「スタンプラリー」を知らない方はほとんどいないでしょう。
幼い時に経験したことがある、やったことはないけれど観光地やイベントで目にすることはあるなど、私たちの身近によくある企画として知られています。
これと、AR=拡張現実が融合した新しいエンターテイメントが「ARスタンプラリー」です。
近年のスマートフォン普及によって、従来のものよりも没入感が高く、大人も子どもも楽しめる手段として注目を集めているのです。
本記事では、この新しい娯楽の概要や特徴、活用事例について詳しく紹介します。
|ARスタンプラリーとは
これは、スマートフォンやタブレットを用いて現実世界に仮想的な要素を導入し、デジタル版のスタンプラリーを楽しむ新しいエンターテイメントです。
例えば、ARマーカーを読み取って電子的なアイテムを集め、一定数を達成すると景品の引換券や電子的な内容物が提供される等の企画を指します。
そのため、台紙や実際のスタンプは不要で、参加者がスマートフォンを片手に手軽に参加できる企画として注目を集めています。
従来のスタンプラリーでは実現できなかった新しい体験や楽しみを提供しており、地域活性化や観光促進、商品・サービスのプロモーションなど、さまざまな目的で活用されています。
|ARスタンプラリーの特徴
この新しい娯楽体験には、以下のような特徴が挙げられます。
回遊率が上がる
通常のものと比較して、拡張現実では参加者に明確な目的を提供し、観光地や商業施設での滞在時間を劇的に延長させる効果があります。
参加者はこの企画を楽しむために新たな場所を訪れ、スタンプを探し求めることで、通常では訪れないかもしれないお店や観光スポットに足を運びます。
これは、地元の商業施設や観光地にとってメリットとなり、回遊率向上につながるでしょう。
さらに、参加者に人気のスポットやおすすめルートを提供し、自然な形で誘導することができるため、効果的なプロモーションとスムーズな情報提供に繋がります。
このことは、施設や地域にとって有益な成果となり、イベントの魅力を最大限に発揮できるツールとして活用が期待されます。
工数や人件費が削減できる
従来型のものと比較すると、工数や人件費の削減が著しい特徴として際立っています。
これまでは、物理的なスタンプ台や台紙やイベント案内の作成、スタンプ台の配置と撤去作業、景品の用意など、多くの作業とコストが必要でした。
さらに、運営中でも、台紙の不足やスタンプ台の問題、景品の管理と交換所のスタッフ配置など、煩雑な業務が絶えず発生していました。
一方、ARを用いることで、これらの物理的な要素が不要になります。
実物用意がほとんど不要になり、コストと時間が大幅に節約されます。
加えて、景品の電子化(写真の額縁やNFTによる景品など)により、景品にかかる工数も大幅に削減されつつ、参加者に斬新で魅力的なイベント体験を提供することができます。
詳細なログの分析が可能
このシステムを導入することにより、詳細なログの分析が容易になります。
従来のものでは、参加者数や滞在時間などのデータを収集し、正確な数値を把握するために手間がかかりました。
しかし、拡張現実技術を活用することで、ログ情報の収集が効率的に行えます。
これは、参加者がスマートフォンを使ってスタンプを収集するため、参加者のアクションや位置情報、スタンプ獲得のタイミングなどのデータを簡単に収集できることで可能になりました。
さらに、データの自動集計と分析をサポートするため、PDCAサイクルの実行が容易になります。
収集されたログ情報をもとに、参加者の嗜好や行動パターンを理解し、イベントやキャンペーンの効果を評価し、改善点を特定することが可能です。
データのグラフ化や可視化を通じて、詳細なログ分析が実現し、イベントの最適化や戦略の調整に役立つでしょう。
|ARスタンプラリーの種類
これには、「マーカー型」と「GPS型」の2種類が存在します。
以下でそれぞれの特徴について説明しますので、企画の趣旨に合ったものを用いるようにしましょう。
マーカー型
これは、特定の「ARマーカー」と呼ばれる目印を登録し、これを認識することで拡張現実を表示させるタイプです。
表示のマーカーは写真やイラストなどの画像が使用され、既存の印刷物や媒体、例えばポスターや商品パッケージ、カタログ、写真などにも登録できます。
このタイプは高速かつ安定してAR対象物を認識することが可能であり、その信頼性が特徴的です。
これにより、参加者はスムーズなAR体験を楽しむことができるため、幅広く活用されています。
GPS型
