2023年は生成AIが大いに沸いた年でした。

ChatGPTが火をつけた生成AIブームは、瞬く間に世間に広まり、年末の流行語大賞にもノミネートされるなど、まさに「生成AI元年」と言える年だったのではないでしょうか。

競合他社も次々に参入し、生成AI市場はますます盛り上がりをみせています。

生成AIのこの流れが今後どう展開するのか、あなたのビジネスにどのような影響を与えるのか、気になりませんか?

そこで、本記事では生成AIの現在地を様々な視点から分析し、業界リーダーたちの最新動向を踏まえ近未来の展望を探ります。

この記事があなたの新たなビジネス戦略のヒントになれば幸いです。

ぜひ最後までご覧ください。

|生成AIの現在地

2023年、生成AIは目覚ましい進化を遂げ、次々に新しいニュースが飛び込んできました。

このセクションでは、2023年の生成AIをハイライトで振り返り、様々な角度から生成AIの現在地を客観的に捉えていきます。

未来を知るためには今を知ることから始めましょう。

生成AI 2023年ハイライト

まずは2023年を振り返りましょう。

2023年は膨大な生成AIに関するニュースがありました。

その中のほんの一部の主要トピックスのみを以下の表にまとめました。

主要トピックス
1月・MicrosoftがOpenAIに100億ドルの巨額投資を発表
2月・Microsoftが最新AI搭載の検索エンジン「Bing」と「Edge」を発表・Googleが対話型AI「Bard」を公開・Metaが研究目的のLLM「Llama」をリリース
3月・OpenAIがChatGPTのNEWモデルGPT-4をリリース
4月・イーロンマスクのニューラリンクがFDAの承認を得て人間試験を開始
5月・Googleが最新言語モデル「PaLM2」を発表・AIの倫理的な懸念
6月・OpenAIがロンドンにオフィスを開設する計画を発表
7月・Metaが最新AIが「Llama2」を発表
8月・OpenAIのChatGPTが「Custom Instructions」機能を無料ユーザーに拡大
9月・ChatGPTが画像と音声に対応。音声認識、画像認識が可能に
10月・AWSは複数の生成AIが利用できるプラットフォーム「Amazon Bedrock」を発表・OpenAIが画像生成モデルDALL-E3をChatGPT PlusとEnterpriseに統合
11月・OpenAIがGPT-4 Turboを発表し、GPTsを導入・X (旧Twitter)の新AIボット「Grok」Xプレミアムで提供・OpenAI、サムアルトマン氏解任騒動
12月・MicrosoftがWidows Copilotリリース・Googleが最新の生成AI「Gemini」を発表・EUでAI規制に関する法案を合意

Microsoftの巨額出資のニュースを皮切りに、様々な生成AI関連の出来事が急速に進展した1年でした。

生成AIの市場規模

2023年、生成AIの市場規模は前例のない速度で拡大しました。

IT市場の研究・分析を行うIDC Japanによると、グローバル市場の支出額は前年比29.3%増の1665億米ドルに達し、国内市場も31.4%増の6837億円に上りました。

この著しい成長は、多様なAIの登場と、企業での生成AI利用の拡大によるものです。

さらに、電子情報技術産業協会(JEITA)は、2030年の世界需要が2110億米ドル、日本市場が1兆7774億円に拡大すると予測しています。

これは、2023年比で世界市場が約20倍、日本市場が15倍に成長することを意味します。

この市場の拡大は、企業にとってAI技術を戦略的に活用することの重要性を示しているといえるでしょう。

生成AIの利用率

GMOリサーチによると、生成AIに対する認知率は63.6%、実際の利用経験者は16.6%と、多くの人が「知っているが利用したことがない」と回答しました。

特に有償版の利用率は5%にとどまっています。

一方、生成AIに対する信頼度は分かれており、「信頼する」が29.5%、「信頼しない」が37.3%で、利用経験者の中では「信頼する」と答えた人が57.0%に達しました。

また、生成AIと聞いて最も連想されるキーワードは「ChatGPT」で41.6%、しかし51.5%の人は特定のAIキーワードについて具体的な認識がないと回答しています。

このデータは、生成AIの普及が進んでいるものの、一般の認識と利用率にはまだ大きなギャップがあることを示しています。

生成AIのハイプ・サイクル

出典:https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20231012

ガートナージャパンが2023年10月に発表した「生成AIのハイプ・サイクル:2023年」によると、生成AI関連の技術は現在「過度な期待のピーク期」にあるとされます。

