世界中で注目されているメタバース。

日本でもゲームはもちろん、ビジネスや教育、医療など、様々な分野で活用が進んでいます。

そのメタバースに欠かせないのが、アバター。

ユーザーは自分自身の分身となるアバターを使って、メタバースに参加します。

そこで今回は、メタバースの普及に伴い急速に発展しているアバター文化について取り上げます。

そもそもメタバースやアバターでどんなことができるのか?という基本的な点から、アバター文化の今、そして今後の見通しまで探っていきます。

アバター文化やその魅力について知りたい人には必見の内容。ぜひ最後までご覧ください。

|メタバース・アバターとは?

メタバースやアバターという言葉自体は聞いたことがあっても、そのしっかりとした意味・定義については「?」という人も少なくありません。

そのためアバター文化について掘り下げる前に、まずはメタバースとは何なのか?どうしてアバターが必要なのか、といった基本的なことをおさらいしておきましょう。

メタバース

「メタバース(Metaverse)」は「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、実はしっかりとした言葉の定義はありません。

しかしながら一般的には、メタバースは「多人数が参加できるインターネット上の3D仮想空間」を意味します。

メタバースは言ってしまえば単なる『空間』ですから、ゲームのように特定の目的があるわけではありません。

ユーザーはそれぞれメタバース内で自由に他者と交流したり、行動したりすることができます。

特定の空間に多人数が参加して、それぞれが独自の行動を取れるということは、まさしく現実空間と変わりありません。

他者との交流はもちろん、様々なイベントやビジネス活動など、現実世界と同じようなことがメタバース内で行えるのです。

メタバースが新しい「もう一つの世界」として世界中から注目されているのは、こうした理由からなのです。

アバター

アバター(Avatar)は元々、サンスクリット語で「化身」を意味する「アヴァターラ」から取られています。

この言葉の通り、ユーザーは自分自身の分身となるアバターを使ってメタバースにアクセスします。

ユーザーは自分にそっくりのアバターだけではなく、性別や容姿が全く異なる(人間以外も!)ものなど、自分で好きな外見のアバターを作成することができます。

単なるアイコンと違い、3Dで自分で作成した自分の分身となるアバターには愛着が湧きます。またアバターによってメタバース内でもリアルな感覚で他者とコミュニケーションを取ったり、行動したりすることができるのです。

アバターを使ってメタバースという『もう一つの世界』で生活する。それがアバターとメタバースの最大の魅力であり、世界中で多くのユーザーを獲得している理由となっています。

|アバターとして生きる新たな文化

アバターの外見は自分の思い通り。

そのためユーザーは、メタバース内で性別や年齢、容姿などから開放されて、自分の好きな外見・容姿で振る舞うことができます。

そのため、「アバターとして生きる」という新たな文化が生まれてきています。

技術の進歩によって、アバターはユーザーの動きや振る舞いまでもトレースできるようになりました。ゲームのようにキャラクターを操作するのではなく、まさに自分自身がメタバースの中で生きているかのような感覚。

映画「レディ・プレイヤー1」で登場人物たちは、生きづらい現実世界ではなく、メタバース世界での生活に夢や希望を見出していました。

メタバースとアバターの進歩によって、この映画のようにメタバースこそが自分の生きる世界だと感じる人々がこれから増えていくのかもしれません。

|メタバース内のアバターでできること

メタバースやアバターの概念について理解できましたが、実際にメタバース内でアバターを使ってどんなことができるのでしょうか?