このタイプは、スマートフォンや他のデバイスの位置情報と結びつけて電子情報の取得を行います。
あらかじめ表示させたい場所を登録し、特定のエリア内でのみコンテンツを楽しむことが可能です。
指定されたエリア外では表示されないため、特定の場所に足を運ばなければ対象のコンテンツを取得することができません。
この仕組みにより、観光地やイベントなどの観光誘致や集客力向上に大いに貢献します。
|ARスタンプラリーの作り方
実際に作成するには、以下のような手順が必要です。
ここでは例として、「LESSAR」というツールを使用して説明します。
- スタンプカードを登録:LESSAR管理設定画面にて、スタンプカードの基本情報(名前や登録する日時、企画の説明など)を登録。
- カードを設定する:イベントの趣旨に合わせてカスタマイズし、好みのものを装飾していく。
- 企画到達時のプレゼント設定:参加者が企画をクリアした際のプレゼント内容を設定。設定方法には、4つのオプション(もぎり設定、リンク先設定、応募フォーム、シリアルコード)がある。
- 企画と作成したコンテンツを関連させる:設定により、先程作り上げたコンテンツとカードを関連付ける。これにより、表示設定は完了する。
|ARスタンプラリーの活用事例
ここまでで、本企画の概要や魅力について、十分ご理解いただけたでしょうか。
こちらでは、このテクノロジーをふんだんに活用して行われた実際の企画やイベントをご紹介します。
セガフェスARスタンプラリー
セガフェスはセガグループ各社が協力して開催する大型ファンイベントで、セガファンにエンターテイメントを楽しんでもらうことを目的としています。
このフェス内で企画されたのは、会場内に配置された3つのARスタンプを集めることで、来場者にセガフェスオリジナルショッパーバッグをプレゼントするというものです。
これには、来場者にショッパーを持って街を歩いてもらうことで、フェスの広告塔となってもらう狙いがありました。
スタンプ及びクイズのラリーを組み合わせて楽しむこの企画では、秋葉原地区のショップを巡りながら、計8つのスタンプをコンプリートすると豪華賞品が当たる抽選に応募できるという楽しい体験を提供しました。
銀魂スタンプラリー
実写映画「銀魂」の公開を祝い、東急電鉄が展開した企画です。
このイベントでは、東横線・目黒線日吉駅周辺に設置してあるポスターにスマートフォンをかざすことで、銀魂のキャラクターと一緒に写真を撮ることができました。
週替わりで異なるキャラクターが表示されるため、多くの人々が何度も訪れることが期待されました。
このコラボ企画は、東急電鉄と「銀魂」のファンを結ぶ素晴らしい機会となり、沿線にある5つの駅で実施。
ログデータの分析により、10代から20代の若い女性がARを活用していることが明らかになり、成功の証しとなりました。
この企画はファンとのエンゲージメントを高め、大成功を収めました。
大冒険!ウルトラマン ARスタンプラリー in ふくしま 2022
福島県内で開催されたのは、県内の7か所のエリアと合わせて全部で54か所に設置されたQRコードを用いたラリーでした。
専用アプリで読み取り、スタンプや電子的な写真フレームを手に入れ、ウルトラヒーローや怪獣と写真を撮影したりすることで参加者を楽しませました。
各所に散りばめられている得点を集め、オリジナルシールを先着順で贈呈。
景品には、地元の名産品や土湯こけし、宿泊券などが当たる抽選に参加できました。
さらに、本企画の中で写真撮影した作品を審査するフォトコンテストも開催され、優秀な作品には賞が授与されました。
景品もプレゼントされるため、参加者のエンゲージメント向上にも繋がる要素になりました。
スタジオ地図 10th クロスパーク in よみうりランド
よみうりランドでは、スタジオ地図の創立10周年と最新作の公開を記念し、本イベントが企画されました。
期間中、ランド内のあちこちに隠れているキャラクターを探すゲームが展開されました。
このラリーは謎解き方式となっており、マップの専用アプリをダウンロードすることで参戦できるようになっています。
園内に隠れたキャラクターを発見してコードを取得すると、スマートフォンの画面上にキャラクターが現れ、一緒に写真を撮影するなどして楽しめました。
この謎解きゲームは初級者向けの簡単なものから、謎解き好きな参加者向けの中級編まであり、クリアした参加者は「サマーウォーズ」の記念品(バッチ)を数量限定で獲得することができました。
