近年、音楽業界においてAR(拡張現実)の活用が進んでいます。
ARは、現実世界に仮想の情報を重ね合わせる技術であり、音楽業界では、ライブパフォーマンスやミュージックビデオなど、さまざまな場面で活用されています。
そこで今回は、ARが音楽業界にもたらす10の具体的な活用事例を紹介し、そのメリットや様々な活用シーンについて解説します。
音楽とテクノロジーの融合が、アーティストとファンにとってどのような作用をもたらすのでしょうか。
音楽好きに必読の記事ですので、ぜひご一読くださいね。
|ARとは
ARは「拡張現実(Augmented Reality)」と呼ばれ、リアルな環境にデジタルな要素を重ね合わせる技術です。
スマートフォンやタブレット、カメラを通じて、現実世界に仮想的な映像や情報を投影し、周囲の環境を豊かに拡張します。
例えば、スマートフォンを用いた「ポケモンGO」のように、カメラで撮影した現実の景色にCGのポケモンを投影することが可能です。
この技術はエンターテイメント分野だけでなく、教育、医療、製造業などでも幅広く活用されています。
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|ARを音楽業界で活用するメリット
拡張現実の世界と、音楽の世界。
これらが混じり合うことで、いったいどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
下記で、大きく3つに分けて説明しています。
没入感のある体験ができる
メリットの一つ目は、没入感のある体験を提供し、ファンにとって特別な瞬間を創り出すことです。
この技術を活用することで、リアルなイベントに参加できないファンも、まるで目の前にアーティストがいるかのような臨場感を味わえます。
例えばライブコンサートでは、ファンは自宅やどこでも、アーティストがステージ上でパフォーマンスを繰り広げる様子をスマートフォンやタブレットを通じてリアルに体感することができます。
この没入感のある体験は、ファンとアーティストの距離を縮め、感動を共有する新たな手段となります。
現実世界に居ながらも、ファンは音楽の世界に没頭し、それが音楽ファンの心を強く動かす要因の一つとなります。
場所や時間を問わず楽しめる
二つ目のメリットは、場所や時間の制約を超えて音楽体験を提供できることです。
この技術を活用することで、ファンは自宅や移動中など、どこにいてもアーティストと接触することができます。
従来のライブは一度きりのイベントでしたが、これらの音楽体験は録画や保存が可能です。
ファンは好きなタイミングで繰り返し楽しむことができ、スケジュールの都合でライブを見逃しても、後から存分にその魅力を体験することができます。
このように、ARは場所や時間に縛られることなく、ファンに音楽を提供する新たな手段として期待されています。
アーティストとファンの関係性を強化することで、音楽体験はより身近なものとなるでしょう。
新しいファン層を開拓できる
三つ目のメリットは、新たなファン層を引き付けるための優れた手段であることです。
ユーザーが楽しい体験を得る一方で、それが口コミやSNSを通じて拡散されることで、新たなファン層を開拓することが可能です。
拡張現実体験に感銘を受けたファンが、この感動や興奮を共有したいという気持ちに駆られ、SNSなどで共有することで、多くの人々に拡散されることが期待されます。
このように、ARを用いた音楽体験が社会的な共有を促し、新しいファン層を開拓することができます。
興味を持つ人々が増えることで、より多様な層のコミュニティ拡大に貢献するでしょう。
音楽好きだけでなく、広範な興味を持つ人々にも新しい音楽体験を提供し、業界全体の成長と発展を促進します。
|ARを音楽業界で活用するシーン
音楽においてAR活用が目覚ましい活躍をするのは、以下の場面においてです。
- ライブ
- ミュージックビデオ
- プロモーション
それぞれについて、深掘りしていきましょう。
ライブ
まず代表的なものとして挙げられるのはライブシーンにおいてです。
ライブやフェスの体験に拡張現実を取り入れることで、アーティストとファンの間に新たな繋がりを生み出します。
例えば、ライブ会場周辺のスタンプラリーやグッズにARコンテンツを追加することで、リアルなイベントとデジタルの融合を楽しめます。
また、ARをライブパフォーマンスに取り入れ、リアルタイムのエフェクト等を取り入れて、観客に目に見える音楽体験を提供している例もあります。
ミュージックビデオ
以前から、マイケル・ジャクソンやビョークなどの有名アーティストが自身の作品にARを取り入れてきましたが、最近では日本でも導入の動きがあります。
例えば、Haru.Robinsonの「HOWL」という曲では、通常テロップやCGを用いて歌詞を表示してきましたが、このビデオではアーティストの直筆の歌詞を現実空間に投影。
歌詞が空間上に浮かび上がり、視聴者は歌詞と音楽の融合を没入感をもって楽しむことができます。
プロモーション
SONY MUSIC LATINでは、公式Instagramを通じてラテンミュージシャンのAR体験を提供することで、ファンは直感的で没入感のある体験を楽しむことができます。
このようなARを使ったプロモーションは、視聴者をその音楽の世界に引き込み、特定のアーティストや楽曲に強い感情移入をもたらします。
音楽の魅力を視覚と聴覚の両面から伝えることで、ファンとの親密なつながりを築き、新たなファンを獲得する機会を提供しています。
|【AR×音楽業界】活用事例10選
音楽とARの融合は、実は私たちの身近なものになりつつあります。
これまで多くのアーティストの作品やイベントなどで、この最新テクノロジーが活用されてきました。
こちらでは、具体的な事例をいくつか挙げて紹介していきましょう。