<メタバース内のアバターでできること>

  • 世界各国の人々とのコミュニケーション
  • ゲーム
  • コンサートやイベント
  • 会議やセミナーなどの社内ツール
  • 商品販売やサービスの提供
  • 実在する地域の文化体験ができる

では一つずつ、順番に考えていきましょう。

世界各国の人々とのコミュニケーション

アバターを使ってメタバース内でまず行いたいことと言えば、世界各国の人々とのコミュニケーションでしょう。

メタバースはインターネット上の仮想空間ですから、国や住んでいる場所を問わず、様々な人々が集まります。

そしてその姿は当然アバターであるため、国籍・人種・年齢・性別も全く関係なく、フラットな立場でコミュニケーションが楽しめます。

でも英語ができないし…。という心配も不要。パソコンやスマホの翻訳機能やアイコンを使って、誰でも誰とでも気軽にコミュニケーションが図れます。

コロナ禍で一時期流行ったZoom飲みに代わっていま熱いのが、メタバース飲み会です。仮想空間で不特定多数の人とただ会って話す。そんな面白さの根底を、メタバースで堪能してください。

ゲーム

コミュニケーションと並んでメタバースと相性が良いのが、ゲーム。

世界で一番売れたゲームである「Minecraft(マインクラフト)」。

マインクラフトの魅力は、決められた目的が無いことです。ユーザーはブロックを積み上げて世界を構築したり、世界を冒険したりと、自分なりの楽しさを見出すことができます。

そのマインクラフトの世界を世界中の人々とシェアし、自由にコミュニケーションを取ったり皆で同じイベントを楽しめるとしたら…?

それができるのが、メタバース・ゲームなのです。

例えば「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」というメタバースのゲームでは、オープンワールドの空間内を自由に行動し、他ユーザーとの交流やアイテムの作成ならびに売買、イベントなどが楽しめます。

そしてその世界で自分の分身となるのは用意されたキャラクターではなく、自分自身で作成したアバター。これが面白くないはずはありません。

コンサートやイベント

メタバースではアバターを使って世界中からユーザーが参加できるため、コンサートやイベントの開催にも最適です。

オンライン配信やオンラインイベントも当たり前になりましたが、パソコンの画面上で参加するイベントと比べて、3D空間で行われるメタバースのイベントは迫力や臨場感という面でも段違い。さらに参加者も自分のアバターで参加できるため、より強い一体感を味わえます。

例えば、ジャスティン・ビーバーのオンライン・コンサート「Justin Bieber – An Interactive Virtual Experience」では、通常のオンライン配信に加えてメタバースでも開催。オーディエンスは、メタバースならでは演出と臨場感を楽しめました。

メタバースなら、日本にいながら世界中で開かれているコンサートやスポーツゲーム、イベントなどに気軽に参加でき、かつ現実に近い迫力も味わえます。

実際メタバース内では毎日、大小様々なイベントが開催中。メタバースのイベントは、これからますます一般的になっていくでしょう。

会議やセミナーなどの社内ツール

コロナ禍でリモートワークやオンライン会議も当たり前のものになりましたが、企業がメタバースを導入することによってさらなる生産性向上が見込めます。

Zoomでは会議中以外は基本オフラインとなります。

しかしメタバースにバーチャルオフィスを構えれば、常時そこに誰かがいて、社員なら出入りも自由。つまり実際の社内と同じ空間をメタバース内に設置し、そこで会議やセミナーなどの通常の社内業務が行えるのです。

またどうしても距離を感じるZoom会議とは異なり、アバターを使うメタバースなら社員同士のよりリアルなコミュニケーションも図れます。

実際に、本社をメタバースに移転する企業も現れ始めました。

会社そのものをメタバースに移すことによって、距離や場所も関係なく企業活動が行えるというわけです。

商品販売やサービスの提供

メタバース内では独自の仮想通貨が発行されており、それによって個人や企業による商品やサービスの販売が盛んに行われています。

NFTアートといったメタバースならではの商品はもちろん、実在の商品をメタバース内で販売し、それをリアルの世界で交換するといったことも可能。

出店する側からすれば、家賃や交通費、交通費などの様々なコストをカットできることになります。

そして世界中のユーザーに開かれているメタバースなら、そのビジネスチャンスもさらに広がります。

実際にメタバースではアバターを着飾らせるためのファッションアイテムが大人気で、その市場規模は数兆円とも言われています。

メタバースはすでに新たな、そして巨大なビジネス市場となっているのです。

実在する地域の文化体験ができる

メタバースでは現実世界を模した空間を構築することも可能。それを利用して、実在する地域の文化を体験することもできます。

例えば文化庁が展開している「バーチャル日本博」では、日本各地の文化をバーチャルで体験可能。それに加え、新たにアバター機能を搭載して「水のミュージアム」、「メインスクエア」、「森のビレッジ」、「木の芸術劇場」などのエリアを回遊できるようになりました。

