2023年12月現在、日本国内でもメタバースは徐々に普及し、日常的に楽しむ人達も増えてきました。
メタバースという非日常空間でアバター姿を通じた交流は現実離れしており、普段では味わえない体験や表現が気軽に実現するでしょう。
メタバースでの交流は現実世界のしがらみから開放されるため、性別や年齢を超越した自己表現が気軽に実現します。
こういった特長から、LGBTを始めとしたセクシュアルマイノリティと相性が良いことをご存知でしょうか。
現実世界の交流で違和感を感じる事柄であっても、メタバース空間では全て取り払った自己表現が可能。
本記事ではメタバースを通じた自己表現の可能性から、すでに行われているLGBT活動の事例を紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|メタバースでは性別も年齢も関係ない
メタバース空間に身をおいた経験がある方であればすぐにイメージできると思いますが、現実世界での素性を全く問わない交流が簡単に実現します。
話している相手の年齢や住所が分からないことはもちろん、性別という概念もそこには基本的に存在しません。
メタバースを積極的に利用している企業の中には、仕事相手の年齢を知らずに長年同じプロジェクト進行していたということも珍しくないのです。
現実世界の姿を通じたコミュニケーションにも利点はありますが、年齢や性別といった固定概念に囚われてしまうケースは少なくありません。
例えば、20代と50代の社会人が議論を進める場合、年功序列といったこれまでの慣習がどうしても邪魔をしてしまい、お互いに本来伝えたいことを上手く言えないかもしれません。
同様に「この業務は男性の方が進めやすい」や「女性に向いている」といった、性別に関するイメージで仕事を割り振るケースも見受けられるでしょう。
メタバースであればそういったこれまでのしがらみから開放された、完全にフラットな交流が簡単に実現するのです。
アバターを通じた自己表現
「なぜメタバースでは性別や年齢を超えたコミュニケーションが実現するの?」と、疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、同じインターネットの交流であるZoomを始めとしたビデオ会議の場合、年齢や性別といった特性は現実世界同様に引き継がれます。
しかし、メタバースでの交流最大の特徴は「アバター」を利用するという点です。
メタバース空間へアクセスするために、全ユーザーは自身の分身であるアバターを作成します。
ここで第一に考えることは、アバターの性別です。
現実世界において、自身の外見や性別を大きく変化させることは様々な困難が伴います。
しかし、メタバース空間であればアバターを通じて自身の理想とする性別から体型など、あらゆる部分で気軽な自己表現が可能となるのです。
また、アバター選択は人間型だけではなく、人と動物を組み合わせた「亜人間」や「人形ロボット」、「動物」や「植物」といった性別の概念が希薄となるキャラクターも存在しています。
こういった自由なアバター選択が実現できる点から、メタバース空間では性別を超えた交流が気軽に実現するのです。
多くのユーザーが女性アバターを使用
2021年に、メタバース空間におけるアバター表現や音声コミュニケーションについてまとめた「ソーシャルVR国勢調査」が行われました。
調査の第一弾として実施された「VR生活実態レポート」において、8割近くの男性が「女性アバター」を選択していることが明らかになったのです。
一方、現実世界で女性として生活する人の約5%が「男性アバター」を選択、約8割が同様の「女性アバター」を使用していました。
つまり、メタバース空間においては女性アバターが一般的といえるのです。
音声での交流が可能なメタバースですが、「ボイスチェンジャー」を活用することで実際の声質を簡単に変更できます。
そのため、現実世界の性別に囚われない自由な表現がメタバース空間では実現できるのです。
|メタバース上でのLGBT活動事例
メタバースでは性別や年齢を超越した交流が気軽に実現します。
こういった特性を活かし、現在メタバース上では様々なLGBT活動が行われています。
こちらでは以下の事例をそれぞれ紹介します。
- アバターで交流!?メタバースLGBTQ交流会~つながるカタチ~
- TransPrideVR
- Qtopia
アバターで交流!?メタバースLGBTQ交流会~つながるカタチ~
「アバターで交流!?メタバースLGBTQ交流会~つながるカタチ~」は、愛知県岡崎市が開催するメタバース空間での交流会です。
LGBT当事者の中には、現実世界における自身の性別について、誰にも相談できずに悩みを抱え込んでいる方がいます。
そういった方を対象に、同じような悩みを共有し話し合える場を作るために実施されるのです。
メタバース空間を利用することで、自由なアバター表現を通して現実世界では相談し難い悩みを気軽に相談しあえます。
実際に対面で会うことに抵抗を感じる方であっても、アバターを通じたメタバース空間であれば気軽に参加できます。
また、本イベントは岡崎市外からの参加も可能であるため、全国各地の人たちと交流できます。
メタバース空間は岡崎城が再現されており、参加者は岡崎の雰囲気を味わいながら様々な会話が可能となります。
開催は2024年1月13日を予定しており、2023年12月現在は参加者を募集している段階です。
TransPrideVR
「TransPrideVR」はVRプラットフォームである「VRChat」上におけるトランスジェンダーグループである「VRC Trans Academy」が主催するイベントです。
2023年6月、LGBTプライド月間に合わせ3日間にわたり開催。
メタバースの特性を活かし、世界各国からLGBTの方々が集まり、様々な交流が行われました。
メタバース空間では「ボイスチェンジャー」を活用することで声質を変化できますが、現実世界ではどうしても難しくなります。
そこで「両声類」と呼ばれる男性の声と女性の声が出せる講師による「ボイストレーニング」が開催されるなど、様々な講義が行われました。
イベント開催期間中は常に80人程度の参加者がアクセスしており、世界におけるLGBTコミュニティの大きさが実感できるイベントでした。
「VRC Trans Academy」では毎週日曜日に集会やワークショップが開催されており、様々な人達が常に交流を行っています。
Qtopia
「Qtopia」は2022年にフランスの企業が立ち上げを発表したメタバースです。
オンラインの地形と集会所を設けており、LGBTコミュニティのメンバーや同盟者であれば、誰でも気軽に他のユーザーと交流できます。
また、メタバース空間における土地や住宅といった要素も購入でき、それぞれの取り引きには「UniQoin」という仮想通貨が利用されます。
不動産取引や仮想通貨からの一部収益については、LGBT慈善団体に寄付することが公表されており、現実世界での活動との連動が期待できるでしょう。
海外サービスということで日本国内への対応は2023年12月現在未定ですが、今後の動向に注目したいサービスの一つとなっています。
|ノンバイナリーのアバターも登場
メタバース空間におけるアバターは人間の姿にとどまらず、様々な外見を手に入れられることは前述した通りです。
そういった中で、「男性」や「女性」に当てはまらない人間型のアバターも登場しています。
自身の性自認や性表現を既存の枠組みに当てはめようとしない概念を「ノンバイナリー」と呼び、それらに対応したアバターの使用が実現し始めているのです。
自由度の高いメタバース空間だからこそ、現実世界と同じように想像力に溢れた外観を生み出すことが可能となりました。
これらのアバターはメタバースプラットフォームの一つである「The Sandbox」で利用可能であり、NFTアバターの収益はすべてロサンゼルスLGBTセンターに寄付されます。
|まとめ
メタバース空間における自己表現の可能性から、すでに行われているLGBT活動の事例を紹介しました。
アバターという自身の分身を通じてメタバース空間で交流するという体験は、これまでになかった新しい自分を見つけることに大きく役立つでしょう。
現実世界のしがらみを忘れ、理想的な自分を表現できる場は貴重です。
自己表現に悩みを抱いている方は一度、本記事を参考にメタバースを活用してみてはいかがでしょうか。