VRが、ゲームやエンターテイメントだけでなく、医療や教育などの分野でも応用されているのをご存じでしょうか。

そのなかでも、心理療法にVRを活用することで、さまざまなメリットが得られるという研究や事例が増えています。

この記事では、VRを心理療法に活用した背景や意義、研究や事例、開発に取り組んでいる企業などを紹介していきます。

ぜひ最後までお読みください。

|VRとは

VRとは、Virtual Realityの略で、人工現実や仮想現実などと訳されます。

CG技術を使って、現実とは異なる空間や状況を作り出し、視覚や聴覚などの感覚を刺激することで、ユーザーに現実にいるかのような体験を提供します。

VRを体感するためには、ヘッドセットやコントローラーなどの機器が必要になります。

ヘッドセットを装着すると、視界の360度がVR空間に覆われ、コントローラーを操作すると、VR空間内で自分の動きが反映されるようになりますよ。

VRの最大の特徴は、現実では体験できないことや、危険や困難なことを安全に体験できるという点といえるでしょう。

ゲームやエンターテイメントといった分野で広く知られていますが、医療や教育などの分野でも応用されています。

VRについてもっと知りたい方は、あわせてこちらの記事を読んでみてくださいね。

今更聞けない「VR」って一体何?間違えやすい技術やその活用シーンについて解説します!
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|心理療法にVRを活用した背景

心理療法とは、心の問題や精神疾患に対して、薬物治療ではなく、会話や行動などを通して、改善や解決を目指す治療法です。

さまざまな種類の療法がありますが、以下のような課題も挙げられています。

・時間や費用がかかる

・必要な環境や資材が整っていない

・治療に対する抵抗感や恐怖感がある

・治療の効果が個人差やセラピストのスキルに依存する

これらの課題を解決するために、心理療法にVRを活用することが考えられました。

VRを心理療法に活用することで、以下のようなメリットが期待できます。

・必要な環境や資材をVRで再現できる

・治療に対する抵抗感や恐怖感を低減できる

・治療の効率や便利さを向上できる

このような背景から、VR技術を心理療法に取り入れる研究や事例が増えています。

次の章では、VRを心理療法に活用するメリットについて、具体的に見ていきましょう。

|心理療法にVRを活用するメリット

VRを心理療法に活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

ここでは、VRの特徴である没入感やリアリティを活かして、心理療法の効果や効率を高めることができるという点について、3つの観点から紹介していきます。

没入感が行動認知療法に効果あり

まずメリットとして挙げられるのが、VRが与えてくれる没入感が行動認知療法に効果があるという点です。

行動認知療法とは、自らの思考や行動に働きかけて、不安やストレス、うつ症状といった心の問題を解決していく心理療法のひとつです。

うつ症状や不安障害といった精神疾患に有効な治療法であり、VRがもたらす没入感がさらに効果を上げるとされています。

ネガティブな感情を引き起こす体験は恐怖症や不安症に効果的ですし、ポジティブな感情を引き起こす体験はうつ症状の治療に有効でしょう。

例えば、高所恐怖症の人が、高いところに立つという練習をする場合、高さや風の強さなどの要素を変えることで、ユーザーの不安や恐怖の度合いをコントロールすることができるのはVR空間だからこそですね。

VRであれば、患者の状態に合った最適な環境を作り出すことがで、同時にデータを収集することもできます。

新しい治療法の発見につながるかもしれませんし、VR技術は心理療法において多くの可能性を秘めているといえるでしょう。

治療を効率化できる

治療の効率や便利さを向上できるというメリットも挙げられます。

VRは、現実に再現するのが困難な対象や状況をVRで再現できるということが大きなメリットですが、それだけではなく、現実に存在するものやシチュエーションを再現できるというメリットもあります。

心理療法において、セラピストとの面談やグループセッションなどが重要な役割を果たしますが、VRであれば、セラピストや他の参加者とのコミュニケーションを仮想空間内で行うことができますね。