また沖縄県も「バーチャルOKINAWA」を実施中。国際通りを再現した「国際通りエリア」や、沖縄の伝統芸能を体験できる「スーパーウルトラちゅらちゅらミュージアム」、世界遺産の首里城を再現した「首里城エリア」などをアバターで楽しめます。

こうした取り組みによって、世界中の人々に日本各地の魅力や文化をよりリアルな形で発信できるようになります。

アバターで気軽に観光地を「訪れてもらう」ことによって、アフターコロナのインバウンド回復につなげたい考えです。

|アバターの今後は?

このように、アバターを使ってメタバースにアクセスすることによって、様々なことを行えるようになります。

では、アバターは今後どのようになっていくのでしょうか?

メタバースの拡張と進化によってさらにその世界は広がり、現実世界と仮想空間との融合も進んでいくと考えられています。そうなると、アバターはまさに「もう一人の自分」と言うべき存在となるでしょう。

アバターの容姿は自分の好きなように作成できるため、メタバース内では障害や体の問題からも開放されます。

さらに今後は身体的能力や認知能力、また知覚能力をトップレベルまで拡張できる技術が開発され、全く新しい生活様式が営まれるようになるでしょう。

実際にそうした世界を目指しているのが、内閣府が発表した「ムーンショット計画」です。2050年までに人が身体や脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現させるとしています。

アバターによって、誰もが多様な社会活動に参画できる。そんな時代がやってこようとしているのです。

|アバターを利用する際の注意点

メタバースに必須のアバターですが、利用には注意も必要です。

ここではその中でも特に注意が必要な「メタバース世界への依存」と、「現実世界でのコミュニケーション不足」について考えましょう。

メタバース世界への依存

日本よりもメタバースが浸透しているアメリカでは、子どもたちが「じゃあ放課後メタバースに集合!」と声をかけ合うのも珍しくありません。

無料で仮想空間にアクセスできるからこそ人気を博しているという見方もできるのですが、その気軽さと没入感の高さから、メタバース依存症への警鐘も打ち鳴らされています。

特に長時間プレイになりがちなゲームには、大人でも注意が必要。通常のオンラインゲームでも依存性の高さが指摘されていますが、より刺激的で没入感が高いメタバース・ゲームには十分警戒しなければなりません。

実際、メタバース・ゲームに近いVRゲームは、通常のゲームに比べて中毒性が44%も高いという調査報告もされています。

メタバースの世界は魅力的だからこそ、過度に依存しないよう注意しなければならないのです。

現実世界でのコミュニケーション不足

住んでいる場所に関わりなく、世界中のユーザーとコミュニケーションが図れるのがメタバースの大きなメリット。

しかしメタバース内でのやり取りにのめり込んでしまうと現実世界でコミュニケーションが煩わしく感じ、リアルでは誰とも話さなくなる、という心配も指摘されています。

さらにアバターを使って現実の自分の容姿を気にせずに他ユーザーと話せるのもメタバースの良い点ですが、それがかえって現実世界での引け目を強化してしまい、対面での会話を避けてしまうという傾向も見られるそうです。

メタバースでは多弁だが、現実世界では誰とも話せない…。そうならないためにも、現実世界でのコミュニケーション能力を磨く努力が欠かせません。

|まとめ

アバターを使ってメタバースを楽しむ人がますます増えてきています。

メタバースという新たな世界で自分の分身となるアバターは、現実世界から開放されて自由に行動できる「もう一人の自分」にほかなりません。

技術の進歩とメタバースの拡大によって、アバター文化に対する注目はますます大きくなっていくでしょう。それだけに、アバターの魅力と同時に注意点についてもしっかり把握しておくことが大切です。

アバター文化やその魅力について知るのには、まず自分自身がアバターを作成してメタバースに参加してみるのが一番です!