日本国内において高校とは「中学校教育を基礎として、心身の発達に応じて高度な普通教育および専門教育を施す」ことを目的とされています。
小学校、中学校という義務教育の内容を更に発展させ、今後の人生をより豊かにさせる、社会の形成者として必要な資質を養うことから、学ぶ内容も多岐に渡ります。
「農業」「商業」「工業」「水産」「福祉」といった専門的な領域に特化した高校もあり、各自の希望進路に応じた学習が可能。
「普通科」においても基本的な5科目に加えて芸術、体育、情報といった様々な専門知識が習得できます。
現在の高校制度は1948年に発足しており、基本的な仕組みはほぼ変わっていないといえるでしょう。
年齢にして16歳〜18歳の3年間、校舎へ通学し生徒同士や先生との交流などを踏まえながら学習を進めていきます。
現在はタブレットの導入などIT技術も積極的に取り入れられており、今後の発展が期待されています。
こうした状況において「メタバース」を活用した高校が登場したことをご存知でしょうか。
本記事ではメタバース空間に創造された高校に実際の生徒として通える仕組み「メタバース生」を中心に、新しい高校教育の可能性について解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|メタバース通学が可能となる「メタバース生」
企業に対してメタバースの開発、構築を行う株式会社アオミネクストは、学校法人青叡舎学院勇志国際高等学校に対して、メタバースを活用した教育システムの企画、運用サポートを実施しています。
勇志国際高等学校は広域通信制高等学校として認可を受けており、現在は自宅で学ぶネット生と、全国各地(千葉・熊本・福岡・宮崎・大分)に存在する学習センターへ希望の日数通う通学制が存在しています。
「理数」「芸能」「トップアスリート」といった専門分野に特化したコースだけではなく、20歳以上の方が対象となる「社会人コース」も。
こうした柔軟な教育環境が整っている勇志国際高等学校だからこそ、メタバースを活用した高校教育が実現したといえるかもしれません。
過去には学校法人ではなく、民間企業によるメタバースと教育を掛け合わせたサービスが存在していました。
しかし、勇志国際高等学校の「メタバース生」は学校教育法第一条が定める学校が提供するコースであるため、卒業生は高校教育を卒業したものとして認定されます。
メタバース空間での教育
メタバース空間での学校生活では、現実世界の容姿や性別といったコンプレックスとなる部分を排除した交流が可能です。
自分好みのアバター姿で授業に参加できるため、周囲を気にしない環境が気軽に手に入ります。
メタバース生には無償でVRゴーグルを始めとした機器が提供されます。
通常であればZoom等のオンライン会議ツールを活用した交流に留まりますが、メタバース空間を活用することで現実世界さながらの交流が実現するのです。
また、通常の通信制高校であれば、生徒同士の交流はSlack等のチャットツールが利用されます。
しかし、メタバースであればアバター姿を通じた直接的な交流が可能となるため、友人関係の構築がよりスムーズになるのです。
いつでもどこでも教室へアクセスできるため、現実世界における生徒の環境を問わず、フラットな授業が可能となります。
進路に合わせたグループディスカッションや、プレゼン指導といったカリキュラムもメタバースを通じて実施されるため、現実世界と遜色ない教育が受けられるでしょう。
年間行事にも対応
「メタバース空間で学校生活が送れるの?」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
勇志国際高等学校のメタバース生では、メタバース空間を通じた授業、交流だけではなく、年間行事と行った学校ならではのイベントにも対応しています。
現実世界の体育祭は「eスポーツ大会」へ代替するなど、多くの生徒が一緒に楽しめるイベントへ変更。
また、メタバース生の各クラスが出し物、企画を実施し、一般の参加者を招いて実施する文化祭なども予定されています。
メタバース生の授業では、メタバースやVR空間の構築についての学習も行います。
そのため、文化祭の企画においても生徒オリジナルのメタバース空間展示など、様々な可能性が想定されるでしょう。
こうした行事を通して、高校生活で重要となる他社との協調力などを養い、卒業後の人生に貢献するとしているのです。
