近年、AR技術はビジネスの幅広い分野で取り入れられ、顧客体験を一新しています。
その波は、飲食業界にも広がりを見せ、ARを取り入れた新しい試みが次々に生まれています。
しかし、「ARをどう活用するの?」「その方法や効果は?」と、多くのマーケティング担当者は頭を抱えるのではないでしょうか。
そこで本記事では、飲食業界でのさまざまなAR活用事例を紹介し、その効果や導入方法、具体的なメリットまでを詳しく解説します。
この記事を読むことで、ARが飲食ビジネスのマーケティング戦略にどのように貢献し、新たな顧客層を引き付けるかが分かります。
さあ一緒にARの活用事例を学び、未来の飲食体験を創造しましょう。
|ARとは
AR(拡張現実)とは、現実の世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術のことです。
スマートフォンやタブレット、専用のゴーグルを使用して、実際の環境にバーチャルのオブジェクトや情報を映すのを可能にします。
この技術は、ユーザーに現実とデジタルが融合した新たな体験を提供します。
例えば、「ポケモンGO」では、スマートフォンで映した現実の世界にポケモンキャラクターが表示され、ユーザーはこれらを捕まえることができます。
IKEAのアプリを利用すると、自宅の部屋に仮想的に家具を配置し、購入前にその配置がどのように見えるかを確認することも可能です。
ARは、現実の映像にデジタルで作られた画像や情報を組み合わせることで、ゲーム、教育、医療、そして最近ではマーケティングなど、幅広い分野での活用が進んでいます。
|飲食業界でARを導入するメリット
飲食店にARを導入することでどのような効果を得られるのでしょうか?
ここでは、飲食業界におけるAR導入の主なメリットを4つ紹介します。
・ARメニューで顧客満足度アップ
・AR体験でブランド価値向上
・体験型マーケティングで新規顧客獲得
・SNS拡散で集客力アップ
順番にみていきましょう。
ARメニューで顧客満足度アップ
一つ目のメリットは、ARメニューを導入することにより、顧客満足度を向上させることです。
ARメニューでは、実際の料理を3Dでリアルに表示します。
これにより、顧客は実際の料理のサイズ感や見た目を詳細に確認できます。
オーダー前にリアルな3Dメニューを確認することにより、顧客が期待する料理のイメージとの差異を少なくし、「思っていたのと違った」というリスクを減少させます。
また、栄養価や原材料、アレルギー表示といった料理の詳細情報も表示可能。
メニュー選びに対する満足感、安心感を高めます。
このようにARメニューは、飲食店における顧客体験を向上させ、お店の評価を高める重要なツールとなります。
AR体験でブランド価値向上
二つ目のメリットは、ブランド価値の向上です。
AR技術によるインタラクティブな体験は、従来の広告方法とは一線を画し、顧客に強い印象を与えます。
ARを通じてブランドと直接触れ合う体験をすることで、顧客は「いいね」とか「好き」という好意的な感情に繋がりやすいです。
この体験は、ブランドへのエンゲージメントを高める効果があります。
ロンドンのスタートアップ「Zappar」の研究によると、ARを用いた広告は従来の広告よりも最大で70%記憶に残りやすいとされています。
これは、ARが提供するインタラクティブで魅力的な体験が、顧客の心に深く刻まれるからです。
このような好感を得る体験は、ブランド認知度の向上に直結し、長期的な顧客エンゲージメントの構築に寄与します。
体験型マーケティングで新規顧客獲得
三つ目のメリットは、新規顧客にアプローチしやすい点です。
ARを使ったインタラクティブなプロモーションやイベントは、顧客に直接触れ合う機会を提供します。
例えば、ARを活用してリアルに料理を再現したり、ブランドのバーチャル体験を提供することで、顧客は通常のサービスを超える体験を得ることができます。
このような新奇性に富んだユニークな体験は、特に新しい技術やトレンドに敏感な若年層やデジタルに精通した顧客層にとって魅力的です。
彼らはこれらの体験を通じて、ブランドとの新しいつながりを感じ、来店や購入のきっかけとなるはずです。
ARは新しい顧客層へのアプローチを効果的に行い、ブランドの魅力を拡散する強力なツールとなるでしょう。
SNS拡散で集客力アップ
四つ目のメリットは、SNS拡散による集客力の向上です。
特に飲食業界において、ARを活用したプロモーションやイベントは、顧客によるSNSでのシェアを促進し、商品・サービスの露出を増やします。
