様々な企業が参入し、日本でも大きな盛り上がりを見せているメタバース。
そのメタバースは大きく分けてオープンメタバースと、クローズドメタバースという2つの種類があるのはご存知でしょうか。
この記事ではオープンメタバースとクローズドメタバースの特徴やそれぞれの違い、メリット・デメリットなどについて解説します。
この記事を読めば、メタバースの現状、そしてこれからのメタバースの進むべき方向性について理解できるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|そもそもメタバース・仮想空間とは何か?
「メタバース(Metaverse)」は「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、「多人数が同時参加できるインターネット上の3D仮想空間」を意味します。
利用者はそのメタバース空間で交流を楽しんだり独自の世界を構築したり、お互いにモノやサービスの売買・交換など自由に行動することができます。
三次元の空間を多人数でシェアし、現実と同じような創造性や経済性があることから、メタバースは「全く新しいもう一つの新しい世界」と表現されることもあります。
SNSや掲示板とは明らかに異なる「世界」がそこには広がっているわけです。
このようにメタバースは非常に大きな可能性を秘めているからこそ、世界中から注目され、活用が進んでいるのです。
|オープンメタバースとクローズドメタバースの違いとは?
メタバースはインターネット上に構築された3Dの仮想空間ですが、大きく次の2つの世界に分けることができます。
- オープンメタバース
- クローズドメタバース
同じメタバースと言ってもこの2つの世界には大きな違いがあるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておかなければなりません。
では、オープンメタバースとクローズドメタバースのそれぞれの特徴などについて、詳しく見ていきましょう。
オープンメタバース
メタバースは統一された一つの世界ではなく、プラットフォームごとに独自のメタバース・ワールドが展開されています。
それらのメタバースの世界を自由に行き来できるようにしよう、というのが「オープンメタバース」の基本的な概念となります。
インターネットで様々なWebサイトを自由にわたり歩けるような感覚で、メタバースの往来も自由にする。
AのメタバースからBのメタバースへ、そしてさらにCのメタバースへ…というふうに、ユーザーだけではなくモノやサービスも自由に行き来できるようにする。
それが、オープンメタバースが目指す「世界」なのです。
クローズドメタバース
オープンメタバースとは対象的に、プラットフォームが運営している一つのメタバースがそれ自体で完結している。
いわば鎖国のような状態で、それぞれが独自のメタバース・ワールドを展開しているのが「クローズドメタバース」です。
各企業・プラットフォームがそれぞれのメタバースを運営しているため独自性が出しやすく、利益も上げやすいのが特徴で、現在のメタバースはほとんどがこのクローズドメタバースとなります。
クローズドメタバースを例えると、スーパーマリオやゼルダ・シリーズが任天堂のハードでしか遊べないのと似ているかもしれません。
そのかわりSwitchやWiiのような、任天堂ハードならではの独自性を打ち出すことができるようになります。
一方でユーザーの立場からすると、ある一つのメタバースにはまればはまるほど、ほかのメタバースには手を出しづらくなるという状況が生まれるでしょう。
|メタバースの活用事例を紹介!
