仮想現実(VR)と拡張現実(AR)技術が急速に進化し、私たちの視聴体験に革命をもたらしています。

これらのXR技術は、テレビやラジオ、ストリーミングサービスなど、様々なメディアプラットフォームでの新たな可能性を切り拓いています。

本記事では、各放送局がどのようにXR技術を活用し、視聴者に魅力的なエンターテインメントを提供しているかを詳しく紹介します。

日本国内外の主要な放送局が、リアルな視聴体験を提供するためにVRやARを採用しており、その手法やプロジェクトに焦点を当てます。

また、番組制作、スポーツ中継、ニュース報道など、各ジャンルでのXR技術の応用事例を探り、どのように視聴者を引き込む魅力的なコンテンツを生み出しているのかを探求します。

放送業界の未来はXRと共に進化しており、その最前線を一挙にお伝えいたします。

|XRとは

XR(Extended Reality)は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、および混合現実(MR)を包括的に指す用語で、デジタル技術と現実の融合を実現するテクノロジーの総称です。

この技術は、私たちの日常生活に革命をもたらし、エンターテインメントからビジネス、教育、医療まで幅広い分野で応用されています。

仮想現実の世界で没入感のある体験を提供し、現実の環境にデジタル情報を重ねるARを含んでおり、ユーザーに新たな視覚体験を提供します。

また、混合現実は、両者を組み合わせ、現実世界とデジタルコンテンツの融合を実現します。

VRはゲームやトレーニング教材、リモートワークの会議で高い臨場感を表現されることに期待されており、ARは観光誘致や多言語説明に活用されています。

XRとは?VR・AR・MR・SRとの違いや活用事例をご紹介!
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VRとは

VRとは、ユーザーをコンピューター生成の仮想世界に没入させるテクノロジーで、現実と区別がつかない臨場感を提供します。

この技術は、ヘッドセットやコントローラーを使用してユーザーが仮想空間を探索し、インタラクティブな体験を可能にします。

エンターテインメントから教育、医療、訓練など、多くの分野で革新的に活用されています。

ゲーム業界では、プレイヤーをゲームの中に引き込むために広く使用され、臨場感や没入感が向上します。

教育分野では、生徒が歴史の中に入り農場の運営を学ぶことができ、医療分野では手術の訓練や治療に役立ちます。

VRの進化は、高解像度のグラフィックス、リアルな音響、手の動きを検出する技術の向上を含み、より没入感ある体験を実現しています。

将来的には、リモートコミュニケーションや仮想オフィス空間の開発など、新たな可能性を切り拓くことが期待されています。

VR(仮想現実)とは?ARやMRとの違い、仕組み、メリット、できることをわかりやすく解説!
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ARとは

ARとは、現実の環境にデジタル情報や仮想オブジェクトを重ねて表示する技術です。

ユーザーはARデバイス(スマートフォン、ARメガネ、ヘッドセットなど)を使用して、現実と仮想の要素が統合された体験を楽しむことができます。

情報の視覚化やユーザーガイドとして広く使用されており、観光業で観光スポットの案内や歴史の説明に応用されています。

また、教育分野では、生徒に対してインタラクティブな学習経験を提供し、理解を深めるのに役立ちます。

また、医療分野では手術中の視覚支援や診断支援にも活用され、医療の質を向上させています。

AR技術は、コマースやマーケティングでも多くの機会を提供し、顧客に製品やサービスをリアルタイムで体験させ、購買意欲を刺激します。

また、リモートアシスタンスやリモートトレーニングにも応用され、専門家とのコラボレーションを可能にします。

現実世界とデジタル世界の融合を通じて、私たちの日常生活をより豊かで効果的なものに変えており、今後の成長が期待されています。

AR(拡張現実)とは?活用シーンからVR、MRとの違いまでわかりやすく解説
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|各放送局の取り組み事例

NHKや民放の放送局では、XR技術を積極的に取り入れて視聴者に新たなエンターテインメントを提供しています。

これらの事例では、バーチャルスタジオを用いた臨場感ある報道番組や、仮想現実のドラマ体験、スポーツ中継でのVR視聴などが実現されており、視聴者を未知の世界へ誘います。

ここでは、放送業界はXR技術を駆使し、視聴者との新しいつながりを築いている光景について紹介していきます。

NHK

出典:https://www.nhk.or.jp/strl/

NHKはXRに積極的に取り組んでおり、その取り組みは継続的に進行中です。

NHKの研究開発部門である「NHK放送技術研究所」は、最新の技術を探求し、将来のメディア体験を構築するための研究を行っています。

高解像度の3Dモデルや360度映像、空間共有技術、ライトフィールド技術などを活用し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための実験やプロトタイプの開発に取り組んでいます。

これらの技術は、ARとVRの分野で新たなメディア体験を提供し、将来の放送とエンターテインメントに革命をもたらす可能性があります。

NHKは、次世代の放送技術とエンターテインメントにおいてリーダーシップを発揮していることが伺えます。

日本テレビ

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000099014.html

日本テレビは、XR分野のコンテンツ制作と開発支援サービス「日テレXR」内で、新しい没入体験と撮影が可能な「mixta IMMERSIVE Shot」サービスを提供開始しました。

