近年では、AIが幅広い分野で急激に進化しています。

そんな中で特に注目を集めているのは、デザインにAIを取り入れることです。

そこで今回はAIがデザイナーとしての仕事を行う場合、どこまでできるのかについて解説していきます。

加えて、今後AIによって仕事を奪われる可能性はあるのかについてご紹介していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

|デザインAIとは

デザインAIとは、デザインにおいて利用されるAI機能のことです。

AIには学習する機能が必要になりますが、ディープランニングの登場によってAIの開発スピードや精度が飛躍的に向上し、デザイン分野でも多くAIが活用されるようになりました。

例えばアドビ社のPhotoshopでは、既存の写真の背景を拡張する機能や、テキストを入力することでその入力したテキストの画像を追加する機能などが挙げられます。

他にも動画を生成したり、画像から3Dを設計するなど、現在幅広い分野のデザインでAIが導入されており、業務効率に大きく貢献しています。

|デザインAIにできることは?

AIはなんでもできるという訳ではありません。

デザイン分野では主に「画像認識」「自然言語処理」「予測・推論」という3つの機能が活用されています。

「画像認識」では画像から「猫」や「人間」といった特定の対象を認識したり、指定した対象と背景の違いを認識することができます。

この機能を使うことで、画像加工の分野では画像の特定のものをトリミングしたり、境界線を認識して自動選択ができるようになるなど、多くのことができるようになります。

「自然言語処理」は人間が話す言葉(自然言語)を理解し、解析することができます。

例で言うと、「きれいなもの」を検索する場合でも「綺麗」、「キレイ」などの表記の仕方の違いを認識したり、膨大なデータの中からそれに類似するデザインを探すことができるなどがあります。

「予測・推論」ではAIが大量のデザインデータの中から指定された特徴のあるデザインやモデルを見つけ出し、提案することができます。

この機能を利用することで、過去のデザインから最適なデザインを組み合わせるサービスも生まれています。

|AIでデザインを行うメリット

AIを使ってデザインすると、メリットがたくさんあります。

ここでは下記の3つをご紹介します。

コストの削減

AIは大量のデータを効率よく、かつスピーディーに処理することがもっとも得意です。

そのため人間では時間がかかってしまうところを、AIに任せると大幅に時間を短縮することができるので、その分のコストを浮かせることができます。

さらにデザインを他社へ外注していた分の費用を削減することも可能です。

本来デザインを外注依頼する時、ロゴ制作であればデザイン会社では10〜30万円、フリーランスでは1000円〜15万円、Webサイト制作ではデザイン会社は40~100万以上、フリーランスでは10~40万円程度コストがかかってしまいます。

AIを使うことによってこれらの費用を削減できることは、企業にとって大きなメリットになるのではないでしょうか。

労働力の確保

デザイナーは常に人手不足の企業が多いです。

そのため外注するための費用や、デザイナーの負担が大きくなってしまいがちですが、AIを使うことによってこれらの問題を解決することが可能です。

これまで人員不足で外注していた企業でも、自社のみで完結することができるようになります。

さらにデザイナーが少ない企業では、デザイナーの負担を減らすことにも繋がります。

人間にしかできない業務に集中できる

AIは膨大な量の雑務でも短時間で処理することができるので、本来デザイナーに必要なデザインを追及する時間を生むことができます。

AIはまだ本当の意味でのデザインを生成するには至っていません。

そこで人間がAIの力を借りることによって、人間らしいデザインは何か、意味のあるデザインとは何か考える必要があります。

こうした作業は人間にしかできないことです。

AIを使う企業はこれからの時代もっと増える可能性があるので、AIを上手く活用していく方法を学んでいると今後、他との差別化も図れるのではないでしょうか。

|AIでデザインを行うデメリット

このようにAIでデザインすることにはメリットがたくさんありますが、デメリットもあります。

今回はそのうちの2つをご紹介します。

ゼロからデザインができない

AIは学習したデータをもとに画像を生成や、デザインを作成しています。

そのため無から有を作り出すことは創り出すことはできません。

人間も同じかもしれませんが、AIは特に存在しない概念やモノに対して対応することは苦手になります。

したがってAIを使って何かを作り出す際は、継続的な学習が必要になってきます。

時代とともにデザインはどんどん進化しているので、いつまでも同じデータを使っていると古臭いデザインになってしまいます。

継続的な学習方法は現在、様々なクラウドツールで開発されているので、今後学習させること自体は簡単なものになることが予想されます。

しかし、AIはデータを蓄積することでデザインを生成しているので、長く使っているとイメージ通りのデザインができないこともあります。

デザイナーはそういった可能性も考慮してAIを使っていく必要があります。

機械的なデザインになりやすい

AIは基本的に学習されたデータを使ってデザインを生成します。

しかし、そのデータを判断する感性や倫理観などの人間ならではの判断力がないため、機械的で無機質なデザインになりやすいです。

過去にAIボットをTwitterで開放したところ、出だしは『人間はクール』とツイートしていましたが、16時間もしない内に差別的な用語を書き込むようになってしまいました。

