日本国内において、インターネット黎明期から現在に至るまでその存在感を保ち続けているYahoo!。
国内では1996年に米国Yahoo!とソフトバンクの合弁会社として設立し、2023年10月にはZホールディングスと合併しLINEヤフーとなり解散しました。
しかし、現在でもYahoo!JAPANといったサービスは継続されており、ネットを頻繁に利用する方でその名前を知らない人はいないでしょう。
長年に渡りインターネット業界を牽引してきたYahoo!ですが、AI分野をどのように活用しているかご存知でしょうか。
一般的には検索情報サイトのイメージが強いかもしれませんが、実は多種多様なAI技術がそのサービスを支えているのです。
本記事では、Yahoo!が活用するAIについて、その基本事項からユーザーが実際に利用できるものまでを解説します。
一読いただければ、Yahoo!に対する見方が一変するかもしれません。
ぜひ最後までご覧いただき、国内で最も有名なインターネット企業への理解を深めてください。
目次
|AIがYahooサービスを支えている
インターネット企業、サービスとして国内最大規模とも言えるYahoo!には、数々のAI技術が活用されています。
日々Yahoo!へとアクセスするユーザーの数は膨大である上に、提供しているサービスは100を超えます。
このようなYahoo!に集まる情報は「マルチビッグデータ」と呼ばれ、日々のサービス向上に役立てられています。
しかし、膨大な情報量のため人間による処理には限界があります。
そのため、情報処理を始めとした業務効率化に数多くのAIが活用されているのです。
取り扱う情報量は並の数ではないため、求められる機械学習の精度、インフラ整備のレベルも高くなります。
それに比例して、求められる人材も重要となるため、求人から育成といったAIに関する研究開発にも積極的に投資を続けているのです。
AIプラットフォームの一部プロダクト
現在、Yahoo!社内ではAIプラットフォームの内製化が進められています。
これまではサービス開発エンジニアなどが、自身の手によって独自のAI開発環境を作り上げていました。
しかし、人的リソースが限られる状況においては、データの準備から手間がかかることが課題であったのです。
そこで、AI開発を円滑化させるAIプラットフォームを開発。
こちらはGoogleが定義したMLOpsを参考にしつつ、より利便性の高い機械学習を模索しながら進められています。
AIプラットフォーム上でのプロダクトやアプリケーションは、ACPで動作されており、データ管理のしやすさ、セキュリティといった多方面での利点があると評価されています。
また、機械学習ジョブやWebサービスのコードを管理する「Source repository」や、広告コンバージョン最適化機能において活用される「LakeTahoe」など、様々なプロダクトが活用されているのです。
|機械学習による広告配信
Yahoo!は主に「メディア事業」と「コマース事業」の2本柱で収益をあげています。
それぞれの事業内容は主に以下の通りです。
- メディア事業:「Yahoo!JAPAN」トップページやニュースなどのサービス
- コマース事業:「ヤフオク!」、「Yahoo!ショッピング」、「Yahoo!トラベル」などのECサービス
それぞれで収益体制が異なりますが、メディア事業においてはほぼ100%近い割合を広告が占めています。
アクセスするユーザーに対して、どのように効果的な広告を打ち出すかによって、収益額が大幅に変動するのです。
しかし、日々膨大な数のアクセスがあるYahoo!ですので、広告とユーザーを的確に結びつける作業は容易ではありません。
そこで、AIを活用した広告配信が積極的に行われているのです。
Yahoo!では機械学習を2011年より本格的に導入しており、翌年には急激に売上を伸ばしました。
このようにYahoo!は、以前から広告配信にAIを活用しており、その姿勢は現在も変わっていないのです。
ユーザー情報の分析にAIを活用
日々アクセスするユーザーそれぞれの属性に照らし合わせ、AI分析によって効果が高いと想定される広告を打ち出します。
そして、このAIの活用はメディア事業である「Yahoo!JAPAN」だけではなく、ECサービス分野へも広がっています。
「Yahoo!ショッピング」などのサービスにおいては、「質拡張学習」と呼ばれる技術が使用されています。
こちらでは、ユーザーが使用するヤフーID情報に基づき、その他サービスの利用傾向を反映した広告を表示することが可能。
何に興味を持ち、どういった商品の購入率が高いかまでを把握した上で、的確な広告が打ち出せるのです。
このように、Yahoo!が提供するあらゆるサービスと連携した分析を行うことで、人の手では対応できない効果的な運用が実現しています。
|ユーザーが利用できるAIサービス
Yahoo!がAIを利用した運営を行っていることは、ここまでの内容で理解頂けたでしょう。
