近年、映画PRにおいてAR(拡張現実)の活用が広がっています。
これには、視聴者があっと驚くような体験をすることで、映画の世界感をよりリアルに感じてもらう狙いがあります。
今回の記事では、世界中で成功を収めた6つの映画PR事例を紹介し、その効果やメリットについて探ります。
どのようにARが映画PRに貢献しているのか、今後の映画制作におけるマーケティングのアプローチの変革に迫ります。
映画に興味がある方、自社の宣伝に活用したい方は、ぜひご一読ください。
目次
|ARとは
AR(拡張現実)は、現実世界にデジタル情報を付加し、新しい視覚体験を提供する技術です。
スマートフォンやタブレット、カメラを介して、仮想的なコンテンツを現実の風景に重ねることができます。
これにより、ユーザーは身近な環境にバーチャルな情報を取り込み、まるで実在しているかのような感覚を得られます。
以下の4つのタイプがあります。
- マーカー型:画像認識を活用し、特定のマーカーを使って仮想コンテンツを表示
- GPS型:位置情報を基にして特定の場所でデジタル情報を表示
- 空間認識型:立体的な情報を認識して物体を配置する
- 物体認識型:カメラを用いて特定の立体物を認識し、それに関連したデジタルコンテンツを表示する
拡張現実は、工場見学の代替手段や、家具配置のシミュレーションに応用されるなど、現実世界でのさまざまな課題に対する革新的な解決策として期待されています。
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|ARを映画PRに活用するメリット
この最新テクノロジーを利用することで、映画の宣伝広告にどのような利点が生じるのでしょうか。
以下で大きく3つに分けて説明していきます。
新たなファン層の獲得
まずは、映画PRにおいて新たなファン層を引きつける効果的な手段と言えるでしょう。
映画制作側は、物語の世界感を表現したコンテンツを提供することで、従来の広告や予告編だけでは届かなかった層にも宣伝することができます。
例えば、映画の舞台となる場所をARで再現したとします。
そこをたまたま訪れた人が、スマートフォンなどのデバイスを活用して気軽に体験することで、新たに興味を持ってもらうきっかけとなるかもしれません。
さらに、特定のキャラクターや舞台装置などを表現することで、新たなファン層の興味を喚起します。
これは映画ファンだけでなく、最新テクノロジーに興味を持つ層にもリーチする絶好の機会となるでしょう。
SNSでの拡散
利点の一つには、SNS上での拡散効果も挙げられます。
拡張現実技術は、ユーザーに強烈な興味や共感をもたらすことが可能であり、その特性からSNS上でのバズ効果を期待できます。
視覚的な驚きや楽しさを提供するARコンテンツは、ユーザーの共感を呼び、彼らが体験した感動を積極的にシェアする要因となります。
このような共有効果は、映画の魅力や興味深さが口コミやシェアを通じて広がり、多くのユーザーに知られる機会を生み出します。
アパレルメーカー「Foot Locker」のエアジョーダンのARプロモーションの例では、隠されたARマーカーを探すイベントが大きな話題を呼び、SNS上で大量のシェアと話題を呼びました。
映画の世界観を体験可能
この最新技術には、視聴者に映画の世界観を直接体験させることができるという大きな魅力があります。
従来のメディア広告では難しかった「観るだけ」を超えて、「体験する」という要素を導入できるため、直接映画の世界に入り込んだような没入感を味わってもらえます。
例えば、視聴者がキャラクターと相互にやり取りできるような演出ができたり、映画の特定のシーンが視聴者の身近に現れ、映画への関心を高めることができるようになります。
その世界観を体験できる仕組みを構築することで、視聴者の興味を引きつけ、映画への関心を高めることができます。
これにより、映画のストーリーや雰囲気を身近に感じ、映画に対する期待や関心を高めることができるでしょう。
|ARを映画PRに活用した事例
では、実際の作品例をもとに、ARが映画の宣伝PRにおいてどのように活用されてきたのかをご紹介します。
スラムダンク
2022年12月に公開された劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」は、日本と韓国で大きな成功を収めています。
この映画のプロモーションでは、劇場で配布されたコースターをスマートフォンで読み取ると、ARでキャラクターが動き出す仕組みが採用されました。
