東京大学工学系の教育コンテンツを基に、デジタル技術を活用して誕生した「東京大学メタバース工学部」。

バーチャル空間をキャンパスに、日本のトップレベルの大学が取り組む未来の人材育成は一体どのような取り組みで実践されているのでしょうか?

本記事では、メタバース工学部の取り組みや過去の受講内容を紹介し、従来の教育では体験できないプログラムの数々をご紹介します。

あなたもバーチャルキャンパスで、東大の知と技術に触れてみませんか?

|メタバースとは?

メタバースとは、CGによって構築された仮想空間を指す言葉であり、その由来は「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」から来ています。

アバターを通じて参加し、仮想世界でリアルな体験を伴った活動をすることが特徴です。

先駆けとなった2003年の「Second Life」以降、技術革新によってメタバース構築の基盤が整いつつあります。

メタバースは、近未来に到来すると言われるWeb4.0時代を象徴する技術であり、Meta社のマーク・ザッカーバーグ氏らがその重要性を認識し、大手IT企業が続々と参入しています。

これは単なる技術の進歩ではなく、社会や文化だけでなく、私たちの日常生活にも大きな影響を与える現象となっているのです。

詳しくは、こちらで解説しています!

【わかりやすく解説】メタバースとは?注目される理由やビジネス活用例を紹介
【わかりやすく解説】メタバースとは?注目される理由やビジネス活用例を紹介

|東京大学メタバース工学部とは

出典:https://www.meta-school.t.u-tokyo.ac.jp/

東京大学メタバース工学部は東京大学大学院工学系研究科・工学部が中心となり、デジタル技術を駆使し、幅広い年代の人々に最新情報や実践的なスキルの獲得を目指す教育プログラムとして立ち上がりました。

正式な学部ではないため、東大生でなくとも中高生や社会人など広範な層が参加可能です。

授業内容は学生向けと社会人向けの2つに分かれており、前者では、工学や情報分野への関心を促す実践的な体験授業を無料で提供し、後者では、人工知能や次世代通信などのリスキリングプログラムを展開しています。

教育の新たな領域を切り拓く先駆的な存在として、多くの人々に学びと成長の機会を提供することが期待されています。

設立の背景

設立された背景には、急速な技術革新や働き方の変化が社会全体に大きな影響を与える中、工学や情報学への需要が急増し、特に未来社会をリードするDX人材の不足が深刻化していることにあります。

この状況下で、東京大学は工学や情報学に関する学びの機会を広く提供し、さまざまな人々が最新の知識やスキルを習得できる環境を構築する必要性を認識しました。

そのニーズに応えるために設立されたメタバース工学部は、年齢や性別、地域などの枠組みを超え、すべての人が工学や情報学に触れ、学ぶ機会を提供することを目的としています。

特に、女子中高生を対象に工学の魅力を伝え、彼女たちの参加を促進し、DX人材の多様性を推進することを重視しています。

この学部の設立により、工学や情報学に関する学びやキャリアに関する情報がより多くの人々にアクセス可能となり、社会全体のデジタル技術への理解や活用が促進されることが期待されています。

|取り組み内容

プログラムとして取り組まれている具体的な内容について、以下で説明していきましょう。

工学キャリア総合情報サイト

この情報サイトでは、中高生や工学部生を中心に、幅広い層に対して工学キャリアに関する包括的な情報を提供しています。

特に、現在の工学分野におけるダイバーシティの不足を解消するために、女性工学者のキャリア情報を重点的に取り扱っています。

この取り組みは、DX人材の多様性を高めるための一環であり、教職員や学生・大学院生、産業界の若手社員も参加しています。

例えば、キャンパス訪問や企業インターンシップの体験談、産業界で活躍する女性エンジニアへのインタビューや交流会など、実践的でリアルな情報を提供。

また、工学部の授業や研究内容、進路情報なども掲載されており、工学分野への理解を深めるための様々なコンテンツが充実しています。

ジュニア工学教育プログラム

ジュニア工学教育プログラム(通称ジュニア講座)は、中高生やその保護者、教師を主な対象に、工学や情報に関する知識を早期に身につける機会を提供しています。

参加費無料のオンライン講座を主軸に、大学での工学の学びや卒業後のキャリアに関する情報の提供から、商品開発などの体験型演習、さらには大学の研究室見学まで幅広く展開されています。