オープンメタバースとクローズドメタバースの違いや特徴について理解できたところで、実際のメタバースの活用事例を見ていきましょう。
現在のメタバースのほとんどがクローズドであることは上で述べた通りですが、その中でもオープンメタバースへの展開を探っているところ、クローズドを徹底しているプラットフォームなど、企業によってその考え方も様々。
そうした各プラットフォームの目指す世界を探っていくのも興味深いに違いありません。
XR CLOUD
海外製のメタバースが多い中で、「XR CLOUD」は兵庫に本社を置く「monoAI technology株式会社」が提供する日本発のメタバースです。
多人数同時参加がメタバースの要素ではありますが、その点XR CLOUDは同時接続人数が最大10万人という屈指の規模を誇ります。
その特徴を活かし、XR CLOUDは大小様々なイベントや展示会、会議などをメタバースで行うのに最適。
またVRデバイスだけではなくパソコンやスマホ、タブレットからでも参加できるため、メタバースに不慣れな人でも利用しやすく、企業活動にもメタバースを積極的に用いることができます。
またmonoAI technology株式会社は開発者向けにXR CLOUD用のコンテンツやアバター制作に必要なツールの提供も行っているため、オープンメタバースを意識している企業の一つと言えるでしょう。
公式サイト:https://xrcloud.jp/biz/
VRChat
出典:https://hello.vrchat.com/
「VRChat」は、ユーザー間の交流に重点を置いたメタバースの一つ。
メタバースの各要素をあえて簡素化することによって、初心者にも敷居の高さを感じさせないようにしています。
とはいえ、VRChatでもユーザーは「ワールド」と呼ばれるスペースを作成して友だちを招いたり、簡単なゲームを作るなどしてその世界を拡張していくのも可能。十分にメタバースの楽しさを味わえます。
さらにVRChatでは世界最大のバーチャルイベントと称される「Virtual Market」も定期的に開催し、その人気を高めています。
LINEやTwitter、FBなどのSNSがそれぞれ全く独立しているように、次世代ソーシャルアプリとしての側面が強いVRChatは、クローズド志向が強いメタバースの一つと言えるかもしれません。
Decentraland
出典:https://decentraland.org/
「Decentraland(ディセットラランド)」は、ブロックチェーン技術を用いた大人気のNFTゲームです(NFTについては後で詳しく説明します)。
メタバースとゲームは非常に親和性が高いため、Decentralandのようなメタバース上で行われるNFTゲームは世界中で大人気。
日本でも、きゃりーぱみゅぱみゅが所属するイベント企業が企画した「メタトーキョー」プロジェクトなどで話題となりました。
Decentralandはもちろんクローズドメタバースではありますが、運営会社が企業ではなく非営利団体であるため、状況が整えばオープンメタバースへと大きく舵を切るのではないかという期待も持たれています。
世界中の投資家や企業からも投資を受けているDecentraland。その動向にはこれからも注目していきましょう。
Fortnite
出典:https://www.epicgames.com/fortnite/ja/home
「Fortnite(フォートナイト)」はEpic社が販売・配信するオンライン・バトルロイヤルゲームで、メタバースではありません。
しかしEpic社はFortniteを単なるオンラインゲームの枠にとどめずに、新たなメタバース、それもオープンメタバースへと構築しようとしています。
例えばFortniteのキャラやアイテムを他のゲームでも利用できるようにしたり、コンテンツ制作のためのゲームエンジンやプラットフォームを提供するなど、Fortniteをオープンメタバース化する準備を着々と進めています。
実際にFortnite内で映画の上映やバーチャルコンサートを開催するなど、もはや半メタバースといった状態。
Fortniteは3Dオンラインゲームであるため、現時点でも3Dの仮想空間、多人数同時参加し交流が可能などのメタバースの要素をかなりの部分で満たしています。
そのFortniteがオープンメタバースを目指しているということは、メタバース業界において非常に大きな意味を持っているのです。
Roblox
出典:https://roblox-jp.com/
Fortniteとは対象的に、はっきりとクローズドメタバースを指向しているのが「Roblox(ロブロックス)」です。
Robloxの最大の特徴は、ユーザー自身がメタバース内で自由にゲームを開発し、他ユーザーに提供できるということ。
アメリカでの月間アクティブユーザーは1億人をゆうに超え、特にティーン世代に圧倒的な支持を得ています。
確かに専用のゲームエンジンを使ってユーザーが自由にゲームを作れるというのはRobloxならではのものですし、それをほかのメタバースと共有するというのはシステム的にも非常にハードルが高い。
さらに現時点で多くのユーザーを抱えているRobloxですから、あえて『開国』するメリットも薄いのでしょう。
オープンか、それともクローズドか。これはメタバース・プラットフォーマーにとっても、非常に重要な決定なのです。
Rec Room
出典:https://recroom.com/
「Rec Room(レックルーム)」は2020年にPlayStation VR版もリリースされた、人気のソーシャルVRアプリ。
メタバース内で他ユーザーとの交流はもちろん、テニスやドッジボール、サバイバルゲームなどの様々なミニゲームを一緒に楽しむことができます。
リリース当初はVRゴーグルが必須でしたが、現在ではPCやスマホでもプレイ可能。PlayStationやSteamなど様々なプラットフォームでサービスを提供し、ハードの垣根を超えたクロスプレイも可能ですが、それはあくまでもRec Roomに限ってのこと。