特別なアプリは不要で、特設サイトにアクセスして、コースターをスマホ画面内に合わせることで手軽に体験できます。
SNSでは、多数のユーザー生成コンテンツ(UGC)を生み出し、数千から数万のインプレッションを生み出しました。
映画の感想をシェアすることは難しいですが、AR体験は初めての方も多く、ユーザーが簡単に共有できる内容となりました。
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
映画公開を記念し、ソニー・ピクチャーズは専用のアプリをリリースしました。
主要キャラクターをAR表示できるアプリで、特設サイトにアクセスすると、スパイダーマンやミステリオなどを自分の撮影環境に合わせて表示できるのが特徴です。
また、映画のブルーレイ&DVDリリースを記念して、渋谷の街にはスパイダーマンが登場しました。
これは、特定のエリアにスマートフォンのカメラを向けると、映画の予告編が映し出される巨大スクリーンで等身大のスパイダーマンに会える仕掛けで、まるで「マルチバース」の世界に入り込んだかのような臨場感ある体験を楽しむことができました。
ソニーのクリエイティブな技術を活用した取り組みとして注目された事例です。
すずめの戸締まり
KDDIは『すずめの戸締まり』とコラボし、ARを用いた特設サイトで同作品の世界観を楽しめるコンテンツを展開しました。
この企画では、InstagramのARフィルター「すずめレンズ」や「#ダイジンといっしょAR」が提供されました。
青空や夕空の風景に合わせて、映画のキャラクターであるすずめやダイジンを現実の風景に投影し、日常を映画の世界へ変換。
投稿すると、キャラクターグッズが抽選で当たるキャンペーンも実施されました。
このコンテンツは、日常の風景を映画の世界に変える楽しさや、投稿キャンペーンを通じたユーザー同士の交流、映画への関心を高める効果が期待できるものとして、注目を集めました。
シン・ウルトラマン
映画『シン・ウルトラマン』の全国公開を祝して、東映太秦映画村と嵐電がデジタルスタンプラリー「シン・ウルトラマン祭 ~怪獣総進撃デジタルスタンプラリー~」を開催しました。
このイベントは期間限定で、ARアプリ「COCOAR」を用いて、指定スポットを巡りながらウルトラマンと戦った48種の怪獣を捕獲する体験を提供しました。
参加者は特定のスポットで、アプリを使用して怪獣の写真パネルを撮影することで、怪獣の足跡をダウンロードできます。
イベント内のスタンプラリーでは、ARを使った怪獣狩りや、集めた数に応じたプレゼントが楽しめることから、ウルトラマンファンや映画ファンから好評を得ました。
大怪獣のあとしまつ
この作品は、巨大な怪獣の死体を処理し、爆発を阻止することを求められた男性の物語です。
作品のPRとして、物語に登場する大怪獣<希望>を、スマートフォンで現実世界に出現させることができる企画が行われました。
このコンテンツでは、AR技術を活用して参加者が目の前に大怪獣を配置できるため、まるで物語の中にいるかのようなリアル体験が可能になりました。
参加者は、撮影した写真や動画にハッシュタグ「#大怪獣希望出現」を付けてTwitterやInstagramに投稿することで、豪華賞品が当たるキャンペーンに参加。
怪獣のフィギュアや選べるお食事券、Amazonギフト券などの豊富な賞品が用意されました。
マーベルズ
この作品は、キャプテン・マーベルの新たな物語が描かれています。
彼女の過去を憎み、地球を含む彼女のすべてを滅ぼそうとする謎の敵が登場し、仲間と協力しながら危機に立ち向かいます。
映画公開に関連し、ムービーウォーカーとReallyの共同企画で、「ムビチケ鑑賞券」で鑑賞した人々には特典として「デジタルARカード」がプレゼントされました。
このカードは、スマートフォンのカメラを通して、現実世界に特定のキャラクターを拡張現実として表示するもので、撮影やSNSでの共有も可能です。
また、イッキ見前夜祭上映会場でも同特典が提供され、観客は映画の世界により深く没入することができました。
|まとめ
今回は、ARを映画PRに有効に活用する6つの事例を見てきました。
映画ファンにとっては特に、拡張現実で提供される没入感や体験は大変魅力的です。
このようなコンテンツは、映画の世界に一歩近づけ、視聴者の興味を引きつける新たな手法として、さらに広がりを見せていくことが予想されます。
今後も活用事例に注目し、積極的に体験していきましょう!