ガートナーのハイプサイクルとは、テクノロジーの普及過程を表す5つのフェーズを通過するカーブで、各技術の現在の位置と成熟度を視覚的に表しています。

これによると、ファウンデーションモデルや大規模言語モデル(LLM)、プロンプトエンジニアリングなど8つの項目が「過度な期待」に位置づけられています。

一方で、「幻滅期」直前には生成AI対応仮想アシスタントが位置していますが、現時点で幻滅期以降のフェーズにある項目はありません。

生成AI関連のほとんどの項目はまだ上昇トレンドにあり、直近の傾向としては、これから盛り上がりをみせていくと予想されます。

ガートナー社も、2026年までには、80%以上の企業が生成AIのAPIやモデルを使用してアプリケーションを展開すると予測されており、現在の本稼働状況(5%未満)と比べて大幅な増加を見込んでいます。

|業界リーダーたちの最新動向

生成AIの2023年を振り返りましたが、生成AIの世界は今もなお目覚ましいスピードで変化し続けています。

このセクションでは、OpenAI、Microsoft、Google、そして日本の国内企業といった、生成AI分野の主要なプレーヤーたちの最新の動向を見ていきます。

彼らがどのように技術を発展させ、さらなるイノベーションを生み出そうとしているのかを探ります。

OpenAI

出典:https://openai.com/chatgpt

OpenAIは、2023年11月の開発者向けのカンファレンスで、GPT-4 TurboとGPTsの2つの大きな発表を行いました。

GPT-4 Turboは、従来のAPIに比べて文字数制限の緩和、カスタマイズの向上、価格の改定など、多くの点でグレードアップしています。

特に注目なのは、文字数制限が128,000トークン(約300ページ)に拡大し、関数呼び出し機能の拡張、新しい画像生成・画像理解・音声合成APIの提供などです。

一方で、自然言語で作成可能なAIボット「GPTs」は、ユーザーが特定の目的に合わせてChatGPTをカスタマイズできる新しいサービスも発表されました。

このGPTsは、プログラミングの知識がなくても簡単にオリジナルのチャットボットを作成できるため、幅広いユーザーにとって利用しやすいサービスとなるでしょう。

さらに、GPTsはGPTストアを通じて公開および共有され、収益化も可能とのこと。

これらの技術により、AIの利用がより広く一般化し、日常生活やビジネスのあらゆる場面で使用されるようになるでしょう。

Microsoft

出典:https://adoption.microsoft.com/ja-jp/copilot/

Microsoftは、OpenAIにいち早く巨額投資をし、生成AIを自社製品に取り入れています。


Microsoft 365 Copilotは、Microsoft Office製品に統合された革新的な生成AIで、2023年11月にエンタープライズ向けに一般公開されました。

このAIは、Microsoft 365の各種アプリケーションに横断的に組み込まれており、Word、Excel、PowerPoint、Outlookの各アプリでビジネスの生産性を飛躍的に向上させます。

Wordではドキュメントの要約やリライト、データの表整理などが可能に。

Excelでは複雑なデータ分析が容易に行え、Pythonと連携して高度な操作を実現。

PowerPointではプレゼンテーションの自動作成や、画像生成が可能。

Outlookではメールの要約や下書き作成が可能になります。

GPT-4を基にしており、AIは各アプリ間でのデータ共有と活用ができます。

料金は、1ユーザー月額30ドル(約4,400円)で利用できます。

Copilotは、AIのビジネス活用を加速させ、AI業界における実用アプリケーションの新たなスタンダードの確立が期待されます。

Google

出典:https://deepmind.google/technologies/gemini/#introduction

Googleは2023年12月に、新しいマルチモーダルAIモデル「Gemini」を発表しました。

Geminiはテキスト、画像、音声、動画、プログラムコードなど多様な情報に対応し、多くの指標でOpenAIのGPT-4を上回る性能を示しています。

GoogleのCEO、スンダー・ピチャイ氏は、Geminiを「これまでで最も高性能かつ汎用的なモデル」と評しています。

デモ動画では、Geminiが机上の物体や状況を認識し、質問に対して適切な応答をする様子が公開され、その性能の高さに多くの人が驚きの声を上げました。

このGeminiの発表は、AI業界において、マルチモーダルの重要性を改めて示し、より実用的なAIアプリケーションの可能性を広げることでしょう。

特に、様々な種類のデータを統合的に理解し処理する能力は、AIの応用範囲を広げ、新たなビジネスチャンスを生み出すと期待されています。

国内企業の動き

日本は生成AIの分野において、世界に遅れをとっているのが現状です。

遅れの原因として、AI開発に必要な人材やハードウェアの不足、さらに日本独自の言語や文化の複雑さなどが挙げられます。

しかし、この状況を変えようと、国内大手IT企業が国産の生成AI開発に続々と名乗りをあげ、国もバックアップする動きをみせています。

経済産業省は、北海道に建設予定のスーパーコンピュータに68億円の資金援助を決定し、生成AI開発に特化した施設を支援しています。

また、ソフトバンクやNTT、サイバーエージェントなどの大手IT企業も、大規模言語モデルの開発を表明しています。

これらの動きは、日本独自のAI技術の発展を期待させると同時に、国内の生成AI市場がますます活性化していくことを予感させるものです。

|生成AIの近未来予測

2023年、ビッグバンのように一気に広まった生成AIは、今後どんな進化を遂げ、私たちのビジネスに影響をもたらすでしょうか?