Yahoo!は運営以外にも、ユーザー自身が直接利用できるAIサービスを多数提供しています。
こちらではその中から、以下の内容を紹介します。
- コメントAI要約 β版
- PayPayフリマでの文章生成
- おすすめ回答機能
コメントAI要約 β版
多くのユーザーが日常的な情報取得先として利用するサービスに、「Yahoo!ニュース」があります。
こちらでは日々膨大なニュースがアップロードされるだけではなく、それぞれの内容に対して多くのユーザーからのコメント、意見が寄せられています。
2007年に提供開始されたコメント欄ですが、注目のニュースには読み切れない程のコメントが集まり、確認作業には膨大な時間が必要です。
そこで、生成AIを活用することで様々な意見のコメントを要約、ニュースの論点を分かりやすく理解することを目的として「コメントAI要約 β版」がリリースされました。
本サービスは2023年10月に始まったばかりであり、現在は試験提供という段階です。
試験の対象となる記事は、配信後24時間以内のものであり、おすすめ上位に表示されるコメントのみが要約されます。
主なコメント、関連ワード、注目ポイントを簡潔に表示することで、短時間でニュースの概要を確認可能。
今後、本格的な機能拡充が期待されるAIサービスの1つです。
PayPayフリマでの文章生成
Yahoo!が提供する人気ECサービスの1つである「PayPayフリマ」には、日々多くのユーザーからの商品投稿があります。
CtoCで商品売買ができるサービスは年々人気を博していますが、商品出品のハードルとなるものの1つに「商品説明文の掲載」があげられます。
初めて商品を出品する方はもちろん、慣れている方であっても商品の魅力を伝え、適切な文章を執筆することに時間を要してしまうでしょう。
本サービスでは、出品時に商品名、カテゴリを設定するだけでAIが商品説明文を作成します。
また、色やサイズ、商品状態などより詳しい内容を設定すれば、より的確な文章へと瞬時に書き換えてくれるのです。
ユーザーは商品設定を入力するだけで、適切な紹介文章を記載した上で商品を出品できます。
手間の削減はもちろん、商品購入率の向上にも繋がるAIサービスだといえるでしょう。
おすすめ回答機能
国内最大規模の質疑応答サービスである「Yahoo!知恵袋」には、日々多くのユーザーからの質問、回答が寄せられています。
1人では解決できない問題であっても、日本中のユーザーから知恵をもらえる場は貴重であるため、これまで沢山のユーザーが悩みを解決するきっかけになったはずです。
しかし、「Yahoo!知恵袋」では新規の質問に対して回答がない状態が7日間続くと、自動的に質問が消去されてしまいます。
本サービスでは回答したいと考えるユーザーが、自身の興味に適した質問投稿を上位表示させることが可能となりました。
これまでサービストップページには回答済み記事の閲覧などが主に表示されていましたが、ユーザーごとに最適化された質問が表示されることで、回答の利便性向上が期待されます。
結果として、どんな質問にもまんべんなく回答がつきやすい状況が実現するのです。
|AIテックカンパニーを目指すYahoo
前述したように、Yahoo!では10年以上前からAIを活用したサービス運営を行ってきました。
そのため、「AIテックカンパニー」として市況を牽引する存在を目指し、様々な取り組みを進める意思を表明しています。
そして2023年10月にはYahoo!、LINE、そしてZホールディングスの3社が統合。
重複するサービスを一本化し、複雑だった企業体制による意思決定の遅延なども解消されることが期待されています。
ソフト開発に生成AIを活用
LINEヤフーは2023年10月より、ソフトウェア開発に生成AIを全面導入することを表明しました。
主な活用方法と効果に関しては、以下の通りです。
- コードを自動作成
- 1日2時間分の作業効率化
- 新サービスで競争力アップ
AIによりコードを作成し、エンジニアが想定する機能や動作を自動で作り上げます。
現在、生成AIの多くは書類作成などの事務作業に利用されることが一般的ですが、今後はソフト開発分野においても活躍することが期待されるでしょう。
そして、LINEヤフーが抱える約7,000人のエンジニア全員が生成AIをマスターし、2時間分の作業効率化を目指します。
効率化によって生み出した時間を新サービス開発といった、人間しかできない創造的分野に注力させることで、競争力をさらに高める狙いを示しています。
|まとめ
Yahoo!が活用するAI技術、そしてユーザーが利用できるサービスなどを解説しました。
ネットを通じた情報収集を行う上で、Yahoo!が提供するサービスは避けて通れません。
日々膨大なユーザーからのアクセス情報を管理するために、AI技術は欠かせないものとなっているのです。
LINEヤフーへの統合をきっかけに、AI技術の活用はさらに進んでいくことが考えられます。
国内最大規模のインターネット企業の動向に今後も注目していきましょう。