そういう意味でははっきりとクローズドメタバースではあるのですが、クロスプレイの枠をさらに広げ、オープンメタバース化してくれる期待も捨てきれません。
|オープンメタバースに近いプラットフォーム例
Fortniteのようにオープン化を目指しているメタバースもあるとはいえ、現時点でメタバースはそのほとんどがクローズドメタバースであり、完全な意味でのオープンメタバースはまだ現れていません。
とはいえ、オープンメタバースに限りなく近づいているプラットフォームも存在します。
ここではその中から2つのプラットフォーム、「Webaverse」と「Conata」を取り上げ、オープンメタバースに必要な要素を考えていきましょう。
Webaverse(ウェババース)
出典:https://metadrop.com/drops/webaverse
「Webaverse(ウェババース)」は現在開発中のメタバース・プラットフォームですが、最大の特徴はオープンソースであるということ。
つまり、サイトの作り方が全て公開されているのです。それによって誰でもWebaverseの制作に参加することができます。
オープンソースという手法自体は以前からあるのですが、Webaverseは誰でも自由に制作に参加できる環境を用意することによって、よりオープンなメタバース・ワールドを構築しようとしているのです。
実際にWebaverseでは、毎日のように新しい機能が追加されています。
Webaverseの誰もがアクセスできる透明性と分散型のシステム、そして特定の企業ではなく皆でシェアするという考え方は、まさにオープンメタバースが目指す世界そのものなのです。
Conata(こなた)
出典:https://conata.world/
メタバース上で利用できるアイテムを購入できるショップ、それが「Conata(こなた)」です。
Conataではブロックチェーンのイーサリウムで作成されたFNTアイテムを、メタバース上で展示・販売しています。
では、このConataがオープンメタバースにどう関わるのか?
あなたがConataで3Dのバーチャルアイテムを購入したところを想像してみてください。それがお気に入りのものであればあるほど、他の人にも見てもらいたいと思うことでしょう。
でもどこで?それはもちろん、メタバース。それも可能なら多くのメタバースで。
プラットフォームにとらわれず、自由にモノやサービスの行き来ができるのがオープンメタバースの目指す世界ですから、Conataで購入したアイテムを様々なメタバースに自由に持ち出せるというのも、やはりオープンメタバースが目指すところなのです。
|オープンメタバースのメリット
ここまでオープンメタバースの特徴や現状について見てきましたが、そもそもメタバースをオープン化することにどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、以下に挙げたオープンメタバースの2つのメリットについて考えたいと思います。
- 独裁的な運営になりにくい
- 複数のメタバースを1つのアバターで行き来できる
オープンメタバースのメリットをしっかり理解しておきましょう。
独裁的な運営になりにくい
メタバースの世界を描いた映画「レディ・プレイヤー1」では、オアシスというメタバース・プラットフォームによってその世界が支配されていました。
良く言えば統一された、悪く言えば一つの企業が仮想世界を独裁する。それを避けるためにはオープンメタバースが不可欠なのです。
現実世界でも、「GAFA」と呼ばれるIT企業がインターネット市場を独占することに強い警鐘が打ち鳴らされています。それによって、ユーザーに様々な不利益が生じることが予想されるからです。
オープンメタバースでは、そうした特定の企業による独占的な運営を防ぐことができます。
例えば、Aというメタバースの利用料金が急に上がったときには、Bのメタバースに乗り換えれば良い。またモノやサービスの移動が自由であるなら、突然あるメタバースが終了したとしても、別のメタバースに移し替えることができるでしょう。
メタバースは「もう一つの世界」ですから、その世界を牛耳るような独裁体制は絶対に防がなければならないのです。
複数のメタバースを1つのアバターで行き来できる
ユーザーはメタバースに参加する時に、自分自身の分身となる「アバター」を利用します。
現状のメタバースはクローズドであるため、複数のメタバースを利用するには、それぞれ別々のアバターを用意しなければなりません。
それはあまりにも面倒くさい。
しかしオープンメタバースでは人やモノ、サービスの行き来が自由ですから、当然アバターも一つ用意すれば良いことになります。
オープンメタバースのメリットは利便性だけではありません。アバターは自分自身の分身ですから、なるべくファッショナブルに着飾りたい。
有料のスキンやアイテムを身にまとうアバターも多く見受けられますが、クローズドメタバースではお金をかけたアバターを使えるのもそのプラットフォームだけ。
でもオープンメタバースなら、自分のお気に入りのアバターをどこでも使用することができるのです。
|オープンメタバースとNFTの関わり
ここまででも度々登場してきたNFT。
これは「Non-Fungible Token」の略で、直訳すると「非代替性トークン」、つまり他と取り替えられない、唯一オリジナルのモノを指します。
デジタルデータは簡単に複製が可能ですが、NFTによってデジタルのアイテムにもオリジナル性を持たせることができます。
それによって希少価値が生まれ、NFTアートなどが高額で取引されるようになっています。
このNFTが、オープンメタバースにとって非常に大きな意味合いを持つのです。
というのもNFTは共通規格であるため、プラットフォームを越えてモノやアイテムを持ち出すことができるからです(これを相互運用性と言います)。
そのため、NFTはもともとオープンメタバースに最適な技術なのです。
そしてNFTの扱い方は、プラットフォームのオープンメタバースに対する味方にも強く影響します。
A, B,C,Dのメタバースがオープン化し、NFTをそれぞれ自由に扱えるのに対し、もしEというプラットフォームだけがNFTを使えないとしたらどうなるでしょうか?