例えば、ARを用いて料理や店内の独特な体験を提供することで、顧客はこれらを写真やビデオとして撮影し、友人やフォロワーと共有することが多くなります。
顧客が自分の体験を共有することで、ブランドのストーリーが広がり、新しい顧客層にリーチします。
これにより、広告費をかけずに、自然な形での口コミマーケティングを実現し、新規顧客を引き付けることができます。
口コミは新しい顧客層の関心を惹くのに非常に有効で、結果として集客力が高まるのです。
|飲食業界のおけるAR活用事例
続いて、飲食業界において早くからAR技術を導入し、成功を収めた事例をいくつかご紹介します。
各ブランドがどのようにARを活用して顧客体験を革新し、ビジネスの成果を上げたかを共に見ていきましょう。
ドミノ・ピザ|ARでチーズの旅へ
ドミノ・ピザは、新商品のプロモーションにARを活用しました。
「ワールド9チーズ・クワトロ」という期間限定商品の発売に合わせ、「ドミノ”チーズの世界をめぐる旅”AR」というコンテンツをリリース。
このコンテンツは、QRコードをスマートフォンでスキャンすると、9種類のプレミアムチーズについての情報が学べ、チーズの世界を擬似体験できるというもの。
オープニングでは、3Dの世界地図が現れ、選んだピザに使用されている各国のチーズが3Dオブジェクトとして表示されます。
チーズに関する詳細な情報や動画がARを通して現実空間に出現し、ユーザーは近未来のUIを体験できます。
このARコンテンツは、ドミノ・ピザのチーズへのこだわりを顧客に伝えると共に、チーズの雑学、さらにはチーズに合うドリンク情報まで、付加価値の高い体験を提供します。
このように、ドミノ・ピザはARを活用して食事体験を豊かにし、顧客との関係を深めています。
バーガーキング|ARで「炎上」する革新的プロモーション
アメリカの大手ハンバーガーチェーン「バーガーキング」は、「Burn That Ad」というちょっと過激なARプロモーションで注目を集めました。
このキャンペーンでは、専用アプリでライバルとなるファーストフード店の広告や看板を写すと、炎を上げて燃えるARエフェクトが現れます。
さらに驚きなのは、このARエフェクトでライバル店を「炎上」させると、ユーザーはバーガーキングの看板商品である「ワッパーミール」の無料クーポンがもらえること。
一見過激なキャンペーンですが、若い世代を中心に大きな盛り上がりを見せ、ARの特徴をうまく活用した斬新なマーケティング戦略と評価されています。
この斬新なアプローチにより、アプリからの売上を54.6%増加させただけでなく、世界的な広告賞を複数受賞しました。
バーガーキングは、このプロモーションで集客増加に成功し、ARマーケティングの可能性を示しました。
19クライムズ|ARで語られるワインの物語
オーストラリアのワインブランド「19 クライムズ」は、ワインのラベルを介してAR体験を提供しています。
19 クライムズのワインラベルには、1780年代にオーストラリアに流刑された犯罪者たちの顔がデザインされています。
このラベルを専用アプリでスキャンすると、彼らが自身のエピソードを語り出すというユニークなコンテンツ。
このAR体験は流刑者たちのドラマを視覚的に伝え、ワインの味わいと共に物語を楽しめます。
「19クライムズ」はこのARコンテンツでブランドの認知度を向上させ、先端技術を用いたパッケージデザインとして注目を集めました。
4年前の登場以来、このワインはその斬新なストーリーテリングでブランドイメージを一新し、新しい顧客層とのつながりを築いています。
ジャックダニエル|ARで伝えるウイスキーの伝統
ワインに続いてウイスキーの事例です。
「ジャックダニエル」は、ARアプリを通じて150年以上のブランドの歴史を体験可能にしました。
このアプリでは、ウイスキーボトルにスマホをかざすだけで、製造工程や創業者の物語が飛び出す絵本のように展開されます。
ビジュアルとナレーションが融合し、ユーザーに没入感のあるブランド体験を提供。
自宅でハイボールを味わいながら、ジャックダニエルの深い歴史を学ぶことができます。
この革新的なAR活用は、ブランドストーリーを魅力的に伝え、新規顧客にもアピール。
従来のマーケティング手法に比べ、コスト効率も優れています。
ル・プチシェフ(Le Petit Chef)|革新的シネマ・ダイニング
「ル・プチシェフ」は、ベルギーのスカルマッピングスタジオによって開発された革新的な3Dディナーショーです。
ル・プチシェフは、プロジェクションマッピングにより、食事とエンターテイメントを融合させた革新的なダイニング体験を提供します。
