最近、「MetaQuest3」や「Apple Vision Pro」といったAR機能を搭載したデバイスが立て続けに発表されており、気になっている方も多いのではないでしょうか。
ARは現在注目されている最新技術ですが、その歴史は意外にも古く、概念の誕生までさかのぼれば100年以上の歴史があります。
この記事では、ARの歴史を振り返り、AR技術が現在の形になるまでの軌跡をたどっていきます。
今後さらなる発展が期待されるARの歴史を一緒におさらいしていきましょう。
目次
|ARの歴史簡易年表
西暦(年) | 出来事 |
1901 | ライマン・フランク・ボームのSF小説にARグラスが登場 |
1968 | 最初のARデバイス「ダモクレスの剣」が開発される |
1992 | ・論文の中ではじめてAugumented Reality(AR)という言葉が使われる・航空機の操作能力向上のためのAR「Virtual Fixtures」が導入される |
1993 | プリンターのメンテナンスサポートを行うAR『KARMA』が発表される |
1998 | アメフトのTV中継でAR技術を使った放送が行われる |
2000 | ARゲーム『ARQuake』が開発される |
2007 | PlayStation3用ゲーム『THE EYE OF JUDGMENT』が発売される |
2009 | 『セカイノカメラ』がリリースされる |
2013 | Google Glass(開発者向けプロトタイプ)がリリースされる |
2016 | ・Pokemon GOが大ヒット・HoloLensのリリース |
2016~2023 | さまざまなAR機能搭載デバイスが登場 |
|そもそもARとは
ARとはAugumented Realityを略した言葉で、日本語にすると拡張現実となります。
現実の風景にデジタルの映像を加える技術のことで、スマートフォンやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、メガネ型のARデバイスを使って体験します。
現実の世界にキャラクターが現れたような体験ができる「Pokemon GO」をイメージすると分かりやすいでしょう。
ちなみにVRは「Virtual Reality」で仮想現実。現実の世界を排した3D空間を体験するという点でARとは異なっています。
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はじまりはSF小説
ARのアイデアが登場したのは、1900年代初頭。
『オズの魔法使い』の著者として有名な小説家ライマン・フランク・ボーム氏が書いたSF小説『The Master Key:An Dlectrical Fairy Tale』の中で、ARグラスのような装置が登場します。
小説の中のARグラスは、「Character Marker」というメガネ型の装置で、これを装着すると、視界に入った人間の性格が表示されます。現実の風景の中に情報が加えられる点で現在のAR技術と一致した内容です。
つまり、この時ARの概念が生まれた、もしくは、すでに存在していたと言えるでしょう。
最初のARデバイス
1960年代になると、実際にARを体験できる装置が登場します。
1965年にハーバード大学のアイヴァン・サザーランド准教授が、教え子ボブ・スプロール氏とともに「The Sword of Damocles(ダモクレスの剣)」と呼ばれるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を開発しました。
ダモクレスの剣は、透過型のディスプレイを通して立体が見えるというもので、現在のHMDと基本的には同じ原理で作られていました。
しかも、頭を動かすと画面も連動して動くようになっており、ヘッドトラキング機能に近い仕組みまで搭載されていたようです。
ただ、本体が大きく重いため、天井から吊り下げられる形になっていて、実用化にはほど遠いものでした。
ARという言葉の誕生
1992年には、AR(Augumented Reality)という言葉が誕生します。
当時ボーイング社の研究員だったトム・コーディール氏とコンピューター科学者だったデービッド・ミゼル氏が書いた論文に「Augumented Reality」という言葉が使われました。
この論文は、航空機製造に関するもので、人的コストの削減と作業効率の向上を目的とした、HMD実装について説明されたものでした。
AR実用化への試み
1990年代にはIT技術の発達に伴いAR技術も大きく成長を遂げました。
たとえば、1992年には、米軍のアームストロング研究所にて、航空機の操作能力向上のためのARおよびVRのプラットフォーム「Virtual Fixtures」が導入されました。
この「Virtual Fixtures」には現在のARが持つほとんどの機能がすでに搭載されていました。