おそらく、多くのユーザーはそのメタバースを見限るでしょう。
NFTがメタバースにメリットをもたらすのであれば、プラットフォームとしてもオープンメタバースにせざるを得なくなるというわけです。
|オープンメタバース実現への課題
このように、オープンメタバースはこれからのメタバースが目指す世界であり、ユーザーにとっても大きなメリットをもたらします。
実際に多くの企業がオープンメタバース実現のために努力しているのですが、課題も少なくありません。
技術的な問題は時間が解決してくるものも多いのですが、社会の仕組みやルールの変更といった大きな壁のように立ちふさがっている問題も存在します。
例えば、次のような問題です。
- 法律や規格の整備が進んでいない
- 権利問題
では、オープンメタバース実現への課題についても考えてみましょう。
法律や規格の整備が進んでいない
ITなどの先端テクノロジーに法律や規格の整備が追いつかないのはよくある話ですが、メタバースももちろん例外ではありません。
例えば、NFTによってデジタルデータにオリジナル性を持たせることは技術的に可能になりましたが、その所有権を保証する法律はまだありません。
商取引も物理的に存在するモノが対象ですから、NFT取引を保護するものは何もないのです。
そのため、例えば高額で購入したNFTアイテムが相手から届かないような場合に、当局に相談することもできない。
現状としては各プラットフォームが独自でサービスを担保しているような状態なのです。
ただし、メタバースに関する法律やルールの整備も少しずつ進んできています。
例えば、渋谷区公認のメタバース、「バーチャル渋谷」の運営のために立ち上げられた「バーチャルコンソーシアム」では、商取引のルールやコンプライアンスなどのガイドライン策定が行われています。今後はこうした動きがさらに広がっていくことを期待したいものです。
権利問題
どの業界でもそうですが、知的財産(IP)の保護は産業発展のために不可欠な大切な問題です。
オープンメタバースではモノやサービスの移動が自由になりますが、権利問題という視点で見ると非常に頭が痛い。
というのも、IPはその利用できる範囲や条件を事前に定める「利用許諾(ライセンス)」を取るのが普通です。
例えば、あるキャラクター(IP)を使えるメタバースは◯◯のみ、という利用許諾下では、別のメタバースでそのキャラクターを利用することはできません。
自由に行き来できるはずのオープンメタバースが、権利問題によってがんじがらめになってしまう。既存のIPビジネスがNFTに参入しずらい原因ともなっています。
こうした権利問題の解決には、やはりプラットフォームの垣根を超えて調整にあたる業界団体の設立と、統一されたルール作りが必須となるでしょう。
|まとめ
世界中から誰もがアクセスでき、性別や人種、年齢の垣根を超えて交流が楽しめるメタバース。そのメタバースが目指すのは、自由で開かれたオープンメタバースこそが理想の形なのは間違いありません。
現状では完全な形のオープンメタバースは存在しませんが、様々なプラットフォームがオープンメタバースへの移行を探っています。
そうしたメタバースの現状を肌で知るためにも、そしてオープンメタバースに乗り遅れないためにも、ぜひこの機会にメタバースを始めてみてください!