|デジタル化が進められる教育現場
勇志国際高等学校のメタバース生は、今後の高校教育の可能性を大きく広げる事例として注目されています。
メタバース生以外にも、現在の教育現場は様々な点でデジタル化が急速に進められています。
こちらでは一例として、学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校、S高等学校における、バーチャル教材の事例を解説します。
VRを活用した教育を検証
学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校とS高等学校は、バーチャル教材を企画・開発する株式会社バーチャルキャストと共同で、メタバースを活用した実証実験を行っています。
この実験は2023年11月から2024年3月まで実施されており、今後の進展に注目が集まっています。
内容としては、メタバース上で生徒が参加するグループワーク、英会話学習、特別授業やネット上での部活を通じて、「VRデバイスの使用感」や「コミュニケーション取りやすさ」が調査されています。
また、利用するデバイスに応じて安定性やネットワーク帯域幅を調査するなど、幅広いデータが収集されているのです。
2024年1月現在、メタバースやVRを活用した教育は発展途上であり、まだまだ未知数であるといえるでしょう。
まだ見えない問題を明確にし、それぞれへの対処を繰り返すことで今後メタバース教育はより具体的になることが期待されます。
教育DXを加速させることが想定される
2018年の経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本国内の学校におけるコンピューター活用状況は最下位になるなど、ITに関する環境整備が急務とされてきました。
そうした状況を背景に、文部科学省は全国の児童生徒を対象に1人1台のPC端末を用意し、通信ネットワークの整備を進めました。
2019年に始まったこの取り組みは「GIGAスクール構想」と呼ばれ、教育分野におけるDXを推進させることに繋がりました。
そして2022年の同調査では、日本は「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」において、世界トップレベルの習熟度を達成しました。
この要因としてはICT機(PC、プロジェクター、デジタルカメラ等の情報機器)の使用に慣れ、授業の改善が進んだことがあげられるでしょう。
今後は教科書や教材のデジタル化、クラウド環境の整備なども検討されており、紙からデジタルへの移行は加速していくことが想定されます。
また、生徒の学び方自体を変革することも求められており、そうした一環としてメタバースを始めとした最先端技術の活用が注目されているのです。
|新しい教育方式として期待される
勇志国際高等学校のメタバース生は、今後の新しい教育方式として期待されています。
メタバースを通じた通学、学習によって高校を卒業できることは、これまで通学が困難であった生徒に新しい選択肢を提示するはずです。
担任制、カウンセラーにも対応しており、授業体制については通常の学校環境と遜色ない状態で進められます。
新しい教育方式として期待されており、今後の可能性に注目が集まっているのです。
対面授業にも対応
メタバース生では、授業の100%がメタバース空間に限定して進められるわけではありません。
進級、卒業といった節目のタイミングには「スクーリング」と呼ばれる対面での座学が実施されます。
4泊5日での宿泊型スクールや、年に5〜7日の日帰り型の2種類から生徒の希望に応じた選択ができます。
勇志国際高等学校の天草本校は目の前が海であり、美しい自然環境を肌で感じながらの学習が可能。
デジタルと自然を融合させた学習環境は、これまでになかった体験を生徒へ提供するでしょう。
|まとめ
メタバース空間に構築された高校に生徒として通い、卒業生には高校教育を卒業したものとして認定が与えられる。
2024年1月現在、一昔前では考えられなかった教育環境が、メタバース技術の発展によって現実のものとなっています。
教育現場におけるDX化は現在急速に進められており、今後の益々発展していくことが想定されています。
現実の校舎に通学し、対面で授業を受けるというスタイルが古くなる時代もそう遠くないのかもしれません。
メタバース生の進展や教育現場のVR活用事例などに今後も注目しましょう。