これは、撮影装置「mixta Shot」を拡張し、実際には行けない場所や名場面に没入できる撮影システムで、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などの装置なしで複数人が体験できます。

システムはシルク・ホースクラブの新ギャラリーに設置され、競走馬との写真を撮るコンテンツを提供する予定です。

これにより、視聴者は新たな没入体験を楽しむことができ、日本テレビの技術とノウハウを活用しています。

テレビ朝日

出典:https://www.tv-asahi.co.jp/metaverse-tv/

テレビ朝日はXRに取り組んでいます。

テレビ朝日は、XR技術を活用した新しいコンテンツの開発に取り組んでいます。

例えば、テレビ朝日は、VR技術を活用した新しいコンテンツで最先端エンタメをお届けするメタバースバラエティの「メタバースTV」を制作しています。

視聴者はバーチャル空間でテレビ番組を楽しむことができ、新たなコミュニケーションの形が提供されています。

また、テレビ朝日ホールディングスは、Psychic VR Labと資本業務提携契約を締結しました。

Psychic VR Labはリアルメタバースプラットフォーム「STYLY」を中心にXR領域で活動しており、テレビ朝日は幅広いコンテンツ制作で知られています。

この提携により、両社はテレビとインターネットを通じた連携のほか、AR分野での新しい体験価値提供やXRエンターテインメント事業で協力します。

具体的には、テレビ朝日のIP活用、リアルイベントでの協力、施設の活用、XR人材育成、広告事業などに焦点を当てて連携し、幅広い分野での新たな展開を模索されるようです。

TBS

TBSは、XRに関連する投資を行っています。

TBSは、株式会社プレティア(Pretia)に対し、資本業務提携を通じて出資を行いました。

具体的な出資額は明らかにされていません。プレティアはARを活用した謎解きゲームを開発し、今後商業施設などで同様のARコンテンツを展開する予定です。

また、プレティアはARクラウド技術の研究開発も進めています。

TBSはこれまでXR領域のスタートアップに出資しており、今回の出資を通じて都市を舞台とした新しいエンタテイメントの創出に取り組むとコメントしています。

フジテレビ

出典:https://hibino-vfxstudio.com/works/other-studio/389/

フジテレビ系で放送される「大型スポーツ中継」でヒビノ株式会社の「XRステージ・システム」が採用され、XR技術を活用した生放送が行われました。

このシステムは、現実と仮想世界を融合させたXR空間での映像演出を提供し、視聴者に新しい視聴体験を提供します。

システムの要素には、高精細LEDディスプレイ、カメラトラッキングシステム、リアルタイムCGレンダリングのメディアサーバーが含まれ、これらを組み合わせてリアルタイムで融合空間を表示します。

XRステージはフジテレビの球体展望室に設置され、東京の街や競技会場などに飛び出す映像演出でスポーツ中継を盛り上げます。

ヒビノ株式会社は大規模なコンサートや企業イベント向けにLEDディスプレイなどの大型映像システムを提供しており、新たな価値を生み出すためにXRステージ・システムを構築し、オンラインでの新しい映像体験を実現しています。

また、バーチャルプロダクションスタジオ「Hibino VFX Studio」も提供し、仮想空間での撮影が可能な独自のVFXスタジオとして、映画やCM、ドラマなどの映像制作にXR技術を提供しています。

ヒビノ株式会社は次世代の演出手法を追求し、大型映像サービスのパイオニアとして成長しています。

テレビ東京

出典:https://www.txhd.co.jp/ir/library/business/pdf/txhd/13m_02.pdf?0704

テレビ東京はTech(テクノロジー)でコンテンツ価値を最大化する専門チーム「Tech Lab(テック・ラボ)」を創設しました。急速に進化するテクノロジーに遅れずに対応し、テクノロジーを活用してコンテンツ制作を進化させるために「テックラボ」を設立しました。

テックラボは、新しい技術を利用してグループのコンテンツ制作に技術支援を提供し、オープンラボ会議の活動を支援しています。

この取り組みにより、テレビ東京はXR(仮想現実、拡張現実、複合現実)技術を番組に活用し、新たな視聴体験を提供することに成功しています。

具体的な例として、テレビ東京は「テレ東音楽祭」や選挙特番「池上彰の参院選ライブ」などの番組でXRを導入し、視聴者に新しい視覚体験を提供しました。

また、テックラボはAI、XR、メタバース、NFT/ブロックチェーンなどの技術に関連するアイデアを育てるためにオープンラボ会議を開催し、新たな技術を活用して面白いコンテンツを制作しています。

テレビ東京はテクノロジーを積極的に活用し、新しい時代に向けて成長を続け、視聴者に新しい体験を提供し続けることを目指しています。

|まとめ

日本の主要な放送局であるNHK、TBS、テレビ朝日、日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京のそれぞれがXR技術をどのように導入し、エンターテイメント、スポーツ、コンサートなどの分野でどのような新しい視聴体験を提供できるのか、積極的に活用する最新事例が生み出している最中です。

放送業界とテクノロジーが融合することで、テレビコンテンツの視聴体験が大きく変わっていく瞬間を目の当たりすることができます。

各局の最新動向を把握し、XR技術の進化が放送業界に与える影響を観察していきたいと考えています。