【MV】King Gnu
音楽バンドKing Gnuが「どろん」のMVでこの技術を活用し、盲目の視線をテーマに現実と拡張現実を表現しました。
大衆の視線と対象を拡張現実で象徴し、現実世界と拡張された世界をリンクさせました。
ディレクターによると、情報過多な時代において、AR技術は大衆に埋もれず存在感を示す手段として活用されたとのこと。
この技術は音楽を通じて、アーティストのメッセージや世界観を、視覚的かつ象徴的に伝える新たな手法であることを示しました。
【MV】Maroon5
Maroon5がYouTubeのオフィシャルアカウントでARを活用したMVを公開しました。
このMVは従来のようなミュージックビデオではなく、SnapchatのARフィルターを使った“おまけ”のような位置づけでしたが、再生回数は2,000万回を超える話題作となりました。
このようなアプリでは、内蔵カメラで簡単に独自のミュージックビデオを作成できます。
これは楽曲を楽しみつつも、AR体験を楽しめる斬新な試みとして注目されました。
【ライブ】にじさんじ
ANYCOLOR株式会社が運営するVTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」が初の完全AR生バンドライブ『にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”』を開催しました。
このライブでは、15名のにじさんじライバーが登場し、47都道府県の75会場でのライブビューイングやニコニコ生放送で視聴することができました。
ARと生バンドを組み合わせて臨場感を追求し、各ライバーの個性を際立たせたライブとなりました。
【ライブ】いきものがかり
ソニーストアでは、「いきものがかり「WHO?」Special Experience in Sony Store」というARライブイベントを2020年に開催。
スマートフォンを操作して360°自由視点でライブを鑑賞し、いきものがかりのパフォーマンスを様々な角度から体験できました。
その臨場感溢れる映像では、高音質ノイズキャンセリング技術や高精細なサウンドも楽しめました。
【ライブ】マドンナ
2019年のビルボード・ミュージック・アワードで、マドンナはARを駆使したライブパフォーマンスを披露しました。
4つの異なる姿をしたデジタルなアバターと共にパフォーマンスし、楽曲の世界観を彩りました。
デジタルな雨や雲などの演出もストーリーテリングを強化し、アーティスト自身とデジタル技術が見事に融合したものとして、驚くべき印象を与えました。
音楽シーンにおける新たなライブ演出の誕生であり、記憶に残るパフォーマンスとなりました。
【ライブと連動】GLAY NAVIGATION
GLAYは地元・函館で行われた大型野外ライブに合わせて、ARを活用した「GLAY NAVIGATION(略称:グレナビ)」を立ち上げました。
この企画では、函館市内にメンバーと関連する19のスポットを訪れると、メンバー独自のコメントが再生されるというエンタメ体験が提供されました。
来場者に地元の魅力やメンバーの個性を紹介するものであり、該当地点の人の流れは112%も増加するなど、道外からの参加者にも好評を博しました。
【音楽フェス】Coachella Valley Music and Arts Festival
このイベントは世界最大の音楽フェスとして知られ、2021年の開催ではリアルとオンラインで異なる体験を提供しました。
現場参加者には位置情報とARを組み合わせたアプリによるデジタルアートが表示され、現実のアートをデジタル空間に拡張しました。
一方、オンライン視聴者には、リアルタイムで3Dグラフィックが演出され、オンラインでしか楽しめないAR演出がUnreal Engineを使用して実現されました。
【PR】THE MUSIC DAY
日本テレビの夏の音楽番組では、特別企画「THE MUSIC DAY AR」が話題になりました。
この企画では、スマホアプリを使い、視聴者の部屋にアーティストや芸人が現れる仕掛けが提供されました。
特にKing & Princeは、メンバーの一人がランダムで登場し、おちゃめな一面を披露。
さらに、ステージと連動した企画やパフォーマンスも楽しめ、まるでテレビから飛び出したような臨場感で視聴者に近未来を体感させました。
【PR】Pink Floyd
ピンク・フロイドは、ボックスセット『The Later Years 1987-2019』のプロモーションにWebARを大胆に採用しました。
特設サイトでは、アルバムのジャケットを起点にしたAR体験を提供。
スマホから直接アルバムカバーアートを空間に再現し、アニメーション付きの没入型体験を実現しました。
この斬新なアプローチはInstagramでも展開され、アルバム内のキャラクターが出現する6つのコンテンツを提供しました。
【PR】PNL
フランスの音楽アーティスト、PNLが最新アルバムのリリースをInstagramのARでプロモーションしました。
リンク先ではアルバムの世界を拡張現実空間でリアルに体験でき、先進的な手法が注目を浴びました。
この斬新なプロモーションにより、SNSのフォロワー増加や幅広いメディア露出を実現し、認知度を飛躍的に高めたと言われています。
アルバムジャケットの没入型プロモーションは、今後も増加していく可能性があります。
|まとめ
ARは、音楽業界において新たなエンターテインメントを生み出す可能性を秘めた技術です。
臨場感や没入感を高めることで、従来の音楽体験をより一層豊かなものにすることができたり、新たな映像表現を実現することができます。
さらに、ファンとの新たなコミュニケーションを図るツールとしても、汎用性の高さは明らかです。
今後もさらに、音楽×ARが広がりを見せていくことに期待しましょう!