品質保障(QA)と品質管理(QC)は、製品やサービスの品質向上において重要な役割を果たしますが、そのアプローチや焦点は異なります。
これらの違いを理解することは、企業や組織にとって有益であり、適切なアプローチを実施することで、より効果的な品質向上を実現することができます。
この記事では、両者それぞれの役割や業務内容を徹底的に解説し、その重要性について掘り下げていきます。
QAとQCがどのように連携し合い、組織全体で効果的な品質管理を実現するのか、その詳細に迫っていきます。
目次
|QAとは
品質保証(Quality Assurance、QA)は、製品やサービスのクオリティを規定値に合致させ、顧客に安心感や満足感を提供する活動です。
自社製品の水準を確認するためのデータ検証や調査、顧客からのクレーム対応などを行い、各部門へのフィードバックを通じて、顧客満足度を向上させるためのクオリティ維持を目指します。
その基準には、JISやISO9000シリーズなどの国内・国際規格があり、これを選択するのも管理業務の一環です。
求人案件では、「バックエンドテストエンジニア」や「テストセンター管理マネージャー」など様々な呼称で表されます。
要するに、QAは顧客視点で品質を保証し、担当する製品やサービスの水準向上に貢献する重要な業務と言えます。
QAの役割
具体的な役割としては、サービスやソフトウェアがリリース後も問題なく稼働し、ユーザー体験に悪影響を及ぼさないかを確認する業務を担っています。
彼らは本番環境でのトラブルを未然に防ぎ、品質保証を行うことで、企業や組織の信頼性を守る重要な存在です。
開発者による品質テストは、開発時の視点に偏りが生じることがあります。
開発者は自身の実装方法に精通しているため、「ユーザー目線」でのテストが難しくなり、予期せぬ不具合や脆弱性を見過ごすことがあります。
QAエンジニアは開発から独立し、利用者の立場に立った総合的な評価を行います。
そのため、ユーザーの利益を損なわない品質を保証する役割を果たしています。
QAの業務内容
QAは、製品開発段階からアフターサービスまで、品質管理を徹底的に行います。
製品企画では顧客ニーズを分析し、基準となる水準を設定します。
設計段階では質を考慮した設計とデザインを行い、規格に基づいた基準を設定します。
原材料の調達過程では安全性や品質を検証し、製造工程では品質検査を行い、その結果に基づいて適切な対策を取ります。
出荷前の最終検査にて基準達成を確認し、不良品の要因を調査して改善策を実施します。
この時、開発者が把握しにくいユーザー視点でのテストを実施することで、不具合の再発防止策を提案します。
販売後には顧客のフィードバックを収集・分析し、製品改良に生かします。
重大な不具合が発生した場合はリコール対応を行い、顧客サービスもQAが担当します。
また、取扱説明書の作成やカスタマーサポート設置も同様に業務の一環です。
QAエンジニアは、テスト計画の策定から実施、最後の顧客フォローまで幅広いスキルを要し、品質保証の重要な要素を担います。
|QCとは
品質管理(Quality Control、QC)は、製品やサービスのクオリティを検証し保証すると同時に、効率的でコストを抑えた高クオリティな製品を作り出すことを目指します。
製造工程において水準を確認しながら、効率性や低コスト化、迅速な生産を追求し、部品の検査や不具合の分析・改善、最終製品のチェックなどを行います。
製品の生産段階を重視し、製造プロセスの管理・改善に従事しています。
QAは顧客側の視点だったのに対して、QCは製造者側の視点からクオリティを監督している点で違いがあります。
品質管理は家電、食品、医療、科学などあらゆる製造分野で不可欠な役割を果たし、品質を確保し、効率的な製造を実現する点で重要な役割を担っています。
QCの役割
QCの職務内容は多岐にわたります。
部品の検査や機械設備の調整を通じて、安定した水準を確保するのが基本です。
異常が発生した場合は、その原因究明と改善活動にも携わります。
また、品質教育の実施も重要な役割となります。
単に検査や調査を行うだけでなく、結果を共有し反映することも含まれるのです。
通常、この業務は単独で行うイメージがありますが、実際にはトラブルや事故の原因を究明するためには、現場の従業員とのコミュニケーションが欠かせません。
従業員からのヒアリングや他部署との連携が必須であり、コミュニケーションスキルが極めて重要です。
さらに、品質管理にはデータ解析や論理的思考が求められるため、数値データを統計的に分析し、品質改善に役立てる能力も重要となります。
QCの業務内容
この職務には、PDCAサイクル、QC7つ道具、IE(インダストリアルエンジニアリング)の3つの手法が活用されています。
まずPDCAサイクルは、計画、実行、評価、改善の4つの過程を繰り返し、業務を持続的に改善する手法です。
これにより、業務の実績や予測に基づき、計画を立て、実行し、評価・改善を行い、クオリティの向上を図ります。
次にQC7つ道具は、問題を数値や定量で分析する手法で、7つの道具を利用します。
グラフ、チェックシート、ヒストグラム、パレート図、特性要因図、散布図、管理図を用いて、製造現場の問題を可視化し、不良の原因や改善点を把握・解決します。
そしてIEは、製造工程や作業内容を科学的に分析し、効率的な改善を目指す手法です。
製造現場の無駄や属人化を排除し、効率的な生産方法を探求します。
IEの手法を使った活動を「IE活動」と呼び、効率的な作業や工程の再構築を通じて品質向上を図ります。
|QAとQCの違い
ここまで、それぞれの役割や職務内容について説明してきました。
では、両者の明確な違いとしては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?
求められる役割と責任
QAは製品の全体的な水準を担保し、顧客が製品を使用する際の安全性と正常な機能性を確保します。
開発から生産、そして市場に出た後もクオリティを確認し、顧客に安心して利用できる製品を提供することに焦点を当てています。
一方、QCは製品の市場投入前に行われる検査やチェックを責任を持って行います。
主に製品完成前の工程で基準を確認し、製品が市場に出荷される段階での品質に責任を持ちます。
製品が出荷前に品質基準を満たしているかを確認することが求められ、出荷時の品質試験や有効成分の規格に合っているか否かを正確にします。
業務内容・範囲
QAは品質保証全体を担い、医薬品の開発から製造、販売後のクレーム対応、新たなガイドラインの監視、リコールなど、製品全体のクオリティを確保します。
一方、QCは製品の製造過程において基準となる水準を満たしているかを確認し、品質試験を実施します。
前者は外部や規制機関との窓口を担当し、品質保証体制を説明する役割も果たします。
企業外部とのやりとりにおいても製品品質を代表し、クオリティ全体を担当します。
時間軸
QAは、製品の計画段階から販売後まで長期的に水準を担保します。
一方QCは、製品が完成する前まで短期的にクオリティ向上を目指す。
また、前者は持続的な品質管理を行い、顧客満足度と製品信頼性を重視しますが、後者は製品完成前に検査や改善を行い、出荷する前の水準を満たすことに焦点を当てています。
最近ではQAの範囲にQCを組み込む企業が増えており、両者の役割が統合されることもあります。
|まとめ
QAとQCの違いを理解することは、品質管理活動をより効果的に行うために欠かせません。
アプローチや範囲には大きな違いがありますが、どちらもクオリティを確保するためには欠かせない重要な役割を担っています。
しかし、対象や目的、役割などの違いを理解することで、それぞれの強みを活かした活動を行うことができます。
また、互いに補完し合いながら、製品やサービスの水準を向上させる働きがあります。
両者の違いをきちんと把握することで、効果的な品質管理活動を実現しましょう。