリアすると、お土産を購入したり、フォトスポットエリアで写真が撮れたりと、楽しいアクティビティも楽しめます。
ブルボン
ブルボンは、お菓子の楽しさと新潟県柏崎市の魅力を伝えるため、専用のメタバース空間を構築しました。
このメタバースでは、ブルボンの歴史を学んだり、コインを使ってガチャガチャを楽しむことができます。
また、自販機からはブルボンの商品を注文でき、オンラインストアへアクセスできます。
将来的には、企業と消費者が安全で対話的なコミュニケーションを楽しむ場として展開し、新たなファンの獲得とファン同士のコミュニティを活性化させることを目指しています。
ブルボンメタバースについては、こちらの記事に詳しい情報が載っていますので、ぜひご覧ください。
キリン
キリンが提供する「おいしさ体験オンラインツアー」は、体験型のメタバースコンテンツです。
このツアーでは、工場見学ガイドの案内を受けながら、3D空間を自由に探索でき、キリンビールの製造プロセスや歴史を学び、ビールの味わいや香りについての説明を受けることができます。
これを通じて、消費者は製品の魅力をより深く理解し、新しい飲み方やビールの楽しみ方を発見することが可能です。
キリンの「おいしさ体験オンラインツアー」は、顧客とのつながりを強化し、同時に製品の認知度と魅力を高める有効な試みです。
サントリー
サントリーは「飲むメタバース」というプロジェクトをスタートさせました。
このプロジェクトでは、サントリーの主要飲料ブランドや商品のコンセプトアート、社員のメタバース体験動画を公開しています。
また、サントリー天然水スパークリングレモンの「遊園地」予告動画もあります。
このプロジェクトは実際にメタバース空間を作成するものではなく、メタバースについて学び、考えるためのものとして作られました。
オレオ
オレオは「oreoverse」という独自のメタバースを提供し、ここではゲームへの参加やブランドとの交流が楽しめます。
この仮想空間内で、ユーザーは限定商品や新しいフレーバーを発見でき、楽しみながら商品の魅力を体験することが可能となります。
オレオは、このようなアプローチを通じて、消費者に自社のブランドの魅力を伝える効果的な手段を提供しています。
ドリトス
アメリカのチップメーカーDoritosが、初のメタバース内スペース「Doritos Triangle Studios」を設立しました。
このプロジェクトでは、ブランドをテーマにしたミニゲーム、エアドロップキャンペーン、懸賞などが展開されており、ドリトスはDecentraland(MANA)のメタユニバースで新たな体験の世界を提供しています。
同社はさらにNFT市場の異なる分野を模索し、その領域を拡大することを目指しています。
ネスレ
ネスレは、Decentraland内に「Nestlé MUNCH」というバーチャルストアを立ち上げました。
この仮想ストアは、ネスレのブランドを拡張し、仮想空間で商品を購入できるだけでなく、料理コンテストや味覚テストなどのバーチャルイベントも提供しています。
ネスレはメタバースを活用することで、新たな消費者との接点を築き、ブランドのイメージ向上とビジネスの成長を目指しています。
ふくや
明太子メーカーのふくやは、メタバース内にバーチャル店舗を立ち上げ、リアルの店舗と同じように商品を見て、スタッフから説明を受け、購入する機会を提供しています。
この取り組みの結果、訪れた人の約3割が商品を購入しました。
来場者は、RPG風のメタバース内で自分のアバターを操作し、他のアバターとコミュニケーションをとりながら、チャットやビデオ通話などを楽しみました。
ふくやはメタバースを活用して、商品購入とともに楽しいコミュニケーションの機会も同時に提供することに成功しました。
大丸松坂屋
大丸松坂屋は、世界最大のメタバース/VRのイベント「バーチャルマーケット」に出展することをアナウンスしました。
大丸松坂屋は専用のブースで、ニューヨークの街並みを再現した空間で「バーチャル大丸・松坂屋」を展示します。
訪れる人々は、百貨店内で600種類以上のグルメのショッピングを楽しんだり、大丸松坂屋の400年にわたる歴史を感じるアトラクションを楽しんだりできます。
農心(ノンシム)
農心(ノンシム)は昨年、メタバースプラットフォーム「ゼペット」で「辛ラーメン屋」をオープンし、消費者の好みを調査するために「天下第一ラーメン作り大会」を開催しました。
参加者の中で、通常の辛ラーメンよりも3倍辛い味、硬い麺、肉と卵の組み合わせが好まれる傾向が明らかになりました。
このフィードバックを受けて、農心は最も人気のある組み合わせを商品化し、提供することに成功しました。
マクドナルド
マクドナルドは、ハッピーセット販売30周年を祝して、おまけとしてダンボール製のVRゴーグル「Happy Goggles」を提供しました。
このゴーグルは、Googleが開発した「Google Cardboard」と同じ仕組みを活用しており、ボックスを組み立ててスマートフォンをセットすれば、メタバース内でスキーゲームを楽しむことができます。
モスバーガー
モスバーガーは、SNSメタバースプラットフォーム「VRChat」内に仮想店舗を開設しました。
この試みは、モスバーガーの新商品「月見フォカッチャ」に関連しており、仮想店舗は月面に設置されています。VRゴーグルを持っていると、誰でも簡単にアクセスできます。
さらに、期間限定で、東京都内の3店舗ではVRゴーグルの貸し出しとメタバース内でのハンバーガー作りの体験会も提供されました。
Wendy’s
世界的なファーストフードチェーンWendy’sは、Metaのメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」内にVR体験スペースとしてWendyverseを開設しました。
ユーザーはこのメタバース内で店員の体験を楽しんだり、他のユーザーとコミュニケーションを取ったりできます。
さらに、このメタバース内には多くのゲームが用意されており、Horizon Worlds内で利用可能な無料フードチケットなどを獲得できる機会も提供されています。
|【メタバース×食品・飲食業界】の将来性
食品・飲料業界では、メタバースの採用により、新たなマーケティングアプローチが展開されることが予想されます。
たとえば、特定の地域を3Dデータでスキャンし、仮想現実で再現することで、その場所に訪れているような臨場感あふれる体験が可能になります。
また、メタバース内で生産者から商品の製造にまつわるストーリーや地域の文化について学ぶこともできます。
これにより、地方特産品などにも注目が集まり、商品に対する理解が深まります。
このように、メタバース×食品・飲食業界の将来性には、大きな可能性を秘めています。
今後、メタバースの技術がさらに発展していくことで、食品・飲食業界においても新たなビジネスモデルが誕生すると考えられます。
|まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。メタバースが食品・飲食業界にもたらす変化は非常に注目すべきものです。
新たなマーケティング戦略や充実した消費者体験によって、業界はさらなる進化を遂げつつあります。
さらに、地理的な制約を克服し、広範な顧客にリーチできる利点があり、特に若い世代の顧客獲得に効果を発揮しています。
今後も、食品・飲食業界がメタバースを通じて新たな可能性を探求し、消費者との緊密な関係を築いていくことが期待されます。