ソフトウェアの品質を高めるために欠かせない「テスト」。

従来は手動で行われていましたが、膨大な時間と労力を要し、不具合の早期発見が難しいという課題がありました。

そこで近年注目されているのが、テストの自動化です。

オートマチックにすることにより、効率性と品質を向上させる手法として、アプリやプログラム開発の現場での取り組みが進んでいるのです。

本記事では、自動化の概要や導入のメリット、導入方法について詳しく解説します。

|テスト自動化とは

これは、アプリケーションやプログラムにおける設計や実行、結果の確認などを専用システムを活用してオートマチックにする取り組みです。

JSTQBによれば、広範な実証活動の実行や支援をプログラムを組むことで行うものとされます。

特に、従来手動で行っていた実証実験の実行や結果の確認、レポート作成などを自動化することを指します。

これにより、実証を行うエンジニアの負担を軽減し、開発速度や品質を向上させることが可能です。

従来手作業だったものを自動的にすることで、開発チームはリソースの節約や迅速なフィードバックの獲得が容易になります。

このような革新的ツールは、ソフトウェア開発の効率性向上や品質保証に寄与し、競争力を高めるための重要な手段となっています。

|テスト自動化が注目される背景

ソフトウェア開発のビジネス環境が大きく変化し、従来の長期間を要する開発手法から、変化に柔軟に対応する「高速」「効率的」な開発スタイルへの転換が求められています。

市場の迅速な変化や競争の激化により、従来のウォーターフォール型開発ではニーズに即した製品提供が難しくなりました。

このため、アジャイル型開発への移行が進み、多くの企業が迅速な開発サイクルを通じて市場に適応することを重視しています。

また、アプリやプログラムのリリースが増加していることも一因に挙げられます。

自動にすることで、開発スピードを犠牲にすることなく、短期間での品質確保を可能にし、ビジネス競争力の強化に寄与します。

|テスト自動化のメリット

正確な形で自動的に検証を行うことにより得られる利点について、以下で解説していきます。

コスト削減

主な利点の一つは、費用対効果の面で優れていることです。

人の手によるものには多大な労力と費用がかかりますが、それをオートマチックにすることで初期費用はかかるものの、実行回数が一定数を超えると人が行う場合よりも費用を削減できます。

例えば、毎月数名のテスターが数か月かけて行っていた作業に導入することで、月額100万円以上のコスト削減が可能な場合もあります。

これにより、削減された費用やリソースを開発に再配分することができ、開発生産性の向上につながります。

ただし、初期導入及び運用費用がかかるため、何度も同じ検証を繰り返す場合や、導入後の運用費用が比較的小さい場合に成果を発揮します。

人力での作業が適切な場合もあるので、費用対効果に十分注意が必要です。

テスト時間の短縮

検証時間を大幅に短縮できることも大きな利点の一つです。

例えば、1人月相当かかっていた検証をオートマチックにすることで、実行時間をわずか10時間程度まで短縮するケースも見られます。

この検証は毎回同じ条件で実行されるため、実行時間を正確に見積もることができ、一貫性のある所要時間を確保できます。

また、繰り返し実行が可能となるため、不具合を早期に発見できる環境を整えることができます。

常に同じ条件で繰り返し実行することで、人手よりも迅速に不具合を検出でき、業務上の無駄を減らし、開発にかかる時間を効率化します。

このような早期の不具合発見は、開発リードタイムの短縮や全体的な効率化につながります。

テストの正確性向上

人為的エラーを最小限に抑え、システムによる正確な判断で検証を実行するため、その結果の正確性を向上させます。

人の手によるものだとヒューマンエラーが発生することもありますが、自動的にされたものでは機械的にコードに基づいて検証が実行され、ヒューマンエラーを回避します。

これにより、正確で迅速なテスト検証が可能となり、効率的な品質確保が実現します。

ただし、自動化はコードに記述された内容を基に実証を行うため、特定の条件に絞ったものになることがあります。

これは、あくまで予め定義された内容を実行し、それ以外の不具合を見逃す可能性もあり得ることを指します。

このシステムを適切に理解して取り入れないと、効果を発揮できないことも特徴の一つと言えるでしょう。

人手不足でもテストが可能

手動では通常、テストを実施するだけでなく、予備の人員も確保する必要がありますが、これを自動的にすることで過度な人員確保が不要です。

時間を問わず実行可能なため、営業時間外やリソースが不足している状況下でも検証を実行できます。

人の手を介さずに実施されるため、リソースが不足しても影響を受けず、順調に正常な作業が確保されます。

特に大規模開発では、人的な制約に左右されることなく、円滑に検証が進行されるため、常に一定の成果が期待できることが利点と言えるでしょう。

結果として、自動化は人手不足にも関わらず、確実なテストを行い、不具合や異常の発生を防ぐ大きな利点をもたらします。

|テスト自動化のデメリット

多くの利点がある一方で、欠点もいくつかあることを理解しておきましょう。

コストが嵩む可能性

能動的にオートマチック化することで費用が削減できると一般的に考えられていますが、その効果は状況によって異なります。

実際には、このようなツールへのテストコードの作成に必要な知識を身につけることや、導入に伴う費用が発生します。

導入前の技術的検討、環境構築、導入後の保守作業など多くのプロセスや作業が必要です。

そのため、初期にかかる費用が手動時よりも大きくなることもあります。

また、明らかな効果を得るためには、手動と自動を比較し、中長期的な視点で投資対効果を計算する必要があります。

したがって、単純なコスト削減だけを求めるのではなく、オートマチックにすることによるROI(Return on Investment=投資利益率)を慎重に評価し、取り入れるかどうかの判断を行うことが肝要です。