このセクションでは、現時点で明らかになっているトレンドから、生成AIの近未来を予測していきます。

ビジネス導入の加速

生成AI導入に慎重な姿勢を見せていた国内の大手企業は、徐々に自社の業務に取り入れる動きを見せています。

PwCコンサルティング合同会社が行った「生成AIに関する実態調査2023 秋」によると、調査対象者の43%が2024年3月までの本格導入を予定し、58%が1年以内の導入と回答しています。

これは、生成AIの実用性を見極める時期から、実際に取り入れ有効性を確認する段階に入ったと言えます。

実際に、金融業界大手の三菱UFJ銀行は、生成AI導入で月に22万時間以上の労働時間削減を見込み導入に前向きな姿勢を見せています。

また、マクドナルドはGoogleとの戦略的パートナーシップを通じてGoogle Cloudの生成AIを導入すると発表しています。

これらの事例は、ビジネスにおける生成AIの具体的な活用方法を示し、ビジネス全体へと波及する可能性を秘めています。

クリエイティブ分野への拡大

生成AIは、クリエイティブ分野へも拡大が進み、特に広告業界において活用される事例が増えています。

例えば、伊藤園は「お~いお茶 カテキン緑茶」のリニューアル発売に際し、生成AIをパッケージデザインのラフ画作成に利用しました。

生成AIによるラフ画作成は、従来数日かかる作業をわずか15秒で完了させ、大幅な時間短縮を実現しています。

また、「AIタレント」の起用も増えており、著作権や倫理的な問題も伴いつつ、クリエイティブ分野での使用は拡大しています。

今後は、これらの問題へのルール策定が進むと予想され、バランスをとりつつも、生成AIは人間の創造性を補完するツールとして、さらに活用されていくことでしょう。

汎用化と専門特化へ

将来の生成AIは、汎用型AI(AGI)と特化型AIの両方向への進化が見込まれます。

汎用型AIは、人間が行えるあらゆる知的作業を理解・学習・実行できるAIを目指し、最終的にはAIと人間の役割分担を大きく変える可能性があります。

一方、特化型AIは、医療、創薬、法律、会計など特定の分野に焦点を当てたデータセットで学習し、すでに成果を上げています。

この方向性は、短期的に実現可能で、ホワイトカラーの働き方にも影響を与えると考えられます。

パーソナルAIの進展

パーソナルAIとは、個人の嗜好や行動を解析し、個人に最適化したAIを指します。

株式会社オルツでは、パーソナルAI技術をさらに発展させ、従業員のAIクローンを作成し、これを業務に活用する先進的な取り組みを行っています。

このAIクローンは、従業員の仕事内容やコミュニケーション情報などを学習し、従業員が休暇中でも業務を代行することが可能です。

また、クローンの活動量に応じて従業員に給与が支給されるシステムも導入しました。

これは世界初の試みです。

この革新的な取り組みには経済的メリットがある一方で、プライバシーや倫理的問題も伴うため、今後の展開には不確定な要素が残ります。

そのため、この技術がスムーズに拡大するか不透明感はあるものの、ガイドラインや法整備がすすめば、自分の代わりにAIが働いてくれる世の中が近い将来やってくるかもしれません。

|生成AI普及の課題

人間の生活や仕事に革新的な変化をもたらすとされる生成AIですが、先にも触れたように、懸念点もいくつか存在します。

その中でも特に足枷になるのが、「著作権やプライバシーの侵害リスク」と「利用者のAIスキル・リテラシー不足」という二つの主要課題です。

これらの課題に対し、待ったのかけたのはEU諸国でした。

EUはAIの健全な利活用のため、AIの利用に一定のルールを設けるAI規制法案を早くから議論をしてきました。

そして、2023年12月8日に「AI規制法案(AI Act)」の大筋で合意を得ました。

これにより、AI技術の安全かつ倫理的な利用を促進し、ユーザーの信頼を確保する重要な一歩と言えます。

また、AIリテラシーの不足に対処するための教育やリスキリングの必要性が強調されており、これからのAI普及において、ユーザーの教育や啓発が重要な課題となっています。

|まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、生成AIの現在を様々な角度から深掘り、未来の進展、ビジネスへの影響を考察してきました。

生成AIは、プライバシーや著作権などの問題もあるものの、私たちのビジネスシーンに欠かせない存在になっていくのではないでしょうか?

インターネットやスマートフォンが当たり前の世の中になったように、数年後には、生成AIも仕事や日常で誰もが当たり前に使うようになるかもしれません。

ビジネスリーダーはこれらのトレンドの変化を敏感に察知し、自社の戦略に活かしていくことが大切です。

私たちのメディア「メタバース相談室」では、これらテクノロジーの最新情報を引き続き提供していきます。

ぜひご参考いただけますと幸いです。