世界最大規模のSNSを運営するFacebookが2021年末、社名をMetaに変更したことは記憶に新しいでしょう。
アメリカを代表する巨大IT企業の一角がメタバースへと本格的に舵を切ったことで、今後のメタバース事業の大きな盛り上がりが期待されました。
社名変更から早くも3年が経過した2024年2月現在、Metaのメタバース事業の動向はどうなっているのでしょうか。
「メタバースという名前もあまり聞かなくなった」
「オワコンじゃないの?」
近年の動向を踏まえると、上記のような感想を抱いてしまう方は少なくないかもしれません。
中には「Metaはメタバース事業から撤退する」といった情報もあり、今後どうなるのか気になるでしょう。
本記事ではMeta社のメタバース事業に関する情報として、現在の状況から今後の動向について解説します。
一読いただければ、最新のメタバース情報が理解できるはず。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|Meta社のメタバース事業の動向
まずはMeta社のメタバース事業の動向について、以下の項目を確認してみましょう。
- 赤字が続くメタバース事業
- 厳しい「Meta Quest3」の売れ行き
少し不安になる内容ですが実際どうなのでしょうか。
それぞれ解説していきます。
赤字が続くメタバース事業
2023年第2クォーターの決算発表会では、Meta社のメタバース事業の売上は39%減少となる約2億8千万ドル(約410億円)であったことが明らかになりました。
営業損失は約37億ドル(約5,400億円)にもなり、多くの人にとってこの金額は途方もないものに感じられるでしょう。
実際Meta社は2度も四半期連続で大規模なリストラを実施し、合計で約2万人に対してレイオフを行ったのです。
赤字が続くメタバース事業がMeta社に大きな影響を与えていることは明白です。
こうした状況を見れば、メタバース事業を続けることが困難だと考えられるかもしれません。
厳しい「Meta Quest3」の売れ行き
Meta社はメタバースに関する技術、サービス提供だけではなくVRゴーグルである「Meta Quest」シリーズを展開しています。
元々は「Oculus Quest」という名称で2019年に登場しましたが、Meta社への社名変更に伴い「Meta Quest」へと改名された経緯があります。
2020年には「Meta Quest2」が発売され、そこから約3年の期間を経て「Meta Quest3」が2023年10月にリリース。
新ハードの登場によって、閉塞感があったメタバース市場を活性化させると期待されていました。
2023年下半期には「Meta Quest3」の出荷台数予測は700万台以上と発表されるなど大きな注目を集めていたのです。
しかし、実際には200万台から250万台程度と予測の半分以下の売れ行きに留まり、2024年以降の出荷台数も100万台に留まるとの見通しも出ています。
こうした状況もMeta社のメタバース事業撤退が囁かれる一つの要因と考えられるでしょう。
|Metaの「3つの矢」戦略
それでは、Meta社は実際にメタバース事業から撤退するのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
Meta社は2023年9月、年次開発者会議である「Meta Connect 2023」を本社で開催。
その中では生成AIを活用したメタバース事業など、以下の「3つの矢」戦略が発表されました。
- MR
- AI
- スマートグラス
それぞれの内容を確認していきましょう。
第一の矢:MR
まず、複合現実である「MR(Mixed Reality)」を活用した施策があげられました。
MRは現実世界に対して仮想空間上のオブジェクトを配置、投影できる技術です。
現在のAI技術の躍進はこれまで再現できなかった作業を可能にしています。
様々なAPIの実現、コンピューターが自動で操作するキャラクターが実現するなど表現の幅が広がっているのです。
こうした技術を世界中の人に提供する手段として、「Meta Quest3」が発表されています。
ザッカーバーグCEOは「素晴らしいものを高価な価格ではなく、誰でも手が届く範囲で提供することが重要だ」と述べています。
日本では旧製品となった「Meta Quest2」の人気が上昇しており、メタバース人口は着実に増加しているといえるでしょう。
MRを活用したサービス拡充の今後に注目が集まります。
第二の矢:AI
2023年はAIが急激に発達し、世間一般にまで広がった年だといえるでしょう。
そんなAI技術をMeta社は活用し、今後の事業の軸として考えています。