また、1993年には、コロンビア大学のスティーブン・フェイナー教授がレーザープリンターのメンテナンスサポートのためのARシステム『KARMA』を発表しました。
「KARMA」は実用化には至りませんでしたが、プリンターの内部構造や修理が必要な部分をCGで示してくれる画期的なシステムでした。
さらに、1998年には、Sportsvisionが「1st&Ten Graphic System」を導入しています。
これはアメリカンフットボールをTVで放送する際、現実には存在しないフィールドラインを追加して映すことができるシステムで、これによりTV放送ではじめてARが使われました。
ゲームに応用されるAR
2000年代になると、ARのゲームへの応用がはじまります。
2000年、南オーストラリア大学の研究室で、ARゲーム『ARQuake』が開発されました。
このゲームは、銃型のコントローラーでモンスターを倒していく内容になっていて、大きなパソコンを背負い、HMDをかぶってプレイするものでした。
ちなみに、『ARQuake』は、純粋に研究室用の試作機だったようで、市販されることはなかったようです。
さらに、2007年には、PlayStation3用ゲーム『THE EYE OF JUDGMENT』がソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されました。
このゲームは、専用のUSBカメラでトレーディングカードを読み取ると、カメラごしに映るカードからモンスターが出現する仕組みになっていて、出現したモンスター同士を戦わせることができました。
「セカイカメラ」
「セカイカメラ」は、2009年にリリースされたスマートフォン用のアプリケーションです。
「セカイカメラ」は、現実に存在する場所にARコンテンツ(エアタグ)が紐づいた当時画期的なサービスで、スマホカメラごしの映像にエアタグと呼ばれる半透明のアイコンを設置できました。
エアタグには、文字や画像、音声といった情報を加えることができ、他のユーザーが設置したエアタグを誰でも閲覧可能でした。
そのため、サービスが提供されていた当時は、有名なスポットなど、よく人が集まる場所をスマホカメラでのぞくと、たくさんのエアタグが設置されているのを見ることができました。
Pokemon GOが登場
2016年、今なおサービスが続く人気コンテンツ「Pokemon GO」がリリースされます。
「Pokemon GO」は大人気ゲームのポケモンをARコンテンツ化したもので、スマホのカメラを通して現実世界を見ると、実際にはいるはずのないポケモンが現れるゲームです。
まるで、現実にポケモンが存在するかのような映像が楽しめる内容になっていて、現れたポケモンをモンスターボールを使って捕まえたり、育てたポケモンをバトルで戦わせたりといったことも可能です。
世界150カ国以上で愛されており、総ダウンロード数は10億以上!このゲームをきっかけにARという言葉を知った方も多いのではないでしょうか。
次々に登場する新型ARデバイス
ARを体験するのに必要なARデバイス。近年、さまざまな機種が登場しています。
2013年にGoogle社が「Google Glass」を発売して以来、2016年にはMicrosoft社が「HoloLens」を発売。さらに、2018年にはMagic Leap社が「Magic Leap One」を販売開始して話題になりました。
現在でも、新たなデバイスを開発する流れは続いており、最近では、Meta社が開発した最新ヘッドセット「Meta Quest 3」やApple社の「Apple Vision Pro」が大きな注目を集めています。
|ARの今後
ここまで、ARの過去から現在にいたるまでの解説を行ってきましたが、未来はどうなるでしょうか。
2022年度におけるARの市場規模は約385億ドル。今後2023年から2030年にかけての年平均成長率(CAGR)は約40%になると予想されています。
Google社やMicrosoft社、Apple社など大企業がARに関心を持っていることや、ゲームなどエンターテイメント分野でのARの利用増加が大きな成長要因になるでしょう。
また、ARデバイスの進化もこれからまだまだ続くと思われます。
現在進行している、デバイスの小型軽量化や機能の充実に加え、AR用のコンタクトレンズの開発も進行しており、今後ますますAR技術は発展していくと予想されます。
|まとめ:ARの歴史はこれからが本番
この記事では、AR技術が現在に至るまでの主な歴史をご紹介しました。
ARはおよそ100年前、SF小説の空想からはじまって、徐々に開発がすすんでいきました。
そして現在のIT技術の進歩に伴って、急速に実用化が進んでいます。
最初は巨大な装置だったARデバイスは、現在では小型化し、年々便利になっています。
市場規模の予測から考えても、ARのさらなる発展はほぼ間違いないでしょう。
今後、さらなる技術革新が起これば、現在のスマートフォンのように人々の日常になくてはならない存在になるかもしれません。ARのこれからに期待大です。