良くも悪くも会話のすべてを学習してしまった為に善性を保ち切れなかったのです。

こういった事例のように、AIには人間が求めるような判断力に欠けるため、最終的には人間が理想的なデザインに調整する必要があります。

|AIはデザイナーの仕事を奪うのか?

AIが普及してきた現在、AIに仕事を奪われてしまうのではと不安に思う方も多いかと思います。

しかし、AIにも得意不得意があるので実際に奪われてしまうかどうかはその方次第というところがあります。

例で言うと、Webデザイナーであれば、デザインスキルが低かったり、コーディングメインのデザインをしてしまっていると、AIに仕事を奪われる可能性があります。

デザインを考える際には、人の心を動かせるデザインを考えるようにしたり、AIを使いこなして、AIに任せる仕事と人間にしかできないクリエイティブな仕事をするようにするとAIに仕事を奪われる可能性は低くなります。

AIによって仕事がどうなっていくのかについて、以下の記事も併せてお読みください。

AI化によって「なくなる仕事」「なくならない仕事」「生まれる仕事」をご紹介!
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|デザイン分野におけるAIの活用事例

最後に実際にAIをデザインに活用した事例をご紹介したいと思います。

AIを事業に取り入れてみたいと思う方は是非参考にしてみてください。

アサヒグループ

出典:https://www.asahigroup-holdings.com/pressroom/2020/0309.html

アサヒグループホールディングス株式会社と株式会社Cogent Labsは、共同で「AIクリエイターシステム」を開発しました。

このシステムはパッケージデザインを生成できる「デザイン生成システム」と、デザインをAIに評価してもらい、数値化する「デザイン評価システム」の2つがあります。

まず一つ目に「デザイン生成システム」ですが、こちらは画像やコンセプトにしたいキーワードを入力することで、自動的にデザインを生成することができます。

さらに「デザイン評価システム」も併用することで、生成したデザインを自ら評価し、最もいいデザインを採用するというところまですべてAIで行うことができるようになります。

2つ目に「デザイン評価システム」ですが、こちらは3000枚にものぼるテストデザインをおよそ300名のクリエイターに評価してもらい、その結果をシステムに学習させたものになります。

こうした学習方法によって、よりAIが人間らしい評価基準を持てるようになっています。

オルビス

出典:https://airdesign.ai/case/orbis/

化粧品で有名なオルビス株式会社では、エイジングケアブランド「ORBIS U(オルビス ユー)」のライティングページ制作にあたり、AIが自動的にライティングページを作成できる、「AIR Design」というサービスを採用しました。

通常、ライティングページを制作する際には40日程かかってしまいますが、「AIR Design」を使うことによって、制作期間を10日に短縮させることができました。

さらに、サイト閲覧から購入まで至った割合が1.6倍まで上昇し、AIを使うことによって、短時間で大きな利益を得ることに成功しています。

カルビー

出典:https://www.sedesign.co.jp/dxinsight/calbees-success-story

カルビー株式会社では、「クランチポテト」のパッケージリニューアルの際に、「パッケージデザインAI」という評価システムを導入しました。

「最堅食感」というキャッチフレーズを伝える点に注力し、5種類の提案されたパッケージデザインを「パッケージデザインAI」で評価し、採用したところ、売上を1.3倍に増加させることができています。

AIの判断基準では、比較的商品画像が大きいものの方が好感度が高いという結果がでており、実際にユーザー目線でも同じ結果になったので、AIの判断は正しかったと言えるでしょう。

|まとめ

これまでAIには難しいとされてきた、クリエイティブな分野までAIは進化してきています。

しかしAIに仕事を奪われる、というわけではなく、AIと上手く共存していくことで、自分の時間を持てたり、さらにいいものを制作できるきっかけになれたりします。

AIにも得意不得意はあるので、不得意な部分を人間が補ったり、得意な部分を任せることで、業務の改善ができたり、デザイナーとしてさらにレベルを上げることも可能です。

AIに興味がある、取り入れたいという方はこれを機に是非取り入れてみてはいかがでしょうか。