葬儀は、人生の節目となる大切な儀式です。
しかし、葬儀の準備や参列には、時間や費用、体力などの負担がかかります。
そこで、近年注目されているのが、ARやVRなどの先進技術を活用した葬儀のオンライン化です。
例えば、ARを使用したデジタルメモリアルやVRを利用した仮想参列など、従来の葬儀の枠を超え、感情や思い出をより深く共有できるようになりました。
本記事では、ARやVRを活用した葬儀のメリットや活用事例について解説します。
目次
|ARとVRの概要
葬儀業界での活用についてご紹介する前に、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)についての理解を深めましょう。
以下で、それぞれの概要について解説しています。
ARとは
ARはスマートフォンやタブレットなどのカメラを通じて、現実世界にデジタルな情報を重ね合わせる技術です。
この技術により、ユーザーは現実の環境に仮想的な要素を組み込んだり、現実世界を拡張して新たな体験を可能にします。
例えば、ゲームアプリの「ポケモンGO」のように、スマートフォンを使って街中でポケモンを捕まえたり、ナビゲーションアプリでは、リアルタイムの方向案内を画面上に表示します。
エンターテイメントだけでなく、教育やビジネス分野でも利用され、現実世界をより豊かで没入感のある体験へと変えています。
詳しくは、こちらもご参考くださいね。
VRとは
VRは「仮想現実」を指し、専用のヘッドセットを使い、インターネット上に存在する仮想世界を360度体験する技術です。
このヘッドセットはパソコンやゲーム機、スマートフォンと連動し、没入感の高い体験を提供します。
現在ではAR同様、エンターテイメントだけでなく、ビジネスにも広く活用されており、多くの日本企業が積極的に参入しています。
VR技術は、教育、医療、訓練、観光など様々な分野で革新的な体験を提供し、リアルな仮想空間を通じて新たな可能性を切り拓いています。
詳しくは、こちらもご参考くださいね。
|ARとVRを葬儀業界で活用するメリット
新しい供養の形として、近年取り入れられるようになったARとVR。
このような最新テクノロジーを、大事な家族の葬儀で活用することには、以下のようなメリットがあります。
場所や状況を問わず参加できる
これらの最新テクノロジーを活用することで、遠くにいる人や身体的制約がある人々も参列する機会を提供できることが最大のメリットです。
特にVRは、リアルな空間を再現し、参加者が遠隔地にいながらも没入感のある体験を可能にします。
物理的な距離や移動の制約を超え、故人を偲び、参列者同士がコミュニケーションを図る機会を提供します。
このため、葬儀やお別れ会は、地理的な制約や健康上の理由で参加できない方にも開かれた形で行うことができます。
さらに、リアルタイムで参加者同士が話し合い、感情や思い出を共有できる環境を作り出すことで、遠く離れた人々にも貴重な参加体験を提供し、故人への想いを共有する場を実現します。
安心して葬儀に向けて準備できる
これらの最新技術は、遺族に「安心して葬儀に向けて準備できる」という貴重なメリットを提供しています。
仮想現実を利用して、遺族はリアルな式場のイメージをスマートフォンやデバイスを通じて容易に把握することができます。
身辺状況の制約や準備期間の短さに関わらず、ARやVRを活用することで遠隔からでも会場をリアルに体験し、生花や料理などの選定・発注が可能です。
これにより、遺族はゆっくりと心の整理をし、葬儀準備をストレスなく進められます。
さらに、拡張現実空間で事前のイメージ確認やアイテム選択がリモートで済ませることも可能です。
ARとVRの活用は、遺族が穏やかな気持ちで準備を進め、大切な日を迎えるための支援となっています。
|AR・VRを葬儀業界で活用した事例
実際の葬儀場面で活用されている事例を6つご紹介します。
AR VR 家族葬 Fnet
このアプリでは、ARやVRを用いて式場や商品をデジタル空間上で表示し、葬祭業者は顧客に直感的にサービスを説明できるため、カタログとしても利用されます。
また、各葬祭業者に合わせたお葬式プランやセットプランの設定が可能で、見積もり作成、各業者への発注までスムーズに行えます。
更に、業者同士がマッチングすることで、従来の取引プロセスが効率的かつ簡素化され、発注手続きがECアプリのように行えます。
360度動画で葬儀体験
興味深い事例として、死者の視点から体験できる360度VR動画が注目されています。
「ハウスセレモニー アーバン はるか~遥~」と地域情報発信サイト「ワンダフルモーション」のコラボで制作され、死者の視点から葬式をリアルに体感できます。
葬儀場からお棺の中までの視点を360度で眺められ、臨場感あふれるシーンを体験できるのが特徴です。
この斬新なアプローチは賛否両論ありますが、再生回数からも注目を集め、死と向き合う新たな視点を提供しています。
VRお別れ会
株式会社ハウスボートクラブが手がける「VRお別れ会」は、パソコンやスマートフォン、タブレットを利用してリアルなお別れ会に参加できるサービスです。
このVR空間では参加者同士が会話をしながら、実際のお別れ会の進行をライブ中継で観覧できます。
メイン会場では、記帳台や主催者の挨拶、献花やメッセージ入力などが可能で、ライブ中継とバーチャル空間がリンクし合い、感情を共有する機能も備えています。
葬儀をVRライブ配信
「Insta360 Pro 2」などの360度カメラを活用し、葬儀会場の臨場感を完璧に再現しながらVRライブ配信をする新たな試みが進行しています。
具体例として、葬儀場「とわノイエ」を運営する北関東互助センターを中心に、360度ライブ配信システムを開発。
この取り組みは、高齢化や新型コロナ禍による葬儀参列制限に対応するために生まれました。
リアルタイム配信を通じて、遠く離れた人々も画質と音声のクオリティが高い視聴体験を得られ、まるでその場にいるかのような感覚で参加できる特徴があります。
VR葬儀式場見学
千葉県柏市の「南柏会館」では、VRを活用した葬儀式場のバーチャル見学が可能です。
画面クリックで会場内に入り、360度見渡すことで会場の雰囲気や広さを体感できます。
視点を変えるためのマウスや矢印キーを利用し、最大100名収容の大ホールや家族葬向けの中規模ホール、さらに小規模な式場など、各会場の特徴をリアルに感じることができます。
大阪などで展開する葬儀会館「TEAR」でも、宿泊可能な控室や駐車場などの館内をVRで見学できるサービスが提供されています。
VRセレモニー
丹青社グループが提供するVRセレモニーは、エンドユーザーが管理画面を使い、自身の生前葬やお別れ会などのイベントを1年間にわたりVR空間で企画して公開できるサービスです。
法人向けサービスとして、契約後、企業は独自のセレモニーを主催したり、顧客向けにサービスを提供することができます。
利用者は自ら会場のデザインを選択し、画像やテキストを登録して個々の会場を構築できるほか、企業が代わりに会場を構築して公開することも可能です。
|まとめ
ARやVRは、葬儀業界において、新たな可能性を秘めた技術として注目されています。
これらを活用した葬儀は、遠隔地からの参列や葬儀の準備の負担軽減、故人と最後のお別れなど、従来の課題を解決し、より充実したお別れ会を提供することができます。
最新テクノロジーがさらに進歩することで、今後も葬儀のあり方は大きく変わっていくでしょう。
伝統的な葬儀と融合しながら、それぞれ独自の方法で故人を偲ぶ新しい儀式としての可能性に期待が高まります。