さらに写真撮影のほか、謎を解読するための手がかりなどもAR表示されるなど、参加者はふんだんに最新技術を体験することができました。
イルカと室戸と私
高知県室戸市では、ARスタンプラリーを通じて、案内役であるイルカの軽快な話術を楽しみながら室戸市を巡る企画が行われました。
ここでは、市内の水族館や飲食店、お土産屋など特定の場所でスタンプを獲得すると、大きなイルカのぬいぐるみのセットや名産品の海産物などを獲得できる抽選に参加することができました。
また、ラリー中はここでしか獲得できない写真フレームを使って撮影できたり、SNSへポストすると当選する確率が倍になるサービスも提供され、SNS投稿を促進しています。
さらに、チャットボットを通じた対話形式のコミュニケーションやストーリー性のある体験は、イベントの体験価値を向上させ、参加者を特定のエリアや店舗へスムーズに誘導することに成功しました。
えのすいデジタルクラゲスタンプラリー
2020年9月に新江ノ島水族館で開催されたイベントでは、水族館内のクラゲの生態を楽しみながらスタンプを集められるというポップなアイデアの元、開催されました。
COVID-19の影響を考慮し、QRコード付きのポスターを配置し、スマートフォンで読み取ることでスタンプを取得できました。
参加費は水族館入場料のみで無料であり、企画参加終了後にはデジタルギフトとしてWebARオリジナルフォトフレームがプレゼントされました。
このイベントは、不特定多数の方がスタンプに触れることやお客様の密集を避けつつ、楽しみながらクラゲの世界を学ぶことができた点が特筆されます。
コロナ禍でも安心して楽しむことができ、子連れファミリーにも好評を得ました。
九州NFT展示会in博多マルイ
これは、2022年12月に行われたバーチャル空間上での展示会で、NFT(非代替性トークン)が活用されました。
この展示会では、博多マルイ内の各階に120名以上のアーティストによる作品が拡張現実空間において展覧され、その数は150点以上でした。
展覧のほか、AR活用のスタンプラリーでは、館内の特定場所で作品を鑑賞し、ポイントを取得。
その総数に応じて、マルイで使用できる商品券が当選する企画も含まれます。
一方で開催された、NFTを活用したコンテストでは、どこにいても参戦できる企画で、展示品をARを用いてコーディネートして撮影し、SNSへポストするものでした。
アートを楽しみながら気軽に参加できて、その上優秀な作品には景品がもらえたため、参加者にとっては面白みのある企画だったと言えるでしょう。
ARで体験!カルビープラス ポイントデー
これは、カルビー株式会社が企画し、毎月10日、20日、30日の限定で行われました。
参加者は特定日の1日に1回のみ、独自のARコンテンツを視聴し、ランダムで1〜3ポイントを取得。
この得点はお菓子の小袋や店舗商品などとトレードすることが可能で、お店で提供されるカードやポスターに付属のコードを用いて参戦できました。
沖縄国際通り、東京駅、新千歳空港など、全国の店舗で特典交換が行われ、内容を定期的に変更することで、参加者が飽きることなくコンテンツを満喫する工夫がされました。
この企画は、店舗への来店促進を目指し、LINEの友だち登録数やリピーター数の向上を図るために実施されました。
ARサンタクロース&スタンプラリー
2021年、サンタクロースが拡張現実空間に登場する楽しい企画が、福岡県にあるリバーウォーク北九州で催されました。
フォトスポットに置かれたQRコードにスマホをかざすと、立体的なサンタクロースが目の前に現れ、クリスマスツリーの前などで楽しい写真が撮影できました。
さらに館内では、8か所のフォトスポットを巡るとデジタルスタンプを獲得することができ、4つコレクションすると、11人のイラストレーターが手がけた限定のコースターが手に入りました。
評判が良かったため翌年にも開催され、同様の企画を提供。
この際は特典として、イラストレーターが手がけた「リバーウォークオリジナルトートバッグ」が用意されました。両イベント共に多くの来場者が訪れ、好評を博しました。
|まとめ
今回は、ARスタンプラリーの概要や特徴、活用事例について紹介してきました。
ご説明の通り、SNS投稿を促進してPR効果を高めることや、参加者の没入感を促進させる体験ができることは、従来のスタンプラリーでは実現できなかった、斬新なマーケティング施策とも言えます。
革新的なテクノロジーを用いた新たなエンターテインメントの形態として、今後もその進化に期待していきましょう!