現実世界にデジタル情報を重ね合わせるAR(拡張現実)技術は、エンターテインメント分野でも活用が進んでいます。
演劇においても、この革新的な技術を活用することで、観客の没入感を高めたり、新たな表現の可能性を広げたりするなど、伝統的な舞台芸術に新たな息吹を与えることが期待されているのです。
本記事では、AR技術を活用した演劇のメリットや活用事例を紹介していきます。
目次
|ARとは
AR(Augmented Reality)は、「拡張現実」とも呼ばれ、リアルな世界にデジタルコンテンツを重ね合わせる技術です。
スマートフォンやタブレット、カメラを通じて、現実の景色に仮想的な情報や映像を投影します。
これにより、現実には存在しないものを体験することが可能です。
バーチャルな要素を追加することで、日常の風景が豊かな情報やエンターテイメントで満たされます。
人気を博したスマホゲームの「ポケモンGO」では、スマートフォンを使って現実世界にポケモンを投影し、プレイヤーは自らの周囲でポケモンを捕まえることができます。
AR技術は、デジタルと現実を融合させ、私たちの日常に新たな体験を提供しています。
詳しくはこちらも参考にしてくださいね。
|演劇のAR活用のメリット
伝統ある演劇の世界に最新テクノロジーである拡張現実技術を投入することで、いったいどのような化学反応が起こるのでしょうか。
以下で活用することにおけるメリットをご紹介します。
ARならではの演出
ARを活用した演劇において、特筆すべきメリットは、独自の演出手法を生み出せる点です。
例えば、劇場や音楽ライブなどのイベントでは、ARを使って瞬時のシーン切り替えやアクロバティックなパフォーマンスを実現し、従来の舞台演出では難しいリアルな体験を観客に提供できます。
これにより、物語の世界に没入するだけでなく、新たな視覚的刺激を与え、観客の興味を引きつけます。
この技術を駆使することで、舞台上での物語展開や演出の幅を広げ、観客に没入感あふれる刺激的な体験を提供します。
しかし、その一方で、著作権に関する課題や法的問題も浮上していますので、このような課題に対処しつつ、ARが演劇にもたらす革新的な演出手法を進化させることが求められています。
大道具の制作費削減
従来の演劇では、劇場やライブ会場での演出には施設工事や大掛かりなセットアップが必要でしたが、ARはそれらの手間やコストを大幅に削減します。
それらの準備が不要なため、劇場の演出やシーンの変化をソフトウェア上で瞬時に切り替えることが可能です。
この技術を活用することで、企業は工事や大道具制作にかかる時間と費用を節約できます。
また、季節ごとの演出変更などにも柔軟に対応可能であり、制作コストを抑えつつも多様な演出を実現できます。
さらに、物理的な構造物や大掛かりなセットアップが不要なため、環境への影響も最小限に抑えられます。
このようにARを活用することで、コストを削減しつつ、柔軟性の高い演出を実現できるのです。
新しいファンの獲得
Instagramのようなプラットフォームは、誰もが手軽にARエフェクトを制作・共有できる環境であり、芸術の領域を多様化させました。
これにより、以前は限られたクリエイターに限られていたARアートの制作が、誰もがアーティストとして発信できる自由な環境へと変わりました。
このような環境下では、新しい才能や視点によって制作される独自の作品が世界中に広がります。
将来的には、誰もが気軽にAR作品を制作・共有し、あらゆる場所で新たな視覚体験や創造力を共有できる環境が拡大することでしょう。
演劇は新たなファン層を引きつけ、より多くの人々に感動とエンターテイメントを提供するプラットフォームとなるでしょう。
|演劇にARを活用した事例
ここでは、実際にARを活用した演劇の事例を4つご紹介します。
ARShow
イスラエルの舞台芸術家Sasha Kreindlin氏によって設立されたスタートアップ企業、ARShowは、劇場での演出に特化したARシステムをリリースしました。
このシステムでは、舞台上にARの演出やキャラクターを融合させ、ライブの舞台とARの世界を一体化させています。
従来のAR演劇では、観客はスマートフォンを介してARを見る必要がありましたが、ARShowはこれを解消するために個別のARヘッドセットを配布。
観客がAR映像と音響、照明効果を一つに組み合わせた作品を直接体験できるようにしています。
成功への期待が高まる一方、新技術導入の挑戦が舞台作品にどのような影響をもたらすか、興味深い展開が注目されています。
稲川怪談
株式会社Gugenkaは、Mixalive TOKYOのTheater Mixaにて上演される江古田のガールズ十三周年記念特別公演演劇版『稲川怪談』とのコラボARコンテンツを制作しました。
この特別公演では、会場内に設置されたQRコードを読み込むことで、Gugenkaが提供する「HoloModels」というデジタルフィギュアビューワーアプリを使用し、ARお化けを体験できます。
公演に登場する「伊崎龍次郎」「健人」「山内優花」の3人が、デジタルAR化されてお化けとして登場します。
これは、専用アプリをダウンロードし、専用QRコードを読み込むことで、観客がAR体験を楽しめる斬新な試みとして注目を集めました。
アマネ♰ギムナジウム オンステージ
Mixalive TOKYO Theater Mixaでは、ARを駆使した革新的な演劇「アマネ♰ギムナジウム オンステージ」が開催されます。
この公演では、ARエフェクトが舞台上に現れ、スマートフォンを舞台にかざすことでリアルな臨場感を持った演劇体験が可能です。
参加者は楽曲に合わせてAR演出を堪能し、舞台セットや様々な場所にARが織り交ぜられた独創的な空間を体験できます。
本公演は、株式会社ネルケプランニングとソフトバンクのコラボプロジェクトとして誕生しました。
「5G LAB」のコンテンツ配信サービスと古屋兎丸の人気コミック初の舞台「アマネ†ギムナジウム オンステージ」が融合し、新しいAR体験を提供しています。
豊岡演劇祭2022
芸術文化観光専門職大学、KDDI、豊岡演劇祭実行委員会は、豊岡演劇祭2022において「城崎温泉をめぐる音声ARコンテンツ」を提供します。
このコンテンツは「文学のまち城崎温泉」を舞台に、音声ガイドを通じて物語に没入できるオーディオガイドです。
精密な位置情報を活用し、歩行位置に合わせて音声を再生するため、体験者に城崎温泉の物語を語りかけるような没入感を提供します。
これは演劇的な要素も含んでおり、街を歩きながら物語に入り込む新しい観光を体験できます。
学生は実習授業を通じて最新技術を活用した体験型コンテンツの企画・制作、本番運営、参加者へのインタビューなどを実践し、観光産業と地域活性化に貢献します。
|まとめ
AR技術を活用した演劇は、演劇の表現の可能性を大きく広げています。
現実の空間にデジタルの要素を加えることで、観客は、従来の演劇では体験できなかったような、新たな視覚体験や臨場感を味わうことができます。
また、観客の参加やインタラクティブ性を高めることで、より没入感のある体験を実現することもできます。
このように、AR技術は演劇の新たな可能性を切り拓き、演劇の新たな楽しみ方を提案しています。
今後も、AR技術を活用した演劇が、ますます発展していくことでしょう。