マッピング技術を使い、目の前のテーブルに身長58ミリの小さなシェフが登場、お皿の上を飛び回りながらこれから提供する料理を調理していきます。
農場で野菜を収穫したり、海でロブスター捕獲したり、各料理のステップをコミカルに演出し、食事をエキサイティングなショーへと昇華させます。
このショーは視覚的な驚きと感動を提供し、特別な人との記念日やイベントをより記憶に残るものにするでしょう。
そのポジティブな体験はホテルのブランドイメージの強化に大きく貢献します。
ル・プチシェフは世界各地で展開され、日本では現在、セント レジス ホテル 大阪で体験することができます。
スターバックス|「さくらAR」で感じる魔法の瞬間
スターバックスは毎年春、特別な「さくらAR」キャンペーンを展開しています。
2023年の目玉は、店頭ポスターにスマートフォンをかざすだけで楽しめる「動きだす!ポスター AR」です。
このコンテンツでは、桜が舞い上がるアニメーションや、ベアリスタが登場し、春の訪れを感じさせます。
このARコンテンツの特筆すべきは、特別なアプリ不要で、スマホのカメラ機能だけで体験可能な点です。
店舗のレシートやショッピングバッグにあるQRコードを読み取ることで、さらに多彩なAR体験ができます。
このキャンペーンの魅力は、単に季節商品の提供だけにとどまらず、AR体験により顧客の心にも春を提供することです。
これにより、スターバックスは顧客とのつながりを深め、ブランド価値を高めることに成功しています。
ケンタッキーフライドチキン|「カーネルカメラ」で楽しむAR体験
ケンタッキーフライドチキン(KFC)が提供する「カーネルカメラ」は、ユーザーがカーネルサンダースになりきれるAR体験です。
Instagramの「Spark AR」エフェクトを使用し、専用サイトからアクセス可能。
ユーザーはインカメラでカーネルおじさんになり、アウトカメラでは3Dのカーネルおじさんを好きな場所に出現させられます。
アプリのダウンロードは不要で、Instagram上で気軽に楽しめるため、多くのユーザーに受け入れられています。
このプロジェクトの目的は、楽しいARエフェクトを通じてユーザーのSNS投稿を増やし、ブランドの想起を促すことです。
KFCは、カーネルカメラを使って、ブランドと顧客とのエンゲージメントを高め、新たな楽しみを提供することに成功しています。
|ARを導入する方法
AR技術を導入するには、制作会社へ依頼する方法と自社で開発する方法の2つがあります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、目的や予算などにより選択基準が異なってきます。
さっそく詳しく見ていきましょう。
AR制作会社に依頼する
まずはAR制作会社に依頼する方法です。
専門知識を持つプロフェッショナルによる高品質な成果物が期待できますが、当然コストは高くなります。
相場はプロジェクトの規模や複雑さによって異なりますが、数十万円から数百万円程度がおよその相場感です。
依頼の際は、制作会社の実績や専門性を重視すると良いでしょう。
以下の記事で代表的な制作会社を紹介しています。
自社で開発する
続いて自社開発するパターンです。
こちらは、社内のスキルやリソースに依存するものの、外部に依頼しない分コストは抑えられます。
ただし、専門的な知識が必要なため、社内にスキルを持つ人材がいなかったり、複雑なツールを開発したい場合は難しいかもしれません。
最近では比較的簡単にARコンテンツを開発できるツールもあるため、以前よりは自社開発のハードルは低くなっています。
COCOARやARToolKit、ARCoreなどのツールがよく利用されます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
|まとめ
いかがでしたか?
この記事では、飲食業界でのAR技術の活用事例を幅広くご紹介しました。
ドミノ・ピザのARコンテンツ、バーガーキングのユニークなプロモーション、19クライムズのストーリーテリングなど、各ブランドがどのようにARを活用しているかを見てきました。
これらの事例から、ARが飲食業界における顧客体験をどう変革し、顧客満足度の向上やブランドイメージの強化にどのように貢献しているか把握されたのではないでしょうか。
これらの事例はあなたのマーケティング戦略にARを取り入れるための貴重なヒントになるはずです。
この記事が、あなたの飲食ビジネスに新しい風を吹き込むきっかけとなれば幸いです。
ぜひこの機会に、ARを活用した革新的なマーケティング戦略を検討してみてください。