ジュニア講座は、産業界と大学が連携して共同で提供される場合もあり、産業界の実践的な知見と大学の専門知識を融合させた内容が特徴です。

参加者は、さまざまな工学分野に触れることで自らの興味や適性を発見し、将来の進路選択に役立てることができます。

また、DXに対応する人材の育成を目指しており、工学分野への関心を高めることで、将来的に技術革新に貢献する人材の育成につなげています。

リスキリング工学教育プログラム

リスキリング工学教育プログラム(通称:リスキリング講座)は、社会人や学生のスキルアップや再学習を支援するプログラムです。

主に人工知能(AI)、起業家教育、次世代通信などの最新の工学と情報技術に焦点を当て、オンライン上で多様なコースが提供されます。

参加者は、自身のニーズや興味に応じてコースを選択し、修了証を取得することができます。

リスキリング講座は、受講者が変化する技術環境に適応し、キャリアの発展や競争力の強化を図るための貴重な機会となります。

さらに、社会人や学生が最新の技術や知識を取得し、デジタル時代の変化に対応する能力を向上させることで、将来の仕事における可能性を拡大することが期待されています。

|受講方法

受講方法は、それぞれのプログラムによって異なります。

まず、ジュニア講座では、中高生や保護者、教師が対象ですが、一部講座は他の対象者も受け付けています。

参加は無料で、講座やイベントごとに申し込みが必要です。

詳細は各講座の詳細ページで確認できます。

一方、リスキリング講座は、主に社会人が対象で、申し込みは法人単位で行われます。

特定のAI講座では、学生や離職者、求職者なども申し込み可能ですが、抽選が行われます。

詳細や申し込み方法については、メタバース工学部事務局に問い合わせるか、東京大学工学部のホームページを確認してください。

|過去の受講内容例

東京大学メタバース工学部では、中高生向け「ジュニア講座」、社会人向け「リスキリング講座」において、過去にいくつもの講座が開催されています。

講座では、東大教授による講義だけでなく、グループワークや体験型学習など、双方向的な学習環境が提供されています。

メタバース空間ならではの没入感あふれる体験を通して、工学への理解を深めることができるでしょう。

最新情報は公式サイトで確認できますので、ぜひチェックしてみてください。

以下で、それぞれの講座でどのような内容が学ばれたのか、具体的な例をご紹介します。

【ジュニア講座】バーチャル教室でコンピュータを学ぼう

この講座では、中学生や高校生を主な対象とし、VR教室を利用したコンピュータ学習を受講することができました。

内容としては、VRの技術やコンピュータの基礎、論理回路などについての解説が行われ、参加者はVRChatやZoomを通じてオンラインで講義に参加。

講義中は質問やコメントも積極的に受け付けられました。

また、300名を超える多くの参加者が受講可能であり、VRChatを利用したバーチャル教室での対面授業やZoomを通じたオンライン授業が提供されました。

受講者には、VRChat内での使用ができる、授業の参加証であるメダルが授与されました。

【ジュニア講座】メタバースを作ろう

この講座では、最先端のVR技術に関する研究紹介や、自分好みのVR空間やアバターの作成演習が行われました。

2022年度には1,000名以上の受講生が参加し、2023年度も前回の受講生だけでなく新規の受講生も対象として開催されています。

講座では、中学生や高校生を主な対象に、先端VR技術に関する講義や演習がオンラインで提供されました。

特に必要な事前知識やスキルはなく、本講座のみでも問題なく受講が可能で、参加者の感想では、VRの奥深さや将来性に驚きを感じる声が多く寄せられました。

講座の内容は全5回で、イントロダクションから先端VR技術の講義、そしてメタバースの作成演習を経て、最終的には作品の体験会が行われました。

【リスキリング講座】次世代サイバーインフラ

「次世代サイバーインフラ」をテーマにしたリスキリング講座では、情報通信の進化や次世代通信技術に焦点を当て、Society5.0の実現に向けた革新的な情報通信の利活用方法が議論されました。

講座では、5GやBeyond 5Gといった最先端の技術や、地域創生、地域課題解決への応用が取り上げられました。

産業界や政府、国際組織の第一線で活躍する講師の知見を基に、幅広い視点から次世代サイバーインフラに関する議論が行われました。

講座の受講形式は、オンデマンドでの動画視聴とレポート提出が主な方法で、修了基準は毎回のレポートや最終レポートにより総合的に評価されました。

【リスキリング講座】Web工学とビジネスモデル

「Web工学とビジネスモデル」の講座では、Webプロダクト開発の基礎知識やビジネスモデルに焦点を当て、NoCodeを用いたプロトタイピング演習や実践的なゲスト講師による講演が行われました。

学生は、プロダクト開発と事業プラン作りをグループ課題として実践。

講義内容は、Web技術の基礎からAPIの利用、ChatGPTの活用、NoCodeによるアプリケーションのプロトタイピング、そしてマーケティング戦略まで幅広くカバーされました。

講義形式は、オンラインでの受講であり、録画講義も配信されました。

修了基準は出席、レポート課題、最終課題の基準を満たした受講者には修了証が発行されました。

|まとめ

東京大学メタバース工学部は、未来の工学を担う人材を育成するだけでなく、誰もが工学の面白さを体験できる場を提供しています。

中高生から社会人まで、幅広い層が対象であり、今後もさまざまな講座を通して、日本の工学教育に新たな可能性を切り拓いていくことが期待されます。

場所に縛られることなく参加できるので、自身のスキルアップのためにも試しに受講してみてはいかがでしょうか。