「Meta AI」と呼ばれるAIは文章を自動生成するチャットボットです。
日本ではChatGPTによってその認知度を向上させましたが、まだまだその機能を日常的に活用している人は少数派となるでしょう。
Meta社は自社で提供するSNS「Instagram」などに「Meta AI」を搭載したベータ版を提供。
アメリカからその利用範囲を徐々に拡大させる意向を示しています。
こうしたAI技術が浸透すれば、多くのユーザーがMeta社のサービスを積極的に活用するでしょう。
そして、Meta社サービスの利用者数を数十億人にまで拡張させることを目標にしています。
第三の矢:スマートグラス
VRゴーグルは目の前のほとんどを覆うことから、日常的な利用を躊躇してしまう人は少なくありません。
現在は通常のメガネと遜色のない「スマートグラス」が登場しており、今後の拡大が期待されているのです。
Meta社はRay-Banブランドを展開するルックスオティカと連携しながら、スマートグラスの開発を進めてきました。
2023年にはその第2世代の製品が発表され、カメラとマイクが内蔵された機能が発表されています。
「Meta AI」と連携することで、音声による質問が可能。
さらに、目線でのライブストリーミングといった作業も実現できるようになりました。
カメラに映る映像をAIが認識し、解説するといった機能を有しており、今後はデジタルとリアルの境目をAIが繋いでいくでしょう。
メタバースという仮想空間だけではなく、さらに拡張された存在として進化することが期待されます。
|Metaがメタバースに注力する理由
Meta社は大きな赤字を抱えながらも、なぜメタバースに注力するのでしょうか。
その理由について、以下の項目にそって解説します。
- 市場規模の拡大予測
- SNS事業の閉塞感
- AIとメタバースが組み合わせる可能性
市場規模の拡大予測
今後メタバース市場規模は発展することが予測されています。
総務省が発表した「世界のメタバース市場規模(売上高)の推移及び予測」によると、全世界におけるメタバース市場は2021年の約4兆円から2030年にはなんと約80兆円にまで拡大するとされています。
この要因はメタバースが現在のようなメディア、エンタメを超え、教育や小売といった幅広い分野での活躍が想定されているからです。
つまり、現在のメタバース市場はまだまだ初期段階ということ。
サービスが市場に普及し切るための「溝」を乗り越える前段階にあり、一定の期間が過ぎれば一気に「メインストリーム」になるのです。
Meta社においても同様の考えを示しており、グローバルビジネスグループ責任者は「完全な計画を実行するために10年は必要」といった発言もしています。
長期的な目線でメタバース市場は発達することが予測されており、Meta社はその時までの準備を進めている段階ということなのです。
SNS事業の閉塞感
現在、Facebookのユーザー数は全世界で30億人を超えており、世界最大規模のSNSとして運用されています。
一方、成熟しきった市場であることから今後さらなる成長が期待できないという課題を抱えているのです。
新規ユーザーを爆発的に取り込むことが困難である上に、競合サービスが現れることによるユーザー数減少も考えられます。
また、個人情報保護強化に伴った広告事業への影響も無視できないでしょう。
こうしたSNS事業の閉塞感も、今後の可能性を秘めたメタバースへの注力に繋がっていると考えられます。
AIとメタバースを組み合わせる可能性
Meta社はメタバースと並行して、AI事業へも力を入れています。
そして、メタバースとAIの組み合わせは非常に相性が良いです。
例えば、AIを活用した翻訳ツールがあれば、世界中の人々とメタバース空間で自由な会話が楽しめます。
これまでにない交流体験が実現できれば、メタバース市場へ参入する企業、ユーザー数は爆発的に増加するでしょう。
また、AIの画像認識技術によるコミュニケーションの円滑化、パーソナライズされたユーザー体験の実現など、その可能性は多岐に及びます。
AIとメタバースが組み合わさることで、より一層強力なイノベーションが発生すると考えられるのです。
|今後も成長が見込めるMetaによるメタバース事業
本記事ではMeta社のメタバース事業の動向として、2024年2月現在の状況を解説しました。
メタバース市場は今後もさらなる成長が見込まれており、Meta社はその時に向けた準備を着実に進めています。
日本円で数千億円という営業損失は非常に大きなダメージに感じられますが、市場が熟成すれば容易に取り返せる額なのかもしれません。
今後爆発的な成長、ユーザー数増加が見込まれるメタバース市場をけん引するMeta社の動向に引き続き注目しましょう。