そのため、以下のようなメリットが期待されています。

・時間や費用を削減できる

・場所や機材を制限されない

・プライバシーや安全性を確保できる

患者にとってもセラピストにとっても効率的に治療ができるのは大きなメリットとなるでしょう。

面談の時間を短縮できる

先ほども紹介しましたが、心理療法において医師やセラピストとの面談は非常に重要です。

しかし、物理的距離が遠かったり、なかなか時間が確保できなかったり通院が難しいこともあるでしょう。

VRであれば、この課題を解決してくれることは想像がつくのではないでしょうか。

時間さえ合わせておけば、どこにいても面談ができることも大きなメリットですね。

|VRを活用したリラクゼーションの研究

VRを活用したリラクゼーションは、自然や動物などの癒しの要素をVR空間に再現し、リラクゼーション効果やポジティブな感情を提供することを目的としています。

VRを活用したリラクゼーションには、以下のような効果が期待できます。

・ストレスや疲労を軽減できる

・睡眠の質や量を改善できる

・心身の健康や幸福感を向上できる

実際に不安障害やうつ症状の改善を確認したという研究結果も発表されており、その効果の高さが伺えますね。

時間や場所にとらわれず心を癒すことができるのは、現代社会において大切な役割を果たすかもしれません。

VRを活用したリラクゼーションに関する研究は、まだ発展途上の分野ですが、多くの可能性を感じることができますね。

|VRを活用したリラクゼーションの活用事例

VRを活用した心理療法の事例は増加傾向にあり、ストレスを感じやすい現代社会において重要な役割を果たしていくことになりでしょう。

実際にうつ症状や不安障害が改善されたという報告もあり、注目を集めています。

うつ症状の治療を目的としたVRコンテンツは世界的にも最先端の取り組みであり、欧米での学会でも発表されています。

VRのリラクゼーション効果を活用したうつ症状の改善は、世界的に認められているということになりますね。

|VRを活用したリラクゼーション開発に取り組んでいる企業

VRを活用したリラクゼーションは、心理療法やメンタルヘルスの分野での需要が高まっています。

そのため、VRリラクゼーションの開発に取り組んでいる企業も増えています。

ここでは、そのなかから、3つの事例について紹介していきます。

国立精神・神経医療研究センター

出典:https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20221207p.html

国立精神・神経医療研究センターは、精神・神経疾患の研究や診療を行う国立の医療機関です。

VRを活用したリラクゼーションを用いた心理療法の効果やメカニズムを科学的に検証するとともに、臨床現場での応用や普及にも取り組んでいます。

うつ症状の治療に重点を置いており、VRを活用してポジティブな感情を引き起こすことで、症状の改善に向けた研究が進められています。

株式会社ジョリーグッド

出典:https://jollygoodplus.com/

株式会社ジョリーグッドは、VRやAIなどの最先端技術を用いて、メンタルヘルスのソリューションを提供する企業です。

不安障害やうつ症状、ASDといった症状がある方に向けた心理療法VRの開発を手掛けています。

国立精神・神経医療研究センターとも連携しており、VRを活用した心理療法を開発する第一人者といえるかもしれません。

さまざまなシチュエーションのVRを体験することで、多くの人がポジティブな感情を持って行動できる未来を目指している企業です。

BiPSEE

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000033812.html

BiPSEEでは、精神疾患向けである「VRデジタル療法」を開発しており、メンタルヘルスとVRを掛け合わせた治療手段の確立を目指しています。

代表取締役の方も心療内科医であり、デジタル療法を取り入れることに力を注いでいます。

うつ症状を持つ方が主な対象となっており、VRを通したトレーニングによって、物事への捉え方を変えるための練習が取り組めます。

VR空間だからこそ得られる成功体験は、自己肯定感を上げることにつながるでしょう。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

VRを心理療法に活用することで、さまざまなメリットが得られるということや、研究や事例、開発に取り組んでいる企業などを紹介してきました。

VRは、現実とは異なる空間や状況を生成し、ユーザーに没入感やリアリティを提供することができる技術です。

心理療法に活用することで、治療に必要な環境や資材をVRで再現できたり、治療に対する抵抗感や恐怖感を低減できたり、治療の効果や効率を高めることができたりします。

また、メンタルヘルスの改善や予防にも貢献していくでしょう。

心理療法とVRの組み合わせは、今後さらに進化し、より多くの人々の心の健康に役立つことでしょう。