テスト自動化出来ないテストの判断が必要

全ての項目や作業を自動化させることは不可能であり、利用可能なテスト項目には制約があります。

例えば、ユーザビリティテストのように、人間の感覚や判断が必要な場合や、captchaのような動力を使うことを妨げる機能が組み込まれたページでは困難です。

また、人の手によって検証を行うほうが効率的な場合もあります。

コードの修正が頻繁に発生する機能や、繰り返し実行されないものも人力で行う方が適している場合もあります。

具体的には、ECサイトでのユーザーフローなど、基本的で重要なフローは機械的に行う方が効果的です。

したがって、取り組みを検討する際には向き不向きを熟考し、手動実行が適しているケースを適切に見極めることが肝要です。

長期的な保守運用が必須

この方法を取り入れるには、短期的なものではなく、長期的な運用が必要です。

定期的な保守やリソースの確保が不可欠であり、システムのアップデートに伴い、検証方法の修正や追加が必要となります。

保守作業は単に導入した後に終わるものではなく、継続的にアップデートされる度に進める必要があります。

リファクタリングや新しい機能の追加に伴い、コードの調整や追加が発生します。

このような保守作業や運用の重要性は理解されており、自動化する際には長期的な視野を持つことが不可欠です。

失敗の一例として、運用や保守の計画がなく、開発時のコードだけが残る状況があります。

適切な保守体制を構築することで、その効果を長期間にわたり享受できます。

|自動化が可能なテスト

反復的な作業や人為的ミスが生じやすい内容を含むものは、実施可能であると言えます。

特にリグレッションテスト(システムの変更やアップデート後に、既存の機能が意図せず影響を受けていないことを確認するための手法)などの繰り返し行われるものや、変更が少ないもの、間違いが発生しやすいものが該当します。

これらは操作手順や内容が予め定義されており、機械的に実行可能な特徴を持っています。

人手による作業では効率的に行えないケースを効果的にカバーする利点があり、これらを機械化することで、効率的かつ一貫性のある検証実行を実現できます。

よって、対象となるものは、定型化された手順や明確に定義された基準に沿っており、人間のエラーを最小限に抑えることが期待されます。

|テスト自動化のステップ

こちらでは、自動化を活用するための取り組み方について解説します。

テスト自動化の目的を決める

この手段を効果的に始める際の第一歩は、具体的で明確な目的を定めることが欠かせません。

例えば、コスト削減、作業時間の短縮、定期的な検証、または見落としがちな不具合の効率的な発見など、様々な目標が考えられます。

それぞれの目的に焦点を当て、自動化することによってどのような利益や効果を得られるかを具体的に洗い出し、計画を立てます。

目的を正確に把握することで、必要なツールやリソース、導入後の評価基準などを適切に選択し、導入の成功を見据えることができます。

途中で目標がずれないよう、目的を明確化することが成功に導く重要なプロセスです。

テスト自動化する対象を決める

目的を明確化した後の次の手順は、対象と範囲を定める重要な段階となります。

オートマチックにできるすべての検証を対象にするのではなく、人力に適さない、または費用が削減できて効率化に直結するものを選定します。

例えば、ウェブサイトのユーザーログインや商品購入フローを検討する際、これらの重要なユーザーパスや基本的な機能を対象に選択することが考えられます。

目的を念頭に置きつつ、自動的にすることの適性を評価し、対象となるテストの中から最も適したものを絞り込むことが必要です。

人力ではなく、繰り返し行われるものやヒューマンエラーが起こりやすいものなどの適した対象を選択し、目的に沿った範囲を確定します。

最終的に、目的との整合性を見ながら、オートマチックの対象を選定し、成功への道筋を作り上げるステップと言えます。

テスト自動化するツールを決める

最後にツールを選ぶ段階では、目的や対象システム、テスト範囲に応じて最適なツールを選定します。

多様な種類がありますが、対象システムの特性や継続的な運用、メンテナンスコストなどを考慮して選定する必要があります。

一般的なテスト自動化ツールには、SeleniumやAppiumのようなWebアプリケーション向けツール、QCWingのような自動テスト実行ツール、そしてJenkinsのような継続的インテグレーション支援ツールがあります。

これらのツールは、それぞれの特性や機能を持ち、用途や対象に応じて使い分けることで効果的な自動化が可能です。

選定に際しては、長期的な運用やかかる費用、メンテナンスコストを十分に考慮し、最も適したツールを選ぶことが重要です。

|まとめ

本記事では、テスト自動化の概要や導入のメリット、導入方法について解説しました。

この手法を取り入れることで、検証実行時間の短縮、継続的な検証の実行、人的エラーの軽減など多くの利点があります。

適切なツールの選定や対象の選択、そして長期的な保守運用を考慮することが重要です。

これは効率性と品質向上に寄与しますが、目的や対象に合った適切な導入が鍵となります。

正しく理解して導入することで、アプリ及びプログラム開発プロセス全体の効率化を期待しましょう。